推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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十 百鬼セオの日記 一年目

・■月■日

 あれから大体一年が経った。

 数ヶ月死にかけてたり、起きたら本部に激詰めされたり、周辺が大きく変化してたり、いろいろなことがあって気がつけば一年が経過していたのだ。

 俺は日記をつけることにした。

 ミホノが原作で使っていた日記帳を俺にくれたのだ。

 パスワードを口にしないと中身を見られないという代物で、原作だとミホノの死後に主人公たちが発見し内容を知ることとなる。

 だが、今回は俺が原作知識のメモと今後のことについて書くために使わせてもらうことにした。

 思考すれば内容を書き込める仕様なのが、大変楽でいい。

 

 俺にとって、転機となる悪路王討伐から一年が経ち、色々と環境に変化がおきた。

 まず本部にこのことを激詰めされた。

 説明しようにも、下手したら聞くだけで発狂しかねない代物。

 かといって誤魔化しても本部の人たちは信じてくれない。

 解郷で宇宙のまほろばを視てもらえば一発なのだが、それは家族に死ぬ気でとめられた。

 幸いにも、そんな家族たちの様子を視てドン引きした本部の人たちが納得してくれたので、とりあえず悪路王の件は不問となった。

 それでいいのか、魔祓師。

 

 とはいえ、まったく何もしないわけではない。

 俺に「まほろば学園」の教材を送りつけて、それで宇宙のまほろばに関する研究を行え、という。

 魔祓師は人手不足なので、子どもの戯言に人手を割くことはできないのだ。

 ただ、それで送ってくるのが学園の教材なのは、俺が子どもの割に物言いがはっきりしているから、少しでも勉強しておけということだろう。

 解郷の二重使用による偵察の話をしたら普通に感心していたので、将来は研究職にでもつかせたいのかもしれない。

 

 それに、宇宙のまほろばを”視た”ことによる影響を無視できないのもまた事実。

 ただ、すぐに何か影響が起こることはないだろうと俺は考えている。

 これには二つ理由があって、一つは原作のエピローグに主人公の娘が登場すること。

 十五歳の娘が、まほろば学園に入学するところで話が終わるのだが、それまでの間に大きな事件はなかったらしい。

 なにか起こるとしたら、その後だ。

 加えて、俺は二回あの生ける炎をこの眼で視ている。

 そして一回目と二回目を比べて、神格になんの変化もなかったことも確認済みだ。

 まったく微動だにしていなかったのである。

 ようするに、宇宙のまほろばは気が長い。

 最低でも十五年……結婚するまでを考えたら二十年は余裕があるだろうから。

 もしかしたら、宇宙のまほろば関連の出来事が起こるのは原作主人公がまほろば学園に入学する頃になるかもしれないな。

 ただまぁ、()()()に関しては、いつ這い寄ってきてもおかしくないし、気をつけないといけないな。

 俺が学園に入学した時に、知らない生徒として紛れ込んでたりしそうだ。

 

 とまぁそんなわけで、俺はこれからしばらく……多分まほろば学園に入学するまで宇宙のまほろば研究係に就任したわけだ。

 成果は何一つ期待されていないだろうが、思ったより早く魔祓師の教本などに触れられたので、早速活用していくことにしよう。

 

 

・■月■日

 兄様が俺の「まほろば学園」の教材を借りていった。

 そういえば、あれから一年(と少し)が経ったということは、兄様がおかしくなってからもう一年が経ったということでもある。

 俺は某生ける炎の力を使った代償として、数ヶ月の間生死の境を彷徨っていたのだが、起きると周囲の環境は一変していた。

 中でも一番大きな変化が起きたのは兄様だ。

 

 まず一番の変化は、メガネをかけて敬語を使い始めたことだろう。

 髪型も少年漫画特有のツンツンとした感じから、キチッとした感じになった。

 一言で言えば――ガリ勉になったのだ。

 

 ……なんで?

 俺が寝ている間に、兄様に何があったのだ?

 一体誰が兄様をこんなふうにしてしまったというのだ?

 何が兄様を変えてしまったというのだ!(全力の目反らし)

 おのれ知らない原作!!(壮大な押しつけ)

 はい。

 

 とはいえ、ですよ。

 言い訳だけさせてもらうと、兄様がガリ勉になったのは何も悪いことではないのだ。

 父様の言うこともきちんと聞くようになったし、周囲への態度も激変した。

 特に、それまで見下していた周囲の魔祓師の子どもや一般の子どもに、いつくしみとやさしみを持って接するようになったのだ。

 これを改善と呼ばずなんという?

 少なくとも、周囲の困っている子どもを助けたり、本気で勉学に取り組む兄様の姿は真剣そのもの。

 そこに嘘は見られない。

 兄様のことを一番良くわかっている母様も、今の変化を「まぁ……おそらく……いいことなのではないでしょうか……」と言っていたし、大丈夫なのだろう。

 ……多分、おそらく……きっと、めいびぃ。

 

 ただ、一つだけ。

 明らかに俺に対してだけ、怯えるような態度を取るようになったのは、まずいと思う。

 母様からもなんとかしろ、と言われているし。

 ここは流石に、俺も責任を取らなくてはいけないだろう。

 せめて兄様が……まほろば学園に入学するまでには。

 

・■月■日

 今日はミホノの部屋の片付けに行ってきた。

 ミホノとは、あれからも変わらず仲良くさせてもらっている。

 最近ではミホノの家にお邪魔させてもらうこともあり、俺達の関係は良好だ。

 ただまぁ、ミホノの家にお邪魔する理由は、俺以外がミホノの自室に入れなくなっているからなのだが。

 

 俺が数ヶ月生死の境を彷徨っている間、ミホノはそれはもう心配してくれていたらしい。

 定期的に俺の見舞いに来たり、自分が回復系の魔祓刃を開発できれば、俺を助けられるのではないかと修行に勤しんだり。

 それはもう大変だったそうで、俺としては申し訳ない限りだ。

 

 ただ、ある時から少しずつミホノの様子がおかしくなっていったのだという。

 俺のことをセオ様と呼んで憚らなくなり、その瞳には確かな信仰心が宿り始めた。

 もともとからその兆候はあったが、俺が倒れてから一気に加速したそうだ。

 やがて、ミホノは自分の部屋にあるものを作ったのである。

 

 一言で言えば、それは祭壇だった。

 

 神を祀る祭壇という意味でもあり、推しを祀る祭壇という意味でもある。

 なにせ祭壇の構成物の八割は俺の私物なのだから。

 一体どこから持ち出したのかしらないが、俺の着なくなった服とか使わなくなった道具を組み合わせて、俺の写真をペタペタ貼りまくった祭壇だ。

 しかもこの祭壇、なんかものが定期的に増える。

 明らかに俺が使ってるものだけでは足りないだろうものまで祭壇に組み込まれていく。

 結果として、ミホノの自室はとんでもないことに成るのだが、現状この部屋に入れるのは俺だけだ。

 俺以外が入ろうとすると、ミホノは途端に野生化して相手を威嚇。

 向こうが退散するまで吠え続けるし、近づいてくると噛みつくらしい。

 俺を信仰するのはまだわからなくはないんだけど、なんで野生化するんだ……。

 

 誓ってこれだけは言うが、俺はミホノに宇宙の神格関連のあれやこれやを口に出したりはしていない。

 解郷でそれを覗けるなんていう情報など、もってのほかだ。

 この日記帳をミホノが盗聴みたいなことをしている可能性も考え、調査してもらったがその心配はないという。

 本人を問い詰めても、全くそういった様子はないようだった。

 というか、もし仮に盗聴しててもミホノはそれを隠せる性格ではない。

 俺への信仰心でなんかこう、「すごい」ことになってしまったが、ミホノの本質はそのままだ。

 なので、とりあえずは経過観察ということで、母様ともミホノの家の人とも話はまとまっている。

 

・■月■日

 俺は魔祓師の本部――「魔祓寮」から宇宙のまほろばに関する調査を命じられた。

 魔祓寮から送られてきた機材を用いて、まほろばを観察。

 その報告……というか「感想文(原文ママ)」を年に一度提出するよう言われている。

 完全に子供扱いである、いや子供なんだけど。

 魔祓師としての家格や才能に関しては厳格で厭味ったらしいところもあるけれど、妙に対応がまともなのは原作通りだなぁ。

 まぁそういう一応まともな組織だからこそ、大崩壊でめちゃくちゃになってしまうのだろうけど。

 なんてことをしみじみ考えつつ、今日も俺は研究に勤しむ。

 

 といっても、宇宙のまほろばに関してわかることなんてそうそうない。

 まず、これまで何度か言ったけど、俺が推定生ける炎の力をその身に宿した後。

 俺は数ヶ月ほど生死の境を彷徨った。

 まぁ、これに関しては暴走一歩手前の能力を無理やり使ったのだから当然だろう。

 副作用として、片目が常に赤く煌々と輝くようになってしまって、眼帯が必須になってしまったけど。

 とりあえず、それ以外に目覚めてから身体におかしな点はない。

 

 ただまぁここまで危険だと、そうそう使ったり実験できないのが惜しい点だ。

 使ってみた感想として、どうもこの力は魔祓刃とも違う感じらしい。

 魔人の操る魔装とも違うもののようで、普通に考えれば忍の操る忍術に近いのだろうが。

 原作の描写を見ている限り、忍術とも少し違う気がするんだよな。

 強いて言うなら、原作主人公の最終形態が一番近いか?

 あとはまぁ、隕石の魔人。

 そう考えると、続編の能力という予想はかなり正しいと言えるだろう。

 

 さて、これから待ち受ける大崩壊と、その先の原作。

 更には知らない続編のためにも、俺はこの力を使えるようにならないといけない。

 悲しいかな俺にはやはり才能はなく、魔祓刃を突き詰めても一朝一夕で大成できるわけでないことは、悪路王との戦いで十分にわかった。

 だが、そのために操れるようにならなければならない力は非常に危険。

 母様からも、無茶はすることのないように強く言われている。

 起きた時、父様も兄様も俺を心配(兄様が俺を心配!?)してくれたが、母様だけは厳しかった。

 コンコンと説教をして、無茶をしないよう言ってきたのだ。

 俺が絶対に無茶をしてしまう性質なのは今回の件で身にしみたので、母様の説教はすごくありがたかった。

 これこそが母様の愛なのだ、と強く感じたものである。

 なので、”俺は”無茶をしないようにしよう。

 

 というわけで考えました、解郷で視る映像を俺以外が見る方法。

 まず解郷の特性は、視界をまほろばに接続するという能力だ。

 であればこれを、視界以外にも接続できるようにすればどうだろう。

 たとえば――カメラとか。

 魔祓師は基本的に古い組織で、現代科学を取り入れ始めるのは大崩壊で一度組織がおしゃかになってからだ。

 しかし、最低限の便利な道具はすでに導入されている。

 車なんかはその最たる例――田舎に居を構えてることが多いからな、魔祓師――だけど。

 カメラだって、手に入れようと思えば手に入れられる。

 それを解郷と繋げられるかは、要練習だけど。

 流石に半年近く解郷を使い続けてきた俺に不可能はなかった。

 早速カメラをまほろばにつなげ、それを宇宙へ、更に宇宙のまほろばへつなげるのだ。

 この時、気をつけることとして神格は見ないようにする。

 まほろばは別に神格を絶対に見なければいけない場所ではないのだ。

 神格はマナの塊なのだから、それを避けるように解郷を繋げれば簡単に回避できる。

 なのでまずは、神格のいない場所にカメラを設置して向こうの様子を探ろうとしたのだが――

 

 

 向こうにカメラを繋いだ途端、カメラが冒涜的な触手みたいなものに変化した。

 

 

 やっべ。

 日記を脳内で書きながら実験してたのがいけなかったのだろうか。

 と、とりあえず母様に報告しないと。

 こういうのは、隠すとろくなことにならない。

 そう思って一瞬視線をそらすと、今度は触手が消えていた。

 こ、こわぁ……。

 やっぱ俺の体に生ける炎を安全に降ろせるようになるまで、宇宙のまほろば関連は研究しちゃだめだな……。




こっから主人公がまほろば学園に入学するまで(十二歳まで)はある程度ダイジェストにするため、日記を書いているという形に。
一年ずつ進行していく予定です。

また、多くの方に評価いただき大変嬉しいです。
特に高評価が入るとすごくありがたいです。
今後とも、本作をどうぞよろしくお願いします。
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