推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

11 / 96
十一 百鬼セオの日記 二年目

・■月■日

 結局、触手に関しては暫く父様たちに捜索してもらったものの、発見することはできなかった。

 少し異常なのは、触手が消失したときに魔祓刃が使用された痕跡があるということだ。

 魔装でもなければ、神格関連の能力でもない。

 純粋な魔祓刃である。

 じゃあ、一体誰がそんなことを?

 兄様はまず真っ先に否定した。

 そんな恐ろしいこと、私にできるわけないでしょう! とのこと。

 父様や母様もまず無理。

 ミホノに至ってはそもそも魔祓刃を開発できる年齢ではない。

 覚醒した? どうなのだろう。

 完全に謎だ。

 この調査を母様から強く命じられ、また俺自身神格関連ではなく、地力を強くすることを意識しなくてはならないと感じたので、ひとまずは魔祓刃の修行と開発に勤しむものとする。

 

 とにもかくにも、魔祓刃とは非常に優秀な異能だ。

 拡張性が高く、さまざまな異能を開発できる。

 特に素晴らしいのは、本人の使い方次第で同じ魔祓刃でも全く異なる効果をもたらすことができる点だ。

 そもそも魔祓刃とは、マナを行使して自身の思い描いた現象を現実に創造する力だ。

 それは例えば光弾のように光のエネルギーを生み出すものだったり、解郷のように見知らぬ場所に視界をつなげる能力だったりする。

 中には兄様のように、完全オリジナルの魔祓刃を作成する天才もおり、様々な魔祓刃とその活用方法を楽しむのも漫画の面白いところの一つだった。

 

 魔祓刃の習得方法は二つ。

 一つは、教本などを読んで過去に開発された汎用魔祓刃を習得すること。

 俺の光弾も解郷も、これによって習得したものだ。

 そしてもう一つが、マナを使用している最中に強い意思によって魔祓刃を覚醒させること。

 異能モノによくある、土壇場の覚醒によって生まれるのがこの魔祓刃だ。

 汎用の魔祓刃と違って、基本完全オリジナルの魔祓刃となるので、これには本人の性格が強く反映される。

 もしくは、過去に習得の練習をしたことのある魔祓刃を、土壇場で身につける感じだな。

 何にしても、前者には修練による反復が必要で、後者には窮地に陥った時の強い意思が必要になる。

 中には兄様のように、気づいたら固有の魔祓刃を使えるようになっているものもいるが、それは本当に一握りの天才だけだ。

 

 さて、なんでこんな話をするかというと、実は俺は3つ目の魔祓刃を習得していた。

 方法は修練による習得――ではなく、覚醒である。

 つまり、あの時悪路王と対峙した時に俺は、第三の魔祓刃を習得していたのである――!

 

 と、いうこともなく。

 そもそもあの時は、完全に神格ぱうあでなんとかするつもりだったから、魔祓刃の覚醒は考えてなかったしね。

 俺が能力を覚醒させたのは……なんというか、その。

 まほろば学園の教材が原因である。

 特に、学園で異能を習得するときに使用する、マナ杖と呼ばれる杖。

 これを使うと、マナの操作が楽になり、鍛錬を助けるというものなのだが――原作では結構活用されたアイテムなのだ。

 ようするに、印象に残る原作アイテム!

 正直、最初に届いた時めちゃくちゃ興奮しましたよね。

 それはもう、舐めるように観察し、一日中興奮気味に鑑賞し、あまつさえ実際に舐めてみたりした。

 ()()()そんなことを続けていたのである。

 いやだって、本当に手に入って嬉しかったんだもの。

 思わず興奮のあまり杖を抱きまくらにしてしまったりしたし、ハリポタの魔法を唱えて遊んでるところを母様に見られたりもした。

 そんなふうに杖を一日中振り回していると――なんか、杖を持っていないのに杖を持っているようになってしまったのだ。

 

 これ、魔祓刃です。

 

 残念ながら固有のものではなく、汎用魔祓刃だが。

 名前は「具現化」。

 自分が強く親しみを覚えているもの、慣れ親しんだものをマナで生み出すことのできる異能。

 一般的には、これを用いて武器を即座に出現させる使い方が普通。

 マナ杖も武器の一種ではあるので、それ自体は間違ってないんだけど。

 なんというか、習得法がなぁ……どう考えても具現化としか言いようがない習得方法がなぁ……

 

 

・■月■日

 まぁ、習得してしまったものは仕方がない。

 そもそも具現化は、俺もいつかは習得しようと思っていた魔祓刃の一つだ。

 開発可能数だけは水準以上の俺は、汎用魔祓刃を色々とつまみ食いしようと考えていた。

 理由は、それらをシナジーさせて独自の能力にするため。

 

 異質濃度が低く、開発できる異能の効果が微妙なら、組み合わせてしまえばいいのだ。

 これに関しては、光弾を習得した時からずっと考えていたことである。

 俺が強くなるための方法は二つ、汎用の異能を習熟し、固有と遜色ないレベルまで磨き上げる。

 そしてもう一つが、それらを組み合わせて固有の魔祓刃並の効果を得ること。

 たとえば解郷を利用した偵察と、光弾を組み合わせて見えないところから狙撃したりとか。

 使い方は無限大、楽しみだって無限大。

 魔祓刃たんのしいいいいいい!

 

 ただ、これには一つ問題がある。

 ――威力だ。

 俺はとにかくマナに関わる才能――マナ総量と瞬間放出量が足りていない。

 修行を始めてから数年、生死の境を彷徨っていた間を除いても、マナ総量は全然増えていないのだ。

 悪路王に、目くらましだけならできたけど、それによって生んだ隙を突く攻撃が全く効いていなかったのを、俺はまだ忘れていない。

 兎にも角にも、威力、威力、威力が足りないのだ。

 これを補うにはやはり生ける炎しかないが、アレはリスクが大きすぎる上に過剰火力だ。

 なので、今はとにかくマナを増やすしかない。

 

 そこでこの具現化は非常に役に立つ。

 特に、最初に具現化できるようになったのがマナ杖だったのは結果からいえば僥倖だった。

 まず具現化は生み出したものを維持するだけでもマナを消費し、マナは消費すればするほど成長につながる。

 そこに加えて生み出すのがマナの操作と成長を助けるマナ杖だから、このマナ杖を振るって光弾を放つだけでも訓練の効率が二倍になるというわけだ。

 

 これ、実は原作でも使われていない鍛錬法である。

 おそらく、具現化が汎用になった歴史が浅いからだろう。

 マナ杖自体は古くからあるが、具現化が汎用になったのはここ最近だ。

 なので、しばらく時代が下れば誰かしらが思いついているだろうけど、この世界だとたまたまそれが俺だったという話。

 もしかしたら続編とか、番外編とかで誰かが思いついてるかもしれないな。

 

 さて、他の人間ならこの二つを同時に使用するだけでも十分に鍛錬になるのだが、俺はそうはいかない。

 ここから更に、効率をあげなくてはいけないのだ。

 そして効率を上げるという点において、おそらくあらゆる汎用魔祓刃の中で特に有効な魔祓刃がある。

 ――解郷だ。

 解郷は二重使用が可能。

 ならば、当然ながら三重使用、四重使用だってできるはず。

 

 多重使用の回数を増やせば増やすほど、マナ総量は多く必要になるし、マナの瞬間放出量も上がっていく。

 これをマナ杖で補助しながら行っていくのである。

 なんとも効率的ではないか。

 そう思いながら、俺は解郷を使用。

 まず最初にまほろばを見て、次に現実。

 ここで映すのは、俺のいる場所だ。

 ちょうど、解郷を使用している俺を正面から映す感じになる。

 それにしてもまだ八歳だからいいけど、眼帯つけてるのは厨二一直線だなぁ。

 そして三回目、まほろばを視る。

 ここまでは、すでに俺が問題なく制御できるようになっている解郷だ。

 

 問題はここから、四重以降の解郷は俺にとって未知数。

 果たして、予定通りに解郷を使うことができるのか。

 そう思って、解郷と叫び新たに現実へ視界をつなげたのだが――

 

 

 映ったのは、祭壇の前で祈祷するミホノちゃんだった。

 

 

 無論、その光景を視るつもりで俺は視界をつなげていない。

 また俺の前に視界が戻ってくるようにするつもりだったのだ。

 つまり、制御ができていないという証拠である。

 とりあえず、そのまま五重の解郷を使用すると――

 

 ――原作で七大魔人が集っていた魔城ガッデムみたいな城を見た。

 

 え、マジであのクソださいデザインの城だ!?

 うお、本物かよやっべぇ! すげー、原作どおりだ!

 というかここどこだよ、ここがどこかわかったら魔祓師的には大手柄だぞ!?

 ……だめだわからん、完全にどこ映してるんだかわからなくなってる。

 解郷の制御は難しいな。

 とはいえ、もう一回なら問題なく使えるはずだ。

 ならば使っても問題はないだろう。

 そう思って更に解郷を使うと――

 

 

 何故か、入浴中の兄様を見てしまった。

 

 

 ええ……いややろうと思えば覗きに使えるだろうとは思ってたけど。

 なんで選りにも選って兄様なんだよ!?

 一部のお姉様方が喜びそうだけどさ!

 というか、兄様ってば天才すぎて誰かが解郷で見てることに無自覚に気づいてるな!?

 いや「きゃー!」じゃないんだよ兄様!!

 えっち! じゃないんだよ!!!

 

・■月■日

 

 とりあえず、あれから解郷の制御やら、それを用いての狙撃やらの練習をしつつ。

 マナ杖をつかってそれを補助する形で俺はマナを成長させた。

 マナはとにかく使えば使うほど成長するので、常に限界まで使いつつ、効率よく魔祓刃の制御を練習する必要がある。

 解郷のあの視界を作る先が制御できない現象とか、使い道多そうだしな。

 とにかく、今日も今日とてできることはすべてやるのだ。

 と、思っていたら父様から呼び出された。

 

 俺が死にかけてから数年、父様は良くも悪くも変わっていない。

 なんというか、俺がやらかす前から俺を息子として愛していたからだろう。

 父として、ビビるよりも息子を愛する気持ちの方が先にでるらしい。

 そういうところが美点なのよ、と母様は言っていた。

 母様がいれば、そういう美点がちゃんと前に出てくるのが父様なんだろう。

 まぁ、流石に改心した兄様とはなかなかいい感じに向き合うことができていないようだが。

 それはそれとして、今日は一体何の用事なのだろう。

 

 

 …………え、ミホノとの婚約が決まった?

 

 

 ……………………え!?




これ結果的に敵組織の本拠点から兄様の風呂を覗き見してることになるんだよな……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。