推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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前回のサトリですが、倒されたのはあくまで切り離された分体みたいなやつです。
本体は生きてます。
なお今回の話のボスです。


十三 私が一番すごいと思う人

 私、瀬戸場ミホノが一番すごいと思う人、それはセオ様です。

 セオ様はとっても物知りで、とても大人っぽくて、そして強い魔人を倒せるくらいすごいんです。

 すっごくすっごくすっごくすごいんです。

 私はそんなセオ様のこんやくしゃ? になったみたいです。

 いへへ、なんだかすてきな言葉な気がしますっ!

 

 セオ様はツヨイアクロオー? っていう強い魔人を倒してから、その反動で暫くの間すやすやしてました。

 その間、私はすっごくすっごくすっごく心配で、心配で、心配で。

 気がついたら、セオ様にお祈りを捧げるさいだん? っていうのを作ってました。

 ぐあーって祈ったら、いつの間にかできてたんです。

 どうしてできたのかはわからないけど、これでセオ様にセオ様が元気になるよう祈れますね。

 だってセオ様は世界で一番すごいんですから、きっと神様よりすごいです。

 お祈りは神様にするものらしいですから、ミホノがお祈りするのはセオ様以外にありえません。

 

 そうしてお祈りをしていたのが、セオ様に届いたのでしょうか。

 ついに、セオ様は眼を覚ましました。

 目を覚ましたセオ様は、なんだか以前より更に少しかっこよくなっていて、すっごくすっごくほわほわしました。

 ほわほわです、ほわほわなんです? なんでほわほわするのかはわかりませんが、やっぱりセオ様はすごいです。

 

 ほわほわは、すっごくミホノを幸せにしてくれます。

 セオ様にお祈りをしている時。

 セオ様といっしょにいる時。

 セオ様の持ち物をクンクンしてる時。

 セオ様のさいだんがぐわーんとなった時。

 セオ様にさいだんを片付けてもらってる時。

 セオ様におはなをこしょこしょしてもらってる時。

 いろんなときにほわほわします。

 

 ――セオ様って、本当にすごい人なんです。いっつも難しいこと考えていて、他の人には思いつかないようなすっごいことを思いつきます。そのせいで怒られていることもありますが、怒られちゃうくらいすごいことを考えられるからすごいです。ミホノといっしょにいる時、ミホノをいっつも笑顔にしてくれます。私はセオ様が側にいるだけでほわほわしてきて、いへへって笑顔になっちゃうんです。そうしてるといへへがうへへになってきて、ほわほわがとろとろになってきて、んへへがぐへへでにへへなんです。じゅるじゅるしちゃう感じがします。ミホノはもっともっとセオ様にほわほわにしてもらいたいです。セオ様の匂いとか、セオ様のぬくもりとか、セオ様の笑顔とか、セオ様の味とかでほわほわほわほわしていきたいです。

 ――だから、セオ様がミホノ以外といっしょにいると、すっごくいがいがしちゃいます。喉の奥と、胸の奥と、お腹の奥がいがいがで、うがーってなっちゃうんです。この世にセオ様以外の人がいなければ、このいがいがを私は感じなくてもいいのでしょうか。きっとその方が素敵だと思います。セオ様がずっとずっとそばにいてくれれば、ミホノはいつもいつもほわほわできます。だからセオ様以外のすべての人をいがいがして、いがいがして、いがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしていがいがしたほうが、きっとミホノは幸せなのです。

 

 でも、そうはしません。

 ミホノは誰もいがいがしないのです。

 だってセオ様が言っていました。

 世界中の人をいがいがするってことは、私の大好きなテレビの中の女の子や、かわいーぬいぐるみもいがいがしなきゃいけないってことです。

 お母様やお父様もいがいがしなきゃいけないってことです。

 そんなのやです。

 それに、セオ様だって悲しみます。

 私だけが幸せになっても、セオ様は幸せになってくれません。

 だったらミホノは、セオ様の幸せのほうが大事です。

 なのでこれからも、私はセオ様といっしょにえいえいおーと、がんばっていこうと思います。

 

 

 ◇

 

 

「というわけで、ミホノの魔祓刃……えーと」

「セオ様くーかん、です!」

「……招来空間とでもしようか。これを使って、色々やってみようと思う」

「せおらいくーかん! いへへ!」

 

 その日、ミホノはセオと共に魔祓刃の訓練をするべくセオの修練場にやってきていた。

 ここはセオが昔から使っている修練場なので、検証に必要な道具が色々と揃っているのだ。

 

「まず、ミホノの魔祓刃はミホノが好ましいと思うものを具現化できる能力だ。俺の私物とか、好きな魔法少女のグッズとかな」

「あのうねうねーっとしたの、なんだったんでしょ」

「あ、あれは……うん、たまたま紛れ込んでたんだと思うよ。俺が掃除をした時に紛れ込んじゃったのかな」

「おおー」

 

 ――セオは、ミホノに宇宙の神格にまつわるあれこれを知られてはいけないと考えている。

 そのため、あの触手をなんとか誤魔化そうと必死だ。

 手遅れかもしれないが、ミホノが疑問に思っているうちはごまかす心づもりである。

 

「というわけで、色々と魔祓師の武器を用意してみた」

「おおー」

 

 セオが用意したのは、魔祓師が普段使用している武器の類だ。

 刀、鎌、モーニングスター、チャクラム、槌、拳銃などなど、様々な武器がある。

 ゲテモノがおおいのは、セオの趣味なので気にしてはいけない。

 

「これを、俺のものだと思って具現化してみてくれ」

「セオ様の私物!? いいんれすか!?」

「うお! い、いいぞ。好きなだけ具現化してくれ!」

「いひひ! りょーかいです!」

 

 ちょっとだけ得意げに笑みを浮かべてから、ミホノは両手を広げた。

 基本ミホノはぶかぶかの服を着ていて、萌え袖がばさっと揺れる。

 途端、ミホノの体が光を帯びた。

 魔祓刃を使うと、マナが発光することが多い。

 そうして生み出された武器は、セオが用意したものと寸分たがわぬ形をしていた。

 

「すごいな、近接系の武器はもちろん、拳銃まで完璧に再現できてる。これを発砲できたら完璧だな」

「いへへ、すごいです? ミホノすごいです?」

「ああ、すごいぞ! じゃあミホノ、次はこの武器を振ってみてもらっていいか?」

「あい!」

 

 ミホノは、ぴょこんと飛び跳ねると、たたたっと走り寄って近くにあった刀を手にする。

 そしてそれに頬ずりをした。

 それはもう、愛おしそうに。

 

「あんまり頬ずりしてると、頬を切るぞ」

「だいじょーぶです! セオ様の武器だからだいじょーぶです!」

「そ、そうか……? いや、具現化した武器で怪我することがないってことか」

 

 ミホノは感覚で自身の魔祓刃を理解している。

 それを、セオがいい感じに読み解くのだ。

 そして頬ずりを終えたミホノは、刀を随分と堂に入った構えで構える。

 

「……ミホノって、剣の修業とかしたことあるか?」

「んい? ないです。でもなんとなく、こうするといい? って解ります」

「なるほど。じゃあ振ってみてくれ」

「あいあい!」

 

 そのままミホノは、剣の素人とは思えない動きで刀を振るう。

 どうやら、ミホノは具現化した武器の経験みたいなものを引き継げるようだ。

 これらの武器はまほろば学園から借りてきたものなので、長年の使い手たちの経験が染み付いているだろう。

 他にも面白いこととして、威力の違いもあげられた。

 セオが具現化した巻藁をミホノが刀で切ったのだが、セオの用意した武器だとイマイチうまく切れなかったのに対し、ミホノが具現化した刀はすぱっと巻藁を切ってみせたのだ。

 

「そして、ミホノは身体能力も向上している……と」

「シュババババーッ!」

「加えて言えば、俺もミホノの武器の効果を受けられるんだな」

「セオ様の武器だから、当然……ですっ!」

 

 セオは、ミホノが具現化した武器を握って、ミホノと二人でシュババババをした。

 普段以上の速度を出せて、セオも少しだけ楽しそうである。

 ミホノも普段以上にほわほわした。

 

「最後にそうだな……その拳銃で巻藁を撃ってみてもらえるか?」

「おまかせ!」

 

 セオの要望に応えて、ミホノは拳銃を手に取る。

 そのまま先程以上にスムーズな手つきで拳銃を構えると――

 

 発砲。

 

 直後。

 

 

 弾丸が的にしていた巻藁を貫通、そしてセオの修練場の壁までも吹き飛ばした。

 

 

「……」

「ヒューッ!」

 

 おもわず、セオも口をあんぐりと開けてしまう。

 え、何この威力。

 対するミホノは、どこか満足げである。

 その姿はさながら歴戦のガンマン。

 そこでセオは気付いた。

 

 ミホノの具現化によるパワーアップは、本人のイメージが影響するのだ。

 魔祓刃が、使用者の想像で効果を変えるように。

 そういえば、祭壇にもおもちゃの銃があったなぁ、いや、ミホノって普段何のアニメとか見てるんだ……とか思うセオである。

 

「じゃあ次に……個人的にはこれの方が本命なんだけど」

「あう? なんですか?」

「――――俺のマナを具現化してみてくれ」

「…………………?」

 

 セオの言葉を、ミホノは理解できなかった。

 宇宙ミホノみたいになってしまったのだ。

 この世界で宇宙ミホノはまずいけど、なってしまったものは仕方ない。

 

「いや、ミホノは俺の髪とかを具現化できるんだろ? だったらマナだって具現化できるはずじゃないか?」

「え、えとえと……や、やってみますね」

 

 困惑しながらも、ミホノはセオのマナをイメージして招来空間を起動する。

 すると――

 

「う、おおお……マナが……引っ張られていく!」

「ほ、ほわわ!? ほわわーっ!?」

 

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 セオは少しだけ、マナを奪われる苦しさに顔を歪め、ミホノは八歳の少女がしてはいけないタイプの顔をしていた。

 

「やっぱり、マナによる具現化はマナを具現化することができない。その場合、具現化しようとした人間のマナを具現化を使用した人間が吸い取ることになる」

「ふぇあ?」

 

 ふらふらと、酩酊状態のミホノはセオの言っていることが理解できていない。

 もとから半分くらいは理解できていなかったが、今は輪をかけて意味不明だ。

 だが、次の瞬間。

 ミホノの意識は完全に覚醒することとなる。

 なぜなら――

 

 

「俺の(マナ)がミホノの中に入ったんだ」

 

 

 セオがとんでもないことを言い出したからだ。

 正確には、ミホノの中に入ったセオのマナを使用してミホノが招来空間で具現化を行うと、ミホノとセオ、2人分の混ざりあったマナを消費する。

 なので、成長効率が二倍になるという話なのだが。

 

「ほわわーーーーーーっ!?」

「ミホノーーーーーーっ!?」

 

 セオの言動があれだったことで、ミホノは覚醒した直後に混乱によって気絶するのだった。

 

 なお、セオがミホノの銃で(弾を)出すと、ミホノほど勢いがなくてセオは凹んだ。

 

 

 ◇

 

 

 ミホノは知っています。

 セオ様が宇宙から力を借りているということを。

 セオ様が隠そうとしているので、必死に気づかないようにしています。

 でも、ミホノはあの日、セオ様に宿った炎を知っています。

 セオ様の目が、煌々と赤く輝いていることを知っています。

 それはとても綺麗な炎で、すごくすごくすっごくセオ様にぴったりでした。

 

 セオ様は世界で一番すごい人です。

 今はまだすごくなくっても、きっといつかすごくなります。

 それを私は知っています。

 だからミホノは思っています。

 セオ様は世界で一番すごくなくっちゃいけないんです。

 だから、セオ様以外にすごいものはいりません。

 魔人みたいに、セオ様の邪魔をする敵はいりません。

 

 

 宇宙に浮かぶ神様たちも、いりません。

 

 

 そのためなら私は、どんなことだって、なんだってします。

 今はまだ、セオ様が本気で神様を邪魔だって思ってないから、ミホノは祈ることしかできませんけど。

 セオ様はきっと、あんな神様よりもすごくなります。

 そうなるように、ミホノはずっとずっと祈っています。

 ずっとずっとずーーーーーっと、祈って、祈って、祈っています。




個人的には内心ドロドロしてるけど、普段は押し殺しててふとした時に漏れちゃって、漏れた結果が周囲を害するんじゃなく、漏らしちゃったことを愛する人に泣きながら謝る感じの塩梅が好みです。

お気に入り9000件行きました。
多くの方に読んでいただき大変嬉しいです。
これからも応援していただけると助かります!
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