推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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二 オリジナル異能はオタクのロマン

 『魔祓師フウマ』。

 日本を代表する週刊少年誌にて連載されていた、大人気少年漫画。

 故郷を魔人によって滅ぼされたものの、その記憶を失っていた少年が魔人の存在を再び知り、様々な事情から魔祓師となって魔人との戦いに身を投じる物語。

 

 週刊誌で連載されているとは思えない巧みな画力とそこから繰り出されるど迫力のバトル展開。

 拡張性が高く、思わずオリジナル異能を考えたくなる異能、「魔祓刃」。

 そして何より、魅力的なキャラクターの織りなす物語が多くの読者を魅了していた。

 

 俺もまた、その物語に魅了された一人だ。

 ちょうど中学時代に原作の連載が始まったことで、中二心は完全に魔祓刃に鷲摑みされた。

 その後の青春を原作の連載とともに過ごしたのが、俺という人間の前世である。

 だから、原作にはかなり詳しいつもりだ。

 当時は学生だったから金がなく、入手の難しい資料に載っている情報までは網羅していないものの、原作、アニメ、劇場版、ゲーム、そういった比較的手に入りやすいコンテンツはほぼほぼ履修したといえる。

 

 そんな世界に転生したとき、最初はかなり喜んだ。

 なにせ憧れだった魔祓刃を自分の手で作ることができるのだ。

 推しだった原作キャラにも会ってみたいという気持ちもあった。

 何より、原作のラストはかなり明るいハッピーエンドだったから、その印象が強く俺は色々と楽観していたのだ。

 まぁそれも、俺の転生したのが百鬼家――原作における大ボスの一人、百鬼ルトが生まれた家だと判明したときに吹っ飛んだが。

 

 そもそも原作がハッピーエンドだったのは、いろんな地獄やきつい展開を乗り越えた末のことだ。

 特に、物語が始まる前に起こった大きな戦い――通称”大崩壊”をどう生き残るのか、というのは、今も俺の頭を悩ませている。

 自分自身の才能が乏しかったのも、頭を悩ませる原因だ。

 残念ながら俺には、転生者特有のチートみたいなものはなかった。

 肝心要の原作知識も、続編などの存在から確実ではないと来ている。

 本当、どうしたものだろうなぁ。

 特に父様。

 悲しい過去で歪んだタイプだと思ってなかったです、ごめんなさい。

 とはいえ、そんなこととは関係無しに楽しみなこともある。

 ――そう、オタクの夢。オリジナル異能――魔祓刃の開発だ。

 

 

 ◇

 

 

 父様に修行が見つかってから、数カ月が経過した。

 あれから、結局父様は俺の修行を止めることはなかった。

 父様自身が、才能の無さによる嫉妬と焦りをよく理解しているからだろう。

 ただ、絶対に母様に見つからないように、と念を押された。

 母様は父様や兄様と違って心底まともな感性をしているので、俺が無茶をしていたら絶対に止める。

 人としてはそれが正しいのだが、未来を知っている俺や、才能の壁を知っている父のような人間からすると死活問題である。

 

 なので、父と協力して屋敷の外に秘密の修行場を作ったりして、俺はそこで修行を繰り返した。

 父も、魔祓師の修行ノウハウを俺に教えてくれて、俺の修行効率はさらに上がったと言える。

 一応、だいたいは概要を原作でも語られていたので俺も知っていたのだが、詳しい理論などは曖昧なままだったのだ。

 それを五歳の息子に教えるという大人というのもどうかと思う。

 しかし父は俺を兄様のように普通の子供ではないと思っているようなので、問題はないのだ。

 いややっぱ父様はそこまで立派な父親じゃないな……?

 まぁ、俺にとっては良き父である。

 俺に構っている限り、兄様に対する嫉妬もそこまで向けないようなのだ。

 だから誰にとってもウィンウィンだし問題ないってことで。

 

 ――さて、あれから数カ月が経ち、ようやく俺の中で魔祓刃を習得できる基準に自分が到達した。

 実際に修行を始めたのは四歳の頃からなので、苦節一年半。

 原作だと主人公が同じ修行により一ヶ月でその域に達していたことを考えると、やはり才能の無さを感じるな。

 そんなことはともかく、俺はまず魔祓刃を開発する前に行う儀式――心魔の儀を執り行うことにした。

 

 自力で。

 

 本来ならこの年齢の子どもが心魔の儀を行うと最悪、マナに異常が発生してしまう。

 けど、そんなこと()()()()()か。

 既にマナはある程度鍛えた、もう我慢ならない。

 俺は『魔祓師フウマ』オタクとして自分の才能がどれくらいのものか、今すぐにでも知りたいいいいい!

 ……結果として、俺はわなわなと震えていた。

 想像はしていたが、やはり実際に突きつけられるときついものがある。

 それが何かといえば――

 

 

「――ない。才能が、ない!」

 

 

 俺の魔祓師としての才能だった。

 解ってはいたことだが、改めて確認した自分の才能の無さに、俺は愕然としていたのだ。

 

「マナ総量と瞬間放出量がミソッカスすぎる……」

 

 マナが最大量も一度に使用できる量も極端に少なかった。

 心魔の儀で確認できる能力はいくつかあるが、その中でもマナ総量と瞬間放出量は重要だ。

 魔祓刃をどれだけ使えるかという、魔祓師の根底に関わる部分。

 それが足りないということは、俺は絶望的なまでに才能が足りていないということ。

 

 やはり転生した俺――百鬼セオに才能がない。

 もともと、俺が生まれた百鬼家は魔祓師としては斜陽の立場であり、()()()()()()()()()を除いてここ数世代の百鬼家の人間はだいたいが魔祓師としては才能に乏しい傾向にあった。

 その例にもれず、残念ながら俺にも才能がなかったのだ。

 とはいえ、無いものはしょうがない。

 気持ちを切り替えて、他の項目を見ていくことにする。

 

「操作練度は……まぁ見る必要もないか」

 

 操作練度は、マナをどれだけうまく扱えるか。

 鍛錬でいくらでも伸びる部分だし、誰だって最初は最低値だ。

 ここを気にする必要はない。

 問題は――

 

「……え、い、異質濃度が……平均以下?」

 

 ――俺が唯一当てにしていた項目まで、大したことのない数字だったということ。

 異質濃度とは、どれだけ特殊な魔祓刃を開発できるか、を示す数値。

 これが高ければ高いほど、個性的な魔祓刃を習得でき、オリジナルの魔祓刃を習得するならここが一定以上であることが必須だ。

 そして俺は、自分ならここが高いのではないかと考えていた。

 なぜなら俺は転生者だからだ。

 まず、死んで別の人生を送っている時点で俺は異質の塊だ。

 であれば、異質濃度は高いに違いない、とそうかんがえていた。

 

 マナ総量などは低くても伸ばすことができる。

 しかし異質濃度は生まれつきその数値が決まっていて、動かない。

 だからこそ、俺はこの異質濃度の高さを当てにしていたのだ。

 そしてそれがムリだと解った。

 だったら、どうすればいい?

 俺はこれから、どうやって魔祓刃を習得したら――

 

「……なんだ、開発可能数が水準以上じゃないか」

 

 ふと、そのとき。

 俺は最後の項目に視線を向ける。

 開発可能数。

 文字通り、一度にいくつかの魔祓刃を習得できるかを示す数値。

 ここだけは、他の数値よりずば抜けて……とは言わないけれど、高かった。

 平凡な人間の、水準以上の高さ。

 でも、それだけアレば俺にとっては十分である。

 なら、まだなんとかなる。

 俺の魔祓師人生は、まだ終わっていない……!

 俺は早速修行場に移設した修行道具――糸とクナイを用意して、クナイを糸に向けて構える。

 

 魔祓刃の習得方法。

 原作でも様々な方法が提示され、この世界の教本にも色々と方法が提示されている。

 よりどりみどりな方法の中で、俺が選んだ方法は――そのどれでもなかった。

 ヒントは、魔祓刃――特に完全オリジナルのもの――は本人の精神性に能力が由来すること。

 すなわち、感情や意思が魔祓刃の覚醒には大きく影響する。

 土壇場に能力を覚醒するという、少年漫画のお約束に乗っ取ったシーンを再現するために、そういう設定になっているのだ。

 ならば、効率的に魔祓刃を覚醒するにはどうするか――俺の答えが、これだ。

 

「――発射」

 

 俺はクナイを糸に向けて構え、マナを発射する。すると糸はマナを反射し――

 

「ぐっ!」

 

 ()()()()。続けて俺はさらにマナを放ち――連続で自分の腹部にそれを当てていく。

 そう、強い感情でもって魔祓刃が覚醒するなら、強い感情を外部要因で発生させれば良い。

 

 

 ――痛みという、人ならば抗えない感覚を震わせて。

 

 

「次!」

 

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、マナをぶつけていく。

 こうすることで、痛みが俺の体を襲い、その度に生存本能でマナが活性化するのを感じる。

 マナを常に消費できるというのも、鍛錬になって都合が良かった。

 さらにいいのは、これが単なる打撃という点だ。

 切り傷とかにして、人目につく場所を怪我するとバレてしまう。

 父様にバレるのはまだいいとして、母様にバレたら大目玉だ。

 

 そんな事を考えながら俺は魔祓刃習得に向けて、だんだんと気持ちを高ぶらせていく。

 ああ、もうすぐ俺も原作で戦っていた魔祓師のように、魔祓刃を使うことができるのだ。

 そう考えると――自然と笑みが零れてしまう。

 

「ふふ、ははは、ははははははは!」

 

 かくして修行が周囲に聞こえないよう防音がしっかりと施された修行場に、俺の笑みと、マナが俺の体を叩く音が低くこだまするのだった。

 




作りたい、オリジナル異能を作りたい。
いいですよね。オリ異能。
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