推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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二十一 学園には機材がいっぱい

 まほろば学園。

 魔祓師達が集まるこの学園は、魔祓刃研究の最先端を行く場所でもある。

 学生の中には大人顔負けの魔祓刃研究を行う研究者もいるし、何より最先端の機材が揃ってるのだ。

 俺が魔祓寮から送ってもらったのは、基本的にお下がりの機材だった。

 

 だからこそ、俺はずっとまほろば学園に憧れていたのだ。

 ここには無数の最新機材があり、申請を出せば借り受けることも可能。

 申請が通るかは本人の実績とかが加味されるけれど、俺は特級だし入学前から機材を借り受けていたから問題なし。

 つまり最新機材を使い放題というわけだ。

 

「――というわけで、今日は試したかった実験をようやく試せるぞ!」

「おー!」

 

 その日、俺はまほろば学園の空き教室で、借り受けた最新機材を手に高らかに宣言していた。

 正直、普段の目じゃないくらいテンションが上っている。

 なにせ本当に機材の性能がすごいのだ。

 会社で使ってた起動してからブラウザを開くのに五分くらいかかるパソコンから、突然グラボ搭載のつよつよゲーミングPCにスペックがアップしたようなものだからな。

 

「ついに……ついにこの時が来たぞ!」

「ふーふー!」

 

 そういえば、さっきから変な合いの手を入れているのは奈留島だ。

 俺がテンションバクアゲで機材を抱えて空き教室に向かっている時。

 突如として現れて、俺の研究を見学したいと言い出したのだ。

 まぁ、這い寄るアレの化身なら当然と言えば当然だろう。

 

「まず最初の実験は、この魔翼機(まよくき)を使っての飛行実験だ」

「まよくきってなんですかー?」

「魔翼機は、マナを使って空を飛ぶ機械だ。今だと普通に飛行機に乗って移動することも多いが、昔はこれで空を飛ぶのが主流だったんだ」

 

 魔翼機、原作にも登場する移動アイテムで、中にはこれを使って戦闘までこなす奴もいる。

 見た目は一言で言えば、紙でできた鳥の模型。

 これにマナを通すことで、人が乗れるサイズまで模型が巨大化するのである。

 ただ、今回はあくまで実験なので、模型を巨大化することはしない。

 

「じゃあその魔翼機を飛ばす実験をするわけだ。空を飛ぶことが夢だったのかなー?」

「いや、魔翼機に俺が具現化で作った機材を取り付けてみようと思ってな」

「わお! 道具を使って遊ぶんだ。やらしー!」

 

 さっきからこいつは何かしら変な煽りを入れないといけない縛りでもしてるんだろうか。

 ともあれ、俺は早速魔翼機にあるアイテムを取り付ける。

 

「で、何を取り付けてるの?」

「外付けエンジンだな。魔翼機って速度が遅いんだよ。大人数を移動させるってなると、飛行機を使ったほうが効率的なくらいに」

 

 飛行機なら数時間で外国まで行けるけど、魔翼機での移動はこの国の端から端まで移動するのに数日かかる。

 例外は、原作で魔翼機を使ってたキャラの魔翼機。

 その原作キャラは魔翼機に外付けエンジンを搭載することで、異常とも言える速度を獲得していた。

 俺は諸般の事情からそれを再現しようとしているのだ。

 これに関しては、学園に入学する前から少しずつ準備をしていたのだが、ある理由で中途半端に止まっていた。

 それが今回、学園に入学したことでようやく実験を再開できるようになったのだ。

 

「……よし、取り付け完了。さぁ、早速テストするぞー」

「おおー! ちなみに、そもそもどうして実験が頓挫してたわけ?」

「ああ、それは――」

 

 俺は、ゆっくりと魔翼機にマナを通していく。

 これによって、魔翼機は事前にこちらが入力しておいた指示通りに教室の中を飛び回るわけだ。

 

 

「――俺の作ったエンジンに機体が耐えられなくて爆散してな」

 

 

 ()()()()

 直後、魔翼機に手をかざしていた俺と、ニコニコと笑顔を浮かべていた奈留島の周囲をとんでもない勢いで魔翼機が飛び回った。

 音を切り裂いて、魔翼機の残像だけが視界に入る。

 

「……マナで身体を強化しないと、なかなか魔翼機を視線で追えないな」

「――――」

 

 俺がなんとか飛び回る魔翼機を目で追いかけていると、何やら奈留島が笑顔のまま停止していることに気がつく。

 そして、そんな奈留島が不意にポツリと――

 

「――――死」

 

 一言、零した。

 直後。

 

「――死! これ、直撃したら! 死!」

「安心しろ、直撃しないように命令を送ってある。だから見ろ、こんな狭い教室内を飛び回っても何も破壊してないだろ?」

 

 どうやらあまりにも速度が速すぎて、びっくりしてしまったらしい。 

 そんなんで驚いててどうする、仮にもアレの化身だろ君。

 

「と、止めて! マジで心臓に悪いから! 止めて!」

「そんなにビビることないだろ……最上級魔人との戦闘は、下手すると普通に音速超えるぞ?」

「こんなところでそんな死線くぐりたくないよっ!」

 

 仕方ないので、魔翼機に停止の指令を送る。

 すると、しっかり俺の手元まで戻ってきて停止した。

 うむ、最新の魔翼機は耐久性も操作精度も段違いだ。

 

「はぁ、はぁ……そ、それでー☆ こんなすっごい速度、どうやって出してるのー?」

 

 あ、色々と取り繕い始めた。

 

「誤魔化されんぞ」

「きっとぉ、すっごい技術がぁ、つかわれてるんだよねー?」

「おっと、それを聞かれたら答えないわけにはいかないな」

「チョロ……」

 

 なんか言ったか?

 いやー、すっかりごまかされてしまったなぁ。

 なんて思いながら、魔翼機を一度バラして外付けエンジンを取り出す。

 エンジンは丸い玉みたいになっていて、ここにマナを通すと魔翼機が凄まじい加速を得るのだ。

 原作の改造魔翼機を参考に、自分で再現してみたものである。

 

「この中身の機構を頑張ったんだよ」

「へー、どんな感じ?」

「ほら」

 

 玉は、中を開けてみることができるようになっている。

 なんで見せられるようになっているかというと、見せたかったからだ。

 中にはびっしりと、精密機械が散りばめられている。

 俺の自慢の傑作だ。

 

「…………えっと」

「どうしたんだ?」

「………………これ、全部具現化で作ったの?」

「そうだが?」

 

 無論、ここまでの精密な具現化、そう簡単にはできない。

 実際、これを作る時は丸一日具現化と格闘していたからな。

 いやぁ、大変だった。

 

「……一日、これをたった一日……」

「何か言ったか?」

「ううーん、なんでもなーい。あはっ☆」

 

 よくわからんが、なんでもないなら良かった。

 とにかく、これで1つ目の実験はおしまいだ。

 一旦魔翼機を脇にどけて、俺は一本のナイフを取り出した。

 

「というわけで、次はこの実験だ」

「次のキチ……とんでも実験は何かなー?」

「こいつに毒を付与したいんだよ」

「わお、物騒ー!」

 

 なんというか、奈留島は切り替えが滅茶苦茶早いみたいだ。

 ギャルだからだろうか。

 だったらしょうがないな。

 

「一般的に、普通の武器に毒を魔祓刃で付与するとなると、専用の魔祓刃が必要だ」

「ふつーに考えたら、毒を付与するより身体能力強化して戦ったほうが早いもんねー☆」

「そこで性格によって戦い方に違いが出るのが面白いんだ」

 

 そんな銃撃ったほうが早いみたいな物言いをするんじゃない。

 ほんとにアレの化身か? いや、その場その場でとりあえず逆張りしてるだけか。

 ともあれ。

 

「でも俺には、現状そういった魔祓刃は存在しない」

「開発可能数多いわりには、まだ3つしか魔祓刃開発してないんだっけー?」

 

 それどこで知ったんだよ。

 まぁ実際その通りで、俺は現状「光弾」と「解郷」と「具現化」しか習得していない。

 ただこれには理由があって、俺は次に身体強化系の魔祓刃を習得しようと思ってたんだけど。

 そこをミホノの招来空間で解決できちゃったんだよな。

 ミホノがいないと使えないって? そこもちゃんと対策済みだよ。

 ともあれ。

 

「だから――具現化で毒を具現化することにした」

「ああー、確かにあんな変態具現化ができるなら、そういう具現化もできるよねぇ」

「概念で」

「がいねんで」

 

 普通に具現化で毒を作るだけだと、現実の毒しか作ることができないのだ。

 魔祓刃の毒は、かかっただけで鉄筋を溶かすレベルの毒を用意できる。

 特に最上級以上の魔人に毒を通すには、ただの毒なんて絶対に効果がない。

 そこで俺は、毒という概念そのものを作ることにしたわけだ。

 ところで、なんか奈留島の目から光が消えたが大丈夫か?

 

「この毒を魔人に付与できればその魔人の存在そのものに毒を盛ることができるんだ。理論上、これであのぬらりひょんや酒呑童子すら討伐できる」

「やば」

「ただ、俺は残念ながら具現化で生み出した概念を他人に付与することができなくてな」

「そ、そっか」

 

 何やらホッとした様子の奈留島。

 俺は構わず続ける。

 

「――そこで、俺は自分で具現化した武器に概念毒を付与することにした」

「ああー」

 

 そして何やらまた目が死んだ。

 

「ただ、毒を付与すると具現化した武器がその毒で溶けて消えちまうんだよな」

「こわ」

「だから、より性能の良い武器を具現化することで、毒に武器を耐えられるようにしなきゃいけないんだ」

「それ、セオくんも、きけん、では?」

「ん? ああ、概念手袋をつけて細心の注意を払って扱ってるから、そうそう事故は起きないよ」

「がいねんてぶくろ」

 

 さっきから奈留島の顔の作画がだいぶデフォルメ強くなってる気がするが、本当に大丈夫なのか?

 

「それに、最上級以上の魔人には毒耐性があるんだよな。よっぽどのことがないと、どれだけ強力な毒でも付与できないで終わってしまう」

「へー」

 

 それでもまぁ、毒が通用する魔人には強力極まりない手札になる。

 なのでこうして、まほろば学園の最新武器を具現化できるようにしているわけだが――

 

「……ダメだな、また溶けた」

「うひぃー」

 

 最新の武器でも、俺の概念毒を耐えることはできないようだ。

 一番のネックは概念を一つの物体――今回で言えばナイフ――に付与する場合、一度に一つの概念しか付与できないことだ。

 この制限のせいで、概念手袋をナイフに付与した後概念毒を付与する……みたいなことができないんだよな。

 うーむ、本当にどうしたものかなぁ。

 これからのことを考えると、概念毒は使えるようになっておきたいんだが。

 とはいえ、一度に何個も実験の成果が出るなんて虫の良いことは考えないほうがいい。

 今日は魔翼機の実験が成功しただけでも、ヨシとしておくか。

 

「そういえば、すこし、きになったんだけど」

「どうした? というか、さっきから発言がカタコトだけど大丈夫か」

「だいじょうぶです」

 

 そんな、目の濁った社畜みたいなテンションで言われても。

 ともあれ、奈留島の気になることって、なんだろう。

 

「ミホノちゃんのすがたがみえないんだけど、どこにいるの?」

 

 ああ、それに関しては――

 

 

「ここですよー」

 

 

 ――奈留島の背後、ミホノの声がした。

 

「ひっ」

 

 途端、奈留島が悲鳴を上げたまま停止する。

 ミホノはずっと部屋に居たのだ。

 ただちょっと、俺の作った「隠密」の概念を付与したマントで隠れていただけで。

 

「いたずら大成功です、ぶい。いへへ」

「いたずらのために、俺と奈留島が二人で会話してても我慢してたのか……」

 

 思うんだけど、ミホノって結構我慢強いよな。

 明らかにヤンデレ行動が発生しそうな場所でも、相手に危害を加えることはしないし。

 ええこやな……

 

 後、概念付与装備は、補助効果を付与したタイプの装備は結構便利に使えそうだな。

 「切断」とかを付与した攻撃系の装備は、兄様の「色即絶空」の下位互換にしかならんから難しい。

 要検証である。

 

「――」

 

 そして、奈留島は完全に気絶していた。

 いいんだろうか、アレの化身がこんなポンコツで。

 ……まぁ、アレが楽しそうなら、いいんだろうな、うん。




やっぱリアクション役がいると実験が映えますね兄様!
ポンコツ化身ちゃんがこれからも振り回されるところがみたい方は、ぜひとも評価や感想いただけますともっともっと振り回されると思います。
よろしくお願いいたします。

PS.概念を外に出す場合、一つの物体に概念が一つしか付与できない制限をこの回でも明記しました。
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