推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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二十二 課外活動にはイベントがいっぱい

 まほろば学園に入学して半月。

 アレから空き教室で実験をしていると、何やら噂になっていたらしく。

 更に俺に対する変な視線は減少していた。

 ただ逆に、実験には必ずミホノと奈留島が同席する。

 そのせいで別の嫉妬を集めているわけだけど、ミホノはともかく奈留島は正気か?

 中身アレだぞ?

 

 ともあれ、入学式から半月が経過すると、あるイベントが発生する。

 課外活動と呼ばれるそのイベントは、一言で言えば魔祓師の仕事を体験するイベントだ。

 

「――というわけで、今から四百年以上前、乱世にあったこの国は魔祓師と魔人の間でも大きな戦争が起きていた」

 

 現在、俺達はそんな課外活動のイベントを前に、教師から始まる前の講義を受けている。

 内容は魔祓師にとってはある意味で、常識と言える内容だ。

 だからこそ、課外活動を前に振り返るべき内容でもある。

 

「そんな大きな戦争は、魔祓師達の努力によって作られた”まほろば境界”によって終結した。このまほろば境界により、強大な力を持った一部の魔人が、外部に出ることができなくなったわけだ」

 

 これは、原作における世界観の根底にある部分でもある。

 まほろば境界、強い魔人を封じるその境界のおかげで、魔祓師は平和を維持するのが非常に楽になったわけだ。

 

「そして、この境界により封印された七体の魔人を――七大魔人と呼ぶ」

 

 七大魔人。

 この世界における魔祓師の宿敵。

 今でこそまほろば境界によって隔離されているが、その一体一体がこの国を滅ぼしかねないやばい魔人だ。

 この境界は一言でいうと、まほろばと現世の間にある壁を”小さくする”境界で、七大魔人以外は境界をすり抜ける事ができる。

 結果として――

 

「現在は、境界をすり抜ける方法を編み出した白面金毛を除いて、他の七大魔人は隔離状態にあり、配下である最上級魔人達がこちらの世界で暴れている。それが今の時代の現状だ」

 

 ――そして、そんな均衡が二年後の隕石によって崩壊し、大崩壊と呼ばれる戦争が始まる。

 人類にとっても、魔人にとっても、大きな変革を余儀なくされたその戦いに備えるため。

 俺は色々と、手を打つ必要があるわけだ。

 

「そして、そんなまほろば境界の影響で、こちらの世界に迷い込みやすくなった真生生物を送還するのが今回の課外活動の目的で――」

 

 そんなことを考えながら、俺は教師の言葉に耳を傾けるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「セオ様、セオ様ー、一緒にそーかん、頑張りましょうねぇ」

「ああ。俺とミホノは特級生徒だ、周りの手本になるようにするんだぞ」

「いへへ、はーい」

 

 すりすりと頭を擦り付けてくるミホノの頭を撫でて、髪に埋もれないようにしつつ。

 俺は周囲の生徒とともに、上級生の引率を受けつつ森の中を歩いていた。

 

 送還。

 こちらの世界に迷い込んできた真生生物をまほろばに送り返す作業。

 魔祓師の現在の仕事は、この送還が大多数を占める。

 ただ、漫画だとあまり描かれることのないイベントだ。

 絵面が地味なのと、序盤以外はそれどころじゃないからな。

 なんというか、某死神漫画の魂葬みたいな趣がある。

 

「というわけで、このあたりは特に真生生物が迷い込みやすい”境界”となってるわ。それをこれから、学園の生徒である間当番制で送還していくことになるの。そのための方法を教えるから、よく見ていてね」

 

 引率をしてくれる赤髪の先輩が、チラチラと俺のことを見ながら新入生たちに話す。

 というかこの人、あの人だよな……俺がサトリ戦のときに助けた……

 あ、ミホノが威嚇するか否か思案しつつ警戒している。

 今は話の最中なのでやめようね。

 

 さて、俺達がいるのはまほろば学園の直ぐ側にある大きめの山だ。

 そもそもまほろば学園が結構田舎にあり、周囲には山が多い。

 それもこれも、この境界に迷い込む真生生物を送り返すためである。

 俺達新入生は、引率を受けながら二班に分かれて山の中を歩いていた。

 ちなみに奈留島のやつは別の班だ。

 

「……見つけた。それじゃあ送還するから見てて」

 

 真生生物には人型と動物型がいて、こちらの世界に迷い込んでくるのは大半が動物型だ。

 今回先輩が見つけたのは、二股に尾が別れたネコ、いわゆる猫又というやつ。

 こちらを少し警戒するように、一定の距離を取りながら睨んでいる。

 それを先輩は、落ち着かせるように荷物の中からマナを含んだ食事を取り出す。

 真生生物は基本的に野生動物とそう変わらない、その中でも温厚な真生生物はこうして食事などでの懐柔を図り、危険な真生生物は魔祓刃などでの捕獲を行う。

 やがて警戒していた猫又がゆっくりと食事に近づき、それを食べ始める。

 すると先輩は、懐から一本の杖を取り出した。

 

「これは送還の杖。マナを通すことで、真生生物をまほろばに送り返せるの」

 

 なんて言いながら、先輩はささっと猫又を送還してみせた。

 慣れた手つきだ。

 引率に選ばれるだけあって、優秀なのだろう。

 

「じゃあ次は、これを皆でやってみましょう」

 

 さて、次は俺達の番だ。

 俺達は先輩から送還のコツなどを教えてもらいながら、ある程度散らばって真生生物を探す。

 そもそも、ここでの問題は真生生物が見つかるか、という問題。

 なにせいくらこの山が真生生物の迷い込みやすい場所だといっても、迷い込んでくるのは一日にせいぜい数匹が限度。

 今先輩が送還して、更にもう片方の班でも別の先輩が送還しているだろうから、残っている真生生物は二体いるかどうかってところだ。

 まぁ、流石にこれだけの人数で探せばそのうち見つかるだろうけれど。

 ただ探しているだけ、ってのも芸が無い。

 

「よし、ミホノ。二人で真生生物を誘い込むか」

「あいあいー。どうするんですかー?」

「こうしよう」

 

 俺は自分の具現化と、ミホノの招来空間であるものを作り出す。

 周囲に、突如として出現する人工物。

 生徒たちがざわつく中、現れたのは――

 

 

 盆踊りのやぐらだ。

 

 

「……あの、二人は何をしているの?」

「ああ、先輩。――盆踊り、踊れますか?」

「え?」

 

 木々の隙間の少し開けた空間に、突如として出現したやぐら。

 その上には、俺が光弾で生み出した人型が立っている。

 あいつに太鼓を叩かせるのだ。

 

「セオ様、おどおどしてどうするですかー?」

「真生生物は、神聖な空気が好きってのはよく知られてるだろ? 正確に言うと、一般の人々が真生生物の喜びそうな行為を神聖なものとして扱った……ってのが正しいんだけど」

 

 マナを持たない人間は、動物型の真生生物をきちんと認識することができない。

 結果として、時折視認される真生生物は神の使いだったり、悪魔の使いだったり、信仰の対象になってきた。

 そんな真生生物は、楽しげな空気や厳かな空気が好きな傾向にある。

 だから信仰を伝えるために、祭りや儀式が発展してきた……というのがこの世界の歴史。

 なのでこういう祭り囃子が、真生生物を”集める”ために使えるのだ。

 

「そして、魔祓師の一族は、長く同じ土地に根付くから地元の名士であり、祭り何かの行事にも顔を出す必要があるから――」

「……まぁ、盆踊りくらいなら踊れるけど」

 

 先輩が、俺の言葉に同意する。

 というわけで、この場にいる人間はだいたい盆踊りが踊れる。

 踊りには地域差があるけど、盆踊りそのものに慣れているのですぐに振り付けを覚えるだろう。

 というわけで――

 

 突如として、まほろば学園側の山中に、祭りの会場が誕生した。

 

 ドンドコドンドコ。

 俺の人型光弾の奏でる太鼓の音に合わせて、生徒たちは盆踊りを踊る。

 ……なんか、半数が宇宙猫みたいな顔で踊ってるけど、まぁ踊っていることに違いはないので問題はないだろう。

 実際、効果はあったみたいだし。

 

「見ろ、ミホノ。真生生物が集まってきたぞ」

「おおー。おどおどしたかいがありましたね、セオ様!」

「脅したりオドオドしてたらダメだけどな。堂々としてよう」

「あいー。いへへ」

 

 数匹の真生生物が、盆踊りの雰囲気に引き寄せられて集まってきた。

 中には虎型の真生生物や、鷹型の真生生物もいる。

 普通に送還しようとしたら、捕まえるのに一手間かかるタイプの真生生物だ。

 

「……まさか、こんな方法で真生生物を落ち着かせるなんて……」

 

 先輩が、様になる動作で踊りながら、感心した様子でこぼす。

 いやでも、この方法楽なんすよ。

 昔から何度か地元で試してるけど、効果は絶大だ。

 今回も、成果はあったしな。

 

「それじゃあ、送還してしまおう、ミホノ」

「あいー」

 

 というわけで、盆踊りを他の生徒と先輩にまかせて俺達は真生生物に近づいていく。

 こちらを観察している彼らは、そこまで俺達を警戒していない。

 盆踊り効果は絶大だ。

 

 そして。

 彼らに対して送還の杖を使おうとしたところで――

 

 

 けたたましい音が、山中に鳴り響く。

 

 

「!? 魔人の襲撃警報!?」

 

 踊りをやめて、先輩が叫ぶ。

 同時に、音を聞いた真生生物達が驚いて辺りに散ってしまった。

 ――まずい。

 

「セオ様! まなまなさんたちがー!」

「ミホノ、周りの生徒を守れるように警戒しててくれ」

「わかりました!」

 

 びし、と敬礼をしてからミホノがぱっと飛び上がって、自分の作ったやぐらの上に立つ。

 俺の作った人型光弾が消えるのと入れ替わりに、警戒のために周囲に視線を向け始めた。

 ――魔人の襲撃警報。

 ここは真生生物が集まりやすい場所だ。

 魔人にとって、真生生物は餌である。

 それを狙って、魔人が襲撃をかけてくることはなくはない。

 けどこの山はまほろば学園が近くにあり、いくらなんでも襲撃を仕掛けるのは自殺行為だ。

 つまりこの襲撃は――

 

「……何にせよ、こういうイベントにはトラブルがつきもの、だよな」

 

 一人ごちる。

 原作でも、課外活動の際に魔人の襲撃が発生したりしていた。

 この世界でも、それが発生したと考えれば。

 まぁ、納得できないわけではないのかもしれないが。

 

 しかし、襲撃事件か。

 ……嫌な予感がするな。

 前々から警戒はしていたけれど、そろそろ”あいつ”が襲いかかってくるかもしれない。

 警戒しよう。




今回は比較的穏やかな内容でしたね(どんちゃんどんちゃん
評価感想ありがとうございます。
今後とも応援よろしくお願いします!
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