推しの少年漫画に転生した件   作:暁刀魚

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二十八 白面討伐RTA

 白面金毛。

 原作における大ボスの一体だ。

 原作においては物語の中盤、最初に戦う七大魔人として登場した。

 理由はまぁ、お察しの通り七大魔人の中では一番倒しやすい能力をしているからだろう。

 原作でも、今回俺の前に現れた時のように、突如として主人公達の前に現れ襲いかかってきた。

 それをなんとか主人公たちは激戦の末に討伐、しかし九日の呪いによって主人公のコウタロウが呪われてしまう。

 そして誰もがコウタロウの死を覚悟する中、コウタロウだけが諦めず「九日以内に討伐すればいい」と言い出す。

 師匠の楠木リズがそれに同意して、結果として「白面金毛討伐作戦」が始まった。

 実は白面金毛編の前に、まほろば学園内で内輪もめが発生していたのだが、これを解決したことにより学園が一致団結、多くの生徒が白面金毛の情報をかき集め、討伐隊が編成された。

 そして八日目の朝、白面金毛に挑むべく立ち上がったのだ。

 ――今俺達が、そうしているように。

 

 原作における白面金毛の過去は、軽く語られるに留まった。

 今から千年ほど前、とある一人の人間が口減らしによって捨てられ、まほろばに迷い込んだ。

 その後、生き延びるために真生生物を食し、魔人となる。

 以来白面金毛はまほろばから出ることなく、まほろばで真生生物を食べ続けた。

 そうして強さを得た白面金毛は今から四百年ほど前、乱世の時代に現世へと現れる。

 乱世の魔人と魔祓師の戦いでその能力を遺憾なく発揮し恐れられ、最後はまほろば境界によってまほろばに封印された。

 

 ――この封印に我慢できなかったのが、白面金毛の過去における最大の特徴だ。

 なにせ白面金毛は乱世の時代に現世へ現れるまで、ただ真生生物を食べて力を蓄え続けたのである。

 そしてようやく、最強とも言える力を手にして現世に現れたというのに、ほとんど力を振るうこともできず封印されたのだ。

 結果、我慢できなかった白面金毛は魔装『九尾之狐』を開発。

 これにより、現在まで現世で人類を苦しめてきた、というのが白面金毛の来歴。

 

 退屈を嫌うのは、まほろばで真生生物を食べ続けてきた時代の退屈が拷問のようだったからだろう。

 今のまほろば境界によって七大魔人が封印され、平穏を得た魔祓師達を大いに侮蔑しているのもそのせいだ。

 ――それしか、原作で白面金毛は語られていない。

 あくまで一つの壁、大ボスでしかないのだ。

 そんな白面金毛に、一体どのような知らない原作が存在するのか。

 俺に関心を抱く理由は何か。

 ――答えは、まだ出ていない。

 ただ間違いなく、それは白面金毛にとってとても大事なことなのだろう。

 そんな気がしていた。

 

 

 ◇

 

 

 まず、これから俺達は残る白面七体のうち、五体を倒す。

 これらはこの国の各地に散らばっていて、居場所は解郷と呪いの逆探知で特定済み。

 今現在別の場所にいても、特定した際にマナをマーキングしておいたから逃げられないぞ。

 なお、残る二体は本体と呼ばれる一番強い個体と、その個体と共に本拠点のまほろばに引きこもっている個体だ。

 

 で、この五体の元に俺とミホノと兄様をシュリ先輩の夜行招来で飛ばしてもらう。

 俺はそのうち三体を受け持つから、俺が三体を倒している間、シュリ先輩は近くで隠密マントをつけて待機。

 戦場から視認できない場所に隠れていれば見つからないので、シュリ先輩には白面金毛に見つからない位置に転移してもらって、そこから俺が白面金毛の元を目指す感じになるな。

 それにしても夜行招来は非常に便利だ。

 大人数を転移させる場合、あるいは長距離を転移させる場合にはそれなりに時間を必要とするが、ほとんどリスクの無い空間転移である。

 なお空間転移にたまにある、相手の体の中に石とか転移させるような使い方はできないらしい。

 完全移動用ではあるものの、戦闘にも便利に使えるだろう。

 

 ――何にせよ、俺は目覚めた翌日。

 ミホノ、兄様、そしてシュリ先輩は早朝から集合し。

 

「――白面金毛を、倒しに行こう」

 

 俺の身近な挨拶とともに、白面金毛の討伐を開始した。

 

 

 ◇

 

 

 ミホノと兄様はともかく、俺は少しでも早く三体の白面金毛を倒さなくてはならない。

 下手に連携されたり、対策を錬られても困るからだ。

 とはいえ、こちらから襲撃を仕掛けるまでは白面金毛はそれぞれの体を各地に散らばらせたままにしているだろう。

 理由は、一つに固まらせて魔祓師総出で殴りかかられると困るから。

 少なくとも俺が死ぬまでは、すべての白面金毛は大人しく隠れているだろう。

 ゆえにこそ、解郷と逆探知を利用して潜伏場所を割り出した俺という存在が、ここで効いてくる。

 

『――まさか、貴様の方から乗り込んでくるとはなぁ、小童』

 

 俺の前には、白面金毛がいた。

 こちらをどこか楽しげに見下ろしながら、嗤っている。

 

『あの体にまとわりつく炎、この程度の時間経過でなんとかなるものには見えないが?』

「体内にアラームをセットしてな、叩き起こされたんだよ。お陰で寝覚めは最悪だ」

『体内にアラーム? クハハ! まったく意味がわからんぞ!』

 

 その姿は、先日戦った白面金毛よりも更に巨体。

 全長十メートルはあろうかというそいつが、どことなく見覚えのある採石場に鎮座している。

 なんといっても特徴的なのは――

 

『わからん、まったくわからん! ゆえにこそ――この筋肉でもって蹂躙するのみ!』

 

 全身を覆う、莫大な量の筋肉!

 この白面金毛、筋肉ムキムキマッチョマンの変態なのだ。

 なにせ、そもそも四足歩行ではなく二足歩行である。

 こう、白い狐の体毛に覆われた分厚い筋肉が、凄まじい威圧感を誇るバケモノだった。

 

『己こそは白面金毛最強の筋肉を誇る、筋肉の白面! 言霊の白面のようにはいかんぞ!』

 

 白面金毛の九つの魂は、◯◯の白面という呼び方で区別される。

 その中でこいつは、名前からしてとびっきりIQが低い。

 そんな怪物が――

 

『くらうがいい! 我が筋肉!』

 

 猛然とこちらに突っ込んでくる!

 その速度は当然のように音速を超えていて、動き出してから対処することは困難。

 なんとか動きを先に察知して、事前に横っ飛びすることで回避が可能な代物だ。

 無論、当たれば即座に轢殺、跡形も残らず消し飛ぶことだろう。

 

「余波もやばいな……!」

『クハハハ! 筋肉! 最強! 筋肉! 最強!』

 

 余波で地面をえぐり取り、それによって吹き飛んだ岩がこちらを攻撃してくる。

 幸いなことに、筋肉の白面の突進は本当にただ突進することしかできない。

 途中で止まることも、方向転換もできないから、事前に察知できていれば回避は可能だ。

 代わりに、この余波はかなり危険。

 なんとか刀で叩き落としたりしつつ、やり過ごす。

 

「こいつでも……喰らえ!」

『無駄無駄! 当たらんわぁ!』

 

 途中、俺は()()()を投擲。

 これは狙いが甘かったこともあり、白面金毛には当たらない。

 その近くに直撃するにとどまる。

 

『どうしたどうした! 口の割には大したことがないなぁ! あの炎の力は使わんのか!?』

「ここで使ったら、後が持たないんだよ。お前は……このまま倒す!」

 

 そこからは、ひたすら防戦一方だった。

 筋肉白面の突進をギリギリで躱し、余波をなんとかやりすごし。

 反撃にナイフを投げるも、ほとんど当たらず。

 まぁ、投擲の練習はあんまりしてないんだから当然といえば当然だけど。

 そうこうしているうちに、採石場はだいぶ原形を留めない感じになってきた。

 俺は肩で息をしながら、筋肉の白面を睨む。

 

『クハハ、どうやらもう限界のようだな。大言壮語は結構だが、勝機を用意してからやってくるべきだったな』

「……それは、……どう、かな」

『――何?』

 

 ――そろそろだろう。

 俺のそんな感覚を肯定するように、白面金毛の体が()()()

 

『ぬ、う?』

 

 ゆっくりと、地面に倒れ込み。

 動けなくなる。

 

『なん、だ……これ、は……?』

 

 そして、筋肉の白面は視るだろう。

 自分の体を、紫の何かが侵食し始めているということを。

 

「――――()だよ」

 

 それは俺がナイフに付与した、概念毒の効果だった。

 結局俺は、概念毒をナイフに付与したまま維持することはできなかった。

 まずそもそも俺の概念付与の弱点として、一つの物体に一つの概念しか付与できないというものがある。

 もしナイフに「不壊」と「毒」の概念を付与できていれば、この問題は最初から解決していたのだ。

 ちなみに俺の体内は例外だ。

 体の中なら、精神の壁、ミキサー、精神の壁みたいに3つの概念を同時に作ることも可能。

 

『ぐ、おおおお!』

 

 とはいえ今回は、()()()()()()()()()()筋肉白面が相手だったから、毒を付与する方法さえあればよかった。

 そう、こいつにはなぜか毒耐性がないのだ。

 マナをすべて筋肉に振ってしまったからだと思われるが、結果として原作でも毒によって倒されている。

 今回は、概念毒のナイフが地面に突き刺さった後、ナイフが溶けた際に気化した毒が空気中から筋肉白面を侵した感じだ。

 ちなみにこの方法だと、本当にただの毒でしかないので大抵の毒耐性持ち魔人は倒せない。

 俺だって、概念マスクで防毒してるしな。

 ともあれ――

 

「悪いが、これ以上お前に手間を掛けてる時間はないんでな、このまま死んでくれ」

『ぐ、きさ、まぁあああああ!』

 

 ――俺は筋肉の白面の頸を切り落とし、二体目の白面を討伐した。

 

 

 ◇

 

 

 なんだか知らないが、白面には出落ちの白面が二体いる。

 片方がこの筋肉の白面で、もう片方が――

 

『クーハハハハハ! よく来たな小童! この”最速”の白面とのレース場へ!』

 

 今、俺の前に狐っぽいデザインのバイクにまたがってゴーグルとヘルメットをしっかりしている人型狐だ。

 最速の白面、文字通り最速を求めてレースで勝負を挑んでくる白面だ。

 以前言った、魔翼機を駆る魔祓師と対決した白面である。

 

 どうも、白面は体を九つに分ける際、それぞれに固有の能力をつける時。

 最後の方でなんかアイデアが変な方向に行ったようなのだ。

 そんなことが、単行本のおまけページで語られているのを見たことがある。

 結果生まれたのが、筋肉と最速の出落ち白面。

 こいつら、スペックは高いんだが、他の白面と比べて明らかにアホだ。

 おかげで、こういう攻略法が使えたりする。

 

「――わかった。けど、今回レースするのは俺じゃない。この魔翼機と光り輝く人間だ」

『ひ、光り輝く人間!? す、すごいな貴様……どうやって輝いてるんだ!?』

 

 俺は、光弾で生み出した光る人型に、魔翼機の横でポーズを取らせる。

 こう、魔翼機に体重を預けて親指をぐっ、とする感じで。

 そして最速の白面は、この人型を人間だと信じている。

 結果――

 

『――クハハ、いいだろう! 貴様と己、どちらが最速か決めようではないか!』

 

 最速の白面は、誘いに乗った。

 人型の光弾はさっそうと魔翼機に乗り込み、白面もバイクに跨る。

 場所は現実のレース場に擬似まほろば空間を展開したまほろばレース場。

 ここに、人型光弾と最速の白面、人ではない奴らのマッチレースが――

 

 

 始まった直後、人型光弾と魔翼機が最速の白面に激突、両者は爆散した。

 

 

 最速の白面は、速度にしか意識を向けなかった結果、防御力に難がある。

 亜音速で激突されるだけで、簡単に事故死してしまうのだ。

 原作でも、レースが終わった後にコーナーを曲がりきれず爆死していた最速の白面。

 今はマジでレースしている余裕もないので、さくっと爆殺させてもらう。

 すまん、最速の……原作でのお前と魔翼機の魔祓師のレースはマジで名レースだったぞ……最後爆死したけど。

 

 ともあれ、これで白面を二体撃破。

 一番討伐が楽な白面だからサクサク進んだが、ここからはどうなるか。

 まずは、ミホノと兄様の勝利を願おう。




はい。
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