――完全な不意打ち。
それをなんとか俺は刀で受け止める。
初っ端から狡っ辛い手を使ってくるが、それはそれとして白面金毛は厄介だ。
まず何と言っても、人の白面は俺と比べて圧倒的にスペックが高い。
最上級魔人並だ。
本来なら、解郷を使って生ける炎の力を借りるのが鉄板。
もう残る白面は後二体。
ここでためらう必要はない――の、だが。
『――使わせるわけがないだろう!』
人の白面が叫ぶと同時、
何も、見えない――!
いやそもそも、俺には概念の壁があるからバステは効かないのだ。
すなわち、こいつは俺ではなく
まほろば空間は現実よりも概念的な空間だ。
その主である白面金毛は、空間から視界を奪うことも不可能ではない。
そして解郷は望遠鏡を通して別世界を見るような魔祓刃なので、根源となるこの空間から視界が奪われたら、外の世界を見ることができなくなる。
対する白面は、空間の主なんだからそんな妨害無効に決まってる。
無論、そもそも視界を奪われたら人間の俺には打つ手がない。
――魔祓刃以外は。
「具現化!」
状況を理解した俺は、即座に具現化を使用。
俺が作るのは――
瞳ではなく、心で周囲を”視る”。
結果、俺の脳裏には、白と黒で構成された周囲の様子が映し出された。
そして、目前に迫っていた人の白面の鉄扇をなんとか受け流す。
『クハハ! 見えているな!? 具現化で今度は何を作った! まさか心の目とは言うまいな!』
「そのまさか……だよ!」
『これだから阿呆のすることは!』
なんとか、そこからは打ち合いにもつれ込む。
しかし、とてもではないが俺には人の白面の攻撃を受け切ることなど到底不可能。
あまりにもスペック差がありすぎる。
だからこそ、俺は人の白面の動きを観察するのだ。
基本的に、魔祓師も魔人も、一部の近接戦を得意とする者以外はあまり武術に力を入れたりはしない。
人の白面は搦め手を得意としており、接近戦を得意とはしていないのだ。
だから動きが読める。
そして、それだけではない。
俺には現在、もう一つ瞬間的に自身をバフする手段があるのだ。
迫りくる鉄扇、どれだけ動きが読めても、回避できない一撃はある。
それを俺は――瞬間的な加速で、同等以上の速度を得て回避した。
体内に溜め込んだマナを、一瞬だけ放出することで高速移動が可能となるのだ。
ロボットがバーニアでブーストするようなものだな。
俺はそれを――ミホノから受け取ったマナで行っている。
『――貴様、破壊の白面から奪ったマナを、そう使うか!』
「はは! これがないと、最上級魔人とはまともに戦闘にならないからな!」
本来これは、ミホノが俺の体力を回復させるために集めたものだ。
俺はそれを、通常時は生ける炎の反動によるダメージを無効化するために使っている。
生ける炎の反動は、言ってしまえば常にドットダメージを与えるような代物なので、それをマナで無理やり回復させ続けているのだ。
それを、一時的に攻撃へ転用する。
なあに、ミホノは破壊の白面のマナを八割ぶんどってたから、そうそうなくなることはない。
いや取りすぎだろ。
『であれば――観察眼だけでは測れぬ変数を加えるとするか』
「……本体!」
そこで、更に本体が動く。
ここまで、本体は俺達の戦いを見ているだけだったが、行動を起こすのだ。
何をするかと言えば――本体の周囲に、青い火の玉が浮かぶ。
実際には色は見えていないが、原作では青かったのだ。
『――狐火。ほら、回避できるか? やってみせろ』
火の玉が、凄まじい速度で俺の下まで飛んできた!
それら一つ一つが
相手は七大魔人の本体。
最上級魔人より少し強い程度の人の白面など、それこそ赤子でしかないのだ。
無論、これは流石に俺も回避は難しい。
なら――
「お、らあ!」
『そちらから仕掛けてくるか!』
俺は人の白面に自分から肉薄する。
破壊の白面のマナを全力で使用し、可能な限り近接で打ち合うのだ。
こうすることで――
『――狙いにくいな!』
本体が火の玉を狙いにくくする!
そもそも、どうして先ほどから本体は直接しかけてこないのか。
動くと
本体はあまりにも人の白面とは出力が違うし、白面同士は同士討ちが発生してしまう。
だから、人の白面が前面にでているうちは、本体は攻めない。
無論、無理に攻めることも可能だが、今はまだその必要はないだろうと白面金毛は考えている。
俺はそこを利用するのだ。
『……ふん、このままでは埒が明かんな。であれば』
本体は、火の玉を一度かき消す。
次は何をするつもりだ?
『――吹き飛べ!』
俺が警戒を強めた瞬間――まほろば内を猛烈なマナの突風が吹き荒れた。
……まずい!
本体が自身のマナをまほろば中に吐き出したのだ。
それは俺の肉体に影響を与えることはないが、マナで構成された物質――具現化などによって生み出されたものは、自身を構成するマナが乱れて存在を保てなくなってしまう。
すなわち――俺の刀と衣装が消えるのだ。
刀は完全に無に帰り、衣装は学園の制服へと戻る。
そして、これらが消えるということは、それらが持つ身体強化も消えるということだ。
『今だ』
「……っ!」
動きのテンポが完全にずれる。
今の俺は身体能力の大半を破壊の白面のマナで補っているが、それでもミホノの衣装の強化は無視できない。
故に、人の白面の鉄扇を回避する余裕がなくなってしまう!
――つまり。
「――自分から攻撃のテンポをずらして、隙を作ってくれるなんて。随分と有情じゃないか!」
『!?』
俺はその攻撃を
今まで俺は、攻撃をギリギリまで避け続けてきた。
しかし本来、マナの防御力は正面からの”受け”に強い。
そうしなかったのは、瞬間的な放出によって加速していたことから、防御ミスによる事故を避けたかったのと。
こうして、受けるタイミングを図っていたからだ。
そして――
「具現化!」
俺は再び、ミホノの衣装と刀を具現化で生み出す。
普段からミホノとマナを混ぜ合わせていたことで、俺の体内のマナは一部がミホノのものになっている。
こうして具現化で生み出した刀と衣装は、そのマナに反応してミホノが招来空間で生み出したものと同等の効果を発揮するのだ。
「お、っらあ!」
『ぐ……っ!』
そして、出現した刀で鉄扇を振り払う。
人の白面の体が弾かれたようになり、隙を晒す。
「貰ったぁ!」
『小童ァ……!』
回避は不可能。
この一撃で、人の白面を持っていく。
そう、確信したからこそ――
『狐火』
本体は、
まさか同族殺しなんてしないだろう、という先入観を利用した初見殺し。
しかし考えてみれば、死が確定的となった存在を囮にするのはひどく合理的で。
きっと、最初から白面金毛は織り込み済みだったのだろう。
だから原作でも――この世界でも人の白面は仮面の下で笑うのだ。
そして俺にとってこれは、決して初見の攻撃ではない。
――焔が、俺と人の白面を飲み込み炸裂した。
『さらばだ、人の己よ。役目ご苦労。今はただ眠るが良い』
煌々と、狐火は燃え盛る。
『そして――やはりそうなるか』
人の白面が敗れたことで、まほろば内に”視界”が戻る。
『小童貴様――破壊の白面のマナをすべて防御に回し、
直後、炎を灼き尽くす炎が、狐火を食らって柱となる。
「ああ、おかげで……ようやくお前を倒す準備ができた」
柱の中から、俺は生ける炎を伴って現れた。
「なんとも多彩で、アイデアに富んだ、俺への対策だったよ」
『クハハ、それは光栄な評価だ。しかし――これでは終わらんぞ?』
「いや――終わらせる。白面金毛、お前をここで!」
さぁ、最終局面だ。
七大魔人、白面金毛。
その頸、取らせてもらうぞ!
そもそも本体白面の側で誰かが戦うのが結構なアンシナなんですが、本体のところまでたどり着く時点で本体以外が戦っても意味がないので、実質捨て駒にしてワンチャンないかなー、しています。