兄様の火属性付与……一言で言うとコレは、
俺の解郷と違う点は二つ。
一つ、炎を直接身に纏うこと。
二つ、その炎が普通の炎によって”希釈”されていること。
まずそもそも、俺が生み出した生ける炎の焔は言ってしまえば贋作だ。
俺が普段直接”視”ている生ける炎そのものよりは、危険性が少ない。
加えて別の炎と混ぜ合わせることで更に危険性が薄まり、何とか普通の人間でも炎を纏えるようになるのだ。
とはいえ、そのためにはかなりの期間護摩行をする必要があり、その度に兄様は発狂していたんだけど。
「……ふぅ……はぁ……! やったぞ、見たかセオ……! 俺は、貴様には遅れを……取らん!」
「無茶するねぇ」
「危険だと思ったら、すぐに使用をやめてくださいね、兄様」
これもまた凍れる炎によって凍結し持ち運べるようになっていた希釈焔とでも呼ぶべき物を砕き、力を解放した兄様。
その意図は極めて単純。
「セオは、加速度的に強さを得ていく。その大半が他者から力を借りたもので、本人に才能はないのだとしても……手に入れるための努力と発想は本物だ……! 故に、俺は、置いていかれたくない……! お前だけには……!」
俺に負けたくない。
その言葉に――あの傲慢だった兄様がこぼした本気の”対抗心”に、俺は思わずゾクゾクと震えてしまう。
原作を滅茶苦茶にして、兄様は原作とは全く別の道を進んだ。
しかし、それでもこのライバルに向けられる対抗心――原作ではリズ先輩に向けられたもの――が健在であることへの興奮。
そしてそれを、自分に向けてくれていることへの嬉しさ。
ああ――この世界において傲慢なのは、俺のほうかもしれないな。
「感謝します兄様。兄様が強くなったおかげで、俺はもっと強い敵を倒せる! 皆を守れます!」
「言っていろ……! それと、お前が適当に言っていた火属性付与という名前は俺の好みではない、名を改めるぞ」
ああ、もしかして修行中に試した時、俺がポツリと火属性付与と呟いていたのを聞いていたのか。
いやうん、俺も別にそれが名前のつもりはなかったから、いきなり兄様が口にしてびっくりしたよ。
ともかく、自身のまとった炎を魔祓刃にもまとわせながら、兄様は宣言する。
「炎鬼招来。業腹だがセオの手を借りて掴んだ力だ。この名前こそがふさわしい……!」
『……ヌハハ、いいな! 盛り上がってきたぞ! 来い!』
「あはは、いいねぇ。そうこなくっちゃ!」
リズ先輩と兄様が、鵺と相対する。
余裕があれば俺達も手を貸すが、鵺と戦うのは二人の役割だ。
つまり俺とミホノは――
「あっはぁ! いいねいいね! セオくんとルト先輩の深い愛! 燃えてきちゃう!」
「いかがわしい言い方はやめろ!」
「そうですそうです! 勝手に盛り上がってるんじゃねーです!」
――ニイアと相対することになる。
凄まじくいい笑顔を浮かべながら、どこか興奮した様子で語りかけてくる。
お前そういう禁断の関係でも興奮するのかよ!
「あっはははははははは! あははははははぁ!」
そして、楽しげに笑い、嗤う、哂って、呵ったニイアが――
「じゃ、殺すね」
一瞬で俺の眼前に現れ、首に刃を突き立ててきた!
「っっっっだっらぁ!」
ギリギリでそれを受け止める。
焔と氷をまとった刃が、ニイアの
笑みを浮かべるニイアと、それを睨む俺。
鍔迫り合いの中――
「滅核!」
リズ先輩が再び疑似まほろば結界を揺らす。
今度は溜めが要らない方の必殺技である滅核のぶっぱ。
大気が揺れて、俺とニイアも互いに距離を取る。
――戦闘開始だ!
+
ここまで、俺と兄様が修行の成果を披露している。
言うまでもなく、ミホノとリズ先輩も新たな能力を手に入れていた。
そのうち、リズ先輩は原作のパワーアップを先取りしている。
対するミホノは――そもそも、今のミホノは本来のミホノとはかけ離れたスキルツリーをしているわけで。
当然ながら、強化の方向性も明後日の方向を向いていた。
「あっははあ! やっぱさぁ! セオくんって……弱いね!」
「悪かったな!」
戦闘は俺を前衛、ミホノを後衛で進む。
俺が焔と氷の刀でニイアの攻撃を受け止めているところに、ミホノが銃撃を加えるのだ。
ニイアの攻撃スタイルは両腕をその都度変化させての二刀流。
その武器は剣であったり、槍であったり、ショットガン(!?)だったり。
遠近様々な武器を状況に合わせて取り回していた。
対する俺は、それを何とか正面から受け止め、回避し、やりすごしている。
反撃なんて当然だけどできるわけがない。
そもそも今の俺は最上級魔人程度のスペックしかないわけで、とてもじゃないが七大魔人
それを防戦に徹した上で――
「だらららららーー! だらららららー!」
後方から飛んでくるミホノの弾丸の援護によって成立させているだけ。
数十丁の機関銃が、四方八方からニイアを狙うのである。
――俺ごと。
「これずるくなーい!? セオくんだけすり抜けるとかさー!」
「いへへ、ミホノがセオ様を傷つけるなんてありえないのです。もし傷つけることがあったとしたら、ミホノも同じ場所を自分で傷つけるです!」
「浮気したら心中するって言ってる?」
「多分言ってる」
こわいねー、と世間話みたいなノリで話しかけてくる女の殺意しかないモーニングスターと竹槍を捌く。
この状態で、何とか俺とニイアは”戦闘が成立している”状況にある。
互角とは決して言えない、なにせこっちは攻撃手段がないのだから。
ミホノの弾丸が当たれば多少なりともダメージが入るかもしれないが、ニイアは片手間と言わんばかりの雰囲気で
その動きは、殆ど目で追うのがやっとと言った速度だ。
俺との魔翼機の実験で死を覚悟していたやつと同一人物とは、到底思えない。
「っていうかさぁ、どうして炎鬼天生を使わないわけ? 護摩行でパワーアップして、効果時間伸びてるんでしょ?」
「
「あー! それ、気に入らない! アタシをもっと脅威と思ってよ!」
「思ってるよ、お前は俺が戦ったどんな奴よりも……強い!」
言葉とともに、ニイアの剣を弾く。
当然、即座に次なるニイアの攻撃が飛んでくるわけだが――
「ミホノ!」
「ニイアがどんなやつより強いとセオ様が認めても!」
そこで、ミホノが動く。
「セオ様へのミホノの愛が、世界の誰よりも――大きいのでーす!」
直後――ミホノの姿がその場から掻き消えた。
周囲の機関銃をそのままにして。
「アハッ! だとしても、アタシだってセオくんをあきらめな――」
当然、ニイアはそのまま攻撃を仕掛けてこようとする。
迫りくる槍は、寸分たがわず俺の喉を狙い突き出され――
直後、俺とニイアは
否、俺は押しつぶされていない。
機関銃と同じように、すり抜けている。
しかし、ニイアは突然の不意打ちにより防御態勢を取ることも出来ず踏み潰された。
「んぐえ」
情けない声が聞こえてくる。
果たして本当に痛がっているかどうかはわからないものの、態勢を崩したことは事実だ。
――なぜ、突然ミホノが巨大化したか。
それは、ミホノの魔滅場開放が凍れる炎の力を借りているからだ。
この世界において凍れる炎は巨大な少女である。
その力を借りたことで、ミホノもまた巨大になったのだ。
まるで、それが俺に対する愛の大きさだとでも言うように。
「――隙あり!」
「卑怯すぎるよーーーっ!?」
ので、俺はその助けを借りて潰されたニイアを攻撃した。
隙ありに狐要素を感知して若干ジェラるミホノであった――