転界録:リムル・テンペスト オラリオ編   作:るにゃは

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『ヴェルドラの異世界体験記〜神と迷宮と精霊女王〜』という新しい短編を書きました。
続きを書くかは悩んでいますがもし良ければこちらも良ければご覧下さい


第九話「共闘──銀と白、初めての連携」

「はぁ……はぁ……!」

 

ダンジョン第1層、やや開けた空間で、ベル・クラネルは肩で息をしていた。

 

その手には、傷だらけになったナイフ。服のあちこちにモンスターの返り血が染み込み、彼の戦いの激しさを物語っている。

 

「頑張ってるな、ベル。……けど、そろそろ次が来るぞ」

 

洞窟の奥から、低くうなり声が響く。見えたのは、二体の《ゴブリン》。そしてその後方に、甲高い咆哮と共に姿を現したのは──一体の《ゴブリン・バーサーカー》。

 

「う……なんですかあれ!?なんか一体おかしくないですか!?」

 

「ゴブリン・バーサーカー。第1層じゃレアモンスター扱い。……というか基本出現しないはず…まぁ倒せたら、ちょっと自信つけていいかもな」

 

軽く言うリムルの横で、ベルは震えながらもナイフを構え直す。

 

「べ、別に自信なんて……! ああでも、リムルさんも一緒に戦ってくれるんですよね!?」

 

「俺はサポート。お前の実戦だからな」

 

「じ、実戦ってレベルじゃないですよこれはぁぁぁっ!!」

 

叫ぶベルをよそに、ウォーシャドウの一体が素早く距離を詰めてくる。だが──

 

「後ろに注意!」

 

リムルの声と同時に、ベルは跳ねるように横へ転がった。直後、背後から襲いかかっていたもう一体のゴブリンが、地面に刃を食い込ませる。

 

「……っ、やられるところだった……!」

 

「落ち着け、ベル。敵は三体。でも連携はしてない。順番に対処すれば問題ない」

 

「で、でも、あの赤黒い色のゴブリンは!?」

 

ゴブリン・バーサーカーが咆哮を上げ、のそのそと動き始める。その圧倒的な威圧感に、ベルの足が自然と後ずさる。

 

《敵性反応分析:ゴブリン・バーサーカーは知能が低く、接近特化型。短期的な怒り状態。対応策──誘導し分断、各個撃破が最適》

 

(シエル、誘導しろってさ)

 

《了解。小石を投擲、注意を逸らせますか?》

 

(ああ、頼む)

 

リムルが地面の小石を弾いた。軽やかに飛び、ゴブリン・バーサーカーの頭部に当たる。

 

「ガァッ!?」

 

ゴブリン・バーサーカーの視線がリムルへと移る。その隙に、ベルが前方のゴブリンに突っ込む。

 

「いける……いける……!」

 

一瞬、敵の動きが鈍る。その隙を突き、ベルはナイフを深く突き刺す。見事、首元の魔石を砕いた。

 

「や、やった……!」

 

「油断するな! 次が来る!」

 

叫びとともに、もう一体のゴブリンがベルへ棍棒を振るう。

 

「くっ……!」

 

が──直前でその棍棒は、銀の短剣に受け止められた。

 

「ちょっとだけ加勢な」

 

そう言って笑うリムルの瞳が、月光のように冷たく輝く。

 

「う、うおぉおっ!」

 

その瞬間、ベルも追撃に転じる。リムルが動きを封じた一瞬の隙を見逃さず、ナイフを振り抜いた。

 

──ゴブリン、撃破。

 

そして残るは一体。ゴブリン・バーサーカー。

 

「さっきみたいに足止め……できませんか!?」

 

「いや、今度は正面からやるぞ。連携する。いいか?」

 

「はいっ!」

 

リムルが一歩前に出る。ゴブリン・バーサーカーが吠え、両腕を振り上げて突っ込んでくる。

 

その巨体に躊躇せず、リムルは低く構えた。瞬間、足元の岩を滑るように蹴り、回避──

 

「ベル、今だッ!」

 

「うおぉぉぉおお!!」

 

ベルがリムルの影からすり抜け一気に迫る。

 

一瞬、空を切る白い軌道。

 

その手のナイフが、まっすぐに首を切り落とした。

 

「ッッ!!」

 

咆哮が止み、暗赤色の身体はぐらりと揺れ、崩れ落ちる。

 

しばらくの静寂。

 

「……た、倒した……?」

 

ベルが、尻もちをついたまま呟く。

 

「おう。初めての特殊個体、よくやった」

 

リムルが手を差し伸べる。ベルはそれを掴みながら、涙ぐみそうな笑顔を見せた。

 

「……ありがとうございます。僕、ちょっとだけ……自分に自信、持てた気がします……!」

 

「それでいい。今日の勝利は、お前の実力だ」

 

リムルはそう言って笑う。

 

その笑みに、ベルは胸が熱くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

帰り道、薄暗い階段を昇りながら。

 

「……リムルさんは、なんでこんなに僕に付き合ってくれるんですか?」

 

「ん? 理由なんて、単純だよ」

 

「え?」

 

「お前、見てて面白いからさ。伸び代があるってのは、こういうのだって思ったから」

 

リムルの目は、どこか懐かしげで、それでいて温かかった。

 

ベルは思う。

 

──この人と出会えて、本当に良かったと。

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