転界録:リムル・テンペスト オラリオ編   作:るにゃは

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短編も投稿したのでもし良ければご覧下さい


第三話「出会いと出発」

 

 ギルドでの登録を終えた俺とヘスティアは、夕暮れのオラリオを歩いていた。

 

 

 

石畳の道に差す夕陽が長く影を伸ばしている。異世界に来たばかりだというのに、不思議とこの街の空気は心地よかった。

 

 

 

「ふあぁ~、つかれたぁ……」

 

 

 

ヘスティアが大きくあくびをしながら腕を上げる。どう見ても幼い少女の姿だが、れっきとした神様である。

 

 

 

「ギルドの登録って、想像よりずっとめんどくさいもんなんだな」

 

 

 

「うん。でも、これで晴れてキミも“ボクのファミリア”の一員になったわけだし!」

 

 

 

「……あはは。こうやって誰かの“所属”になるのって、久しぶりかもな」

 

 

 

テンペストでは盟主として、皆の中心に立っていた。誰かに“所属”する立場というのは、実のところ新鮮だった。

 

 

 

「で、リムル。ボク、ずっと気になってたことがあるんだけど……」

 

 

 

「ん? なに?」

 

 

 

「キミ、本当に“ただの人間”じゃないよね?」

 

 

 

ピタリと足が止まる。夕焼けに照らされたヘスティアの顔は、真剣だった。

 

 

 

「“神の儀”の時、空気が震えた。あれって……キミの中に何か、すごく大きな“力”があるってことだよね?」

 

 

 

「……まあ、うん。隠すつもりはなかったけど、あえて言うほどでもないかなって思ってた」

 

 

 

俺は苦笑して肩をすくめる。

 

 

 

「でも、俺に敵意はないよ。ただ、新しい世界で、静かに暮らしたいだけなんだ」

 

 

 

ヘスティアは、しばらくじっと俺の目を見ていたが──やがて、ふっと笑った。

 

 

 

「うん、だと思った。ボクもそう感じてた」

 

 

 

「……え、いいの?」

 

 

 

「うんっ。ボクは“今のリムル”を見て、ファミリアに誘ったんだから。それだけで充分だよ」

 

 

 

「……ヘスティア、ありがとな」

 

 

 

俺は心からそう思った。神様ってもっと高圧的だったり、理解できない存在だと思ってたけど……この子は違う。

 

 

 

 

 

 

「で、今夜はどうするの? 宿とか決めてる?」

 

 

 

「んー、金も持ってないし、野宿かなーって」

 

 

 

「それなら決まりっ! 今日からボクの神殿に住もう!」

 

 

 

「……いや、神殿って言っても豪華なわけじゃないだろ?」

 

 

 

「う、うん。廃教会だけど……屋根はあるよ! たぶん!」

 

 

 

「……ははっ、それなら十分だよ。ありがと、ヘスティア」

 

 

 

「えへへ~、どういたしまして~♪」

 

 

 

 

 

 

オラリオの外れにひっそりと建つ、古びた教会──それが俺とヘスティアの新たな拠点となった。

 

 

 

崩れた壁、ひび割れた床、それでも屋根は無事。最低限の生活空間としては問題なさそうだった。

 

 

 

「どう? なかなか味のある場所でしょ?」

 

 

 

「うん、俺はこういうとこの方が落ち着くな。静かだし、隠れ家っぽくてさ」

 

 

 

「それ、ボクにとっては褒め言葉ってことでいいんだよね?」

 

 

 

「もちろんだよ」

 

 

 

俺は笑いながら、草むらに座る。ここからなら、バベルの塔が遠くに小さく見える。

 

 

 

──この世界の中心。神と人の交差点。

 

 

 

「シエル、改めて確認。今の俺たちの状況、整理しとこうか」

 

 

 

《了解。現在地:世界群より隔離された独立位相。神々の物理干渉が可能な霊的高位世界。魔力循環構造は“加護”制度により成立。成長要素:ファミリア加入・ダンジョン活動により段階的上昇》

 

 

 

《現地勢力の分析中。現状、行動優先度:情報収集・信頼構築・潜在脅威の監視。戦闘介入は最低限に抑えることを推奨》

 

 

 

「了解。まあ、俺も派手にやるつもりはないけど……いざとなったら、守るからな」

 

 

 

月明かりに照らされた空は、この世界でも変わらず綺麗だった。遠く、星の瞬きを眺めながら、俺は静かに息を吐く。

 

 

 

「……さて、新しい生活、始めますか」

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