転界録:リムル・テンペスト オラリオ編   作:るにゃは

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編集してたら間違えて投稿してしまいました。
基本お昼の12時投稿ですのでお願いします。



第六話「出会い──赤眼の少年と、銀の来訪者」

「ふぅ……」

 

陽の傾いたオラリオの街並みに、リムルは肩の力を抜きつつ歩いていた。

 

ダンジョン第一層を二往復。魔石の数は計十二個。怪我はなし。

収穫としては上々だが、それ以上に“異世界のダンジョン”というものを五感で確かめられたことが大きい。

 

「やっぱ、ここのダンジョンは《迷宮》ってより、なんか生き物っぽいよな……」

 

《同意します。内部環境の再生速度、魔素の循環、構造変化率、いずれも自然発生とは思えません。人工物の可能性が高いです》

 

「創造主不在って話だけど……いったい誰がこんな化け物空間を作ったんだか」

 

独り言を呟きながら、リムルはギルド本部がある大通りを抜け、神々のホームが点在する地区──“神月区”へと歩を進めていく。

帰り道のついでにバベルの外周を回り、荷物の少ない路地を抜けていくのは、もう習慣になりつつあった。

 

と──その途中だった。

 

「あの、すみません!僕、ファミリアを探してて……!」

 

どこかから、慌てた少年の声が聞こえた。

 

(ん……?)

 

その声の方へと視線を向けると、見慣れた神殿の前──そこには、門の外でうろたえる白髪の少年の姿があった。

年の頃は十四、五歳。全身を包む薄汚れた旅装。擦り切れたマントに、手製と思われるナイフが腰に下げられている。

 

(旅人か……いや、冒険者志望って感じか?)

 

目の前の神──派手な衣を纏った男性神が、眉をひそめながら手を払うのが見えた。

 

「悪いがな、小僧。ウチのファミリアは今、新人をとってねぇの。帰んな」

 

「そ、そんな……!どこに行っても門前払いで……っ!」

 

「泣き言は聞かねぇ。強くなりてぇなら、まずは運を鍛えな」

 

男神は薄く笑いながら、神殿の扉をバタンと閉める。

置いていかれた少年は、肩を落としたまま動かず、俯いていた。

 

「……ふぅん」

 

リムルは小さく鼻を鳴らす。

 

《精神状態:失望、焦燥、軽度の恐怖反応。行動予測──同様の門前払いを複数回経験済み。自尊心の低下傾向あり》

 

(ま、見て見ぬふりするのは性に合わないしな)

 

リムルは小走りに近づき、少年のすぐ横に立った。

 

「よう。落ち込んでるとこ悪いけど、ここ、通り道なんだよね。どいてくれる?」

 

「えっ……あ、ご、ごめんなさい……!」

 

はっと顔を上げた少年は、慌てて一歩下がった。

その目は紅玉のように澄んでいて、しかしどこか怯えたような影を帯びていた。

 

(ずいぶん純粋そうなやつだな……。あー、ダメだ。放っとけねぇわ、こういうの)

 

「……名前は?」

 

「え? えと、ベル・クラネルっていいます……」

 

「ふぅん。リムル=テンペスト。……で、ファミリア探し中ってこと?」

 

「はい……っ! 冒険者になりたくて、田舎からオラリオに来たんですけど……その……全然入れてくれなくて……」

 

「そりゃそうだろ。お前、素人まるだしじゃん」

 

リムルはストレートに言い放った。

ベルは「うっ……」と顔をしかめたが、それでも反論せず、唇を噛んだ。

 

《彼の生命反応に異常はありません。肉体は健康体。筋力、敏捷、耐久すべて並以下。精神力のみ突出》

 

(やっぱ身体はまだまだか……でも、芯はあるな)

 

「なあ、ベル。運良くファミリアに入れたとして、その後はどうするんだ?」

 

「……ダンジョンに潜って、モンスターを倒して、レベルアップして……強くなって……誰かを守れる冒険者に、なりたいです」

 

「ふーん。誰かって?」

 

ベルは少しだけ口ごもり、それでも目を逸らさず言った。

 

「……まだ、いないです。でも、いつか、そういう人に出会える気がするんです」

 

その声に、リムルはほんの僅かに目を細める。

 

(“誰か”のために、ってやつか。……昔の俺みたいなこと言うな)

 

しばしの沈黙。

夕焼けに染まる道の上で、銀髪と白髪の影が交差する。

 

「お前さ、ヘスティア・ファミリアって知ってる?」

 

「え……? 名前だけは。……すごく、小さなファミリアだって……」

 

「うん、現状構成員ひとり。でも、そこは悪くない神様だよ。……人を見る目もあるし」

 

「えっ、まさか、リムルさんはそこの……?」

 

「そう。“俺”はそこの所属」

 

ベルが目を見開く。その表情には、驚きと、そして少しの希望が浮かんでいた。

 

「……紹介、してくれるんですか……?」

 

「別に紹介ってほどじゃねぇよ。入れるかどうかは本人の意思次第だし。神様が会ってみたいと思うかどうか……それだけだ」

 

リムルは肩をすくめ、先を歩き出す。

 

「来るなら来な。ヘスティア様が断る可能性もあるけど……お前、何回門前払いされたって、もう怖くねぇだろ?」

 

ベルの目が、ぐっと力強くなった。

迷いはなかった。

 

「……行きます!」

 

その声とともに、白髪の少年はリムルの背を追って駆け出す。

 

 

 

 

 

 

ヘスティアのホーム──小さな一軒家。

 

玄関の前で、リムルは振り返った。

 

「さ、あとは運次第だな」

 

「は、はい……!」

 

呼び鈴を鳴らすと、すぐに中から足音が聞こえ、玄関が開いた。

 

「おかえり、リムル……って、あれ? その子は?」

 

「あー、道端で拾った。名前はベル・クラネル。ファミリア探しててさ、悪い奴じゃなさそうだったから、連れてきた」

 

ヘスティアは目をぱちくりと瞬かせた後、そっとベルに目を向けた。

 

「……キミが、ベルくん?」

 

「は、はいっ! ベル・クラネルです! どうか、僕を……いえ、僕を、ヘスティア・ファミリアに入れてください!」

 

おどおどとしながらも、ベルは深く頭を下げた。

 

リムルはその様子を後ろから見つめながら、心の中で呟く。

 

(さあ、どうする……? ヘスティア様)

 

そしてその瞬間、オラリオに一つの“火種”が落とされた。

 

──銀と紅の邂逅。それはやがて、冒険譚の起点となる。




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