下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

19 / 19
短い間でしたが、応援ありがとうございました。


星空のラプソディ(気づけば最終回です)

大きな事件を経ても、私たちの日常はそこまで変わらなかった。

 

ちょっと変わったことといえば、キムンカムイがカンナちゃんの様子をたまに見に来るようになったり、それの付き添いでトールさんたちの身内が来たり、紆余曲折あって魔法の力を失ったアーザードがこちらで探偵業を始めたことくらい。

どこかで偽トラマンが暴れるだとか、謎の怪獣が現れるだとか、そういうウルトラマンの力が必要になる事件はまったくもって起こらない。

現に今日も私はデスクに齧り付き、底辺SEとしての職務に励んでいた。

 

「聖さん、これもチェックお願い」

「はーい。…上井さーん。ちょっと来てー」

「どうかしたか?」

「この案件、上井さん担当だよね。

これでも十分納品できるけど、ここらへん誤作動の原因になるかも」

「なっ…、す、すまない…」

「大丈夫大丈夫。納品する前でよかった。

期限までもうちょっとあるし、修正してもう一度提出お願いね」

「うむ」

 

いくらドラゴンとは言え、システムエンジニアとしてはまだ少し歩いただけの新人。

こういう見落としがあるのは仕方ない。

これからの成長に期待するか、と次の業務を進め、小林さんへと声を張り上げる。

 

「小林さーん、マルヤさんの案件の担当誰ー?」

「宮田くん。風邪で今日休み」

「すんごいやらかしてるー」

「え゛ッ」

「大丈夫、直しとくねー。

次宮田くんが出勤したら私んとこ来るように言っといてー」

 

本当に体調を崩したか、それとも仮病か。

病み上がりの子に説教は心苦しいな、と思いつつ、私は次の仕事に取り掛かった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……毎日のように思うんだけど、大怪我してるとは思えない働きっぷりだよね」

「褒めてもヒーリング光線しか出ないよ」

 

カンナちゃんとイルルちゃんが寝静まるくらいに夜が更けた頃。

小林さんに誘われ、彼女の家に訪れた私は、出された缶ビールに口をつける。

あの事件以来、こうして小林さんの家で飲む機会が増えたような気がする。…いや、一体化して一緒にグリーザを倒して仲良くならない方が不思議なのだけど。

そんなことを思いつつ、トールさんが作ってくれたつまみの唐揚げを頬張った。

…私のは小林さんの尻尾肉唐揚げと違い、普通の唐揚げらしい。

彼女の尻尾肉推しは小林さんに対しての愛情表現なのだろうか。よくわからない文化だ。

そんなことを思っていると、洗い物を終えたトールさんが小林さんの隣の席に腰掛けた。

 

「カンナに渡したメダルを使って回復してましたよね?

それで先日の傷も治らなかったんですか?」

「あれはあくまでエネルギーの補充しただけ。

怪我人であることは変わらないよ。むしろ、傷口広がって療養期間伸びたし」

「ダメじゃん」

 

オーブダークとキムンカムイ、果てはグリーザにボコボコにされてこれならマシな方だろう。下手したら存在を無に変えられていたわけだし。

我ながらよく生きていたものだ、と内心で自画自賛していると、小林さんが怪訝そうに眉を顰めた。

 

「というか、ここにいて本当に療養になってる?今日も聖さんだけ激務だったし…」

「なってるなってる。この状態の私、ベッドにぐっすりレベルで休んでるから」

「羨ましい体だなぁ…」

 

元の体のエネルギー消費が激しいだけなんだよなぁ。

だからカラータイマーなんてわかりやすい制限時間測定器を付けることを義務付けられたわけだし。…元からある奴らに関しては知らないけど。

光の国に関わりのないウルトラマンたちにカラータイマーがある理由について苦悩した過去を振り払うように、私は小林さんに問いかけた。

 

「そういう小林さんは大丈夫?繁忙期が過ぎてマシになったとは言え、抱えてる案件は多い方でしょ?」

「全然。一体化してから、全然腰が痛くならないんだよね。

ヒーリング光線のおかげだったり?」

「いや…、ちょっと待って」

 

小林さんの腰痛は確か、トールさんから引き抜いた神剣が原因だったはず。

私が目を凝らして腰を見ると、そこに神剣の気配はなく。

代わりに、小林さんの中に宿る気配が濃くなっていることに気づいた。

 

「……神剣が小林さんの魂の中にすっぽり入っちゃってるね」

「なんですって!?!?」

「おわっ、びっくりしたぁ」

 

トールさんが声を張り上げ、身を乗り出して私に詰め寄る。

顔が近い。すごく。

眼福ではあるんだけど、と呆れながら、私は淡々と推測を語った。

 

「多分、私と一体化した時に魂の容量が増えて、それで神剣が入れたんじゃない…かな?

精査しないとよくわかんないけど…、どうする?調べてみる?」

「いいや。腰が痛くならないの最高」

「よくないですよ小林さん!!自分の中に勝手に棲みつかれてんですよ!?」

「押しかけメイドが言うか」

「ぬぐっ」

 

確か、トールさんは酔っ払った小林さんの言葉を受けて、小林さんちに押しかけたんだったか。

指摘を受け、たじろぐトールさん。

小林さんはそれに苦笑し、私を缶の底で指した。

 

「いざってときは頼ればいいでしょ。

下の階のウルトラマンに」

「…そういう頼られ方は初めてだなぁ」

 

悪い気はしないけど。

小林さんの中にいるだろう神剣に威嚇するトールさんを横に笑いあい、私たちは缶ビールを鳴らした。




聖さん/ウルトラウーマンルミナス…小林さんとドラゴンたちのお友だち。光の国出身の底辺SEで、下の階のウルトラマン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ハードモード地球で平成から令和を駆け抜ける(作者:ありゃりゃぎ)(原作:ウルトラマン)

ウルトラマンティガの世界に転生したと思ったら、もっとひどい世界でしたっていうお話。▼古代の闇が、スフィアが、根源的破滅招来体が、カオスヘッダーが、スペースビーストが、ボガールが、闇の四天王が、スパークドールズが、世界の穴が、太平風土記に記された怪物が、狂信者な小説家が、星をリセットする狂獣が、光も闇も無意味と嗤う闇の巨人が、遊技と称して文明を殺す快楽主義者が…


総合評価:9067/評価:8.84/連載:94話/更新日時:2024年09月07日(土) 18:31 小説情報

冬木アクターズ・ラプソディ ~観光に来た演劇バカの女子大生、うっかり龍之介を轢いてしまったので、キャスターの「ジャンヌ役」として聖杯戦争を完遂します~(作者:斉宮 柴野)(原作:Fate/)

演劇を愛し、演劇に愛された女子大生・聖上真樹(19)。 彼女は観光で訪れた冬木市にて、役作りの練習中に通行人を驚かせ、不運な交通事故を誘発してしまう。 その被害者は、指名手配中の連続殺人鬼・雨生龍之介だった。▼罪悪感(と興奮)に震える彼女の前に現れたのは、奇怪な術衣を纏った目玉の大きな外国人。 彼は涙を流し、真樹を見てこう叫んだ。▼「おお!! ジャンヌ!! …


総合評価:8691/評価:8.54/連載:84話/更新日時:2026年07月25日(土) 16:36 小説情報

ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。(作者:サーッ・タドコロ)(原作:Fate/)

大変や!▼ワイが、アーサー王伝説の元になった時代と国に転生してもうたで!▼っていうか、運良くマーリンと会えたからそうだとわかっただけで、ワイはアーサー王伝説のことなんてほとんど知らんで。▼なんか、色んなゲームの元ネタとして使われるくらい有名だったり、有名な騎士の名前とかちょこちょこ知っとるくらいやわ。▼あと、一応前世の知識みたいなのはあるのに、前世の自分につ…


総合評価:10641/評価:8.09/連載:21話/更新日時:2026年06月07日(日) 16:18 小説情報

雛見沢とかいう田舎に転生した(作者:that's the plan)(原作:ひぐらしのなく頃に)

人並みの人生を歩んできた男は、寒い冬の日に川で溺れる少年を助けて死んだ。もしももう一度チャンスがあるなら、もっと一生懸命生きる人生がいい。そんなことを考えながら死んだ彼が生まれ変わった先は、田舎の村だった。▼生まれ変わった、そのアドバンテージを少しも活かせないとしても、彼は全力で生きる。目指すはロックスター……とは、いかない。▼温かく見守ってください。初投稿…


総合評価:16862/評価:9.08/完結:116話/更新日時:2026年03月15日(日) 12:32 小説情報

漆黒の鋼鉄(作者:うづうづ)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

ブラックプロテウス。▼外見的には普通の黒鹿毛ウマ娘だが、彼女には秘密があった。▼それは、『絶対に故障をしない身体』を得て転生してきた、ということだ。▼ウマ娘の例に漏れず走ることが大好きな彼女は何をしても故障をしないその身体を活かし、周囲がドン引きするようなほどのハードトレーニングを重ねて身に着けた身体能力でレースを駆け抜けていく。▼どんな無茶な、無謀な走り方…


総合評価:26848/評価:8.69/連載:68話/更新日時:2026年06月19日(金) 21:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>