下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

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短い間でしたが、応援ありがとうございました。


星空のラプソディ(気づけば最終回です)

大きな事件を経ても、私たちの日常はそこまで変わらなかった。

 

ちょっと変わったことといえば、キムンカムイがカンナちゃんの様子をたまに見に来るようになったり、それの付き添いでトールさんたちの身内が来たり、紆余曲折あって魔法の力を失ったアーザードがこちらで探偵業を始めたことくらい。

どこかで偽トラマンが暴れるだとか、謎の怪獣が現れるだとか、そういうウルトラマンの力が必要になる事件はまったくもって起こらない。

現に今日も私はデスクに齧り付き、底辺SEとしての職務に励んでいた。

 

「聖さん、これもチェックお願い」

「はーい。…上井さーん。ちょっと来てー」

「どうかしたか?」

「この案件、上井さん担当だよね。

これでも十分納品できるけど、ここらへん誤作動の原因になるかも」

「なっ…、す、すまない…」

「大丈夫大丈夫。納品する前でよかった。

期限までもうちょっとあるし、修正してもう一度提出お願いね」

「うむ」

 

いくらドラゴンとは言え、システムエンジニアとしてはまだ少し歩いただけの新人。

こういう見落としがあるのは仕方ない。

これからの成長に期待するか、と次の業務を進め、小林さんへと声を張り上げる。

 

「小林さーん、マルヤさんの案件の担当誰ー?」

「宮田くん。風邪で今日休み」

「すんごいやらかしてるー」

「え゛ッ」

「大丈夫、直しとくねー。

次宮田くんが出勤したら私んとこ来るように言っといてー」

 

本当に体調を崩したか、それとも仮病か。

病み上がりの子に説教は心苦しいな、と思いつつ、私は次の仕事に取り掛かった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……毎日のように思うんだけど、大怪我してるとは思えない働きっぷりだよね」

「褒めてもヒーリング光線しか出ないよ」

 

カンナちゃんとイルルちゃんが寝静まるくらいに夜が更けた頃。

小林さんに誘われ、彼女の家に訪れた私は、出された缶ビールに口をつける。

あの事件以来、こうして小林さんの家で飲む機会が増えたような気がする。…いや、一体化して一緒にグリーザを倒して仲良くならない方が不思議なのだけど。

そんなことを思いつつ、トールさんが作ってくれたつまみの唐揚げを頬張った。

…私のは小林さんの尻尾肉唐揚げと違い、普通の唐揚げらしい。

彼女の尻尾肉推しは小林さんに対しての愛情表現なのだろうか。よくわからない文化だ。

そんなことを思っていると、洗い物を終えたトールさんが小林さんの隣の席に腰掛けた。

 

「カンナに渡したメダルを使って回復してましたよね?

それで先日の傷も治らなかったんですか?」

「あれはあくまでエネルギーの補充しただけ。

怪我人であることは変わらないよ。むしろ、傷口広がって療養期間伸びたし」

「ダメじゃん」

 

オーブダークとキムンカムイ、果てはグリーザにボコボコにされてこれならマシな方だろう。下手したら存在を無に変えられていたわけだし。

我ながらよく生きていたものだ、と内心で自画自賛していると、小林さんが怪訝そうに眉を顰めた。

 

「というか、ここにいて本当に療養になってる?今日も聖さんだけ激務だったし…」

「なってるなってる。この状態の私、ベッドにぐっすりレベルで休んでるから」

「羨ましい体だなぁ…」

 

元の体のエネルギー消費が激しいだけなんだよなぁ。

だからカラータイマーなんてわかりやすい制限時間測定器を付けることを義務付けられたわけだし。…元からある奴らに関しては知らないけど。

光の国に関わりのないウルトラマンたちにカラータイマーがある理由について苦悩した過去を振り払うように、私は小林さんに問いかけた。

 

「そういう小林さんは大丈夫?繁忙期が過ぎてマシになったとは言え、抱えてる案件は多い方でしょ?」

「全然。一体化してから、全然腰が痛くならないんだよね。

ヒーリング光線のおかげだったり?」

「いや…、ちょっと待って」

 

小林さんの腰痛は確か、トールさんから引き抜いた神剣が原因だったはず。

私が目を凝らして腰を見ると、そこに神剣の気配はなく。

代わりに、小林さんの中に宿る気配が濃くなっていることに気づいた。

 

「……神剣が小林さんの魂の中にすっぽり入っちゃってるね」

「なんですって!?!?」

「おわっ、びっくりしたぁ」

 

トールさんが声を張り上げ、身を乗り出して私に詰め寄る。

顔が近い。すごく。

眼福ではあるんだけど、と呆れながら、私は淡々と推測を語った。

 

「多分、私と一体化した時に魂の容量が増えて、それで神剣が入れたんじゃない…かな?

精査しないとよくわかんないけど…、どうする?調べてみる?」

「いいや。腰が痛くならないの最高」

「よくないですよ小林さん!!自分の中に勝手に棲みつかれてんですよ!?」

「押しかけメイドが言うか」

「ぬぐっ」

 

確か、トールさんは酔っ払った小林さんの言葉を受けて、小林さんちに押しかけたんだったか。

指摘を受け、たじろぐトールさん。

小林さんはそれに苦笑し、私を缶の底で指した。

 

「いざってときは頼ればいいでしょ。

下の階のウルトラマンに」

「…そういう頼られ方は初めてだなぁ」

 

悪い気はしないけど。

小林さんの中にいるだろう神剣に威嚇するトールさんを横に笑いあい、私たちは缶ビールを鳴らした。




聖さん/ウルトラウーマンルミナス…小林さんとドラゴンたちのお友だち。光の国出身の底辺SEで、下の階のウルトラマン。
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