~前書き~
ハンジのスピンオフ、最終話となります!
↓それでは、本編へどうぞ↓
___数日後。
『これより、第1回ウォール・マリア奪還作戦を開始する!!』
高らかに声を上げたのは、沈んだ瞳に顔の陰影が際立つ憲兵。
彼の後ろには民間兵がずらりと立ち並び、その風貌は『兵』とつく割に身に纏う装備などが軽微なものだった。
武器と言っても木の棒の先にナイフを括り付けた簡素な槍だったり、工業地で使われるような鉄骨の余りだったり。
もはや、武器を持たされていない者もいた。
老若男女__年齢も違えば、住んでいた場所も違い、団結力など皆無の編成を組まされている。
一つだけ共通点があるとすれば、皆が
延べ25万人が動員された作戦は、トロスト区以外でもウォール・ローゼにある4つの城壁都市それぞれで同時に行われる。
そして、いよいよ出発の時__
『進めぇぇぇ!!』
ドドドドドドッ…
先頭の憲兵に続き、開かれた外門を駆け足で潜り抜けて行く民間兵たち。
それを見送るのは、退路を断つように銃を構えて立ち並ぶ憲兵たち。
大勢の人間に踏み荒らされた地面から砂埃が立ち昇る。
すると、その視界の悪さを利用して列を乱す者が一人__ゲリセンだ。
「嫌だ…死にたくない!!俺は……俺は、成功者になるんだ…!」
犯罪者たちは手錠をかけられたまま出発し、壁外に出たところで順に手錠を外されることになっていた。
ゲリセンは手錠が外された瞬間、前進する列と逆行して壁内を目指し駆け出したのだ。
押し寄せる人の波を掻き分け、靴が脱げてしまうほど必死に足を動かすゲリセンの表情は、
「クソッ……邪魔…だ!……どけよ!!」
藁をも掴む勢いで腕を伸ばしながら、体を『前に、前に』と押し出す。
ついには、軍の最後尾から一人抜け出した。
門の向こう側の内地では憲兵が此方へ銃口を構えている。
それでも、ゲリセンの足は止まらない。
外門まであと一歩__ゲリセンは胸を突き出すように飛び込んだ。
そして…
ガンッ!!
………
…
***
___同時刻。
調査兵団本部の訓練場では、久方振りの壁外調査に向けて訓練が再開されていた。
ウォール・マリア奪還作戦が実行されれば壁内を圧迫していた食糧問題は緩和され、兵団の人員が避難民対応から解放される。
そうなれば調査兵団は再び、
約1年ものブランクがあった調査兵団では、組織図も新たに見直され、ハンジは『分隊長』を任されることになった。
もちろん副隊長は、一番弟子のモブリットだ。
さらに、数年前にハンジが面倒を見ていた訓練兵のカイルも今は調査兵団の一員で、ハンジと同じく今回から分隊長に任命されている。
心機一転__調査兵団は新たなスタートを切ることになったのだ。
**
立体機動の訓練中。
新兵を多く抱える隊で分隊長を務めるカイルは、自身の隊の訓練を見守りつつも、隣の隊が気になっていた。
その横には、新兵たちの特別指導役として付き添っていた兵士長のリヴァイが立っている。
「兵長……何だかハンジさん、気合い入ってますね」
「…あぁ、どうやら顔見知りが徴兵されているらしい」
「!?……そっか、
そう言ってカイルは隣の隊へ再び目を向ける。
視線の先では、ゴーグルを光らせながら刃を振るうハンジの姿があった。
「…っらぁぁあ!!」
ザシュッ!……バキ、バキバキバキィ…
切りつけられた巨人の模型が、首元から地面に落下していく。
ハンジの斬撃は分厚い木の板をへし折るほどに重みがかっていた。
ハンジはそのまま軌道を描くように太い枝へ降り立つと、ぐいっとゴーグルを引き上げ、袖で目元を擦った。
肩についていた木屑がパラパラと舞い落ちる。
その中には
=====
私の元へ
どうやらゲリセンは、奪還作戦の出発直後に壁内へ戻ろうとして、閉まる外門に挟まって死んだらしい。
それを聞いたとき私は、
『壁内に戻った所で反逆罪とみなされて撃ち殺されるだけなのに、何故そんなことしたんだろう』
…と、ただ不思議に思った。
正常な判断すらままならないほどに追い詰められていたのだろうか?
だとすれば、これまで散々悪事を働いてきたゲリセンには相応しい醜悪な死に様だったのかもしれない。
そんな思考が脳裏を過ると同時に、
私は胸の奥で__
奪還作戦からの帰還者は、百数十名とほんのわずかだが存在する。
だけど、私は…
生存者リストに目を通さなかった。
希望を捨てたわけじゃない__それを見たところで、
村のみんなと最後に会ったのは、ゲリセンを捕まえたあの日。
それ以来は忙しくて顔を出せていなかった上、奪還作戦の知らせを受けたのが直前だったため、面会の猶予は残されていなかった。
もし会えていたらと時折考えることもあるけど、どんな顔して皆に会えばいい?
きっと、答えは見つからなかっただろう。
『世界は残酷だ』
…心から、そう思ったよ。
それから数か月後。
第36回壁外調査が行われ、そこで我々は新たな“謎”にぶち当たった。
巨人が
正確に言えば、その挙動を確認したと記された『手帳』を壁外で見つけたんだけど…
そこに書かれていた内容は、我々の想像を遥かに超える代物だった。
そして、新たな“仮説”を生み出すほどに、人類にとって重大な情報でもあった。
だから私は、団長のエルヴィンに進言した。
巨人の
しかし、巨人の謎は深まるばかり。
この世界の真相へ近づこうと歩み寄るほどに、どんどん深い沼にはまっていく。
_何故、壁を調べたらいけない?
_何故、巨人が人の言葉を話す?
わからないことだらけだ。
だけど、イヤ……だからこそ、ここで立ち止まるわけにはいかない。
それほどまでに私は、多くを失いすぎた。
生まれた家と育った土地だけじゃない…
_血の繋がりはあっても、見せかけだけの家族。
_血の繋がりなどなくとも、愛し合える家族。
_仲間のため、迷いなく行動を起こす旧友たち。
どれも
彼らは何故、死ななければならなかったのか。
人類は巨人が支配する世界に屈服し、滅びゆく
_知りたい。
____知りたい。
___________知りたい。
だから私は、研究を続ける。
例えそれが、人類にとって
そう。
私はどこまで行こうと、
___知に、飢えているんだ。
【 完 】
〜後書き〜
最終話までお読みいただき、ありがとうございました。
【知に飢えた悪魔】__”堂々完結”です!
(それ言いたかっただけ。笑)
原作ではハンジの過去が一切触れられていなかったこともあり、想像が膨らんでしまい、スピンオフにしてはかなり年数を跨った話になってしまいました・・・
探究心に溢れるハンジの信念や人格がどのように形成されていったのか、そこに焦点を当てた時、何となく『研究の師』にあたる人物がいたのではないかと想像しました。
それが、“ゾエ爺”だったわけです。
また、『仲間を失っても、前を向いて己の信じる道を進んでいく』というストーリー構成は、原作にあるリヴァイのスピンオフ【悔いなき選択】にも影響を受けています。
ハンジの気さくで明るい性格は、辛い過去の反動__だったのかもしれませんね。
■おまけ
◎参考作品について
知欲の塊であるハンジのスピンオフを書こうと思い立った時、哲学風な論述を台詞に取り入れたいと考えました。
そこで、本作では原作の【進撃の巨人】とは別に、著者が大好きな作品【チ。ー地球の運動についてー】の雰囲気を参考にさせてもらっています!
とは言え、哲学に関しては無知もいいところ・・・
なので入門書を購入し、さらっと哲学に触れてみました!(ニーチェとかも読んでいます)
哲学に関してはまったくの素人ですが、少しでもその雰囲気を感じてもらえていたら嬉しいです(´-ω-`)
◎関連作品について
何度かご紹介しておりますが、改めて・・・
本作のスピンオフは著者の別作品【進撃の巨人~もう一人の選択~】とリンクしております。
↓別作品の作品リンクはこちら↓
https://syosetu.org/novel/364414/
※こちらは本作でもチラッと登場した『カイル』君が主人公のサイドストーリーとなります。