「ちょぉぉいっ! なーにしてんのぉ!?」
俺は慌ててベイビーのもとへ駆け寄った。
「お前、まさか……俺がやってたから真似したんか!?」
返事はない。
というか、返事をする余裕もなさそうだ。
「ったく、無茶しやがって……!」
俺は急いで回復薬を取り出すと、ベイビーの身体へかけていく。
傷ついた身体に薬が染み込んでいく。
すると、しばらくして――
ぐぐぐっ。
「お?」
ベイビーが前脚に力を込めた。
倒れたままでは終わらないと言わんばかりに、ゆっくりと身体を起こしていく。
「おお……立てるのか」
ふらつきながらも、ベイビーは四肢でしっかりと地面を踏みしめた。
さっき爆発に吹き飛ばされたばかりなのに、もう立ち上がっている。
「お前、無茶すんなよなぁ?」
思わずため息が漏れる。
「……まあ、俺も人のことは言えんけどさ。」
そこでふと気づく。
「……人じゃないけど。」
自分で言っておいて、なんとも言えない気分になった。
そんな俺をよそに、ベイビーは自分の拳をじっと見つめている。
そして、顔を上げた。
その目に浮かんでいたのは、さっきまでの痛みに怯えた様子じゃない。
むしろ――妙に力強い目だった。
「……お前」
俺はベイビーの顔を覗き込む。
「やる気なのか?」
ベイビーは黙ったまま、俺を見つめている。
その小さな身体からは、もう一度やってやると言わんばかりの気迫が出ていた。
「……確かにな」
俺は自分の左ハサミを見る。
まだ爆発の痛みが少し残っている。
正直、二度と自分から爆発したくない。
けれど――こいつが強くなるために必要なら、俺だって付き合うしかない。
「強くなるには、これを使えるようにならなきゃいけないもんな」
ベイビーのほうへ視線を戻す。
「俺がやってるのを見て、お前もやらなきゃって思ったのか?」
「グルル……」
低い唸り声が返ってくる。
まるで「そうだ」と答えているようだった。
「……そうか」
俺は思わず笑った。
こんな小さな身体で、さっき自分が吹き飛ばされたばかりなのに、まだやろうとしている。
「わかったよ」
ハサミを伸ばして、ベイビーの頭を軽く撫でる。
「回復薬ならまだある」
ヤドを軽く叩いてみせる。
「お前がまた死にかけても、そのたびに治してやるよ」
ベイビーがこちらを見上げる。
「だから――」
俺も身体を起こした。
「一緒に強くなろうや」
そしてハサミを天へ突き上げる。
「デカくなって、誰にも負けねぇくらいになろうや!」
ベイビーも負けじと声を上げる。
洞穴の中に、二匹分の声が響き渡った。
「よぉし!」
俺は勢いよく振り返る。
「ついてこい!」
ベイビーもすぐ後ろについてくる。
「壁殴りに行くぞ!」
こうして俺たちは、再び洞穴の奥へ向かって歩き出した。
……まあ、鍛錬だけが目的というわけでもない。
壁を殴れば、もしかしたら鉱石が出てくるかもしれない。
護石なんかも出てきたら最高だ。
……決して鍛えるついでに鉱石や護石も集まればいいな、とかは思ってないからな
誰に言い訳しているのか、自分でもよくわからなかった。