にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第12話:形勢逆転

模倣正実モブは看守の服からメフィストの檻の鍵を取り出し、扉を開けた。

そしてそのままメフィストの手足の錠も外す。

 

『いや〜助かった助かった!ありがとね。ちなみに、押収された私の服とか鞄ってどこにあるかな?』

 

『既に回収済みです。こちらに』

 

模倣正実モブは綺麗に畳まれたヒフミの制服とペロロの鞄を差し出す。

 

『うおっ、しごでき!さんきゅうさんきゅう!じゃあヒフミちゃんの制服は君に着てもらって、そっちの正義実現委員会の制服を私が借りるね?あとこれは……もういらないか!看守ちゃんに処分してもらおう!』

 

メフィストはヒフミの演技をするために使っていた、薄汚れたペロロのぬいぐるみを倒れている看守の横に置いた。

 

『あ、あとちょっと電話だけさせて!』

『承知しました』

 

二人は着替えながら、メフィストは自身の携帯で誰かに電話をかけている。

 

『あ、もしもし?脱出できたよ!AIナギサの件、協力ありがとね!』

 

『え?ああそうそう、せっかく桐藤ナギサの声の用意と発信番号の偽装までしてもらったんだけどさ、実は偽物ってバレちゃってて……。正直危なかったね』

 

『えっ、"ブルアカ"開始まであと十五分!?やばいやばい!あ、時間はそのままで大丈夫!絶対間に合わせるから!それじゃ!』

 

メフィストは慌てて電話を切り、模倣正実モブの方へ向き直る。

するとメフィストは自身の顔を両手で覆い、まるで洗顔でもするかのように撫で回していった。

 

『よし、最後の仕上げだね。正実モブっぽい顔は……これでいいかな?』

 

メフィストが両手を離すと、その首から上がヒフミの顔とは全く異なる、一般的な正義実現委員会生と同じものになっていた。

その顔を見ておかしな点がないかを確認し、模倣正実モブは頷く。

 

『問題ありません。私も、側から見て阿慈谷ヒフミに見えているでしょうか?ウィッグのズレなど無いといいのですが……』

 

『うん、バッチリ!それじゃあ、ここから先は別行動だね!Good luck!』

 

メフィストは学園の出口へ走り出していった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

トリニティ総合学園前、中央広場。

先ほどまで模倣ナギサや模倣セイアたちが争っていた場所では、拘束したミメシスたちを一時的に体育館へ運ぶべく準備が始められていた。

そして現場での戦闘を行っていたマシロは、友人からかかってきた不可解な電話の内容をナギサへ伝えるべく広場の中を駆けていた。

 

嫌な予感がする。早くこのことを伝えなくては。

途中、模倣セイアとすれ違った。

 

(もう一人のセイア様、すごく疲れた顔をしてる……)

 

声をかけたかったが、今はそれどころではなく先を急ぐことにした。

そしてナギサのもとへ辿り着き、マシロは電話の内容を説明した。

 

「ナギサ様!先ほどメフィストの看守をしている友人から電話があったのですが、彼女いわく外部に協力者がいるとの報告がありました。それも、かなり焦った様子で」

 

「何やらその協力者がメフィストを脱獄させようとしていると彼女は言っていました。それとその電話が途中で切れてしまい、かけ直したのですがそれ以降繋がらなくなっています」

 

「看守が!?わかりました。ではマシロさんは地下収容所へ行き、看守とメフィストフェレスの様子を確認してきてください!外部協力者についてはこちらで調べます」

 

「わかりました!」

 

マシロは学園内へ向かって走り出す。

友人にはどうか無事でいてほしい。

そう思わずにはいられなかった。

 

すると学園の中から一人の正義実現委員会生が出てきた。

その生徒は自分もよく知る顔で、今日は学園内の警備をしているはずだった。

 

その生徒は息を切らし、何やら焦っている様子だった。

マシロは思わず声をかける。

 

「あの、どうしたんですか!?」

 

『ナギサ様に伝言を!それと、校内は今とても慌ただしくなっています!気をつけて!』

 

それだけ言うとその生徒は走り去って行ってしまった。

よほど急いでいたのか、肝心の伝言の内容を聞きそびれてしまった。

しかしあとはナギサに任せるしかない。

マシロは再び校内を目指した。

 

 

 

先ほどのマシロの報告を受け、ナギサは次に打つべき手を考えていた。

外部協力者の存在自体は既に認識していたため、そこに驚きはなかった。

しかし問題なのは今、このタイミングで何かを仕掛けてきたこと。

 

そういえば目の前の模倣ナギサたちはメフィストや外部協力者に関して一切触れていない。

捕えられた時の反応も、もう後がないというような印象を与えるものだった。

その時の様子から、ナギサの中に一つの結論が導き出される。

 

模倣ナギサたちも恐らくメフィスト独自の計画を聞かされていない。

模倣ナギサと模倣ミカを止めただけでは終わらない。

何としてでもメフィストを自由にさせるわけにはいかない。

しかし、ナギサはたどり着くのが一歩遅かった。

 

『……今朝だ』

 

「?セイアさん、何か仰いましたか?」

『視たんだ、今朝も!あの夢を!!君は日を跨ぐ頃に準備を終えたと言ったな!?私はその後に!今日の朝にトリニティが崩壊する夢を視たんだ!!』

 

先ほどまでの疲れ切った表情から一転、焦燥した模倣セイアはナギサのもとへ駆け寄る。

 

「何ですって!?」

『まだ脅威は去っていない!!終わっていないんだ!!恐らく奴だ!メフィストフェレスだ!奴が絶対に出て来られないよう監視の強化を……!』

 

そこまで話していた時、マシロと入れ替わるように正義実現委員会の生徒が駆け寄ってきた。

 

『ナギサ様、申し訳ありません!奴が、メフィストフェレスが脱走しました……!!』

 

考え得る限りの最悪の知らせが届いてしまった。

ナギサも模倣セイアも目を見開いたまま、声を出せずにいる。

 

『奴は今校内を逃走中で、複数の正実生で追跡中です!』

 

そして用件を済ませたその生徒は拘束されている模倣ナギサたちの元へ走っていく。

彼女たちは暴れられないよう、複数名の生徒たちによって体を押さえつけられていた。

 

それを見届けたナギサは、逃走したメフィストの確保手順を考えていた。

とりあえず顔を変えられる能力を持っている以上どの生徒も学外に出すことはできなくなった。

 

『みんな、ナギサ様から伝言!ミメシスのナギサ様とミカ様を拘束している錠の鍵を渡して欲しいって!確実に本人ってわかるから!』

 

外から他の生徒が入ってくるのも防がなければならない。

 

『ちゃんと持ってる?こっちがミカ様のだね!うん、確かに!ナギサ様のは誰が持ってるの?』

 

しかし逃走しているメフィストが、ヒフミの格好をしているなら捕まえやすい。

……いや、ヒフミだけではだめだ。

脱獄を手助けした者はどこへ行った?

メフィストは閉じ込めた上で手足を拘束されている。

とても一人で脱出したとは考えにくい。

必ず協力者がいる。

今逃げ回っているのは本当にメフィスト本人なのか?

 

「はいこれ!ナギサ様の鍵!」

 

入れ替わり、他の生徒と変わらない見た目、脱走して最初に何をするのか、逃げるだけなのか。

 

「えっ、な、何してるの?ナギサ様のところに持っていかなくちゃいけないんだよね!?」

 

先ほど報告に来た生徒は何と言っていた?

奴"は"今校内を逃走中で、複数の正実生で追跡中です!だ。

 

そいつだ。

その正義実現委員会生こそがメフィストだ。

 

「だ、だめだよ鍵を外したら!逃げられちゃうよ!ねえ、聞いてるの!?」

 

ナギサは模倣ナギサたちの方を向き、普段は出さないような切羽詰まった大声を張り上げる。

 

「鍵を持っている方!!他の誰にもそれを渡してはいけません!すぐに直接こちらへ持ってきてくだ……」

 

一歩遅かった。

模倣ミカの拘束が解かれ、覆い被さっていた生徒たちが一斉に吹き飛ばされた。

 

『……やっと動けるようになったね★』

『ありがとうございます、メフィスト様』

 

最悪だ。

罪と暴力の化身たちが鎖から解き放たれてしまった。

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