にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第18話:颯爽たるミカ

ミカは両肩に四連装ミサイルランチャーを担いでおり、先ほどの爆撃はそこから発射されたミサイルによるものだった。

その後もミカは次々とミサイルを撃ち込んではミメシスたちを蹴散らしていく。

 

『本物ミカちゃん!?なんて無茶苦茶な!』

 

あまりに突然の出来事でメフィストさえも動揺を隠せていない。

 

全ての弾を撃ち尽くしたミカは銃身を投げつけ、さらにミメシスへ攻撃を加える。

そして身軽になったミカは両足でバイク後方に立ち、身を屈めてマリーへ次の指示を出す。

 

「マリーちゃん、ドリフト!」

「行きますよ……はっ!!」

 

マリーがドリフトで車体後部を大きく回転させ、その勢いに乗るようにミカがバイクから前方へと飛び出していった。

そのままミカ自身がミサイルのような勢いでメフィストの方へ突っ込んで行き、体を回転させ飛び蹴りを放つ。

 

『させませんっ!』

 

しかし蹴りが当たる直前、模倣ミネが飛び出し片腕でミカの飛び蹴りを止めた。

ミカと模倣ミネとメフィスト、三者が睨み合っている。

 

ミカは模倣ミネを踏み台に後方へ飛び、宙返りしながら背負っていた銃を抜き、メフィストたちへ発砲しつつ着地した。

模倣ミネはすかさずそれを盾で防ぐ。

 

「ミカさん……!」

「ごめんナギちゃん、セイアちゃん、遅くなった。立てる?」

「私は大丈夫です。ですがセイアさんが……!」

 

ナギサは優しくセイアを抱き抱えていた。

一度落ち着いたようにも見えたが、その後はまるで魂でも抜けてしまったかのように、聞き取れないうわ言を繰り返すだけになってしまっていた。

 

「わかった。マリーちゃん!セイアちゃんを連れて離脱して!避難先は先生が指示してくれるはず!」

「わかりました!」

 

ミカの指示によりバイクで駆けつけたマリーは抜け殻のようになったセイアを抱え、その場を離れていった。

 

「ナギちゃんこれ着けて!先生と連携して指揮を取って、ここを切り抜けるよ!」

 

ミカはボランティア部内で使っているイヤホン型の通信機を手渡した。

 

「もしもし……」

〈もしもしナギサ!?助けに行くのが遅れた!本当にすまない!〉

 

「いえ、トリニティは私たちが守るはずでした。悪いのはその約束を違えた私です……」

 

「それは違うよナギちゃん。本当に悪いのは……」

 

ミカは前方でミメシスたちに守られている、ヒフミと同じ顔をした悪魔、メフィストフェレスへ視線を向ける。

 

〈反省会は後にしようか。私は今、ミカのセーフハウスからトリニティ市内に散らばった生徒たちに避難の指示を出してる!君たちもそこを脱出するんだ!安全なルートはサクラコたちに作ってもらう〉

 

「そんな!トリニティを見捨てるなど……!」

〈残念だけど、学園も街もミメシスで埋め尽くされてる。こちらに対抗できる戦力が整ってない以上、一度退いて立て直さないと本当に取り返しがつかなくなる〉

 

「くっ……!」

 

ナギサは悔しさに顔を歪ませる。

自分が愛した学園を凶悪なテロリストたちに奪われてしまう。

しかし優先すべきは生徒たちの安全。

ナギサは決断し、通信機のマイクをオンにする。

 

「聞こえますか!?今から私のセーフハウスを全て開放します!生徒の皆さんを一番近いところへ避難させてください!可能であれば分散して!」

「それからミカさん、先生との指揮は私が引き継ぎます。ですので避難準備が整うまでの間、奴らの相手をお願いします!」

 

「おっけ!!」

 

一時的に立ち直ったナギサを見て戦いに集中できると判断したミカは前へ向き直り、銃を構える。

 

「「ボランティア部、活動開始!」」

 

ミカとナギサの合図を皮切りに、急場凌ぎの戦いが始まった。

 

すると程なくして敷地の中へ数台の車が侵入、窓から次々と閃光弾をミメシスたちのいる方へ投げつけていった。

 

「レイサさん!今からシスターフッドと協力して生徒の避難を行います!レイサさんは無理のない範囲でミメシスたちの撃退をお願いします!」

 

「了解しました!この宇沢レイサ、トリニティを土足で踏み荒らす悪党を決して許しません!!」

 

一台の車から二人の生徒が飛び出し、周囲のミメシスへ攻撃を加える。

二人はトリニティ自警団所属、守月スズミと宇沢レイサである。

他の車からは次々とシスターフッドの生徒が飛び出し、怪我をしている生徒たちを車に乗せていく。

 

増援が来たのだ。

当初模倣ナギサから伝えられていた侵攻ルート上を警備していたシスターフッドや正義実現委員会の残りの生徒たちがようやく到着した。

街を埋め尽くすミメシスの妨害を受けつつも、トリニティを守るために駆けつけてくれた。

 

そして後方ではシスターフッドのリーダー、歌住サクラコが部員たちの指揮を取っている。

そこへ近づくミメシスは、同組織に所属する若葉ヒナタが全て薙ぎ払っていた。

 

「これ以上トリニティで好き勝手はさせません!」

 

一通り指示を出し終えたサクラコは一度周囲を見渡し、ミメシスに襲われている生徒をがいないかを確認した。

すると少し離れた所に襲われている生徒を発見し、近くに援護ができそうな生徒がいないことを悟ると車から飛び降りた。

 

「ヒナタさん、少し外します!救護者で一杯になった車から順次脱出できるよう、サポートと指揮をお願いします!」

「わかりました!」

 

サクラコはそのまま襲われている生徒の元へ急ぐ。

そして瞬時にミメシスたちを撃退した後、生徒へ優しく声をかけた。

 

「大丈夫ですか?あちらの車へ乗ってください。焦らないで、転ばないように」

「は、はい、ありがとうございます……っ!サクラコ様!後ろ!」

「っ!?」

 

サクラコが振り返ると同時に、彼女の横から蹴りが飛んできた。

サクラコはそれを素早く飛び上がって躱し、襲撃者と距離を取る。

 

『まさかこんな所で自身の原典とお会いできるとは。できれば少し『お話』してみたいですね』

「あなたは……!」

 

襲撃者は模倣サクラコだった。

自身と同じ見た目の敵の出現にサクラコは思わず身構える。

 

(怪我をしている生徒の前での戦闘は避けたい……!)

 

サクラコがどうにか模倣サクラコを引きつけようとしていた時、視界の端に白とピンクの影が映る。

 

「もう大丈夫ですよ。さあ、車が待機していますのでそちらへ向かってください」

 

救護騎士団所属、鷲見セリナだった。

彼女は怪我をした生徒を素早く誘導し、応急処置をして脱出する車へと乗せた。

 

「セリナさん、助かります!ミメシスは私が引き付けますので、セリナさんは他の方の救護に集中してください!」

「ありがとうございます!では私は怪我をされた方の応急処置と脱出補助を行います!」

 

そしてセリナは救護へ向かい、サクラコは目の前の敵に視線を戻す。

本物と偽物どちらが優れているか、互いの威信をかけた戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 

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一方、ミカと模倣ミネ、メフィストの戦いは激しさを増していた。

 

『くっ、当たらない……!』

 

ミカは模倣ミネとメフィスト、それと周囲のミメシスから発射される弾を全て正確に避けつつ、的確に反撃を繰り出していた。

戦えるミメシスは確実に減っている。

 

しかしミカの残弾数も無限ではない。

確実に攻めていけばいつかは倒れるはず。

ミメシスたちはそう考えていた。

しかしそんな考えは甘いとすぐに思い知らされる。

 

「ミカさん!使ってくださいっ!!」

 

ミカの後方で戦っていたレイサがミカの状況を察知し、落ちていた模倣ミカの銃とマガジンをミカへブーメランのように投げ渡す。

 

「さんきゅ⭐︎」

 

ミカは後ろ手にそれを受け取り、二丁流となったことでさらに攻撃性を増し、さらに次々とミメシスを撃破していった。

 

そしてメフィストを守る兵がいなくなった瞬間、ミカは目にも留まらぬ速さでメフィストの懐に潜り込み、向けられていた銃を蹴り飛ばした。

 

『なっ!?』

「ヒフミちゃんと同じ顔、あなたがメフィストフェレスだよね?」

 

ミカは銃を突きつけ、獲物を前にした狩人のような目でメフィストを睨む。

その目つきには怒りによる心の迷いなどは一切感じられず、メフィストは心理戦に持ち込むことが不可能であることをすぐに悟った。

 

『やっぱり強いですね、本物ミカちゃん。でもまだこっちにはミネちゃんだっていますからね?さすがの君も一人では……』

「一人じゃないよ」

 

メフィストの言葉をミカが遮った直後、メフィストは自身の後頭部へ銃を突きつけられていることに気付いた。

 

「何やってんだテメェ……」

 

その持ち主は正義実現委員会の委員長にして学園最強の戦略兵器として名高い生徒、剣先ツルギだった。

 

『わお!もう戻ってきたんだ!早いなぁ〜!ていうか何って、正義実現委員会の名の下に学園を守るべく戦っているのですけど?』

 

「ふざけるな!その制服は正義に身を捧げた生徒たちの覚悟の象徴だ。テロリストなんかが袖を通していいものじゃない……!」

 

『私はこの学園、ひいてはこのキヴォトスの新たな正義の象徴ですよ?間違ってはいませんね』

 

メフィストは両手を上げ、降参のポーズを取っているが余裕は一切崩さない。

 

『メフィスト様!今救護に……っ!!』

 

模倣ミネがメフィストの元へ向かおうとした所、不意に横から強烈なパンチをもらった。

反射的に盾で受けたものの、ややしばらく腕の痺れが引かなくなるほどの衝撃だった。

 

「『救護』という言葉をこんな形で使われるのがこうも不快だったとは。ならず者に容赦は致しませんが、覚悟はできているのでしょうね?」

 

救護騎士団団長、蒼森ミネも戦線に加わる。

 

『う〜わミネちゃんまで来た。ツルギちゃん、助けて〜!』

 

メフィストの言葉通り、模倣ツルギが上から飛んできた。

 

『もう一人の私か、面白くなってきたなァァァァァァ!!』

『これで三対三だね。まあ相変わらず不利なのはこっちだけど……んん?』

 

メフィストは視線を逸らし、治療を受けていた模倣ミカたちの方を見る。

 

 

 

『……じゃえ。みんな死んじゃえ……!』

 

模倣ミカが目を覚まし、地面に這いつくばったまま右手を天へと掲げていた。

それを見たミカは彼女が何をしようとしているのかを瞬時に理解し、同時に怖気に襲われた。

 

「ナギちゃん!!撤退の状況は!?」

「九割完了しています!あとはここにいる人たちだけです!」

「わかった!みんな離脱するよ!ここはもう保たない!」

 

今日初めて見せるミカの焦った顔。

詳細は分からずともその重大さは伝わったようで、ミネはすでに車を取りに行っており、ツルギはナギサを抱えて全速力で車へ走っていた。

 

そして残った生徒を乗せた車が発車し、一番最後にミカが離脱した。

彼女は最後までメフィストたちから目を離さず、いつでも反撃できる状態で行動していたためミメシスたちは一切追撃をすることができなかった。

 

そして入れ替わるように一体のミメシスがメフィストの元へ駆け寄ってくる。

 

『メフィスト様、上を!い、隕石が降ってきます!!』

 

『わかってるよ。トリニティの皆さんも判断早いね〜まったく。ミカちゃん後で覚えときなよ?』

 

(どうやら私は『才能無い側』っぽいからな、うまくいくかどうか……!)

 

メフィストは右手を横に振るった。

するとそこに、横長のワープホールのようなものが空間に穴が開くように形成される。

それを見たミメシスは驚いていた。

 

『こ、これは……』

『色彩の力だよ。さっきここに現れた時に一か八か触れてみたんだ♪いやー上手くいってよかった!ほら、みんな避難して〜』

 

ミメシスたちも続々とワープホールの中へ逃げ込んでいく。

そして広場に誰も居なくなったところで、模倣ミカの呼んだ隕石が轟音を立てて落下した。

落ちたのは三個で、隕石としては小ぶりだがそれでも周囲を焼き払うには十分なほどの大爆発を引き起こし、広場は焼け野原となった。

 

爆発と炎が収まってきたところで再びワープホールが開き、ミメシスたちが現れる。

 

『どうにか校舎は無事だね。ティーパーティーの書類とか貴重な古書とか、手に入れたいものが失われなくてよかったよ』

 

『さ、みんな踊れ踊れ〜♪悪魔……おっと、天使たちによる新居祝いのパーティータイムだ!』

 

天使たちの学舎から一転、そこは悪魔巣食う地獄の城へと変わり果てた。

 

そして学園が占拠されたことにより、この日トリニティは完全敗北を喫した。

 

 

 

にせティーパーティーの逆襲 第1章 【完】

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