にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第5話:作戦会議

「お待たせ!」「待たせたね!」

 

会議室の扉を開き、先生とセイアが入室する。

既に主要なメンバーは揃っており、二人が最後だった。

部屋に入ってきた時のセイアを見てその復活を察したようで、皆喜びに満ちた表情をしていた。

 

中でも、ナギサとミカは特に嬉しかったようだ。

 

「セイアさん……!」

「ナギサ、ミカ、みんなも本当にありがとう。後で個人的に礼を言わせてほしい」

 

「おかえりセイアちゃん。その顔、完全復活ってことでいいのかな?」

「ああ、みんなからの差し入れのおかげで元気いっぱいさ。美味しかったよ。一つ残らず完食さ」

「えっ、全部食べたの?さすがにみんなの全部は食べきれないかなーって思って、保存の効くマカロン選んだんだけど!?」

 

驚くミカをよそにセイアと先生は席につく。

メンバーが揃ったことで、ナギサが司会となり作戦会議が開始された。

 

「ではこれより『トリニティ奪還作戦』についての作戦会議を行います。まずは現状判明している情報の共有から行いましょう」

 

各出席者たちが各々見聞きしたミメシスたちの情報を説明していく。

まずはセイアの番だった。

 

「私の話は少し長くなる。こんな時に申し訳ないが、あの子が残してくれた数多くの情報と、あの子の想いも話させてほしい。私の戦う理由はトリニティのためだけではなく、そこにもある」

 

セイアは夢で模倣セイアから聞いたこと、予知能力を受け継いだことを説明した。

長くなりすぎないよう、プライバシーに踏み込みすぎないよう細心の注意を払って。

 

セイアが話している間は誰も口を挟まなかった。

聞こえてくるのはセイアの声と、時折誰かが鼻をすする音だけ。

 

「……以上が私とあの子の持つ情報だ。役立ててほしい」

 

返事は無かったが、明らかにその場の全員が殺気立っている。

先生でさえも目つきが鋭くなっている様子だった。

 

「では次に、メフィストフェレスの作り出したミメシスについて、図書委員会のシミコさんお願いします」

 

会議に出席していたのはシミコで、委員長のウイは不在だった。

もしや学園の図書館に閉じこもっていたせいで逃げ遅れたのではないかと先生は心配になる。

 

「シミコ、ウイがいないけど彼女は無事なの?」

「あ、すみません。委員長は本日オンラインでの参加です……」

 

〈ご、ご心配をおかけしました……。襲撃に遭った日も図書館に閉じこもっていたのですが、シミコとヒナタさんに助けられまして……〉

 

部屋のスピーカーから少し慌てたようなウイの声が聞こえてくる。

先生の心配は杞憂だったようだ。

 

「でも委員長が居てくださって助かりました。おかげでミメシスに関する書籍を探し、持ち出す作業がスムーズに進みましたから!」

 

襲撃の日、図書委員とヒナタで役に立ちそうな本をトリニティから持ち出していたのだ。

ボランティア部に本に詳しいシミコがいてくれて本当に良かったと先生は心の中で感謝を述べる。

 

「では続けますね。メフィストの作り出したミメシスも、意思を持つという違いこそあるものの性質は我々の知るミメシスと同質のようです。そして彼女たちの正体については、ハナコさんの方が詳しくご存知のようです」

 

シミコから指名を受けたハナコが口を開く。

 

「はい。彼女たちはまるで生きている人間のように振る舞っていましたが、それは彼女たちの意思ではなく、遠隔地からドローンのように操作しているオペレーターたちの意思だったのです」

 

「そしてそのオペレーターは皆一般市民。彼らの発言から、トリニティへ悪意を持っているようでした」

 

「いえ、悪意と言っては語弊がありますね。むしろ正義のため、トリニティの不正を正すべく行動しているような印象でした」

 

「彼らの意思を決定づけたであろう記事は私も見たよ。具体的な数字を出しつつ虚実を織り混ぜて、トリニティへ不信感を持つように仕向けられている。全く、頭の中に悪魔でも住んでいるような者でないと書けないような巧妙さだったよ」

 

八割呆れ、一割感心、一割殺意のような言い方でセイアが付け加える。

ハナコも内容は確認していたようで、同意するように頷く。

 

「セイアちゃんの仰る通り、トリニティの内情を知る私達からすれば出鱈目もいいところという杜撰さですが、外部の方には判別が難しい内容です」

 

「そして、それを見た方々含めトリニティへ敵対することを選んだ方がミメシスを操るのに使っていたスマートフォンのゲーム、それが……」

 

「ブルーアークカタストロフ」

 

ハナコがその名を呟く。

青春と方舟の惨劇、メフィストフェレスの企画した悪趣味なゲーム。

 

「彼らはいわゆるスマートフォンゲームを通してミメシスを操っているようで、言うなれば先生の模倣です。事実、プレイヤーのことを『先生』と言い表していました」

 

「また、ゲームを始めるにはクレジットカードの登録も必要で、これによりミメシスが倒されても課金をすることで復活させることができるようです」

 

「これによりヘルメット団やオートマタといった傭兵を雇うことなく、質は劣るものの無尽蔵の兵を用意し数の暴力でトリニティを倒し奪い取る。これが敵の作戦と目的だと推測されます」

 

ハナコは無言でアツコの方を見る。

トリニティは既に奪われてしまったが、これで終わるとは思えない。

その先の目的について知るアツコが次の説明を行う。

 

「私たちアリウスがどうにか聞き出せた情報だと、敵の目的はこのキヴォトスをミメシスで埋め尽くすことだって言ってた。誰でも手を出せるゲームという特製上、ミメシスはまだ増えると思う」

 

「それと私はエデン条約調印式の事件の時、ミメシスを顕現させるための『電池』のようなものとして利用されたことがある」

 

「これは通常『ロイヤルブラッド』と呼ばれる一族の血を引く者にしかできないことなんだけど、混血でもその役割は果たせる」

 

「今、私たちの元リーダー錠前サオリが敵に捕われている。私ではなく混血である彼女を狙ったのは、大量のミメシスを管理するという特製上おそらく質よりも量を重視するため。体力の無い私よりも彼女の方が長く保つと考えたんだと思う」

 

アツコの目つきが悔しさから鋭くなる。

 

「私は、スクワッドはサッちゃんを助けたいし、トリニティのみんなに助けられた恩も返したい。だから、私達も一緒に戦う!」

 

アツコの強い思いにナギサも同調する。

かつては敵対しあった者同士でも助け合い、共に戦うことだってできる。

 

「トリニティを奪還する前段階として、この悪趣味なゲームを止めるためにサオリさんの救出を優先する必要がありますね」

 

それを聞いた先生は説明を加える。

 

「このゲームだけど、おそらく私から奪ったタブレット『シッテムの箱』とクレジット……大人のカードを解析したんだろう。ネット上に投稿されているゲーム画面やプレイ動画を見てみたんだけど、本当によく出来ているよ」

 

「それにしても、私以外起動すらできないシッテムの箱まで解析されるなんて……」

 

その時、嘆く先生の言葉を遮るように、先生のプライベート用スマートフォンから通知音が鳴った。

 

「失礼、機内モードにしたはずなのに…………!?」

 

画面を見て固まる先生。

そうなるのも無理はない。

なぜなら……。

 

 

 

「否定。奪われたシッテムの箱は現時点で起動、解析されていません」

 

その端末にはシッテムの箱メインOSの一人、プラナが映っていたからだ。

 

「プラナ!?なんで!?どうして!?」

「先生がミメシスに襲撃された際、アロナ先輩が私をプライベート用の端末に逃してくれました。それでも受けたダメージは大きく、再起動に時間はかかってしまいましたが」

 

「遅くなりました、先生。私も共に戦います」

「プラナ……!」

 

予想外の味方の登場に心が昂る先生。

 

「ど、どうしたのです先生……?」

「あっ、ええとこれは……」

 

心配そうに見るナギサに、先生は何と説明しようか戸惑う。

 

「先生、今はオンライン通話にて会議をされているのですよね?その部屋番号を教えていただければ私も参加可能です。トリニティの皆さんへ説明の場を設けさせてください」

 

先生はプラナの指示に従う。

すると各生徒たちのPCの会議画面に一つのアカウントが追加される。

 

「トリニティ総合学園の皆さん、初めまして。私は先生の……秘書を務めております、プラナと申します」

 

突然先生の秘書を名乗る女児の登場に一時騒然となる会議室。

しかし急を要する事態なので皆深くは追求せず、先生を暖かく見守り事情を聞くことにした。

 

(絶対誤解されてる……!)

「まず、現在公開されているゲーム『ブルーアークカタストロフ』、略してブルアカの原型にシッテムの箱が使われたことは間違いありません」

 

「ですがおそらく箱を直接操作したのではなく、これまでの先生の戦いの記録などからその特性を調べたのでしょう。箱を起動した時に発せられるアロナ先輩が起きた信号が確認できていません」

 

「それにもし箱を完全に掌握されているのであれば、サンクトゥムタワーは既に敵の手に堕ちているはずですから」

 

「ですので市民の方々が使っているものは、ミメシスを生徒のように指揮する機能に特化した簡易版と表現するのが妥当でしょう」

 

「そしてこのゲームは民間のゲーム開発企業、Meister(マイスター)社によって運営されています。一見普通の会社ですが、関係者は全員メフィストの息がかかっていると見て間違い無いでしょう」

 

プラナの説明にセイアは納得した様子を見せる。

 

「先生の戦いの記録、ね。メフィストは捕食したミメシスの記憶を継承できると聞いている。おそらく情報源はそこだろう。そのシッテムの箱について知っている生徒は多くないだろうに、それを引き当てるのにどれだけ食ったのか……」

 

「ありがとうございます、プラナさん。そのアロナさんはおそらくあなたと、先生にとっても大切な人なのですよね?我々も協力します。必ず取り戻しましょう!」

 

「ありがとうございます、ナギサさん。ですが問題はミカさん、ツルギさんを始め強力な力を持つミメシスが敵にいる上に、そもそも敵の数が多いという問題があります。アロナ先輩を取り戻す前にそれらを何とかしなくてはいけません」

 

プラナの心配はもっともで、ナギサは既に対抗策の準備を進めていた。

ナギサは近くに座るサクラコへ目配せする。

 

「前線へ出る方にはこちらを支給します」

 

合図を受けたサクラコはカメラに映るように一つの銃弾を見せる。

それは銀色に光り輝いており、一目で特別製だというのがわかった。

 

「ミカさんがご自身のミメシスから押収した銃に込められていた弾丸を解析したところ、通常のものとは異なる成分が混ぜ込まれていることがわかりました」

 

「こちらはそれをベースに開発した対ミメシス特効弾『銀の弾丸』です」

 

強力な怪物を一発で仕留めたとされる伝説になぞらえたネーミング。

セイアは妹がそれに撃ち抜かれた瞬間を思い出していた。

 

「そうか、ミメシスのサクラコが言っていた『特製』とはそういうことだったのか……」

 

模倣セイアの命を奪った凶器をこちらも使うことになりセイアは少し複雑だった。

しかしもはや手段を選んでいられる状況ではない。

妹との約束のため、セイアは覚悟を決める。

 

「いや、よくやってくれたサクラコ。少しでも多く製造できるようこちらも人員配備などで協力するよ。また後で相談しよう」

「ありがとうございます」

 

セイアからの提案にサクラコは頷きつつ続ける。

 

「まずは古書の解読にご協力いただいた図書委員会の皆さん、アツコさんの血液の成分の解析、培養をサポートしてくださった救護騎士団の皆さんにアツコさん、本当にありがとうございます」

 

「銀の弾丸の開発は難航しましたがどうにか完成し、皆さんの手元へ行き渡らせることができそうです」

 

サクラコは深々と頭を下げる。

そして頭を上げ、ミネと目を合わせ互いに微笑む。

内輪争いの多いトリニティに、確かに団結が生まれつつあった。

 

「特に図書委員のウイさん、シスターフッド秘蔵の古書の解読はあなたにしか頼めず、『ご無理』をさせてしまい本当に申し訳ございませんでした」

〈ヒッ……!?〉

 

一部を除いて。

 

「……では続けますね?次にこちら側の戦力をどのように分配するかです」

 

ナギサが手元のタブレットを操作し会議の画面にトリニティの校舎を表示させる。

その後、セイアが視た未来の内容を踏まえてナギサは作戦を立て、各組織へ指示をしていった。

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