にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第10話:アロナ奪還

トリニティ周囲から次々と爆音や銃声が轟く中、補習授業部の四人はMeister社襲撃のため巡航戦車クルセイダーに乗り込む。

戦車の後ろには二つのコンテナが繋がれていた。

一つはコハルの、もう片方はヒフミの用意した秘密兵器だ。

 

そして先生はマリーの運転するバイクに同乗するため、彼女の準備が整うのを待っていた。

 

「これがシスターフッド所有のバイク、カッコいいな……ん?」

 

ふとハンドルを見ると二つのヘルメットが掛かっていた。

一つは普通の黒いヘルメット、もう一つは猫耳型の装飾のついたオレンジ色のヘルメット。

おそらくマリーと先生で一つずつ使うのだろう。

 

 

 

先生は迷わず猫耳型のヘルメットを手に取った。

 

「私はオレンジ色が好きで猫も好きだ。だからこのヘルメットを選ぶ。何もおかしくはない」

 

そこへライダースーツへと着替えたマリーがやってきた。

 

「お待たせしてすみません、先生!黒い方のヘルメットが先生ので……ってあああああダメですダメです!!そっちは私のですダメダメダメダメ嗅がないでください!!!!」

 

謝肉祭の時にさえ見せなかったような慌てた様子で先生からオレンジ色のヘルメットを奪い取るマリー。

二人はバイクに乗り込み、マリーはバイクのエンジンをかけた。

 

マリーたちの準備が整ったのを見て、ヒフミは補習授業部と顔を見合わせ、車内の各制御装置の最終確認を行う。

 

「メインOS設定完了。ギア・ニュートラル確認。車内酸素濃度正常。運動制御用パラメータ異常なし。エンジン動作正常。牽引物による動作への影響無し。全システムオールグリーン」

 

「補習授業部、阿慈谷ヒフミ、クルセイダー、行きます!!」

 

ヒフミはアクセルを踏み込み、クルセイダーは颯爽と大地を駆けてゆく。

それを見た先生は子どものように目を輝かせ、ヒフミの真似をする。

 

「連邦捜査部S.C.H.A.L.E、先生およびシスターフッド、伊落マリー、マシンシスターフッダー、出るぞ!」

「ええっ!?こ、このバイクには『恩寵の神馬』という名前が……うう、伊落マリー、マシンシスターフッダー、行きます!」

 

クルセイダーを追いかけるようにマシンシスターフッダーも飛び出していった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

Meister社を目指し並走する戦車とバイク。

その先にはユスティナ信徒たちが待ち構えていた。

それを見たマリーは戦車の前に出て、ハンドルから手を離し銃を構える。

 

「しっかり捕まっててください、先生!」

 

直後、マリーの銃から数発の弾丸が発砲された。

その銃には銀の弾丸が込められており、それらはミメシスたちに命中すると小さな爆発を引き起こした。

 

『うわああああああっ!?』

『うっ、腕が!腕がああああああ!!』

 

肩を撃ち抜かれたミメシスは肩ごと腕が吹っ飛んでおり、それを見た周囲のミメシス共々大慌てしている。

 

「うわっ、爆発した!何で!?」

〈……すみません、思わぬ副作用があったようです〉

 

直後、銀の弾丸製造の音頭を取ったサクラコから通信が入る。

 

〈銀の弾丸はミメシスに致命的なダメージを与えることができるのですが、その素材の性質上ミメシスの体内エネルギーに反応して爆発を起こすようなのです〉

 

〈混乱を招いてしまい本当に申し訳ありません。戦闘には大きな影響は無いとは思いますが、どうかお気をつけて……!〉

 

その顔を見ることはできないが、苦悶の表情を浮かべているのが簡単に想像できた。

 

しかし当のマリーはそんなこと気にもかけず、次々とミメシスを撃ち倒していく。

辺りは特撮ヒーローのバイクシーンのように次々と爆発が起こり、マリーはそれを華麗に躱す。

 

「うおおおおおっ!!マリー!マリー!私が悪かった!もうちょっと優しく運転して!!」

 

そうこうしている間に一行はMeister社前へとたどり着いた。

 

 

 

『ようこそMeister社へ。本日はどのようなご用件でしょうか?』

 

ビルの前には模倣ハナコが待ち構えていた。

しかしマリーはそれを無視し、ビルのガラス戸を銃弾でぶち破ってバイクごと侵入していく。

 

「うおおおおおっ!!マリー!マリー!私が悪かった!もうちょっと優しく運転して!!」

『なんて野蛮な!』

 

そして戦車からもコハルとハナコが飛び降り、ハナコは先生たちに続きビルへと向かう。

 

『おや、性懲りも無くまた現れましたね、オリジナルさん。これまで怠け続けたツケでも払いに来ましたか?』

 

しかしハナコは模倣ハナコの言葉を無視してビルへと向かう。

この間とは違い心の迷いの無い様子に、模倣ハナコは苛立つ。

 

『何とか言ったらどうです?私が憎いのではないのですか?』

「生憎ですが、私はあなたのようなつまらない人の相手をしている暇はありませんので」

 

爽やかな笑顔を浮かべ走り出すハナコに、模倣ハナコは舌打ちし銃を向ける。

しかし直前で飛んできた銃弾に気づき、それを躱す。

 

「あんたの相手は私よ。ハナコ、行きなさい!」

 

発砲したのはコハルだった。

 

〈コハルちゃん!コンテナを預けます!どうかご無事で!〉

 

ヒフミは戦車を操作し、コンテナを切り離す。

切り離されたそれは自走式へと切り替わり、コハルへと随伴する。

ハナコは少し後ろ髪を引かれる思いをしていたが、それでも走り出した。

 

 

 

 

「コハルちゃーん!!」

 

しかしハナコは突如振り返り、コハルの名を呼ぶ。

 

「何?」

 

何か言い忘れたことでもあるのだろうか。

作戦に関する重要な情報を聞き逃さないよう、コハルと模倣ハナコは聞き耳を立てる。

 

「愛しています!!」

 

しかしハナコの口から飛び出したのは作戦も何も関係ない、ただの愛のこもった応援だった。

ハナコにしては珍しく直球で、恥ずかしさからか顔を少し赤らめている。

 

「はあ……知ってるわよ!!」

 

コハルは呆れつつ、負けじと大きな声で返す。

それを聞いたハナコは安心したのか、今度こそビルの中へと消えていった。

 

『私を挟んでイチャイチャと……!!』

「与えられた役割をこなすことしか頭に無いあんたには関係ないでしょ。ハナコを傷つけた報い、必ず受けさせるんだから!」

 

模倣ハナコとコハルは銃を構え、互いを討ち取るべく走り出した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

一方、アズサとヒフミはコハルの戦いに邪魔が入らないよう周囲のミメシスを片付けていた。

 

〈アズサちゃん、だいぶミメシスの数が減ってきました!私たちもコハルちゃんの援護に……〉

 

その時アズサは何かを感じ取ったようで、動物のようにぴくんと反応した様子を見せた。

 

「いや、どうやらそうもいかないらしい」

 

アズサは大通りの先へ目線を向けている。

ヒフミも戦車の覗き窓からその方向を見ると……。

 

『お久しぶりです、補習授業部の皆さん。この間は楽しかったですね!私は途中で捕まっちゃいましたけど、あの後みんなで晩御飯でも食べに行ったんですか?』

 

ミメシスたちの総大将、メフィストフェレスがこちらへ向かって歩いて来るのが見えた。

 

「お前のことは全部聞いている。今更ヒフミの物真似なんかしなくていい」

 

意地の悪い笑みを浮かべるメフィストに、アズサは冷たく言い放つ。

 

『冷たいですねぇ、せっかく今日もアズサちゃんオススメの香水つけてきたのに。あれ、いいセンスでしたよ?気に入ったので後日買いに行っちゃいました♪』

 

この香水というのは、メフィストとヒフミの見分けをつけるためにアズサがメフィストに振りかけたもののことだろう。

普通の会話のように人の神経を逆撫でしてくる相手にアズサは臨戦態勢を取る。

 

〈アズサちゃん、私が前に出ます。隙ができたら思い切り撃っちゃってください!〉

 

アズサの横にヒフミの駆るクルセイダーが並んだ。

 

『おや、そっちの戦車を操縦しているのはヒフミちゃんですか?そんなところに籠ってないで、同じヒフミ同士一緒に写真でも撮りましょうよ♪』

〈……私の顔で悪いことをするのは楽しかったですか?〉

 

ヒフミが車内のスイッチを押したことでクルセイダーが牽引していたコンテナが開き、中から多数の円盤型の機械が飛び出してきた。

それらは下部に車輪が付いており、クルセイダーの周囲を走り回っている。

 

『んん?何ですこれは?』

 

すると円盤型の機械から、次々と忍者装束を纏ったペロロ『ニンペロさん』の人形が展開される。

 

〈あなたのような卑怯な人に、私たちは絶対負けません!〉

 

悪魔と天使、同じ顔をした者同士が相見える。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「連邦捜査部S.C.H.A.L.Eです!現在このMeister社にてコンピューターウイルスの作成、提供をしているという通報が入っています!シャーレの権限に基づきサーバールームを調べさせてもらいます!」

 

先生とハナコとマリーは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う社員たちの間をすり抜け、サーバールームへ立ち入る。

 

「すごいですね、シャーレってこんなこともできたんですね……」

「いや、さっきのは適当言っただけだよ」

「ええ!?」

 

「ですが、それで逃げるということは後ろめたいことがある証拠。どの道何かしらの罪でお縄につくことにはなるでしょうね」

 

サーバールーム内を物色していると、机の上に先生のシッテムの箱と大人のカードが置かれているのが見えた。

 

「あった!遅くなったね、アロナ」

 

先生はシッテムの箱と起動コードを入力する。

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

「……はっ!?こ、ここは!?」

 

シッテムの箱が起動し、青いセーラー服の見慣れた少女が顔を見せる。

 

「遅くなったね。迎えにきたよ、アロナ」

「お待たせしました、先輩。先輩が私を逃がしてくれたおかげで、こうして助けに来ることができました」

 

「先生、プラナちゃん!来てくれたんですね!ありがとうございます!」

 

「先生、ブルアカのシステムを管理しているメインのサーバーを見つけました!」

 

先生とプラナはアロナとの再会を喜ぶも、感傷に浸っている時間は無い。

ハナコの案内に従いサーバーの前に先生とマリーは集まる。

 

「よし、じゃあサーバー内への侵入はアロナとプラナに任せるよ」

「わかりました!」

「了解です」

 

「プラグイン!アロナちゃん.exe、プラナちゃん.exe、トランスミッション!」

 

先生の声を合図にアロナとプラナはブルアカのメインサーバーへ侵入した。

 

天才と大人による無慈悲な蹂躙が、今始まる。

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