にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

33 / 46
第14話:シスターフッドVSユスティナ聖徒会

その頃、トリニティ総合学園西側ではシスターフッドが模倣サクラコ、ヒエロニムスたちと激戦を繰り広げていた。

 

数はミメシス側の方が多いものの、大人のカードによる無限復活を封じられたこととサオリが解放されたことでミメシスたちの力が弱まっていたことにより、シスターフッド側が有利になりつつあった。

 

そして、ミメシス側が押されている原因はこれだけではなく……。

 

『……なあ、俺たちのやってることって本当に正しいのか?』

『どうしたんだよ急に。トリニティは色々不正してたって聞いたじゃん!それより撃たないとやられるぞ!?』

 

一人のミメシスは銃も構えずその場に立ち尽くし、今にも消え入りそうな声で仲間に尋ねる。

学園を取り戻すために戦うトリニティ生、そのトリニティの不正を正すべく戦うミメシス、どちらも鬼気迫る表情で互いに傷つけあっていた。

 

何もかもが悲惨だった。

ミメシスたちは銀の弾丸の影響で腕や足、頭を失っているのに亡者のように立ち上がり、シスターフッドも頬や腕から血を流しながら歯を食いしばって戦っている。

そして辺りには炎や黒煙が上がり、まるで地獄のような光景がそこには広がっていた。

 

『そうだけど……この子たちって、本当に悪い奴らなのか!?俺たちと違って生身の体で戦って、銃弾が当たれば血だって出る!それなのに学園のために、逃げずに必死に戦ってる』

 

『俺にはもう……これ以上寄ってたかって子どもをいじめるなんてことはできない……』

『……』

 

互いにガスマスクをしているのでその表情までは読み取れない。

しかし、その心情を察するのは難しいことではなかった。

会話していた相手も内心その主張に同意しており、銃を握る手がひどく重く感じられるようになっていた。

その時。

 

「弾幕が薄いところがあります!突破口は私が!!」

 

一人のシスターフッド生が前へ飛び出して来た。

彼女は銃口をこちらへ向けている。

先ほどまで突っ立っていたミメシスもそれに気付き、思わず銃を構え狙いを定めた。

しかし……。

 

 

 

『……何故撃たない!?』

「あなたの方こそ!」

 

銃を突きつけ合うシスター、そのどちらも引き金を引くことはなかった。

そして今、引き金を引けなかったことでそのミメシスは完全に戦意を喪失し、銃を落としてしまった。

 

『駄目だ……俺には撃てない。子どもを傷つけるなんて……!』

 

『こんなはずじゃなかった。特別な力を手に入れて、良いことをして、生きてていいんだって思いたくて。それなのに、俺はまた間違えた……』

 

『ごめんなさい……こんなことはもうしません……!』

 

ミメシスは膝をついて蹲り、声を震わせながら謝罪の言葉をうわ言のように呟く。

それはまるで、母親に怒られ泣きじゃくる子どものようだった。

 

それを見たシスターフッド生は銃を下ろしてゆっくりと歩み寄り、ミメシスの頭を優しく撫でる。

 

『何を……?』

 

「……私にもわかりません。ですが、生きるのに特別な力や資格など必要無いということだけはわかります。それに、罪を自覚し武器を捨てた方を痛めつけるようなことは、私にはできません」

 

頭を撫でる手を通して、人の心の暖かさがミメシスを操作するプレイヤーの中に流れ込む。

名も知らぬシスターの言葉が、一人のプレイヤーの心を立ち直らせた。

 

『……ありがとう。決めたよ、俺、ヴァルキューレに自首する』

「あなたの勇気ある行動に敬意を。神はきっと、お許しになるでしょう……っ!?」

 

その時シスターフッド生が驚いたような顔をする。

その理由は後ろのヒエロニムスだった。

無防備な敵がいると判断して追撃しに来たのだ。

 

目の前に迫る巨体、顔は空洞となっていてその表情は窺い知れない。

天使と言うにはあまりに不気味な怪物が目の前に迫り、シスターフッド生は足がすくむ。

その時……。

 

 

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

先ほどまで戦意を失っていたミメシスが落ちていた銃を手に取り、ヒエロニムスへ発砲した。

 

「なっ、何を!?」

『俺たちミメシス同士ではダメージを与えることはできない!けどノックバックは与えられる!こいつが怯んでるうちに、誰かこのシスターさんを安全な所へ!!』

 

それを聞いた他の部員が援護に駆けつける。

反対にミメシスたちからは反発の声が上がった。

 

『お前今更そっちに寝返るの!?自分で始めたことじゃんか!半端な奴!』

 

そのミメシスの言う通りだった。

 

『そうだ、俺は何もかも半端なクソ野郎だ!けど、完璧なクソ野郎にはもっとなりたくない……!!』

『!!』

 

罪悪感、恐怖のせいかその声は震えている。

しかし、一人が見せた勇気は多くの者に影響を与えた。

 

会話を聞いていたミメシスが一人、また一人とヒエロニムスやトリニティに敵対するミメシスに攻撃を仕掛けていく。

中にはこれ以上被害を拡大させないために、ゲームからログアウトし、戦場から消えていくミメシスも出て来た。

皆、どこかでこのゲームの歪さと自身の行為の正しさに悩んでいたようだ。

 

その様子を見て模倣サクラコは苛立ち混じりに舌打ちする。

 

『どいつもこいつも……っ!?』

 

先程まで交戦していたサクラコがいない。

どこへ行ったのか辺りを見回していると、突如背後から声が聞こえた。

 

「私はここですよ」

『なっ!?』

 

いつの間にかサクラコに後ろに回り込まれていた。

しかもその姿は先程までの制服と異なり、ユスティナ聖徒会の礼装に身を包んでいた。

動きやすくなったことと周りのミメシスと同じ格好だったことで、模倣サクラコは彼女を見失っていたのだ。

 

『なんて破廉恥な格好を……!?』

「これが私の覚悟です!!」

 

サクラコは下から模倣サクラコの銃を蹴り上げ、模倣サクラコへ向かって銀の弾丸を放った。

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!』

 

ギリギリで身体を逸らされ、弾は模倣サクラコの右肩に命中する。

そしてその部位が爆発し、バランスを取れなくなった模倣サクラコはその場に倒れ込んだ。

サクラコはトドメを刺すためすかさず頭部へ銃口を向ける。

 

『こんなところで……!ヒエロニムス!!』

 

模倣サクラコの呼び声に応じ、ヒエロニムスが二人の間に杖を叩きつけた。

白煙が上がり、一時的に視界が塞がれる。

 

「くっ、あと一歩のところを……っ!」

 

視界が晴れると、模倣サクラコが右肩を手で押さえながら遥か遠くに走り去っていくのが見えた。

 

「逃げた!?しかし、この状況で私が離脱するわけには……」

「サクラコ様!ここは私たちで引き受けます!ですのでミメシスの追跡を!」

 

ヒナタが現場の指揮を引き受けてくれたことでサクラコは自由に行動できるようになった。

 

「ありがとうございます、ヒナタさん!私は逃走したミメシスを追います。皆さんに神のご加護があらんことを!」

 

サクラコはミメシスたちやヒエロニムスの間を潜り抜け、模倣サクラコの元へ駆け出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。