にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第15話:ミネ&正義実現委員会VS模倣ミネ&グレゴリオ

シスターフッドと反対、学園の東側では模倣ミネとグレゴリオ、ユスティナ信徒VSミネと正義実現委員会の戦いが繰り広げられていた。

 

トリニティ側は大半が戦闘を得意とする正義実現委員会の生徒であること、ミメシス側はほぼ全員が素人同然かつサオリが解放されたことによる弱体化もあり、流れはトリニティ側に傾いていた。

 

そして、二人のミネの戦いも決着が近づいていた。

 

『そんな……!同じ蒼森ミネがベースで、数多のミメシスを取り込んでいる私の方が力は上のはずなのに……!!』

 

「私にはトリニティを生徒の皆さんを救護するという使命があります。好き放題暴れ回るあなたと違い、私は絶対に倒れるわけにはいかないのです!」

『ぐっ、ですがその余裕、いつまで続くかは見ものですね!』

 

模倣ミネが近くのミメシスに合図をすると、彼女は拘束された一人の生徒を連れてきた。

何故かその生徒は一言も発さず、虚な目をしていた。

 

「っ!ミネ団長、あの子は……!」

 

その顔を見た正実生の一人はその生徒が誰なのかすぐに気付いた。

 

『お気付きのようですね。そう、この生徒は『魔女狩り狩りゲーム』のターゲット。つまり、ミカさんにいじめを働いていた生徒なんですよ?』

 

しかし、ミネからしてみれば相手が誰であっても関係ない。

すぐさま生徒を救い出そうとするも……。

 

『動かないでください!動けばこの生徒の命はありませんよ!至近距離で銃弾を何発も撃ち込まれればひとたまりもないことくらい、お分かりで……っ!?』

 

人質を盾にペースを握ろうとした模倣ミネだったが、脅し文句を最後まで言うことは叶わなかった。

どこからか飛んできた銃弾が人質を拘束していたミメシスの頭部を撃ち抜いたのだ。

 

弾は銀の弾丸が使われていたらしく、頭の吹っ飛んだミメシスがよろよろと倒れ込む。

グロテスクな光景に周囲のミメシスが慌てる中、イチカは人質を連れ戻すことに成功した。

 

『なっ、何が!?一体どこから……』

「注意が逸れましたね!」

 

模倣ミネは辺りを見回し、狙撃手のいる方向を確認するのに気を取られているうちにミネの接近を許してしまい、腹部に渾身のパンチを受けてしまった。

盾も構えておらず、思い切り吹っ飛ばされた模倣ミネは激痛で起き上がることもままならない。

 

そして倒れ込んだまま周囲を見回すと、遥か遠くの建物の上に誰かがいるのが見えた。

そこにいたのは黒い制服に黒い羽根、黒い長髪を持つ生徒。

 

 

 

「ふう、人質を拘束しているミメシスを無力化しました。ミメシスのミカさんの時といい、失敗の許されない精密射撃はやはり緊張しますね」

「さっすがハスミ先輩!完璧な狙撃っす!」

 

狙撃したのはハスミであった。

これによりトリニティ側が勢いを取り戻し、一気に畳み掛けていく。

 

『このままでは……グレゴリオ!少しの間持ち堪えてください!』

 

そう言うと模倣ミネはどこかへ走り去っていった。

 

「待ちなさい!イチカさん、ここをお任せしてもよろしいでしょうか?あの偽物を追わなくてはいけません!」

「もちろんっす!ここは私たちに任せて……っ!ミネ団長!」

 

イチカが慌てた様子でミネの後方を指差す。

その先には人質だった生徒と、それを介抱する友人の正実生がいた。

そして二人のすぐ近くに、ユスティナ信徒の中でも強力な力を持つ『バルバラ』が迫っているのが見える。

二人が危ない。

 

イチカはハスミや周囲の正実生へ攻撃指示を出す。

バルバラを倒し切るのが先が、二人の元へバルバラに辿り着かれるのが先か。

ミネは二人の元へ急ぐ。

 

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「一体何があったの?私がわかる?」

「……」

 

正実生は人質だった少女に声をかけていた。

魔女狩り狩りゲームのターゲットとなった生徒のほとんどは保護することができていたが、友人であるこの少女は行方がわからないままだったのだ。

 

そしてその間ずっと友人の安否が心配だったが、どうにか生きて再び会うことができた。

しかし少女は身も心もボロボロで、立って歩くことすらままならない様子である。

 

「……撃っちゃった。小さい子どもを」

「なっ!?どういうこと……?」

 

少女は少しずつ口を開く。

 

「聖園ミカへのいじめの罪で狙われて、街中でいろんな人から視線を感じて、怖くて、ずっと逃げ回ってた」

 

「そんな時私の前に、中学生くらいの女の子が現れたの。そして、「お前がミカ様を追い詰めたのか」って」

 

「詳しく聞いたらその子は聖園ミカのモモッターのファンだったみたいで、ミカをいじめた人を探してるって言ってた」

 

「今更嘘はつけないし、その通りだって答えたんだけど、そしたらその子はスマホでミメシスを呼び出して、私を攻撃してきた」

「……それブルアカじゃない!中学生の子までプレイしてるの!?」

 

アカウント作成にはクレジットカードが必要なはず。

子どもにカードを持たせている裕福な家庭なのか、親のカードを勝手に使ったのか。

どちらにせよ、プレイヤー本人が出てくるあたり相当な行動力と恨みがあるようだった。

 

「それで、そのミメシスが結構強くて、勝つことも逃げることも難しくて、近くに操作している人がいる状況だったから……私はその子のスマホを狙い撃った」

 

「でも狙いが逸れて、その子の頭に当たっちゃって……!倒れて、いっぱい血が出て……!!」

 

「はあ、はあ……!げほっげほっ!」

「落ち着いて、ゆっくり息を吸って?」

 

過呼吸になりかけていた少女を落ち着かせ、続きを聞く。

 

「そしたら騒ぎを聞きつけた大人の人たちが来て、その子の手当てを始めたの。けど事情は察してくれて、私のことも気にかけてくれた」

 

「でもその子は倒れてもずっと私を睨んでて、うわごとのように殺す、殺すって。それで怖くなって、また逃げて、最終的には捕まって……」

 

よほど過酷な環境にいたのか、髪はぼさぼさで服も煤だらけだった。

おそらく自宅も特定され、帰るに帰れなかったのだろう。

そして人に迷惑をかけるわけにもいかず、友人の家にも転がり込めなかったと推測される。

 

「初めて大勢の人から悪意を向けられた……!!知らない人からも狙われて、撃たれて、中にはインタビューみたいな事してくる人もいて、本当に怖かった……!」

 

少女は力無く項垂れている。

 

「きっと、聖園ミカも同じだったんだ。私も含めて多くの人から石を投げられて。そして、投げた石が今度は私に返ってきた」

 

堪えきれなくなった少女はついに泣き出してしまう。

 

「ごめんなさい、二度と悪いことはしません……!だからもう、誰とも喧嘩したくない……」

 

話を聞いていた生徒は少女を優しく抱きしめた。

確かに彼女のしたことは褒められたものではないが、それでも大切な友人なのだ。

見捨てることなどできるはずがない。

 

 

 

「ねぇ、この戦いが終わったらさ、一緒に映画観に行かない?」

「……え?」

 

少女は困惑している。

 

「ポップコーンは塩とキャラメルでハーフにして、お昼は軽めにいつものサンドイッチ屋さんで食べて。あとショッピングもしたいよね。アクセサリー見て、早めに次のシーズンの服買って……」

「ダメだよ!私と一緒にいたらあなたまで巻き込まれる。戦いが終わっても、多分私への攻撃は止まらない」

 

「この戦いが終わって、もしまだ生きてたら、その時は学園を出ていくつもり。もうこれ以上みんなに迷惑はかけられないから……」

「ふーん、そういうこと言うんだ。それなら……」

 

なおも下を向き続ける少女に対し、正実生はその頬を両手で挟み込んだ。

 

「むぐっ!?」

「もう、ミカ様とかそのファンの子とか、遠い人ばっかり見すぎ!もう少し私のことも見て欲しいんだけど?」

 

少しむくれながらその生徒は続ける。

 

「確かにあなたは間違ったことをして、その報いを受けた。これからもそれは続くかもしれない。けどだからって、友達とか親しい人を置いてどっか行くのは違うと思うよ?」

 

「転校するなら付き合うし、怒られたら一緒に頭下げるし、襲われたら私が守ってあげるから!」

「……え?」

 

その生徒は、呆気に取られた顔をする少女の両手を強く握る。

 

「一度や二度の失敗で道が閉ざされるなんて事はないんだから。だから前を向いて自分の足で立って、しゃっきりしなさい!」

 

初めて友人に叱られた。

けど、これまで人から向けられてきたような怒りや憎しみは感じなかった。

そこにあるのは純粋に人を思いやる、暖かな愛。

周りにいるのは敵ばかりではなかった。

 

そしてその時、少女の後ろからバルバラが迫って来るのが見えた。

 

「っ、後ろ!ミメシスが来てる!逃げるよ!あとこれ、ミメシス特効弾!あなたも使って!」

 

生徒は迫り来るバルバラに気付いて少女の手を引くも、走って逃げるには距離を詰められ過ぎていた。

戦闘中だというのに、つい話に集中し過ぎてしまった。

 

特効弾も渡したが、少女は銃を持っていないのか弾を握ったまま座り込んでいる。

絶体絶命のピンチ。

生徒が応戦しようと銃を取り出す。

しかしその時……。

 

 

 

「ありがとう。おかげで目が覚めた」

 

少女の目に光が戻り、その場に立ち上がったのだ。

先ほどまでの気落ちしたような様子はなく、その表情は戦う意志を感じさせるものだった。

 

「それとやっぱり転校はナシ!ここで逃げたら、きっとまた私は同じことを繰り返す」

「だから私は戦う。戦って勝つ!だから、一緒に映画観に行こう!」

 

まさかここまで調子を取り戻すとは思わなかった。

今度は生徒の方が呆気に取られている。

そしてすぐ後ろに迫るバルバラ。

 

「銃なんかなくったって……!」

 

少女は渡された銀の弾丸を強く握りしめる。

そしてバルバラと真正面から睨み合い、後ろの生徒を庇うように立つ。

そして……。

 

「私たちの間に、入るなああああああああ!!!!」

 

あろうことか、銀の弾丸を拳で握ったままバルバラの腹部を思い切り殴りつけた。

 

(やっちゃった!私何やってるの……!?)

 

少女が我に返りかけた時、バルバラに異変が起きる。

 

『OOO……GYAAAAAAAAAA!!!!』

 

拳が命中した腹部を中心にバルバラの体が風船のようにぶくぶくと膨らみ、そのまま破裂し消し飛んだのだ。

 

「な、何これ?銀の弾丸ってこんなすごいものなの?」

「そ、そんなはずない……。あくまで命中部位を爆裂させるだけって……」

 

「大丈夫ですか!?なにやら突然敵が破裂したようでしたが、一体何があったのですか?」

 

少し遅れてミネが到着する。

何が起こったのか、その場にいた誰もが理解できず呆然としていた。

 

「いえ、今は治療が優先ですね。すぐにセリナを呼びます。あなた方は基地まで戻り治療を受けてください」

 

(特効弾、爆裂、腹部……いや胃袋?まさか内容物と反応して……)

 

考えを巡らせていた少女ははっとした顔をする。

 

「ミネ団長、報告があります!」

 

ミネは心配している様子だったが即座に聞く姿勢へと切り替えた。

その表情は真剣そのものだ。

 

「先ほど私は銃を持っていなかったため銀の弾丸を手に握り、無我夢中で敵の腹部を殴りつけました。丁度、胃袋のある辺りを!」

 

「そうしたところ敵の体が腹部を中心に膨れ上がり、最終的には破裂し消滅しました」

 

これまでの疲労と一時的に敵を退けた安心感で今にも倒れそうだったが、少女は意識を保って報告を続けた。

 

「ここからは推測ですが、敵の弱点は腹部なのではないでしょうか?」

「!!」

 

考えもしなかった。

ミメシスも自分たちと同じ人である以上頭や心臓を弱点と見てこれまでいて攻撃し、一定の成果を確認していた。

しかしここで新たな攻略の可能性にミネたちは驚いている。

少しして、そこへイチカも合流した。

 

「ミネ団長、他の生徒から聞いた情報に気になるものが。その内容はそこらのミメシスが仲間を捕食し始めたというもので、その特性上食べたものが胃袋に蓄積されている可能性があるっす」

 

「つまり、そこにエネルギーが集中していて、銀の弾丸が命中したことで暴走。通常よりも激しい爆発を引き起こして全身が吹き飛んだ、とは考えられないっすか?」

 

少女とイチカの情報を聞き、次の動きを考えるミネ。

もしかしたら、残ったミメシスたちを一網打尽にできるかもしれない。

 

「なるほど、確かめる価値はありそうですね。皆さん聞こえましたか?これより敵の弱点を腹部と仮定し、そこへの攻撃を試みてください。結果がわかった方は私へ共有を!」

 

ミネは通信機越しに仲間たちへ連絡を行う。

 

〈効果ありました!確かに跡形もなく消し飛んで、その場には復活しないようです!〉

〈こっちはそこまでのダメージは与えられませんでした!他のミメシスを捕食していない場合は効果が薄いのかも!〉

〈ビンゴ!強力な個体ほどよく効くっぽい!〉

 

仲間たちから次々と報告が上がる。

それと同時に、この仮説が正しいことが証明されつつあった。

 

「どうやら仮説は当たっているようですね。これで暴徒鎮圧がスムースに進みそうです。皆さん、ご協力ありがとうございます!」

 

「そしてあなたも。あんな怪物を前に、怖かったでしょう?本当によく頑張りましたね」

 

ミネは少女の頭を優しく撫でる。

少女は昔、テストで良い成績を取った時に母に頭を撫でてもらった記憶を思い出していた。

 

人に褒められたことなどいつ以来だろうか。

気が緩んでいたのもあり、つい目頭が熱くなる。

 

(だめ、まだ泣いちゃだめだ……!みんな頑張ってるのに!)

 

「…………勿体無いお言葉です」

 

少女は涙を堪え、くしゃくしゃになっている顔を隠すように俯く。

ミネは優しく微笑み近くにいる少女の友人へ後を任せ、仲間に次の指示を出す。

 

「私は逃走した自身のミメシスを追います!皆さんは残ったミメシスと、あの巨大な怪物の相手をお願いします!」

 

ミネは地鳴りを響かせながら、模倣ミネが逃げた方向へ目にも留まらぬ速さで飛び出して行く。

ミネが去った後、袖で涙を拭う少女の背中に友人の正実生は手を添え、治療のために後方へと歩いて行くのだった。

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