にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第17話:ペロロ!ペロロ!ペロロ!

Meister社付近の大通りにて、ヒフミとアズサはメフィストと戦いの火花を散らしていた。

 

『何なんですこの子たち、まともに攻撃する隙が無い……!』

 

しかしヒフミとアズサの息の合ったコンビネーションによって、ほぼ一方的にメフィストを圧倒しているのであった。

クルセイダーが素早く動き回り砲撃を行い、リロードしている間にアズサがトラップと銃撃で隙を潰す。

 

(戦車とアズサも厄介だけど、一番鬱陶しいのは……)

 

そしてメフィストへ攻撃しているのは二人だけではない。

 

ヒフミがクルセイダーの周囲に展開した自走式のデコイ発生装置、そこから展開される忍者装束を纏ったペロロ『ニンペロさん』の人形が手裏剣攻撃を放つことで、ヒフミとアズサに埋めきれない隙を完璧に潰しているのだ。

 

『ああもう、こんなブサイクな奴に!!』

「この間はペロロ様をお呼びできなかったから負けたんです!お願いします、ニンペロさん!!」

 

ヒフミはさらにデコイを展開し、ニンペロさんの数を増やす。

 

(さらにギアを上げてきた!悔しいけど、ここは一旦態勢を立て直す!)

 

メフィストは発煙弾を投げ、一度姿を消した。

そしてヒフミたちの動きが止まったところで、あえてクルセイダーの側を通ってアズサへ接近する。

 

(ほんの一瞬でもいい。隙を作って、まずはアズサから潰す!)

 

メフィストはその見た目を活かしてヒフミの振りをし、アズサの隙を突く作戦だった。

 

『アズサちゃん、大丈夫ですか!?メフィストの姿が見えない以上、私たちも固まって周囲を警戒しましょう!ぶべあ゛ぁぁっ!!!!』

 

しかしメフィストの思惑は大きく外れることになる。

僅かにでも動揺するかと思いきや、アズサはヒフミと瓜二つのメフィストの顔を見た途端、一瞬の躊躇いもなく全力で顔面を殴りつけてきたのだ。

大きく吹っ飛ばされ、背後にあったクルセイダーの装甲に後頭部を強打する。

 

『い゛っだぁぁぁぁ……!!な、何で……!?』

 

以前補習授業部と遊んだ際に本人を見て学んだヒフミの物真似には自信があった。

またあの時の香水ように見分けるためのトリックでも仕掛けたのか。

 

メフィストがトリックの正体を考えていると、クルセイダーのハッチが開きヒフミが顔を覗かせる。

鼻血を出しながら上を見上げヒフミの姿を確かめたメフィストは、己の正体を見破られた原因を即座に理解した。

 

「そんな寝ぼけた物真似が通用するか!!」

 

 

 

 

 

「今日のヒフミは、ポニーテールだ!!!!」

『くそっ!!知らないですよそんなの!!』

 

クルセイダーから顔を出したヒフミは髪型を普段の二つ結びではなく、ポニーテールにしていたのだ。

対してメフィスト扮するヒフミはいつも通りの髪型。

単純だが確実な方法に引っかかったメフィストは悔しさを滲ませる。

 

今の今まで顔を出さなかったのはそれをメフィストに悟られないため。

逆に言えば、それを公開したということは戦いに決着をつけるということを意味していた。

 

ヒフミはクルセイダーを急旋回させ、メフィストをニンペロさんたちの密集地帯へ吹っ飛ばす。

 

(駄目だ、まるで通じない!けどまだだ!ヒフミの『人間』関係に関する記憶は全部見たけど、まだ見ていない記憶も見直す!それで何か弱点になりそうなものを探し出して、突破口に繋げてやる!)

 

かつて捕食した模倣ヒフミの記憶を改めて辿るメフィスト。

しかし……。

 

「ペロロ様!!」

 

「ペロロ様!!!!」

 

「ペロロ様!!!!!!」

 

どこを覗いても出てくるのはヒフミが愛してやまない珍妙なデザインの白い鳥、ペロロ。

そして周囲には手裏剣を飛ばしてくるニンペロさん人形。

どこもかしこもペロロ、ペロロ、ペロロの波状攻撃。

まさにオールレンジ・ペロロ攻撃。

 

『うわあああああああああああああああああ!!』

 

ペロロに全てを支配され、思わず発狂するメフィスト。

そしてその後ろから飛び出してくるアズサ。

動けなくなったメフィストの腹部に銃口を突きつけ、至近距離でありったけの銀の弾丸をお見舞いする。

 

「Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas Vanitatum!!」

『ごふっ……があ゛あ゛っ!!』

 

「Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas!Et omnia Vanitas!!」

『げほっ……げえ゛え゛っ!!』

 

「全ては無に帰し、徒労であると知れ!!!!」

『ぐああああああああああああっ!!!!』

 

そして最後にその腹部を蹴り飛ばし、メフィストを空中に放り出した。

 

『ぎぃいいぃっ!!』

「期間限定、ペロロ様砲弾です!!」

 

ヒフミはすかさずクルセイダーの大砲から銀の弾丸と同質の砲弾を発射、メフィストへ命中しこれまで彼女が取り込んできたミメシスの数に比例したとてつもない大爆発を引き起こした。

 

『がああああああああああああっ!!!!』

 

これでもかというほど銃弾の雨を受け倒れ伏すメフィスト。

ヒフミとアズサは動き出す前に拘束の準備に移っており、メフィストは恨めしそうにそんな二人を見ていた。

 

『残機はあと五割、このクソガキ共が……!』

 

『メフィスト様!!』

 

しかしそこへタイミング悪く模倣ツルギがやって来る。

 

「ツルギさんのミメシス!?」

「そんな!?こんな時に!」

 

模倣ツルギはメフィストの元へ駆け寄り、慌てた様子で状況を報告する。

 

『メ、メフィスト様。申し訳ありません、剣先ツルギとの戦いで深手を負い一度退却してきました。西と東も押されています。どうかお力を……』

『そっか、それはピンチだね。ところでツルギちゃん』

 

 

 

『さっきからサクラコちゃんとミネちゃんの様子が確認できてないんだけど、これはどういうこと?』

『!!』

 

自分が捕食したものたちへの質問にひどく怯える模倣ツルギ。

メフィストはブルーアークカタストロフの、ミメシスたちの状況が確認できる画面を見せる。

画面の中の模倣サクラコと模倣ミネの部分は、消息不明を意味するロスト扱いとなっていた。

 

『そ、それは……やむを得ず私が継承しました……』

『ふーん、自分の力に自信があるからってこれまで取引や継承による強化を一切受け付けなかった癖に、土壇場で主張を変えるんだ?だからあれほど強化しておけばって言ったのに』

 

『それに私言ったよね?今回の戦いは総力戦だから、私の許可なく『継承』しちゃ駄目だよって。それなのに君はそれを破っていたずらに戦力を減らし、あまつさえ向こうのツルギちゃんを倒すこともできなかった』

 

『これ、契約違反だから。ツルギちゃんペナルティね』

 

直後、模倣ツルギの胸部から光る鎖のようなものが飛び出し、彼女の体が動かないようきつく縛り上げる。

 

『ひいっ!?ま、待ってくださいメフィスト様!申し訳ございません!もう一度チャンスを……!』

「まずい……ニンペロさん!」

 

アズサの指示でニンペロさん人形がメフィストたちへ手裏剣攻撃を仕掛けるが、周囲に見えない壁でもあるのか攻撃が弾かれてしまう。

 

『ふふ、第三者が契約内容の履行に干渉することはできないんですよ♪』

「待って!待って、助け…………ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!』

 

断末魔の叫びを上げる模倣ツルギのヘイローを、メフィストは容赦なく噛み砕いた。

そして、ヘイローを砕かれた模倣ツルギは糸の切れた人形のように倒れ込み、その体は灰のように崩れて消えた。

 

『ふーっ、やっぱりサクラコちゃんとミネちゃん食ってたな。まあいいか、残機も増えたしこれで三人を失わずに継承できたし』

 

そう言っている間にも、メフィストの体の傷がみるみるうちに治癒していく。

ヒフミとアズサは第二ラウンドに備えて身構える。

 

『待った。これ以上ここで暴れたら街が壊れちゃいますよ。私だってこの街好きですし、あっちの廃墟地帯でケリつけません?』

 

そう言うとメフィストは背中から真っ黒で巨大な翼を生やし、突風を巻き起こしながら飛び去っていった。

するとそこへ入れ替わるように先生とマリーが追いついてくる。

 

「ヒフミ、アズサ!二人とも無事!?あと、今飛んでいったのって……」

「ああ、メフィストだ。奴はツルギのミメシスを食って、向こうの廃墟地帯で決着をつけるよう申し出てきた」

 

「あと、どうやらサクラコさんとミネさんのミメシスも食べられちゃってるみたいです!その分強くなっているなら、早く追いかけて倒さないと大変なことに……!」

 

「よし、すぐに追いかけよう!マリー、また後ろに乗せてくれる?」

「任せてください!」

 

こうしてクルセイダーにヒフミとアズサ、マシンシスターフッダーにマリーと先生が乗り、それぞれ逃走したメフィストの追跡を開始した。

 

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『んぅ……はっ!?』

 

その頃、コハルに敗れ意識を失っていた模倣ハナコが目を覚ましていた。

 

『あれ、確かコハルちゃんに負けて……それなのに私、死んでない……?』

 

まだ意識が朦朧とする中、辺りの様子を確認するべく体を起こし周囲を見回す。

そして真横に顔を向けた時、すぐ側でしゃがんでこちらを見ていたコハルと目が合った。

 

「やっと起きた。どうだった?死にかけた気分は」

『ヒィッ!?!?!?』

 

先ほどの戦いのトラウマが呼び起こされ、転びながら後ずさる模倣ハナコ。

あれだけの銃弾を撃ち込まれればヘイローが砕けていてもおかしくない。

加えて、ユスティナ信徒たちに撃ち込まれていたミメシス特効弾も使われた形跡がない。

コハルは意図的に自分を生かしたのだと察した。

 

『……なぜ、私を殺さなかったんです?』

「あ、死刑のこと?あれは別に本当に命を奪うとかじゃなくて、それくらい罪深いって意味だから……」

 

戦いが終わって銃も没収されているとはいえ、コハルの態度は敵を前にしているものとはとても思えなかった。

しかし模倣ハナコにも反撃の意思はなく、それどころかどこか内心、安心感さえ感じていた。

 

それは友人と雑談をしている時に感じるような、安らかな感情。

そんな記憶はメフィストとの取引でとっくに捨てたはずだったのに。

 

『……まず、コハルちゃんの質問に答えなくてはいけませんね。本当に死んだかと思った時のその気分は……最悪でした』

 

『何も成し遂げられず、言い残すこともできず、心の準備もできないまま突然命を失う。死ぬというのはこういうことなのかと』

 

模倣ハナコは俯き気味にぽつり、ぽつりと今にも消え入りそうな声で語り始める。

 

『色彩の光が降り注げばこのキヴォトスから生者は消え、ミメシスだけの世界になる。メフィスト様はそう仰っていました』

 

『悪人も、正義感に酔いしれる愚かな民衆も、皆消えてしまえばいい。そうでない人も新しい世界を作るためのやむを得ない犠牲だと、そう割り切っていました』

 

そこで言葉に詰まる模倣ハナコ。

その瞳からは涙が溢れ、頬を伝った雫が地面に滴り落ちる。

 

『ですが自分が淘汰される側になって、コハルちゃんに撃たれる瞬間、死ぬって思って、それがすごく怖くて、怖くて!たまりませんでした……!!』

 

自分が撃たれた時の光景を思い出した恐怖か、声が上擦っている。

 

『死ぬことがこんなに怖いことだったなんて……!色彩の光が降り注げば、キヴォトス中で同じことが起こります』

 

『その時そこに居る人たちがどんな思いをするか、私は考えていませんでした!いえ、考えようとする発想にすら至りませんでした!!』

 

『私は、本当に取り返しのつかない事をしてしまいました!』

 

『ごめんなさい、ごめんなさい……!』

 

両腕を縛られたまま子どものように泣きじゃくり、地に頭を付け謝罪する模倣ハナコ。

コハルはそんな彼女の肩を手で支え体をゆっくりと起こし、涙と土と煤で汚れた顔をハンカチで拭う。

 

『コハルちゃん……?』

「私は前に大勢のミメシスに囲まれて、死ぬかもしれないって思ったことがあるわ。そういう経験をしたからこそ、大勢の人たちが同じ思いをするような未来は絶対に受け入れられない。だから私は戦うの」

 

「それとセイア様から聞いたけど、あんたたち精神年齢は小学生並みなんでしょ?なんで止めを刺さなかったのかって、そもそもそんな子どもの命を奪うなんてできるわけないじゃない」

 

コハルの手はほんの少しだが震えていた。

悪事を働いたとはいえ、親友と同じ顔をした者を手にかけることに対して強い抵抗感を抱いていたからだ。

 

そんなコハルの厳しくも優しい、暖かな心に触れたことで模倣ハナコの荒んだ心が少しずつ癒え始める。

 

「それで、この後はどうするの?もうメフィストたちに協力するとは思いたくないけど」

『この後……ですか』

 

模倣ハナコは少し考えてみるが、思い浮かぶのは悲惨な未来だけだった。

 

『考えてもいませんでした。戦力の要となるブルアカを守れず、戦いに敗れ、役目を果たせなかった自分に待っているのは用済みと判断されて『継承』される未来のみですから』

 

「……もし生き残ったら?」

『そうですね、その時は……お友達が欲しいです。対等で、安心できて、気の置けない仲のお友達が』

「友達ね。どうする、ハナコ?」

 

コハルは模倣ハナコの後ろに向かって話しかけていた。

模倣ハナコがつられてそちらを見ると、ブルアカの掌握を終えてビルから出てきたハナコがそこに立っていたのだ。

 

『なっ……!?』

「終わったんですね、コハルちゃん」

 

ハナコは自身の偽物と目線の高さが合うよう、しゃがんで話をする。

 

「考えていたんです。私のミメシスなら多少の違いはあれど、根底にある価値観は近いのではないかと」

 

その顔は少し悲しそうにしているものの、怒りや憎しみは感じられなかった。

 

「確かに過酷な環境であったのは間違いないようですが、それでもこの街を混沌の渦に巻き込んだことは紛れもない事実です」

 

「そして悪事を働いたあなたは、コハルちゃんによって裁かれました。ですが人の痛みを知った今なら、もう少し違う考えを持つことができるのではないですか?」

 

「ですから罪を償って、やり直しましょう。今からでも遅くはありません。一人ではできないことでも、私が手伝いますから」

 

ハナコは真っ直ぐと模倣ハナコの目を見ている。

自分と同じ存在であるため、その言葉に嘘が無いことはすぐにわかった。

コハルも隣に並ぶようにしゃがみ、優しい笑顔で模倣ハナコへ語りかける。

 

「罪を清算したら、その時は改めて友達になりましょう?私だけじゃなくて、ハナコとも。ヒフミとアズサのことも紹介するから」

「知っているとは思いますが、みんなとても良い人です。私が仲良くできたのですから、あなたにできない理由はありません」

『……!』

 

模倣ハナコは生まれた時からずっと一人だった。

補習授業部のような仲間はおらず、ひたすら自分の能力を発揮して、形だけでも褒めてくれるメフィストと仲良くなるしか道は無いも同然だった。

 

そんな模倣ハナコにとって、浦和ハナコとして人を愛し、愛されていた記憶は今の自分の惨めさを際立たせる邪魔なものでしかなかった。

だからそんなものはさっさと手放したくて、絶対的な視力と戦闘能力に交換してしまった。

 

そしてその結果、悪魔の手駒と成り下がってしまった。

しかし、そんな自分にもコハルは真正面からぶつかって、ハナコは一人の人として諭すように、道を示してくれた。

 

 

 

『ごめんなさい』

 

模倣ハナコはその場に立ち上がって背筋を伸ばし、深々と頭を下げてこれまでの行いを謝罪する。

彼女の心は決まったようだ。

 

『こんな謝罪一つで許されるとは思っていません。全てが終わった後、私は罪を償います。ですがその前に、こんな私の腐った性根を叩き直してくれたコハルちゃんの、あなたの想いに報いたいです』

 

『私も、この戦いを終わらせるために協力します!』

 

どうやら二人の思いは伝わったようだ。

コハルとハナコは顔を見合わせ、その表情から互いの考えが同じであることを確かめ合う。

 

「決まりね。よろしく、ハナコ二号!」

「ふふっ♪では、私たちにできることを探しましょうか」

 

心を一つにした三人は、この地獄を終結させるため行動を開始した。

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