にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第21話:制約解除決戦「メフィストフェレス」①

まず最初に前に出たのはミカとサオリだった。

メフィストも光のような速さで突っ込んで行き、その中間地点で両者は激しくぶつかる。

戦闘面において強力なミメシスを取り込んだ影響か、ミカとサオリのパンチを受け止めてもメフィストは涼しい顔をしていた。

 

『ふふ、子どものパンチなんて痛くもな……ぐぉっ!!』

 

膠着状態になる前にミカは掴まれている手を振り解き、隙ができたところでサオリがメフィストを思い切り蹴り飛ばした。

 

「しかし驚いたな。マダムのような大人にまた出会うとは」

『マダム?ああ、あの年増ね!本当にダサいですよね、自分より弱い子どもから搾取しようだなんて!』

 

口から垂れる血を拭いながら、メフィストはかつてアリウス、トリニティ、ゲヘナへ混沌をもたらした女の顔を思い浮かべていた。

 

『搾取するなら、この社会の下層に這いつくばってる正義マンどもを利用すればいいのに!私みたいにさ!』

「なるほど。流石、最下層のトップは言うことは違うな」

『へえ……!』

 

挑発に乗ったメフィストがサオリへと襲いかかる。

しかし怒りで攻撃が単調になっており、それを見越していたサオリに手玉に取るように回避され、顔面に膝蹴りと三発の掌底打ちを食らう。

 

『ぐっ……!』

 

メフィストは翼を羽ばたかせ、低空飛行の要領で距離を取る。

 

「行くよ、サオリ!」

「ああ、私が合わせる!」

 

後退するメフィストへヒットアンドアウェイの要領でミカとサオリが追撃を加えており、三色の閃光がぶつかり合う度に火花を散らす。

一方メフィストもただ逃げるだけでなく、二人に距離ができたタイミングでミカへと狙いを定めた。

 

『そこっ!!』

 

サオリの援護射撃を防ぐため、あえて接近戦を挑み拳を振るう。

模倣ミカ、ツルギ、ミネを取り込んでいるので一発殴られるだけでも大ダメージは避けられない。

 

「ふっ、はっ!」

 

しかしミカはそれらを無駄のない動きで正確にいなし、的確にカウンターを叩き込んでいく。

 

『くそっ、こいつ体術もいけるのか……!』

「足元がお留守だよ!」

 

メフィストの意識がミカの上半身に集中したのをミカは見逃さず、体勢を屈めて足払いをかける。

そして体を回転させたそのままの勢いで宙に浮いたメフィストへ強烈な蹴りを叩き込む。

 

(ぐぅっ!このままじゃ防戦一方に……!)

 

メフィストはミカから離れようとするが、しかし今度はサオリから援護射撃が飛んでくる。

翼を広げて空中へ逃げようとするも、羽を撃ち抜かれ地面に転げ落ちてしまった。

 

『ちっ……嫌らしいとこ突いてくるね!!』

 

どうにか体勢を立て直すが、気づけば自身の前後をミネとツルギが挟み込んでいた。

 

『多対一で攻め込めば必ず隙を晒すとでも!?舐めんなよ!!』

 

メフィストは背中から四本の腕を新たに生やし、色彩の力を使って亜空間からマシンガンを呼び出し装備する。

先に厄介なツルギの足を止めるべく一斉掃射を行うが、弾道の隙間を見切られ接近を許してしまう。

 

「ギャアアアアハハハハハハァ!!」

 

ツルギは弾丸の雨を掻い潜りながら両手のショットガン、ブラッド&ガンパウダーでメフィストの手元を次々と狙い撃ち、武器を無力化していく。

 

『先に武器を落とさせるなんて、見かけによらずテクいことするね!』

 

しかしツルギは武器で両手が塞がっている。

これを好機と捉えたメフィストはツルギへ接近し、六本の腕でラッシュを叩き込もうとする。

 

「させません!」

 

ところが、その攻撃は間に入ったミネの盾によって防がれてしまった。

しかしメフィストはこれを押し切るべく、なおも盾を殴り続ける。

 

『おらおらぁ!いつまで受けていられますか……っ!?』

「ばあ!」

 

メフィストの攻撃を盾で受けていたのは、なんとツルギだったのだ。

彼女は挑発的な表情で、盾の上からまるでモグラ叩きのように顔を出す。

 

(ミネがいない!一体どこへ……っ!?)

 

後ろに強烈な殺意を感じたメフィストはとっさに後方へ裏拳を放つ。

後ろには実際にミネが迫っており、直感こそ当たっていたものの紙一重で体を屈め躱されてしまう。

 

「腹部が弱点なのでしょう?」

 

盾の代わりにツルギからブラッドを受け取っていたミネは、自身のショットガン『救護の証明』と合わせて二丁の銃で銀の弾丸をメフィストの腹部へ至近距離で叩き込む。

 

(まずいっ、致命傷になる!このままでは残機が……!)

「手に馴染む良い銃です!さらにもう一発!!」

 

マガジンの中の弾を撃ち尽くしたミネはさらに、両手に銀の弾丸を握り込んでメフィストの腹部へパンチを三発お見舞いした。

 

『さんぱっ……!?』

 

メフィストは反撃するべくミネを掴もうとするも、既に手の届く範囲からは離れられていた。

代わりにサクラコがその懐へ潜り込み、メフィストを蹴り上げようとしているのが見えた。

 

「ミネ団長はもういませんよ?」

『待て、待て…………!があぁっ!!』

 

サクラコはメフィストの顎を下から全力で蹴り上げ、空中へ吹っ飛ばす。

さらにサクラコはそれだけで終わらせる気が無いらしく、ミネへとアイコンタクトを送る。

 

「全く、サクラコさんもなかなかお転婆なのですね」

「少々はしたないことは理解していますが、行儀の良さだけではトリニティは守れませんから」

 

ミネはサクラコの意図を瞬時に理解し、バレーボールのレシーブのような構えを取る。

それを見たサクラコはすぐさまミネの手に乗る。

 

「思い切りやってください」

「では遠慮なく!…………っだぁ!!!!」

 

ミネは両手を上へ振り上げ、サクラコをバレーボールのように上空へ押し飛ばす。

サクラコはついに、メフィストよりも遥か高く飛び上がった。

 

『嘘でしょ!?……はっ!?』

 

メフィストは一時的に上空へ逃れる算段だったが、敵はそんな暇を与えてはくれない。

 

「つれねぇなぁ!もっと遊んでくれよォ!!」

「両手に花だよ!嬉しいでしょ?」

 

メフィストを挟むように、翼を持つミカとツルギが空を飛んで追いついてきた。

 

『ちぃっ!』

 

二人はメフィストの逃げ道を塞ぐように周囲を旋回しながら銃撃を加える。

これに対しメフィストは更なる被弾を避けるべく、一時的に回避へと専念することにした。

そしてある程度観察していると二人の攻撃に法則があることに気づき、最小限の動きで躱せるようになっていた。

 

『あははっ、どうしました!?狙いが雑になってますよ!動かない方が安全とか、なんの冗談です?』

「おっけー上出来」「まあこんなものだろ」

 

するとミカとツルギは目標を達成したかのように攻撃をやめた。

それを見たメフィストは、自身が意図的に誘導されていたことに気付く。

 

(違う!この二人は私の注意を引く囮!本命は……!)

 

メフィストは自身のさらに上を見上げる。

視線の先には先ほど飛び上がっていったサクラコが、メフィスト目がけて凄まじい勢いで突っ込んで来るのが見えていた。

 

『待っ……ぶごぉっ!!!!』

 

しかし気付いた時には既に距離を詰められ過ぎており、避ける間もなくサクラコの踵落としが顔面にクリティカルヒットする。

落下の勢いを上乗せしたその威力は凄まじく、メフィストは音速を超えるスピードで地面へと叩きつけられた。

 

「ひゅう!ナイスキック!」

「お二人の誘導のおかげです」

 

ミカはサクラコが落下しないよう手を取り、地表近くで降ろす。

 

『ごの゛っ……調子乗りやがって……!!』

 

メフィストは模倣ツルギから吸収した再生力で見かけ上は顔の傷もすぐに塞がっていくが、内部に蓄積しているダメージや疲労までは簡単には消し去れない。

 

(しめた!サクラコは翼が無い分、着地の瞬間を狙いやすい!)

 

メフィストはサクラコに狙いを定め前へ踏み出すが、その瞬間足にワイヤーが引っかかる感触を覚えた。

 

『しまっ……!?』

 

空を飛んでいる間にサオリに仕掛けられたブービートラップにより、メフィストの両側からネットランチャーが発射される。

メフィストの腕力なら千切るのも難しくはないが、絡まりやすい構造をしておりすぐには振り解けない。

 

「休んでる暇は無いぞ!」

 

今度はサオリがメフィスト後方の瓦礫の山を爆破し、メフィストを生き埋めにしようとする。

メフィストはすんでのところでネットを千切り、どうにか瓦礫の雪崩から逃げ仰せた。

 

『ヘイト分散させるか……。グレゴリオ!!ヒエロニムス!!』

 

メフィストの呼び声に応じて巨大なワープホールが出現し、そこから学園の東西を守っていたグレゴリオとヒエロニムスが姿を現す。

 

(これで五人の攻撃が私に集中することは無くなる。さて、まず誰を仕留めるべきか……ん?)

 

メフィストがを目を凝らすと、遠くの方でミカが両手を合わせ、何かに祈りを捧げているように見えた。

こんな戦場で何を呑気に祈りなど捧げているのか。

 

そう考えてはいたものの、何故だか自身の生存本能が最大レベルの危険が迫っていると告げている。

理由はわからないが、あれを続けさせたらまずい。

何としてでも止めさせるべく、メフィストはミカに狙いを定める。

 

「遅いよ」

 

しかしメフィストが妨害するよりも早くミカの準備が整ったようで、彼女は目を開き右手を天へと掲げる。

すると遥か上空から巨大な隕石が多数、凄まじい勢いで迫ってくるのが見えた。

 

『何だよもう、またかよぉ!!!!』

 

メフィストの叫びも虚しく、隕石はグレゴリオとヒエロニムスへ着弾し、大爆発と共に周囲のミメシス諸共跡形も無く消し飛ばした。

 

万全の状態であればまだ耐えられた可能性はあるが、シスターフッドや正義実現委員会との戦いで満身創痍となっていた状態では、太刀打ちなどできるはずもなかった。

 

最初から他者になど期待していたわけでは無いが、単独での戦いを強いられ苛立つメフィスト。

周囲はミカたち五人に取り囲まれていた。

 

「せー……の゛ぉっ!!」

 

するとミネが声を張り上げ、拳を振り上げた。

しかし直接殴るにはメフィストとは距離がある。

何をするつもりなのか理解できないでいると、ミネ以外の四人がその場で同時に飛び上がった。

 

『まさか!?』

 

直後、ミネは真下の大地を思い切り殴りつけた。

それによって、隕石が落ちた時にも劣らないほど大きく地面が揺れ、メフィストは足を取られる。

 

「いきますよ!!」

 

ミネはさらなる追撃を仕掛けるべく、先ほどの一撃で砕かれた巨大なコンクリート片を、まるで雪合戦のように次々と投げつけてくる。

 

こんなもの直撃すれば大ダメージは避けられない。

回避しつつ大きな瓦礫は破砕するべく、亜空間からロケットランチャーを呼び出し後退しつつ狙いを定める。

しかし……。

 

「見通しが甘いな」

「サオリさん、今です!」

 

サオリが持っていたスイッチを押した瞬間、飛んできた瓦礫の一部があらかじめ仕掛けられていた爆弾によって弾け飛ぶ。

それによって破片の弾道が変わり、砕け散った細かな破片がさらにスピードを上げメフィストの体に食い込む。

 

『ぐおぉ……っ!?』

 

メフィストは大きく後ろに吹っ飛ばされ、廃墟の壁に激突する。

頭を強打し、目眩でふらつきながらも立ち上がると、サオリがこちらへ走って来るのが見えた。

 

メフィストは迎撃するべく撃ち損ねたロケットランチャーを構え直すが、狙いを定める前にサオリは自身のコートを脱いでメフィストへと投げつけ、目眩しを行う。

 

『なっ!?』

 

急いでコートを手で振り払うも、サオリはとうに眼前に迫っていた。

この距離ではロケットランチャーを発射できない。

 

「ここは私の間合いだ!」

 

サオリは太腿のホルダーからナイフを取り出し、ランチャーを構えるメフィストの腕を切り裂く。

筋肉を断裂されたことで力が入らなくなり、武器を取り落とすメフィスト。

 

『まだっ!』

 

しかし、使えなくなった手はそのままにすかさずサオリのナイフを蹴り飛ばし、横へ飛び逃げる。

 

「サクラコ!!」

 

既に動き出していたサクラコはサオリの呼び声に応じ、宙を舞っていたナイフをキャッチする。

そしてそのまま全速力でメフィストの方へと走り出す。

 

『近づかないでくれます!?』

 

メフィストは残る四本の腕を触手のように伸ばし、サクラコの動きを牽制する。

これでサクラコの動きは止まるだろう、そう思っていた。

しかしそんなメフィストの目論見は大きく外れることになる。

 

何とサクラコはナイフを逆手持ちに持ち替え、体勢を低くし、さらにスピードを上げて突っ込んで来た。

 

『速い!?』

 

メフィストはサクラコを拘束するべく触手のように手を伸ばすが、触れる寸前のところでサクラコは体を捻ってこれを躱し、そのままの勢いで四本の腕すべてをズタズタに引き裂きながらメフィスト本体へ突進する。

 

全ての手を一時的に封じられたメフィストはハイキックでカウンターを狙うが、サクラコは同じくハイキックでこれを弾き、攻撃をいなされたメフィストはバランスを崩す。

そしてサクラコはナイフでメフィスト本体を切り付け、回復した手に捕えられる前にすぐさま離脱する。

 

『そっちばっかり!ペースは握らせな……っ!!』

 

サクラコを追いかけようと前に出た瞬間、眼前にナイフが飛んでくるのが見えた。

サクラコはこれすら見越してナイフを投擲していたのだ。

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