にせティーパーティーの逆襲   作:みかん目薬

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第6話:スイーツビュッフェ

一行が次に向かったのはスイーツビュッフェだった。

大きなショッピングモールの中に店舗があるので買い物した後の休憩にも適しており、休日はかなりの人で賑わう。

 

「なんとか座れたけど、後ろに結構人が並んでるね。カズサの言った通りだ」

「ね、早めにカラオケ出て正解だったでしょ?」

 

スイーツ一つとっても情報戦が必要なのか。

先生は彼女たちの熱量に圧倒されていた。

そして全員席に着いたところで、各々好みのスイーツを取るためにビュッフェ台という戦場へ向かって行った。

 

「ん〜おいし〜♡今いちごフェアやってるのね!スイーツ部として全制覇しなきゃ!」

 

ヨシミは張り切っている。

胃もたれや体調を考慮して、何を食べるか計算しなければならない先生としては羨ましい限りだった。

 

『そういえば放課後スイーツ部とは一体どんな活動をしているんだい?』

 

「ふっふっふ、よく聞いてくれたね。私たちは常にロマンを求めて、ありとあらゆる甘味を探し求める部活だよ。この店もその活動の中で見つけたのさ」

 

『ほうほう』

 

「まあ、その過程でバンドをやることになったり、正義実現委員会に喧嘩を売る羽目にもなったりしたけどね」

 

『な、なるほど?』

 

途中までは納得して聞いていた模倣セイアも、途中からは困惑している様子だった。

 

『なあ姉さん、この部活って結構アブナイ集団なんじゃないのか?』

「わ、私も今初めて知ったよ……」

 

「ねえ、この話セイア様の前でしていい話だったのかな……?」

「き、今日の私は放課後スイーツ部非常勤部員だから、ティーパーティーは何も見ていないし聞いてもいないよ」

 

セイアは諸々の問題の種を飲み込むように紅茶を口にする。

 

「あれ、そういえばそっちのセイアさんって所属はどこになるのかな?やっぱりティーパーティー?」

『ん?ああ、考えてもいなかった……』

 

模倣セイアは目を丸くし、物思いに耽るように上を見上げる。

 

「もしも望むなら、放課後スイーツ部の新入部員として迎え入れるのも良いかもしれないね」

「いいじゃない!めっちゃノリいいし、ナツっぽく言うなら『ロック』側の人って感じよね!」

 

「ちょ、勝手に話進めちゃセイアさん困っちゃうじゃん」

「ふふ、内定だけでももらっておいたらどうだい?代わりに、こっちは非常勤ティーパーティーとしてアイリに来てもらおうかな?」

 

「わ、私ですか!?」

「セイアさんが言うと嘘っぽく聞こえないんだけど……」

『考えておくよ。ちょっと失礼。少しお手洗いに』

 

『もしも』の話に花が咲く中、模倣セイアが席を立った。

その様子を見ていたセイアは、何かが引っ掛かる様子だった。

 

「セイア、どうかした?」

「いや、特には何も……」

 

(気のせいか?ミメシス特有の青白い肌よりもさらに少し青ざめていたような……。考えすぎだろうか)

 

それ以上考えるのをやめて会話の輪に戻ろうと考えたが、やっぱり感じた違和感を放っておくことはできなかった。

 

「すまない、私も少し席を外す」

 

セイアは模倣セイアの行方を追うことにした。

 

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セイアが店を出たところ、入り口の前に白い羽根が落ちているのが目に入った。

清掃の行き届いている建物の中で一つぽつんと落ちているソレはひどく異質なものに見える。

 

(間違いない、トリニティ生のものだ。しかし店内にいるのは黒い羽根の生徒だけ。一体誰が?)

 

その羽根の意味について考えながら、セイアは女子トイレへと向かった。

 

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(さっきの店から一番近いのはここだが、扉が閉まっていてはどこにあの子がいるかわからないな)

 

仕方がない。声をかけようとセイアが息を吸った瞬間、奥の個室から模倣セイアの声が聞こえた。

 

『げほっ、げほっ!はぁ……はぁ…………え゛う゛っ!』

 

えずくような声が聞こえたかと思った瞬間、バケツをひっくり返したような水音が聞こえてきた。

 

(吐いてる!?何で?体調が悪かったのか?いつから?いや、とにかく水!水を持ってこなくては)

 

セイアは急いで外の自動販売機で水を二本買った後、すぐさま模倣セイアの元へと戻る。

そして彼女が入っているであろう個室を優しくノックし、声をかけた。

 

「大丈夫かい?私だ、セイアだ。水を持ってきたから一度口をゆすごう」

 

しばしの間があった後ドアロックが外れ、弱々しい力でドアが開かれた。

 

『ね、姉さん……!?だ、誰にもっ、誰にも言わないで……!』

「言わないよ。ほら、口をゆすいで。水、蓋開いてるから気をつけて」

 

今にも泣き出しそうな顔をする模倣セイアの背中を、セイアは優しくさすっていた。

同じ体格なのに、その背中はひどく小さく見えた。

 

(一体何が起こっているんだ。わからないことが多すぎて……ん?)

 

その時、セイアはさすっている背中に何か違和感を感じ取っていた。

 

『姉さん、どうしたの?』

 

動きの止まったセイアを、不思議そうに模倣セイアが見やる。

 

「いや、何でもないよ。綺麗にしたら一回外に出ようか」

 

そうして二人は一度建物から出ることにした。

 

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二人は外の空気を吸うため、ショッピングモールの屋外ベンチに座り水を飲んでいた。

 

「落ち着いたかい?」

『ああ、ありがとう姉さん。さっきのは、ええと……ちょっと慣れない環境ではしゃぎすぎただけというか……』

 

「それならいいんだが、体調が優れないなら無理せず帰るのも手だよ?私も付き添うから……」

 

セイアの言葉を聞いた瞬間、模倣セイアが必死な顔でセイアに縋り付いてきた。

 

『待ってくれ!私は大丈夫だから!だから、まだみんなと一緒にいたい……』

 

声は震えていて、今にも泣き出しそうだった。

事情はわからないが、今は安心させてあげるのが最優先だろう。

 

「大丈夫だよ。みんなには言わないでおくし、無理やり帰らせたりもしない。この後はいわゆる映えスポットというところに行く予定だから、気分転換になると思う」

 

「でも、さっきみたいに気分が悪くなったらすぐに言うんだよ?」

『ああ、そうするよ。ありがとう、私のわがままを尊重してくれて』

「私はお姉さんだからね。じゃあ、みんなのところに戻ろうか」

 

そうしてセイアたちは店に戻っていった。

 

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その後スイーツを堪能した一行は、街が一望できる丘のある公園に来ていた。

 

『わぁ……!』

 

「綺麗だろう?この時間は夕焼けが出るから、茜色に染まった街を一望できるんだ」

 

模倣セイアは先程までの不調が嘘のように生き生きしている。

 

「おーい!セイアさんたち!写真撮りましょー!」

「カズサがお呼びだ、行こう」

 

二人のセイアは丘の上にある、この公園の象徴であるガラスのピラミッドに向かって走っていく。

風に当たりながら走る心地よさと、走ったことによる息切れでセイアたちの頭はいっぱいだった。

 

その後近くにいた市民に頼んで、写真を撮ってもらえることになった。

 

「じゃあいきますよー?はいチーズ!」

「せーのっ、うわっ!」

 

本当は全員で手を繋いでジャンプする予定だったが、二人のセイアでタイミングがズレてしまったせいでポーズはバラバラになってしまった。

 

『ふふ、不恰好だなぁ』

 

そう言う模倣セイアの表情はとても幸せそうなものだった。

 

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その後放課後スイーツ部と別れ、先生と二人のセイアで寮への道を歩んでいた。

あたりはすっかり暗くなり、街灯や道沿いの店舗の照明が道を照らしている。

 

『先生もこっちなのかい?』

「ああ。明日のことについてナギサと話をしておこうと思ってね」

『ああ、そうか……』

 

そう、明日はユスティナ聖徒会がトリニティに攻撃を仕掛けてくる日と言われている日である。

その準備のために先生もトリニティへと向かっていたのだ。

 

『トリニティ生の体験も今日でおしまいだね』

「また落ち着いたら遊びに来るといい。そうしたらまた、今日みたいにどこかへ遊びに行こう?先生の奢りで」

「えっ?」

 

突然の奢り宣告に戸惑う先生。

おそらく自由に使える金額はセイアの方が優に上回っているはずなのだが、未来の自分は生徒可愛さについ財布の紐が緩むのだろうなと苦笑した。

 

『今日は楽しかった。普段は歌わない流行りの曲を歌って』

 

「うん」

 

『姉さんから鉄拳制裁を受けて』

 

「いや……」

 

『スイーツビュッフェでこれでもかといちごのスイーツを堪能した』

 

「……そうだね」

 

『優しい姉さんでよかった』

 

「そうかい」

 

『あの丘は景色が綺麗だったね』

 

「後で写真を送っておくよ」

 

『あと、スイーツ部のみんなには言いそびれてしまったが、先生、姉さん、本当にありがとう』

 

「いいよ」「どういたしまして」

 

『明日も明後日もその先も、よい青春を』

 

「君のほうこそ」

 

『それから、私は未来を視ることができる』

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