『“私”と“俺”と、ほんとうの僕』   作:sinki

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初めまして、sinkiと申します。
初めての投稿作品です。

「綺麗事」と「本音」がぶつかり合う、
そんな心の中の対話の物語を書いてみました。

一人でも心に残るものがあれば、うれしいです。



第1話

「私」は本が好きだ。

愛していると言っても、過言ではない。

 

「俺」は本が嫌いだ。

本に、魅力なんて感じない。

 

 

 

「私」は、図鑑の隅に載っていた花の名前ひとつにも、心が弾む。

世界は知れば知るほど、色を変える――優しく、美しく。

 

「俺」は、ニュースの見出しすら目障りだ。

知ったって、嫌な現実が増えるだけ。

世界は、知るほど濁っていく。

 

 

 

「私」はみんなが好きだ。

笑い声、楽しそうな声――生きている音が、私を安心させてくれる。

 

「俺」はみんなが嫌いだ。

怒鳴り声も、笑い声も。全部、俺の耳にはうるさすぎた。

 

 

 

「私」はヒーローが好きだ。

誰かを守れる強さに、私は憧れる。

 

「俺」はヴィランが好きだ。

全部ぶっ壊せる自由に、俺は惹かれる。

 

 

 

「私」は、すべてが大好きだ。

街も、自然も、友達も――

いろんなものが、愛おしくて仕方がない。

 

「俺」は、すべてが大嫌いだ。

街も、自然も、友達も――

いろんなものに、嫌悪感を抱いてしまう。

 

 

 

「私」は「俺」が嫌いだ。

感情のまま暴れ、大切なものまで壊していくあなたが。

 

「俺」は「私」が嫌いだ。

綺麗事ばかり並べて、自分をごまかすあいつが。

 

 

 

「私」「俺」

――大嫌いだ。

 

 

 

「……それでも、『私』」

「……でも、『俺』」

 

 

 

「キミは、素敵だ。」

 

 

 

「俺」には、人を信じる力がなかった。

「私」には、闇を受け止める強さがなかった。

でも――キミは、どちらも持っていた。

 

 

 

……もしも俺が、キミなら。

もっと、うまくやれたかな?

 

……もしも私が、あなただったら。

もっと、優しくなれたのかな?

 

 

 

「俺」

でも、「私」って誰だ?

綺麗事ばかり言うあいつ、声も、顔も、名前すら……思い出せねぇ。

 

「私」

でも、「俺」って誰……?

嫌なことばかり言うあなた、声も、顔も、名前も……思い出せないの。

 

 

 

「俺」

アイツの正しさにイラついて、壊したくて、ぶつかって。

でも――なぜか、寂しくなる。

 

「私」

あなたの乱暴さが怖くて、避けて、黙ってた。

でも――なぜか、心が空っぽになるの。

 

 

 

「俺」

ぶつかりたかったのは……もしかしたら、

あいつが“間違ってない”って、知ってたからかもしれねぇ。

ムカつくけど、正しくて。

だから、壊したくなった。

 

 

 

「私」

黙っていたのは……きっと、

あなたの痛みが、どこか私と似ていたから。

乱暴でも、傷ついていて。

だから、怖くなった。

 

 

 

「俺」

わかりあえねぇ。……でも、

わかりたかったんだよ。どこかで。

 

「私」

近づけない。……でも、

本当は、ずっとそばにいたかったの。

 

 

 

「俺」は怒りがないと、自分を保てなかった。

だから、あいつの優しさが邪魔だった。

 

「私」は希望を信じていないと、「私」でいられない気がした。

だから、あなたの絶望から目を逸らした。

 

 

 

「俺」

思い出せなくてもいい。

名前も、顔も、声も。

でも――“いた”ってことだけは、忘れたくねぇ。

 

 

 

「私」

思い出したい。

名前も、顔も、声も。

あなたの“存在”を、忘れたくない。

 

 

 

でも本当は――

「俺」も、「私」も、“僕”だった。

 

綺麗事も、本音も。

愛も、嫌悪も。

ぜんぶ、僕の中にあったんだ。

 

 

 

「私」も「俺」も、一人だった。

でも、今なら言える。

 

 

 

――僕は、僕だ。

 

 

 

忘れない。

忘れたくない。

僕の中に、確かにいた――君たちのことを。

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

正反対の「私」と「俺」、でもどちらも自分の一部。
そんな葛藤を言葉にしてみたくて、書きました。

初投稿なので、感想などもらえたら嬉しいです。
これからも、少しずつ書いていけたらと思っています。
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