バケモンの断末魔を聞き微妙な雰囲気になった空間。
「……チッ…」
「ん、バケモンのせい」
二人はバケモンに対し謝罪の一言もなく更に追い打ちをかける。踏んだり蹴ったりってやつだ。
当然と言えば当然…なのか、ね。
一触即発の戦場に己から飛び出したんだ。
ベクトルは違うがノーブルパンプモンと似た波動を感じてしまうよ。上手くいくとは思えないけどさ。
…現に……。
「痛いホー…」
頭が削れ腹部?を切り裂かれたバケモンがしくしくと泣きついてくる。致命傷だと思うんだけどなんでピンピンしてんの?
頭に関してはノーブルパンプモンの事例があるから百歩譲ろう。
腹部は無理でしょ?デジコア丸見えだよ?
一部のデジモンもデジコアを晒してたりするけどさ。
プロトタイプデジモンと呼ばれる存在とか。
その辺の知識は無いに等しいしプロトタイプデジモンとされるドルモンとは仲良くしてた記憶がある。というか村のデジモンの一人だった。
ドルガモンになったのは覚えている。
幼年期のドリモンの時から噛み癖凄くてさ。
愛情表現なのか滅茶苦茶噛まれまくった。
甘噛みだったからドルモンまでは許容できたけどドルガモンになって噛まれた時は死ぬかと思ったな。
全身噛み跡がビッシリ付いたこともあったぜ。…テイルモンがブチ切れて大変だった。
……………………。
…メイクーモン……ファングモンを本気で殺す気だったよな。
俺にその気はなかった、けど。
…守ろうとしてくれたんだろう。
説明もしてないし怒れる立場でもない。
バケモンが乱入してくれたおかげで話すことはできそうだ。
ありがとうバケモン。
バケモンを受け止めつつ傷口に触れないようにギュッと抱き締める。
うーん、治療をしてあげたい…けど。
どうすればいい?頭は削れて…腹部切り裂かれている。…消毒とか云々の問題だよね。
廃墟の中で医薬品が見つかるはずもない。
どう考えても不可能だ。…裁縫で補修する?なんて無理か。
精々慰めることしかできないよ。
しかしどうやって話を切り出せば……。
クーと響く音。
「ん、お腹すいた」
「敵の前で何言ってんだが」
…メイクーモン。
ファングモンの言う通りだぞ。
呆れた顔で見てるよ。
流石のファングモンもメイクーモンの自由加減にため息しか出てこないみたいだった。
それはそう。
仲間だとしても……ねえ。
「丁度いいか。テイマーお前に話があったんだ」
意外にもファングモンから話を切り出してくれた。話があった、か。
「……お前は本物か?」
はい?話の意図が読めないんだけど。
思考を巡らせ持ちうる情報に該当するものは見つからない。
「その様子だと何も知らないみたいだな」
お恥ずかしいことにそうみたいだね。
だから教えてくれないか?その言葉の意味を…。
ファングモンは大きく息を吐く。
「デジタルワールドにパラレルモンを名乗る者が現れた」
「…パラレル、モン……!」
メイクーモン…?
……てか
パラレルモン、だよね。…パラレルモン。ははは…嫌な予感しかしない。なんならヤバい案件トップスリーに入るやつだ。ガチめにガチでやばい奴。
「アイツはテイマーを探していた。…テイマーの伝説は知っている。だからみんな知らないフリをした。だがバレてしまい……」
悔しそうに歯軋りをするファングモン。
言葉は途絶える。…先を聞かなくとも察せられた。
メイクーモンの様子もおかしい。
なにか知っているのかもしれない。
パラレルモンは別次元のデジタルワールドを自由に行き来することができる突然変異型究極体のデジモン…だったはず。
デジタルゲートを発生も含めての汎用性の高いデジモン候補の一人だった。ただこれはある条件が重ならない限り万が一も有り得ないということ。
…パラレルモンに関する情報が無いに等しいこと。この二つが限りなく可能性を低くしていた。
出典もコミカライズだけだった気がする。分かることは…デジモンとテイマーを吸収することができる。主にテイマーとデジタルワールドが存在する平行世界を渡り歩く、ぐらいだろうか。目的は不明で神出鬼没。
デジモンテイマーとデジタルワールド。この二つが存在しなければパラレルモンが渡ってくることは限りなく低い。…多分。
この世界にはテイマーとデジタルワールドが存在することになる。か、貧乏くじを引いた。
デジタルワールドの管理者の発言からほぼ確実にデジモンテイマーと認知されていると思われるけどね。
要するに俺のせいでパラレルモンがデジタルワールドに現れた可能性が高い。デジタルゲートを使ってデジモンと人間を引き合わせテイマーを作る。……でもそれってどちらかといえば連続殺人よりも神隠しの話に…。
もしかして…繋がっているのか?
ファングモンちょっと聞きたいことが……電話?…テイルモン?どうし……今何処にいる?
覚えてるかな?バケモンがいた心霊廃墟。
「後日会えるか?」
ファングモン?ああ、構わないよ。他にも聞きたいことはあるから…テイルモン落ち着いて。そうだ!一度セイレーンモンに代わ…切れた!?テイルモン!…テイルモン!?あー…うん、駄目だ。これは来るね。
どうしようか。流石に帰るのは躊躇われるし後が大変なことになりそうだよ。
「これがテイマー、か」
んーあー…ははは、幻滅した……?
「いや、皆があれだけ
へぇ崇拝…ん?ん?????
あれ?ちょっと予想の斜め上の返答が返ってきた?崇拝ってなに?…まだおとぎ話の登場人物は納得しかけてたんだけど崇拝は話が変わってくるんだよね。
「長がまだ幼年期の頃。テイマーに助けられて今の町があると教えてもらっていた」
長?幼年期に助けられた。…町……?
……ダメだ。全然記憶にないと思う。
因みにその長はどんなデジモンでしょうか?
「名前か?…プ」
「ん!テイマーはテイマー。それ以上でもそれ以下でもない」
メイクーモン?
急に大声を出してどうしたの?
間に割り込み手をわたわたとさせている。
「……フッ、オレは失礼する」
なにか納得したような顔をし廃墟の外へと消えていくファングモン。俺は納得も理解もできてないんだけど。
明日も会うしその時に改めて聞けばいいか。
問題が山積みだ。ただパラレルモンという元凶を知ることができた。
これは第一歩。神隠しと連続殺人事件が繋がっている可能性も出てきた。
……不干渉を取っている。
神隠しよりも先に連続殺人事件の情報を何がなんでも集めなければいけない。
例の赤い頭巾の少女。ファングモンは少女のことを知っている。絶対に聞かなきゃいけない。
その為に。
「ん、お腹すいた」
わかったわかってるから頭を齧るのはやめてくれない?うん、だからって首に食らいつくのは違くない?
バケモンちょっと止め……あ、ダメだ。
気絶しているわ。よく気絶で済んでるよ。
「テイマー!大丈夫!?ファング…モン……は……」
「はぁ…はぁ…テ、テイマーさん…大丈夫です…か……」
テイルモンとセイレーンモン。心配かけてごめ…あっ……テイルモン?テイルモン?テイルモンさん?…待って!落ち着いて!その鋭い爪を振り上げるのはやめていただけないでしょうか!?
「ん、しょっぱい」
そりゃね!塩分…てか汗で……テイルモン?
「殺る」
テイルモン!?
この後全力で謝り倒し爪を収めて貰いメイクーモンの説明をした。納得?してくれるはずがないよね!
この浮気者ー!と割と強めてボコボコ叩かれた。爪だったらズタズタにされていたよ。
重傷のバケモンとメイクーモンを自宅に連れて帰りバケモンはソーイングセットを使って軽い補修をしメイクーモンには飯をたらふく食わせた。
まさか初めてのソーイングセットがバケモンになるとは思わなかったよね。
二人には今晩は泊まってもらい何時もより抱擁が激しいテイルモンと心做しが強く握り締めているセイレーンモン。頭に尖りついたメイクーモンに遠慮なく上に乗ったバケモンに挟まれ眠りについた。…暑かった。
翌日。珍しくセイレーンモンよりも先に起きた。
……バケモンとメイクーモンは居なくなっていた。帰ったんだろう。
今日は俺が朝食を作るか、とテイルモンとセイレーンモンを剥がしてキッチンへ向かう。
「ん、おはよう」
冷蔵庫の食糧を漁るメイクーモン。
おやつに買ってあったソーセージを咥えていた。
……………………。
俺は無言で頭を抱えた。
今日のデジモン図鑑(仮)
パラレルモンの紹介をしようと思いましたが何れ相対すると思いますので今回はお休み致します。