個性【錠剤】で個性の薬をつくりながらヒーローになるアカデミア 作:黒鉄 玲
朝。快晴による日差しによる心地よい光によって、瞳を開く。
「……ここどこ?」
そこは知らない部屋だった。しかし、部屋の和の雰囲気から察するに旅館のどこかであることは変わりない。
「……くさり……ま…って……」
そして、その隣に古新奈が椅子に座り、手を握りながら眠りこけていた。
寝ぼけて回っていない頭に【伝雷】を叩きつけ、焼けるような痛みで記憶を呼び起こす。
バチチッ
ついでに激しい閃光と鼓膜に刺さる爆音により、新奈も意識を取り戻した。
「んわ!?なにごと!?」
「……ああ、そうか、思い出した。薬の開発中に新奈を呼んだんだったか?それで能力使いすぎて脳内オーバーヒートして気絶したのか」
「いや鎖思い出し方荒技すぎない!?もうちょっと手段を変えようよ!」
「これが一番早いんだ。許せ。それで、ここはどこだ?」
「ここは簡易的な医務室だね。修学旅行とかの時あったでしょ?大変だったんだからね鎖運ぶの。幼児の姿にして運んだけど」
「幼児って何歳くらいだ?」
「ざっと6歳くらい?」
「完全に事案じゃねぇか」
幼馴染と一対一で会話したのはいつぶりだろうか。そんなことを考えながら楽しく談笑していると、扉が開き、担任の相澤先生が入ってきた。
「古、どうだ……って、薬錠。起きたのか」
「はい。よく眠れました」
「それはよかった、と言いたいが、もう少し自分の体を大事にしろ」
「ぐうの音も出ない正論ですね。でもさすがに今回は反省しましたよ。自分もまさか気絶するとは。次からはそうならないよう気をつけます」
「わかってるならいい。それと、二人とも休み終わったら外に来い」
「「はい。わかりました」」
その後、だいたい1時間くらい休んでたら、再び先生が来て、「二度目はないぞ」と言い残して後を去った。
二人は危機感を察知し、言われてすぐ出た。
「……」
「えっと……」
「「なにこれぇ」」
その視界の先には、各々の地獄があった。
ある者はドラム缶の風呂を温めながら、ある者は頭についた髪の毛をひったすらに引きちぎり、ある者は気持ち悪くて吐きそうになりながらも個性を使って物を宙に浮かせていた。
極め付けは多くの生徒が筋骨隆々のオネェ系化け物ヒーローの虎によるブートキャンプにより、多くの生徒がボコボコにされているえげつない光景が、そこにはあった。
「俺らこれからアレに参加するのか?」
「ええぇ……俄然やる気がなくなってきた……」
軽く絶望する二人に、相澤先生はこの訓練の説明をしてくれた。
「ここではそれぞれに合ったメニューで個性を鍛えてもらう。前にも言ったと思うが、個性とは身体機能の一部だ。使い続ければ使い続けるほど強くなっていく」
「それでこんな地獄絵図に……」
相澤先生はそれぞれに個性強化のためのメニューを出した。
「古にはいろんな物体の時間を操作してもらう」
「うへぇ……やる気出ない」
「そして薬錠。お前は俺についてこい」
「わかりました。じゃ、メニュー頑張れよ」
そう言って俺は相澤先生の後ろについていく。その様子を新奈は手を振りながら眺めていた。
2人きりになった時、相澤先生は俺に一つ問いかけた。
「ところで、昨日の改善策、できたのか?」
相澤先生の口から、そんな雑談が飛んでくることに少し驚き、されどその少量の動揺を隠して答える。
「はい、なんとか。古が俺が寝ている間にも触れててくれたので、最低でも一日分の【物体時間操作】が手に入りました。あとはこれを別の個性と混ぜて、触れないでも時間操作を発動させることができれば、体内で薬を再生させて永久的に人の個性を使えるようになります」
「な、なるほど、そういう手をとるのか」
個性と個性を混ぜるとかいう個性婚でしか聞かない言動に、改めてぶっ壊れのチート個性だと今しがた理解する相澤先生。
「で、先生は俺に何をさせるんですか?」
「これから薬錠には一度今持っている全ての個性を使いつつ、毎回毎回個性薬を作ってもらう」
「…………はい?」
聞き取れなかったのではなく、理解できなかった。
「個性は使えば使うほど強くなる、というのは知っているな?」
「はい」
「よってその経験則から、薬錠にはその【錠剤】をひたすら使ってもらう。扱いを覚えるという感じだな。あと個性薬を生産し続ければもしかしたら使える時間が伸びるかもしれないからな。わかりやすい個性ならどう伸ばすかは決まっているが、何せだいぶ珍しい。だから手探りで強化していくしかない」
なるほど、最初言われたとき、急に何言い出してんだと思っていたが、先生方も苦労しているらしい。珍しいもんな、人の個性を使える個性って。そういや物間とかいう奴が似たような個性持ってるって言ってたけど、アイツはどういう訓練してんだろ。いつか見に行こ。
「はい、わかりました。あと、先生も大変なんですね。よかったらサルミアッキいりません?」
「……どこで用意したのかは聞かないでおくが、もらっておこう」
なんとなく相澤先生の表情が柔らかくなった気がした。
え?なんで先生の好物知っているのかって?勝手に【過去視】使って今後の評価をできる限りあげようと思ったから。(動機がカス)