【完結】潜誠の盾:元“処刑人”のボディーガード。シングルマザーを守る   作:冬蜂

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013:静かな戦場と防備

 車のボディに反射する光が眩しい。

 ジョージは無言でサングラスをかけた。

 

 助手席に置いた紙袋から、バナナを1本取り出す。

 皮をむき、静かにバナナを齧った。

 咀嚼音さえ、空間に溶けていく。

 

 食事というより、ただの燃料補給。

 味も食感も、特に意識はしていない。

 ただ――空腹は、判断力を鈍らせる。

 それだけの理由で、腹に入れていた。

 

 スマホをちらと確認する。

 ヴィンセントからの返信はまだない。

 まだ調査中か、それとも……面倒な何かに巻き込まれているか。

 

 もう一口、バナナを食べながら、ナンシーの家の防犯対策を頭の中で整理する。

 

 ・窓の鍵は標準的なもの → 補助ロックとブザーを追加

 ・玄関の施錠が甘い → 補助錠とストッパーを設置

 ・センサーカメラのみで監視カメラなし → 本物とダミーを設置

 ・駐車場が死角になっている → センサーライトを追加

 

 最後の一口を飲み込み、皮をたたんでゴミ袋に押し込む。

 サングラスのブリッジ越しに正面を見据え、ギアを入れた。

 

 行き先は決まっていた。

 

 

 ホームセンターの広大な駐車場に車を停め、ジョージは店内へと入った。

 

 コンクリートの床に響くカートの音。

 工具がぶつかる金属音が微かに耳に届く。

 DIY用品が整然と並ぶ売り場を、必要なものを考えながら回る。

 

 ・補助錠(ドア用) → 玄関の防犯強化

 ・ 窓用ロック → 開閉式の補助鍵

 ・防犯ブザー → 窓やドアに振動が加わると警報を鳴らす

 ・センサーライト → 駐車場と裏庭の照明強化

 ・監視カメラ(ダミー含む) → 威圧効果を狙う

 ・結束バンド・金具類 → 配線の固定用

 

 売り場には、地元の職人風の男やDIY好きの客がちらほら。

 ジョージは特に気にすることなく、必要なものを次々とカートに入れていく。

 レジに向かうと、店員が笑顔で声をかけた。

 

「取り付けサービスもありますよ?」

「自分でやる」

 

 無駄な会話を省き、支払いを済ませる。

 カートを押して駐車場へ向かう。

 荷台に商品を積み込み、後部座席に工具類を固定する。

 

 エンジンをかけると、低い振動が指先に伝わった。

 ナンシーの家へ向かう前に、ジョージは一瞬だけ考えた。

 

(本当にここを要塞化する必要があるのか)

 

 相手の正体が分かっていない以上、派手な動きは避けるべきだ。

 今は、静かに準備を進める時だ。

 ギアを入れ、リッジラインを発進させた。

 

 

 住宅街に入り、ナンシーの家の前にリッジラインを停める。

 エンジンを切り、しばらく車内から周囲を観察した。

 

 特に変わった様子はない。

 近所の住人が庭の手入れをし、犬の散歩をする老夫婦の姿があった。

 ジョージは荷台から工具と防犯用品を降ろし、玄関の鍵を開ける。

 

 室内は静かだった。

 ナンシーも、子供たちもいない。

 このまま黙々と作業を進めるには、ちょうどいい状況だった。

 

① 玄関の補強

 まずは玄関のドアから取り掛かる。

 シリンダーキーだけでは心許ない。

 

 →補助錠の取り付け

 電動ドリルを取り出し、ドアフレームに慎重に金具を固定する。

 ネジが締まる音が、静まり返った室内に響いた。

 

 →ドアストッパーの設置

 内側からのみ作動するストッパーを追加し、強行突破の難易度を上げる。

 扉を軽く押して確認する。

 ―― 「これで少しはマシか」

 

② 窓の防犯強化

 次に、リビングと寝室の窓を補強する。

 窓の鍵を確認し、開閉補助ロック を取り付ける。

 さらに、振動検知式の防犯ブザー を設置。

 

 不審者が窓を叩けば、即座に警報が鳴る。

 試しに窓を軽く叩く。

 

 甲高い警告音。

 問題なく作動する。

 

③ 監視カメラ&センサーライト

 リッジラインから梯子を取り出し、ガレージの外壁に立てかける。

 監視カメラを、破壊されにくい高い位置に設置。

 

 ・玄関と裏庭に本物のカメラ

 ・駐車場と側面にダミーカメラ

 

 本物と偽物を混ぜることで、侵入者に「どれが本物か分からない」状態を作る。

 センサーライトも、ガレージと裏庭に取り付ける。

 配線を固定し、角度を微調整。

 ―― 少しの動きでも自動で点灯するようになった。

 

 だがこれはあくまで最低限の対策に過ぎない。所詮、時間稼ぎ。

 

 ジョージは壁に頭をコツンとぶつけた。絡まった思考がほどけていく。

 

 上着を手に取り、時間を見た。ジェシカの迎えまでまだ時間がある。

 ジョージはナッツを口に放り込み、リッジラインのドアを開け、車に乗り込んだ。

 

 ナッツを噛みながら視線を前に送る。

 ――この後、何が待つかなど知らずに。

 

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