【完結】潜誠の盾:元“処刑人”のボディーガード。シングルマザーを守る   作:冬蜂

66 / 161
【番外編】あれはミラーボールじゃなくて、サンキャッチャー!

 ΩRMの事務所の天井に、銀色の球体がぶら下がっていた。

 どう見ても、ミラーボールだった。

 

「……おい、なんだあれ」

 

 朝の出勤。ヴィンセントが立ち止まり、天井を見上げて呻いた。

 天井は高い。元倉庫の天井そのまま。脚立じゃ届かない。

 照明設備を取り替えるにも業者を呼ぶような高さだ。

 

「昨日までは……なかったよな?」

「なかった」

 

 背後で答えたのは、コーヒー片手のジョージ。

 無表情のまま、首だけで天井を見上げている。

 と、そのとき、奥のソファに座っていたチャールズ・フィンリーが陽気に手を挙げた。

 

「Yo! ヴィンちゃん、ジョージ。目覚めの光、どうよ? いい反射してんだろ?」

「お前……あれ、なんだ」

「何って、サンキャッチャーだよ」

 

 ヴィンセントは、チャット、ミラーボール、再びチャットの順に視線を動かした。

 

「クラブ仕様のミラーボールにしか見えねぇが」

 

「失礼な。あれは風水的に最高の位置に設置してある、

 “開運・集中力UPタイプのスピリチュアル・サンキャッチャー”だ」

 

「……で、これ、いつ使うんだ」

 

「使うとかじゃないの。在ることに意味があるの。禅と一緒」

 

 ジョージはチャットを見た。

 

「……禅というものは、そういうことじゃない」

「え、そうなの?」

「そうだ」

「禅って何するやつだっけ?」

 

 ヴィンセントがこめかみを押さえた。

 

「……お前に説明しても三歩で忘れるだろ」

 

「誰が取り付けた」

 

「……まぁ昨晩業者をちょっと呼んで。

 高所作業で特殊アンカーだから時間かかってさ。予算? 自腹だよ、もちろん」

 

 ジョージはチャットを見た。

 

「……自腹?」

 

「そう。投資ってやつよ。空間に対するな」

 

 ヴィンセントは目を閉じて鼻を鳴らした。

 ジョージは天井とチャットを交互に見て、一言だけ。

 

「……プロの犯行だな」

 

「ああ。しかも犯行動機が意味不明だ」

 

「意味はあるって! ほら、朝日が当たると、床に虹ができるんだぜ?」

「で、その虹を踏んづけたらどうなるんだ」

 

 ジョージが淡々と聞く。

 

「踏んだら……運気が上がる」

「根拠は?」

「俺の直感」

 

 ヴィンセントは深くため息をつき、チャットをにらむ。

 

「お前、まさかΩRMをクラブにする気じゃねぇだろうな?」

「おっと、バレた? 金曜の夜は“プロテクション・ナイト”開催予定なんだが」

「ふざけんな」

「冗談だって……半分は」

 

 ジョージはカップを置き、ミラーボールとチャットを交互に見た。

「……もういい。落ちてきたら、そんとき撤去しよう」

「ああ。二度と届かない高さだしな……あのバカ」

あなたの年代と性別を教えてください。(読者の傾向を知りたい)

  • ~20代男性
  • 30~50代男性
  • 60代~男性
  • ~20代女性
  • 30~50代女性
  • 60代~女性
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。