僕っ娘天使が俺の部屋でサボってる件。   作:世嗣

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依頼者。あるいは画面越しの君。

 

 俺はあまり間食をする方ではない。太るのを気にしているとかではなく、普通に食べる習慣がないからだ。朝昼夜のメシで十分だし。

 でも、ここんところ間食をする機会が増えてしまっている。

 

「ふむ、今回のポテチの味は結構当たりだね。期間限定の味だから警戒したけど、やっぱ食べてみないと分からないものもあるよね」

 

 それは、俺の部屋に入り浸っている天使が手土産に毎回チョコやらポテチやらを持ち込んでくるからである。

 今日もユウヒは休みだというのにわざわざ俺の家に来て、今はベッドの上で音楽を聴きつつお菓子でくつろいでいた。自分の家?

 

「なんで普通に俺の家に来てんのお前?」

「んー、ここ空が近いから落ち着くんだよねー」

「近いって、5階だぞ」

「それでも地上にいるよりは近いじゃん。やっぱ空気が違うよね」

「クーラーを入れた部屋で空気もクソもないと思うけどな」

「あとお菓子を食べれて漫画があって、ゲームができる」

「このサブカル天使俺の家をネカフェだと思ってないか?」

「減るもんじゃないしいいじゃん」

「その寝っ転がってポテチ食う姿によって天使らしいありがたみはどんどん減ってるな」

 

 ちっちっち、とユウヒが指を振ると、袋から取り出したポテチで俺をさした。

 

「大天使ミカエル様曰く。『ポテチはうすしおを選ぶべし』ってね」

「本当か? 本当にミカエルそれ言ったか?」

「言ってた言ってた。なんなら一度だけ会ったアポロン様も深夜に食べるポテチ最高って言ってたよ」

「あの人がいるとき常に昼だろ」

「ポテチ食べたい時は太陽消してるって言ってた」

「ポテチのために世界が滅んでんだよなぁ」

 

 なんてくだらない話だ。

 俺がベッドに座って置きっぱなしの漫画本を拾い上げたら、俺の膝にユウヒが足を乗せて来た。

 

「重い」

「僕のキミへの愛の重さだ、それ」

「やかましいな」

 

 どや顔のユウヒを無視して足をどけた。

 ユウヒは休日でもいつもの制服姿。つまり、スカートである。だというのに、こういうことするもんだから、俺としては大変目のやりどころに困ってしまう。

 

「あ、幸太郎、またパソコン借りていい?」

「駄目だ」

「なんで? いま使ってないでしょ?」

「これ以上お前に俺の私物を貸すとお前が無限に俺の家でくつろぎそうだから」

「むー……」

「膨れてもダメだぞ」

 

 俺がぴしゃりというと、「わかったわかった」とユウヒは拳を突き出してくる。

 

「なんだ、腹パンのメタファーか?」

「僕をどんな暴力天使だと思ってるわけ? 違うよじゃんけんだよう」

「じゃんけん?」

「そ。これから僕と幸太郎が揉めた時は、じゃんけんで決めることにしようよ」

「その心は?」

「だって人間の友だちって、こういう二人だけのお決まりのやり取りがあるものなんでしょ? 僕、ちょっとそう言うのに憧れてたんだよねぇ」

「例えば?」

「『悪いがルパン、俺は降りるぜ』」

「お前地上に馴染み過ぎだな」

 

 げんなりとした気持ちで言い返すが、ユウヒはきらきらした目のまま拳を突き出してるので、俺の方が折れた。

 

「じゃんけんで勝ったら言うことを聞くんだな」

「! うん! うん! もちろん!」

「ったく、負けても文句言うなよ」

 

 俺は立ち上がると、軽く肩を回した。

 ユウヒも手をぐーぱーして、勝負の時に備える。

 

「じゃんけん!」

「ぽん!」

 

 あいこはなく、勝負は一発で決まった。

 

「やたっ! 僕の勝ち~~!」

「くそ……」

 

 俺が出したグーを、パーで撃破したユウヒはその場でぴょんぴょんと飛びはねて、置いてあったノートパソコン(俺が使わないせいでかっこいいインテリアとなっていた)を手に取った。

 

「じゃ、借りるね!」

 

 そして、イヤホンを繋げて機嫌よさそうに俺のベッドに転がると、かたかたとパソコンを操作した。またスカートがいけない感じになったので、俺はそこから目を逸らすために、ユウヒの立ち上げたパソコンの画面をのぞき込んだ。

 どうやらユウヒが見ているのはYoutubeの音楽PVらしい。音は聞こえないが画面の中で、青い髪の女の子が踊っていた。

 

「何聞いてるんだ?」

「LENA」

「れな?」

「はあ? 知らないの?!」

 

 俺が首を傾げたら、ユウヒが驚いたように起き上がる。

 

「ちょー有名じゃん『LENA』! 今を時めくアイドル歌手!」

「あんまそういうのに詳しく無くてなぁ」

「wikipedia曰く、元はアマチュアだったけど、地道な活動と、確かな実力、そして熱心なファンに後押しされてメジャーデビュー。あっという間に10代から20代のカリスマになったらしい……けど、ここ2か月くらいなぜか活動休止しちゃってるんだよねぇ。残念でならないよ」

「勉強になったけど、それソースにして語るのもうやめた方がいいと思うぞ」

 

 時々情報の根拠が不確かですからね。便利なんだけど。

 

「まあとりあえず聞いてみなよ! ほら、いまちょうど僕の一番好きな曲流れてるから!」

 

 ユウヒは耳につけていた有線のイヤホンを指で引っ掛けて外すと、片方のイヤホンを俺に差し出してくる。

 とりあえず差し伸べられるままに耳にイヤホンを……できなかった。俺とユウヒの身長差がありすぎたせいで、イヤホンのコードが悲鳴を上げているせいだ。

 

「ちょ、もっと近づいてよ。届かないじゃんよお」

「お、おお……」

 

 めんどくさそうなユウヒが翼を広げると、俺の肩を翼で引き寄せた。柔らかい羽毛の感触と、ふわっとシトラスの香りがした。

 

「ね? ね? いい曲でしょ?」

 

 促されるままに聞いたが、正直ユウヒが近すぎるせいであんまり曲には集中できなかった。

 肩なんか普通に触れ合ってるし、いつもよりグッとユウヒの声が近くに感じる。こうしていると、こいつが俺のことを導く天使だってことを忘れて、ただの人間のクラスメイトだって勘違いしそうになる。

 ……いや、騙されるな。こいつは天使。人間じゃない。たぶんあんま何も考えてないだけで、他意はない。

 

「まあ、確かにいい曲だな」

「? うそつきみっけ? なんで?」

「………」

 

 忘れてた。こいつ俺の嘘分かるんだった。

 

 その後、もっと聞けと俺に布教を始めたユウヒを適当にあしらって、家を出た。

 と言うのも、俺たちはこのあと姉さんの紹介してくれる、「困りごとがある人」に会いに行く予定なのだ。

 俺が謝ったことで、姉さんはその人と俺たちを取り次いでくれることにはなったのだが、すぐには無理だから週末まで待てと言われた。

 

 そのため、数日待って日曜になった今日、もう一度俺たちは『猫柳』に向かう。

 

「幸太郎ってなんでケルベロスと仲良いの?」

「え?」

 

 その道すがら、隣を歩くユウヒが切り出してくる。

 

「そんな驚くこと? だって、本物の姉じゃないでしょ?」

「なんで、と言われてもな……」

 

 ぽりぽりと頭をかく。ここらへんは九条とかにもあんまり説明したことがないんだけど、まあユウヒならいいか。

 

「俺って小さいころから色々人間じゃないものが見えたんだよ。木霊とかみたいな精霊とか、かまいたちみたいな妖怪とか」

「僕の翼が見えた感じで?」

「ま、そうだな」

 

 あの頃はそういう怪異たちのことをよく理解してなかったから、無意味にびくびくしてたもんだ。

 

「そんなころの俺を色々と助けて面倒を見てくれた人がいてな。姉さんは、そういう人の一人なんだよ」

 

 出会ったのが小1とかだっけか。あの頃から姉さんの姿はちっとも変わらないままだ。

 俺に対する態度もほとんど変わらず、本当の弟のように可愛がってくれている。

 

「まあ、でも姉さんが俺に良くしてくれる理由は、正直わからん。そういう話をするといつも誤魔化してくるから」

 

 俺としても姉さんがなんで俺に優しいのかは気になる所なので、何年か置きにしれっと聞いてみたこともあるけど、そのたびに誤魔化され続けて今に至る。

 一度かなり真剣に食い下がったこともあったのだが、その時の姉さんの困ったような笑顔と、その中に混ざった俺にはわからない感情がひどく心に残って、深く聞くのは辞めてしまった。

 

「でも、少なくとも姉さんは人間が好きだからこの街にいるんだと思うぞ。それこそ、ここ百五十年はこの街にはいるっぽいし」

「へー、あいつ割とババアなんだね」

「それマジで姉さんに言うなよ」

 

 姉さんはケルベロスだから相応に長生きで、年齢の話に触れるとかなり怖いのだ。

 たぶん最低300くらいは超えてるとは思うが……こういう話振ったとき、三日くらい出されるコーヒーに塩が入ってた。

 

「そういうユウヒはなんで姉さんのことが嫌いなんだ? 別に人間じゃないから嫌いってわけでもないだろ?」

「性格が合わない。顔がムカつく。やたらと乳がデカいのがムカつく。なんかナチュラルに上から目線なのがムカつく。まだ言った方がいい?」

「いや、もういい」

 

 そうだね、ユウヒはそういうストレートなやつだったな。

 

「……ま、強いて付け加えるなら人間へのスタンスが違うのもあるかなー」

 

 人間へのスタンス?

 

「あのケルベロスって『人間のあるがままを受け入れる』ってタイプでしょ? それって、『人をより良く導く』って僕ら天使とは正反対なの。納得した?」

「なんとなく……?」

 

 そんくらいであんなに仲悪くなるもんか? いや、百歩譲ってユウヒはそれで納得するとしても、なんで姉さんはユウヒのことをあんなに嫌っているんだろう。

 普段は誰にでも優しい人だから、ああいう感じであからさまに嫌いって気持ちを隠さないのは初めて見た。

 

 いつか聞いたら答えてくれるだろうか。

 

 そんなこんなでしばらく歩いて俺たちは喫茶『猫柳』にやって来た。

 表通りから裏に入り、入り組んだ道を通って、いつものように木製の扉を押して入ると、古めかしいベルがからんころんと音を鳴らす。

 

 広い店ではない。けれど、どこか隠れ家のような雰囲気のある店内は、入るだけで本能的に安心感を覚える。そして、そんな店の木製のカウンターの奥ではいつも通り姉さんが、文庫本を片手に静かに座っていた。

 

 姉さんは俺たちに気づくと軽く目線を上げて、文庫本を置いた。

 そして、そんな姉さんにユウヒが一言。

 

「お前、結構ババアなんだね」

「言うなっつっただろうが!」

「喧嘩やな? 買った」

「こっちのセリフだぁ!」

 

 シュババッと駆けたユウヒと、いつの間にかカウンターからこちら側に来ていた姉さんが拳を交える。

 お互いに残像を残しながら振るわれた拳は、シュビビ!みたいな空気を割く音を生み出した。

 二人がババっと距離を取る。

 

「ちっ、浅いか」

「薄いかの間違いやろ。胸も薄いし」

「じょーとーだよお! かかって来いよ! オメーの無駄にぱつぱつのその胸もいでやるからさあ!」

「ならうちはその長い鼻柱折ったるわ」

 

 この二人がバチるとなんか作品ジャンルが変わってるからマジでやめてくれないかな。

 とりあえずしばらく好きにさせていたが、お互いの攻撃が交差したあたりで手を打って終わりの合図をした。

 

「姉さん、ユウヒ、俺たちは今日人助けの依頼について聞きに来たんだけど。いつまで遊んでるんだ」

 

 俺が声をかけると渋々と言った様子で、二人は手を止めた。

 

「で? 依頼人……って言っていいのかわかんないけど、まだ来てないのか?」

「ん、そろそろ来るはずやで。一応幸太郎たちが来る時間よりちょっと遅めを伝えといたから」

「そか。じゃあ、俺たちは一旦座っておくか」

 

 隣のユウヒに声をかけようとしたら、ユウヒがふっと目線を扉の方に向けた。そして、ぱたぱたと翼を震わせる。

 

「噂をしたら来たみたいだよ」

 

 ああ、ユウヒの『天使』としての能力で、困った人の声が聞こえたのか。

 

「あの、ここが『猫柳』さんで、あってるでしょうか」

 

 からん、とベルを鳴らして扉が開くと、その間からこそこそと一人の少女が店内に入って来た。

 髪をキャスケット帽に髪を詰め込んですっぽりと覆い隠し、羽織ったパーカーもややオーバーサイズ気味で体格がわかりにくい。身長はユウヒより少し高いくらいなので、150くらいだろうか?

 彼女は背筋を丸めて、きょろきょろと視線を泳がせる。

 

「わ、わわっ」

 

 そして俺と視線がぶつかったところで、慌てて目を逸らした。

 その様子にふっと姉さんが微笑んでから、優しく声をかける。

 

「待っとったで。お父さんから話は聞いとるよ」

「ど、どうも、今回はお時間をいただいてありがとうございます……」

「あはは、ええってええって。相談に乗るのはうちやなくて、そっちやけど、問題ない?」

「あ、はい。だいじょうぶです」

 

 くい、と姉さんが目で俺たちの方を差すと、彼女は俺たちをちらっと伺って来た。

 

「あー、どうも。とりあえず座りませんか? 話はそれからで」

「は、はい……」

 

 俺が近くの4人掛けの椅子を差すと、それぞれ腰かける。

 対面には依頼人の彼女が、ユウヒは俺の隣に、姉さんは俺らの様子をカウンターから眺めている。

 

「ええと、はじめまして。俺は篝幸太郎。姉さん……あせびさんとはちょっとした知り合いで、貴方の手助けができればと思ってるんですが……」

「そ、そうなんですね……」

「……」

「……」

 

 空気、重~い。ダメ、全然弾まないわ。そもそも俺はクラスでも浮いている口下手なんだ。

 

 木霊の時はユウヒが助けてくれたのに、今回は黙りこくったまま全く口をはさんでくれない。

 その様子を見かねたように、姉さんがため息をつきつつ、コーヒーを持ってきてくれる。

 

「この子は、うちのお得意さんの娘さんなんよ。それで、うちになにか力になってくれないかって聞かれてたんだけど、どうしたらいいか困ってて」

「なるほど」

「まあ、とりあえず名前くらいは教え合っておいたら? どういう関係になるにしろ、お互いの名前は知っておかなきゃ何もでけへんで?」

「そ、そうですね」

 

 彼女は胸元に添えるとふうと深呼吸をすると、ぼそぼそと小さい声のままに自己紹介を始める。

 

「あの、わたしはセレナーデ――――」

「『LENA』ちゃん?」

 

 急に今まで黙り込んでいたユウヒが口を開いた……って、『LENA』?

 いや、LENAって超人気のアイドル歌手なんだろ? こんなところにいるわけねえだろ?

 

 と思って自己紹介をしようとしていた彼女の方に目を向けると、彼女は目をぱちくりと瞬かせてぼかーんと口を開けていた。

 

「え、な、なんで、わたし、変装もしてますし、声だって……」

 

 ……マジかよ。マジで、そうなのか?

 

「わ、やっぱりLENAちゃんだよね!? うっそー、こんなところで会えるなんて!」

 

 彼女の反応から察したのか、それとも天使特有の嘘を見抜く力で本当だと感じ取ったのか、ユウヒは興奮したように椅子から立ち上がった

 

「握手良いですか!?」

「え、えと、は、はい」

「わー、感動だ~! 初めて聞いたのは先週とかなんだけど、僕すっかりファンで! もちろん全部歌聞いてます!」

 

 繋いでもらった手をぶんぶんと振りながら、興奮したように早口でまくし立てるユウヒ。

 

「デビュー曲の『キミ色語り』もすっごい良かったけど、やっぱ僕が一番好きなのは、二つ目のアルバムに入ってた『may B』なんだよね! あれ、人間の女の子のいじらしい等身大の恋って感じが凄く夢中になれるって言うか……あ、もちろん最新曲の『泡沫想い』もめっちゃくちゃ良かったんだけど! あれは年上の彼を見上げる構図が見えるようだったよね。すっごい良い感じ。やっぱLENAの歌う恋の歌ってやっぱり胸に訴えかけてくるものがあるって言うか……」

「わ、わわ……わ、わ……」

 

 ……こいつ、俺のノーパソ使って相当聞き込んだな……。出会って1週間の熱量じゃないだろ。

 

 ユウヒはその後も自分がいかに彼女の歌が好きで、どれだけ素晴らしいかを語り続けていた。その熱量と圧力に、『LENA』がぐるぐると目を回しはじめ、ついに我慢できなくなったように、震えながら声を挙げた。

 

「も、も、もう、恥ずかしいので、()()()()()()()っ」

 

 その時、空気が揺らいだ。

 生まれた揺らぎは、LENAから俺たちへと放たれ、店の中をあっという間に満たしてしまう。

 俺と姉さんは反射的に身を構えたが、最も近くで無防備にオタク語りをしていたユウヒは、その波をもろに受けてしまった。

 

 がくん、とユウヒの身体が揺れる。

 

「はい。わかりました。やめます」

 

 ぼんやりとした目線のままユウヒがぴたりと動きを止める。ユウヒはそのまま光の消えた目のままで突っ立ってしまう。

 

「ユウヒ、お前大丈夫か……? って、お前息してないな!?」

 

 やめろって言われたから、息吸うのを含めてすべての行為をやめたのか? 何してんだ?

 

「姉さん、ユウヒが息してないんだけど!」

「放っとけばええんちゃう? やかましいのがおらんくなったら話も進みやすいやろ」

「死ぬだろ、放っておいたら!」

 

 いや、天使だから息しなくても大丈夫なのか?

 

「あ、す、すみません。あの、そういう意味じゃなくて、こう、一旦()()()ほしかったって言うか……」

「はい、離れます」

「ああっ、どこにいくんですか! ここにいてください! ま、待ってくださいぃ~」

 

 うつろな目のままずんずんと店から出て行こうとするユウヒをLENAが半泣きでしがみついて止めていた。

 その拍子に今まで被っていたキャスケット帽が外れて、それまで押し込められていた髪が広がった。

 柔らかくウェーブした青い髪。まるで凪いだ海を思わせるような、静かで、淡い色の髪だった。

 

 ……姉さんのところに話が来ているという時点で、普通ではないと思っていたが、これは確定だな。

 

「姉さん、彼女やっぱり()()()()()()な?」

「御明察」

 

 俺が苦い顔で姉さんにそう尋ねると、姉さんはコーヒーを淹れつつ、ふっと微笑む。

 

「彼女は、セレナーデ・アウロラ・竜宮。超人気アイドル歌手『LENA』で――――『人魚』のハーフちゃんなんやって」

 

 ……そういうのは、先に言ってほしかったもんだな。

 

 

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