思わぬ来客に混乱する現場。光秋たちはこの事態をどう乗り切るのか?
では、どうぞ!
光秋は表示されたデータ映像に目を走らせ、前方の機種を確認する。
―『F‐14』?……旧式か?―
拡大映像、データ映像共に、相手機のF‐22よりも細身の機体と横に長い主翼が特徴的である。が、拡大映像の中のソレは、全機とも左右の主翼の付け根下部に、遠目にもミサイルとわかる物体を1基ずつ付けている。
(所属不明機多数接近!全機直ちに退避せよ!)
(何ぼさっとしてんだイエロー!こっちは模擬弾しか積んでないんだぞ!)
「!……あぁ、はい!」
管制からの連絡と金髪の怒声でハッとした光秋は、すぐに振り返って先行する3機に続く。
が、光秋がニコイチの速度を上げようとした直前、
「!」
接近警報が鳴ると同時に、背中全面を冷気が襲う。その不快感は先程までの比ではなく、さながら冷たいナイフを突き付けられる様な感じである。
反射的にレーダーに目をやると、後方の複数の機影から自機に向かって急速接近して来る影を見る。
「くっ!」
咄嗟にニコイチを振り向かせ、左腕を縦に構えて前に出すと、間を置かずそこにミサイルが1発着弾する。
「!……」
模擬弾よりも大きく明るい爆光を浴び、爆発から来る微振をやり過ごしながら、光秋はニコイチを受けの姿勢をとらせたまま前方の3機を追う様に後退させる。
―何だ?こいつら?……―
同じ頃。
仮設管制でも、事態を把握しようと皆躍起になって機器と睨み合いをしている。
「クソ!なんでこんなに接近されるまで気付かなかった!?」
大河原主任が両の手を握り締め、険しい顔で言う。
「周辺基地からの報告によりますと、『監視衛星からの映像では突然現れた』とのことです!奴ら、その場所までテレポートして来たとしか……」
男性職員の報告に、大河原はますます顔を歪める。
「Eジャマーを設置しなかったツケか!……しかし、何処から今日の情報が漏れた?……」
「大河原主任」
「?……」
静かに呼び掛けられた声に大河原は振り向くと、それまで後ろに設置されたテーブル上のモニターで光秋たちの戦いを静観していた富野大佐が、制帽を被ってイスから立っているのを見る。
「よろしければその所属不明機の相手、私にやらせていただけませんか?」
「……やって、いただけるんですか?」
「えぇ。今日の見学を許可していただいたお礼に」
「……それなら……よろしくお願いします!」
「……」
富野は口元の不敵な笑みを返事にすると、
「中尉、車を用意!現場へ向かう」
と、左隣の女性、今朝伊部二尉と共に富野を呼びに来たその人に顔を向けて命令する。
「はっ!」
女性は右手で敬礼して答えると、テントの左側の先へ駆け出していく。
「我々も行くぞ!竹田、車の用意!」
「了解!」
藤原三佐の命令に答えると同時に、竹田二尉は女性と同じ方に駆けて行く。
「三佐?」
富野が顔を向けると、藤原は、
「儂の部下が危険なのです!なにより今回の実験はESO主動なのです!本来我々が行くのが筋です!」
と、富野の目を真っ直ぐに見て返す。
「…………」
顔を戻した富野はそれ以上なにも言わず、車を待つことに専念する。
横に並んで先行する3機の下後方に追いついた光秋は、前方から自分たちの方へ向かって来る影を映像で確認する。拡大映像が左右に表示されると、先程まで相手機を務めていたF‐22である。左の機は、機首にまだ薄っすらとペイントの跡が残っている。
―さっきの?―
(ペガサス3より各機。これよりペガサス5と共に、所属不明機の迎撃を行う。各自速やかに退避を!)
男の声で通信が入る。
(こちらペガサス・リーダー。すまない。2人とも、気を付けてな)
((了解!))
光秋たちの上空を通過しながら返事をすると、2機は後方の編隊へと直進して行く。
続いて古谷大尉の声で通信が入る。
(ペガサス・リーダーより、ペガサス2、ペガサス4へ。今の内にベースに帰還して、実弾に換装!奴らを迎え撃つぞ!)
((了解!))
(加藤三曹)
「はい」
(君も出撃地点に戻れ。このまま飛んでもいられないだろう?)
「了解!」
と、光秋が答えた直後、
(そっち行ったぞ!逃げろ!)
と、ペガサス3の声が響く。
「!」
光秋はレーダーに目をやると、右側から1機が迂回しながら迫って来るのを見る。と、間を置かず右から銃弾が放たれる、
(散れ!)
「!」
古谷の指示に、光秋はニコイチを後退させる。
と、
(メーデー!メーデー!敵に付かれた!何とかしてくれ!)
と言う声を聞き、次いで上空で垂直上昇を続けるF‐22と、ソレを追う主翼を機体後方へと閉じた黄色いF‐14の拡大映像を見る。
―絡んできた人!―
声色からそう判断した光秋は、すぐに2機の方へ向かおうとする。
が、
―……!そうだ!今は模擬弾しか積んでない!―
と思い止まり、すぐにニコイチを滞空させる。
―今は、助けられない……―
悔しさに、奥歯を強く噛み締める。
が、
「…………!」
不意に光秋の脳裏に閃きが浮かぶ。
―ペイント弾……コイツの頑丈さ……レーダーには映らない……怪力……―「やれるかもしれない!」
そう断じると、ニコイチの左手に砲の支持棒を握らせ、砲口をいつでも撃てるように構えて2機の方へ全速力で直進する。拡大映像が消え、下から金髪の機を追うF‐14が距離を詰めるのを見る。
「させるか!」
一喝し、両機の間に割り込むと、同時にF‐14から放たれた機銃がニコイチの前部を叩く。
(イエロー!?)
金髪の驚きの声を聞くが気を止めず、光秋の意志を拾って正面機のキャノピーに絞り込んで表示された赤マーカーと、放ったレーザーの筋が合わさった一瞬、
「!」
光秋の意志と同期したニコイチの指が引き金を引き、放たれたペイント弾が正面機のキャノピーを緑に塗り潰す。撃ってすぐに正面機の上部に回り込んだニコイチは、左腕を腰に引き、
「あさぁ!」
と言う光秋の気合いと共に左正拳突きをその背に叩き込む。腹まで貫通させると、光秋は素早く腕を引き戻し、後退して相手から距離をとる。
尾部のジェット光が消え、腹を下にして失速から落下に移ったその機の緑に塗られたキャノピーが弾け飛ぶと、次いで放たれた2つの操縦席から白い大きなパラシュートが2つずつ開かれ、足元の森へ向かってゆっくりと降下して行く。
その2人を視界の右端に捉えながら、光秋は、
「よし!」
と、狙い通りの結果に小さく歓声を上げ、次の標的を探す。
と、
「!」
左から味方機が目の前を横切り、次いで、
(イエロー!)
と言う金髪の声が通信機に響く。
(お前が、何で俺を助けた?)
「何でって……目の前に死にかけてる人がいたら、助けるのが当然です!」
(…………)
はっきりと返した光秋は、ニコイチの周囲を左から右へと旋回し続ける金髪の機を意識の外に置いて索敵を再開する。
と、
(……乗れよ)
と、金髪の声がかかる。
「え?……」
(この上に乗れ!今のままで連中とやり合うには、お前は遅すぎるんだよ!)
旋回を続ける機から急かす様に言われた光秋は、
―一理ある、が……―「コレ、5トンはあるんですよ?」
(いいから、来い!)
「……了解!」
と返し、ニコイチの前方へ直進を始めた金髪機を追う。
ニコイチが金髪機の上に付き、両機が完全に速度を合わせ切って並行飛行に入ると、光秋は左手を伸ばして金髪機の左の吸気口に指先を引っ掛け、そのまま落下する様に一気に機体を密着させる。
(くっ!……)
金髪が機体の失速と降下にうめき声を上げるがすぐに持ち直し、光秋もニコイチ背部の推進機器を作動させて、2機は安定飛行を取り戻す。全長19メートル弱に達するF‐22は、背部にニコイチが乗ってもまだ若干余裕がある。
―さながら、黒い怪鳥に乗った人か……!―
感慨を抱いたのも一瞬、光秋は2機の前方を左へと通過して行く黄色い機を見つける。
(まずはアレに仕掛けるぞ!)
「了解!」
光秋の返事と共に金髪機は速度を上げてその機を追跡し、自機を相手の左に付ける。
並行飛行に入った一瞬、
「!」
光秋は照準が合うとすぐに砲を一射し、キャノピーが緑に染まると間を置かず金髪機から離脱して上に回り込み、
「あさぁ!」
と、相手の背部へ左突きを食らわす。
すぐに金髪機に追いついて先程の要領で再び取り付くと、光秋は後ろに右目をやって2人分のパラシュートの降下を確認する。
(よし!この調子で行くぞ!)
「了解!」
光秋は腹の底からの声を通信機に吹き込む。
が、直後、
「!」
接近警報が響くと同時に、背後に強い冷気を感じる。
―後ろ?―
すぐにニコイチの頭部が振り返ると、視線の先に2機に向かって急接近をかけるF‐14を見る。
―間に合うか?―
と、光秋がそちらに砲口を向けようとした瞬間、
「!?」
後ろの機は、2機の少し手前で突然胴体部から炎を上げて爆発し、残った機首と両翼も胴体部との付け根を燃やしながら落下して行く。
「?……」
光秋がその光景に目を奪われていると、
(加藤!待たせたな!)
と、通信が入る。
「!……藤原三佐?」
(あぁ!遅まきながら応援に来た!)
「じゃあ今のは……」
(あれは儂ではなく、富野大佐だ)
「富野大佐?」
言いながら光秋は、今朝見た若い印象の顔を思い出す。
―あの人が、今のを!……―
(もっとも、儂らも負けてられん!うおぉぉぉぉぉぉ!)
「!」
藤原の雄叫びが通信・外音スピーカーに共に響くと同時に、右側の樹林の中から胴体底部に貫通痕を開け、そこかしこがボロボロに傷んでいるF‐14が縦に回転しながら現れ、その進行先の別の機の右翼に体当たりする。ぶつかって行った方はそのまま下に落下し、ぶつかられた方は右翼を根こそぎ失い、徐々に高度を落としていく。
―今のが、三佐の!……―
(生身の連中に負けてられん!俺たちもいくぞ!)
「了解!」
金髪の檄に光秋が答えると、ちょうど正面から1機接近して来る。
光秋は素早く照準を合わせ、砲を一射する。が、
「!」
弾は発射されず、カチッという空振りの音が鳴る。
「弾が!」
(何やってんだよ!)
金髪が怒鳴る間に、標的からミサイルが一射される。
―ホント、何やってんだ!―
光秋は咄嗟に右肘を右の吸気口に引っ掛け、
―冷気もろくに感じず!―
自分に毒づきながら左手で空弾倉を鷲掴み、砲本体から外したそれを前に投げつける。狙い通りミサイルに当たると、誘爆したミサイルが2機と標的の間に爆発の壁を作る。
それを目くらましにして離脱した光秋は標的の上を取り、
「!」
ニコイチの右脚を伸ばし、それに連動して足先底面の、本来は不整地などで機体を固定するために使う剣先の様な形をした2本の爪を伸ばて標的に蹴りを入れる。胴体中央に入った右蹴りは先端の爪を奥まで食い込ませ、小さな誘爆を起こした標的はそのまま前に流れる様に落下していく。
再度金髪機に取り付いた光秋は、
(弾の補充、忘れんなよ!)
「わかってますよ!」
と、金髪の小言に強めに答えながら、再び右肘を吸気口に引っ掛け、左手で左腿の予備弾倉を掴んでそれを砲に装填する。
その直後、2機の右隣に味方機のF‐22が付き、通信が入る。
(ペガサス・リーダーより、ペガサス4、01へ。実弾への換装が終了した。待たせたな)
(古谷隊長!)
(タッカー、ここは任せて、お前もベースに戻れ)
(いえ、俺はこのままコイツと―)
と、続きを遮る様に、
(避けろ!)
と、古谷の絶叫が通信を駆ける。
「!」
同時に光秋も背部を貫く冷気と接近警報を感じ、
「後ろです!」
と、通信機に叫ぶ。
咄嗟に金髪機は左へ、古谷機は右へ回避し、遅れて3機の間を銃弾が多数通過して行く。
いち早く右旋回して後方へと戻った古谷機は、先程銃撃してきた機を見つけると、その後を追いながら自機を上昇させる。
「中尉!僕らも行かないんですか?」
光秋がなかなか古谷機に続かない金髪機を急かすと、
(まぁ見てな。ウチの隊長の力!)
と、余裕のある声が返ってくる。
「?……」
その言葉に、光秋は右後ろに目を向け、拡大表示された古谷機とその標的の空戦を観る。
と、それまで上昇を続けていた古谷機が突然鋭角を描く様に急降下を始め、その先の標的へと突っ込んで行く。が、標的は古谷機と接触する直前に左へと回避し、古谷機の突進をやり過ごす。
しかし、
(そこ!)
古谷機は標的の回避運動に同期して機首を左に向け、標的の右横腹に機銃を叩き込む。
古谷機が素早く離脱する後ろで、標的は右腹から数本の黒煙を上げながら落下していく。
その光景を拡大映像越しに観た光秋は、
「……すごい!」
と、目を丸くして思わず呟く。それに続いて、
(さすが古谷隊長!やっぱり予知能力持ちは違いますねぇ!)
と、金髪の若干興奮した声が響く。
(部下が隊長をおだてるんじゃない!あと超能力もそうだが、俺の場合はそれ以上に経験と技術力だ!)
(了解。わかってますよ)
古谷大尉の説教に、金髪は軽い調子で答える。
―あれが、三佐たちとも違う超能力者の戦い方……―
光秋は先程の古谷戦をそのように判断する。
ふと右パネルのレーダー表示に目をやると、
「01より各機。所属不明機の数が少なくなっています。一部は、機影の動きから見て撤退を始めている模様」
と、状況報告を通信機に入れる。
直後、
「!」
右腹の冷気と接近警報を感じた光秋は、
「右です!」
と、反射的に叫ぶ。
(わかってる!)
答えながら金髪は自機を左に旋回させ、近づいてきたF‐14をやり過ごす。
(コイツ!まだやる気か?)
―コレが最後か……―
周囲の状況からそう判断した光秋は、金髪機に通信を送る。
「中尉!」
(わかってる、コイツが最後だ!)
金髪が冷静に答えると、先程やり過ごした機が2機への追撃を始め、それを察知した金髪が自機を左回りにUターンさせ、標的と正面から対峙する。
「僕が撃ったら、高度を下げて離脱を!」
(了解!)
静かな声の通話が終わると、金髪機は後部のジェット噴射を最大にして標的へと突進する。
標的のキャノピーに合わせた赤マーカーが徐々に拡大していく中、光秋は砲のレーザーを点け、マーカーの中心にレーザーが重なった刹那、
「!」
素早く引き金を引くと同時に金髪機から離脱し、金髪は自機の高度を下げて標的の底面すれすれを通過して行く。
標的の左上に回り込んだ光秋は、砲の取っ手を両手で握ると、そのまま砲を後ろへ一杯に振り上げ、
「あさぁ!」
と、気合いと共に力一杯砲身を振り下ろし、標的機首の根元を粉砕する。
落下に入った機首をすぐに左脇に抱え込むと、光秋は一面緑に染まったキャノピーに砲を持ったままの右手を置いてパイロットの脱出・逃亡を防ぐ。
右パネルのレーダーに目をやると、周囲にはもう機影はない。
「終わった……か……」
ホッとした声で呟くと、光秋は視線を左パネルの地図に移し、現在地の赤三角と、出発地点を意識して表示された赤い点の位置関係を確認する。
「01より仮設管制へ。これより所属不明機のパイロットを連れて帰還する」
言いながら光秋は、ニコイチを現方位から2時の方向に向け、ゆっくりと前進する。
出発地点上空に着いた光秋は、広場に着地すると、抱えていた機首を足元に下ろし、ニコイチを一歩下げて左膝を着かせる。
ハッチを開けて操縦席を上げると、機首から引きずり出された2人の飛行服姿の周囲を、防具一式を着けて機関銃で武装した緑服5人が取り囲んで視界の右側へ連行する光景があり、光秋はそれを直に見ることになる。
―……顔見られたかな?―
若干保身の心配をしながら、左手でハッチの左端を探ってリフトを取り出し、慣れた手つきでそれを展開させ、左足を掛けてゆっくりと地面に降りる。
地上に足を着けると、遠くから自動車のエンジン音が聞こえ、次いで、
「加藤ぉ!」
と、藤原の声を後ろから聞き取る。
「!……」
振り返った光秋は、視線の先に緑に塗られた大き目のトラックと、その左側の助手席の窓から身を乗り出してこちらに目をよこす藤原を見る。
トラックがニコイチの左足元、光秋の正面に停まると、藤原はすぐに助手席から降りて速足で光秋に近づく。
「まったく無茶をしおって!……」
「すみません」
「三佐の言う通りだ!」
トラックの右のドアを開け、運転席から降りた小田が加わる。
「無理するなと言ったろう!」
「……はい」
「まぁ……そのおかげか死人も出ず、攻撃してきた連中も何人か捕らえることができたから、今日はこの辺にしとくが……」
「……そういえば、攻撃してきた人たちって誰なんです?」
光秋はちょっとした興味から藤原に訊く。
「まだ断言はできん、が……」
「サン教の過激派でしょう」
高い柵が設けられたトラックの荷台の後方から、伊部を後ろに従えて現れた竹田が言う。
「あんな目立つ黄色で戦場に来るのは、連中くらいだ」
「『サンキョウ』って、何なんです?」
光秋の質問に、小田が答える。
「5年くらい前から勢力を伸ばしてる新興宗教だ。俺も詳しくは知らんが、信者の一部には今回の様な反社会的行動をとる者もいるらしい」
「宗教……ですか……」
光秋は、呟く様な返事をする。
と、
「ここにいたか」
富野が中尉の女性を左に伴って現れ、光秋の前に歩み寄る。
「!…………」
富野の観察する様な視線に、光秋は思わず緊張する。
「演習用装備で敵に挑むとは、勇敢どころか、自殺行為も甚だしいな!」
「…………」
言葉通りとまではいかなくとも、少々軽率な行いだったと自覚し始めていた光秋に返す言葉はなく、知らず知らずのうちに顔が俯く。
「まぁまぁ大佐。儂らの方からよく言っておきましたので、今回はその辺で勘弁してやってください……それに、あのどこか派手な戦い方、若い頃の誰かさんに似ていたような?」
「…………」
藤原の最後の言葉に、富野は薄っすら頬を赤らめ、隣の中尉も右手で口を隠して笑いを堪える。
―……どういう関係なんだ?この2人―
と、俯きながらも光秋が藤原と富野の関係に疑問を浮かべた直後、富野は、
「ウフンッ!」
と咳払いをする。
「まぁ、その話はさておき。ペイント弾を目くらましに使った気転と、被疑者2名を確保した実績は認めよう」
「…………!」
富野のその言葉に、光秋は顔を上げ、富野の顔を見る。
「とりあえず、共に作戦を行う上では問題なさそうだ。君の今後に期待しよう」
「……あ、はい!」
予想外の言葉に、光秋は思わず敬礼をする。
富野はそれに応じず、藤原に目を向ける。
「三佐、森の中に落ちた被疑者の捜索をしたい。作戦会議に顔を出してくれ」
「はっ!」
藤原が応じると、富野は傍らの中尉を伴って左前方の白テントへ向かう。その一行の後を、
「俺も付き合います」
と、小田も続く。
ニコイチの足元に残された光秋、竹田、伊部は顔を見合わせ、
「ま、オレは三佐や一尉よりは心配しなかったけどな」
と、竹田が気楽に言う。
「二尉、それはそれでどうかと……」
伊部の言葉に、竹田は、
「だって、ロボットがヒコーキごときやられるわけねーだろう?オレ的には、あの金髪野郎もついでに墜としといてもよかったんだが」
と、冗談ともつかない調子で言う。
「二尉、それはいくらなんでも、言い過ぎでは……」
と、光秋が言った直後、
「悪いが、その金髪野郎の登場だ」
と、光秋の背後から声がする。
「「「!」」」
3人が声のした方に顔を向けると、そこに飛行服姿の金髪が、両腕を胸の前で組んで立っている。
「テメェ!」
「ダメです!」
真っ先に殴りかかろうとする竹田を、伊部がその左手を両手で掴んで引き止める。それにも構わず竹田は、
「何しに来た!また加藤に絡みにか?それとも今朝の続きか?オレはどっちだっていいんだぜ!」
と、罵声を飛ばす。
が、金髪はそれを無視して光秋に近づくと、
「その……さっきは、悪かったよ。怒鳴りつけたりして」
と、右頬を右人差し指でかきながら、照れた様子で言う。
「……え?」
予想外の言葉に、光秋は咄嗟に返事に詰まり、
「!?……」
後ろで暴れていた竹田も固まる。
「あと、ありがとな。さっき助けてくれて」
「あぁ、それは……さっきも言いましたが、当たり前というか、自分のためでもありますから」―見捨てて、後味が悪くなるのも事実だ―
「そう、なのか?……そうか」
そう言って金髪は、飛行服の手袋を外して、その色白の右手を光秋に差し出す。
「……!」
「紹介が遅れたな。俺はアレク・タッカー。合空軍のパイロットだ」
「……光秋・加藤です。こちらこそ」
そう言って光秋も右手を差し出し、タッカー中尉と握手を交わす。
「ま、よろしくたのむぜ、ジャップ!」
「『ジャップ』、ですか?」―日本人の蔑称……―
「テメェ!」
と、竹田が伊部の制止を振り切って前に出ようとした直後、
「二尉!」
と、光秋はその正面に右手をかざして、竹田の前進を制する。
「…………!?」
「……いいんです」
動転する竹田に、光秋は穏やかな目を向けて言う。
―でも、イエローの時と違って、悪意を感じない……けっこういい人かもなぁ……―
そう思いながら光秋は、タッカーの白い顔に、再び目を向ける。
いかがでしたか。
今回はかなり戦闘シーン多めでしたね。その辺についても意見をいただけたらと思います。
では、また次回。