白い犬   作:一条 秋

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 今回は久しぶりにあの人が登場します。ちょっとだけですが。そして……。
 では、どうぞ!


25 演習準備

 9月14日火曜日午後0時50分。本舎地下1階。

 昼休みが終わる頃、光秋と藤原三佐は揃ってエレベーターに乗り込み、本舎裏のウラウンドへ向かう。

「……そういえば加藤」

「はい?」

左隣に立つ藤原が話しかけ、光秋は顔を向けて応じる。

「夏の暴動鎮圧の後片付けでお前が見つけた写真、持ち主が見つかったそうだ」

「!それはよかった」

 言いながら、光秋は瓦礫の撤去作業の合間に拾った家族写真を思い出す。写真の絵の記憶こそうろ覚えだが、

―平凡で、幸せそうな家族…………―

という印象だけはよく覚えている。

 その間にエレベーターは1階に着き、扉が開くと藤原、光秋の順に降りる。

 と、

「あ!実戦部隊の方ですか?」

「「?……」」

突然の呼び掛けに、藤原は声のした方―左側に目をやり、光秋もその視線を追う。

 藤原と光秋の視線の先には、2人と同じESOの緑の制服を着た、背中の上半分を覆う程長い濃い茶髪を結わずに垂らしている女が立っている。身長は光秋より一回り程高く、白の強い黄色系の肌と細見の顔立ちをしている。

―…………!いかん!いかん!―

と、光秋は自重しつつも、つい視線を制服の上からでも充分目立つ豊かな胸部に持っていってしまう。

 茶髪の女は2人の許に歩み寄ると、

「一般の、藤原隊長はどちらでしょう?」

と、どこか品のある雰囲気で訊いてくる。

「儂が藤原だが?」

「!それはよかった。しゅにーん!」

藤原が答えるや、茶髪は右側に呼び掛ける。

 それに応じて、正面玄関前のロビーに立っていた茶色いスーツを着た男が藤原と光秋の許に歩み寄ってくる。背丈は茶髪よりさらに少し高く、藤原程ではないがガッシリとした体つきをしている。顔つきは若干の丸みを残すものの全体的に角張っており、適度な長さに伸びた黒髪は八方に膨れ上がっており、ライオンの(たてがみ)を想起させる。

「一般部隊の藤原隊長ですか?」

茶髪の右隣に着いたスーツが問う。

「えぇ……そちらは?」

 藤原の質問に、スーツは上着に右手を入れ、左の内ポケットからESOの手帳を取り出し、開いて見せる。

「日本ESO東京本部、特務部隊藤岡(ふじおか)隊主任、藤岡です。こちらは部下の曽我(そが)

「本部の?」

茶髪を一見しながらのスーツの紹介に、藤原は少し驚いた声を出す。

「……」

光秋も目を凝らしてスーツの手帳の身分証を見ようとするが、距離があることと対象が小さいためによく見えず、左側の顔写真をぼんやりと捉えるのが精一杯である。

「…………そんな方々が、儂に何か?」

「いえ、我々も10月の合同演習に参加するのですが、こいつが藤原隊に興味があると言うので、その前に挨拶しておきたいと」

藤原の質問に、藤岡と名乗ったスーツが曽我と呼んだ茶髪に目をやりながら答える。

 と、

「……ところで、噂の白い犬はどちらです?」

茶髪が問う。

「……」

藤原は渋い顔で周りを見回すと、

「ここでそういう話しは……とりあえず、上の応接室に案内しましょう」

と、声の大きさに注意して答える。

「?…………あぁ、上位機密の事柄ですもんね」

茶髪は少し首を傾げてから納得した声で応じる。

 藤原は光秋に顔を向け、

「というわけで加藤、すまんが自主訓練だ」

と、すまなそうに詫び、光秋は、

「了解です」

と言って一同に一礼し、右の通路を通って本舎の裏に向かおうとする。

 が、直後、

「ちょっと待って!」

と、茶髪に呼び止められる。

「?……」

光秋が歩を止めて振り返ると、

「お茶の用意は?あなた、隊長の従兵でしょう?」

と、茶髪は首を傾げて続ける。

―じゅ、従兵って…………―「あぁ、いやぁ……」

 茶髪の言葉に光秋が動揺していると、

「こ奴は従兵ではありません。とにかく早く行きましょう。お茶の方も儂が手配させます」

と、藤原がスーツと茶髪を急かしてちょうど開いた背後のエレベーターに乗せる。

「……」

エレベーターに乗る直前、茶髪は首を傾げて光秋を見やる。

「…………」

光秋は釈然としない思いを抱くも、

―…………ま、いっか―

気を取り直し、振り返って改めて本舎裏のグラウンドへ向かう。

 

 グラウンドに着くと、光秋は一通りの準備体操をして突きの練習に入る。

 いろいろと構えを変えながら10分程その練習を続け、

―そろそろ、蹴りの練習に入るか?……―

と考え始めたその時、

「!……?」

被っていた制帽が後ろに脱げ、慌てて構えを解いて振り返る。

―風かな?―

 本舎に向かって高度を下げながら進んでいく制帽を見ながらそう推測するが、

「!?」

直後に制帽は一気に舞い上がり、光秋は帽子を追って急いで顔を上に向ける。

 と、

「……?」

本舎屋上のフェンスの近くに、ゴマ粒程の大きさに見える1人の人影を見る。右手を日除けにして目を凝らしてみるが、

「……?」

それでも光秋には、ぼんやりとした人影が見えるだけであり、顔や服装の判別はできない。

 直後、

「!?」

人影がフェンスの上に跳び上がり、次の瞬間には地面へ落下する。

―10階はあるぞ!……ダメか…………―

瞬時に諦める間にも、人影は速度を上げながら落下していく。

 と、

「……?」

人影は4階に達すると同時に、宙に停止する。

―念力-サイコキネシスか……―

目の前の状況を整理する間にも、人影は徐々に高度を下げながら光秋の許へ近づいてくる。

 人影が光秋の正面に下り立つと、

―!……さっきの!―

光秋はそれが、先程エレベーターの前で見た茶髪の女だと気付く。

―えーっと…………―

急いで名前を思い出そうとするが、なかなか出てこない。

 と、

「…………あなたが、白い犬?」

茶髪が光秋の顔を真っ直ぐに見ながら訊いてくる。

「?…………あ……はい?」

突然の質問に困惑しつつも、光秋は近くに誰もいないのを簡単に確認してから短く答える。

「ふーん?」

茶髪は少し表情を曇らせる。

 と、

「……藤原隊長は、つまらない冗談を言ったわけじゃなかったのね?」

「……」

棘がある様なことを言いながら、茶髪は目を細めて顔を光秋に近づけ、正面・左右から観察の視線で見回す。

 そうされながら光秋は、

―さっきと違うような?…………―

という思いを茶髪に抱く。どことなく品のよさを感じた先程の印象は消え、どこか他人(ひと)を見下す、というよりも()バカにしている様な印象を与えてくるのである。

 茶髪は光秋を見回すのをやめ、顔を正面に戻すと、

「……名前は?」

と訊いてくる。

「加藤……光秋です……えーっと…………」

曽我(そが)ガイア。日本ESO東京本部特務部隊、藤岡隊所属の特エス。よろしくね、メガネのワンちゃん」

「……」

口元だけの微笑みに、光秋は呆然としてしまう。

 と、

「はい」

「!……」

茶髪は右手に持った制帽を差し出し、光秋が少し驚きながらもそれを受け取って一礼すると、本舎の方に振り返り、上げた右手を軽く振りながら歩き去っていく。

―…………何だ……あの人?―

制帽を両手で持って茶髪の背を見送る間、光秋はその思いで一杯になる。

 

 しばらくして気を取り直した光秋は、本舎に背を向け、蹴りの構えを取って練習を再開する。

 右蹴りの素振りをやっていると、

「加藤ぉ!」

「?……」

左後ろから呼び掛けられ、構えを解いて声のした方向に振り返ると、本舎の方から速足で駆け寄ってくる藤原を見つける。

 光秋の前に着いた藤原は、

「すまんすまん。今終わったところだ」

と、少し息を荒げて詫びる。

「いえ、僕は僕で、マイペースにやってましたから。ところで、お話の方はどうでした?」

「あぁ。お前が白い犬だと言ったら、2人とも口を開けて驚いていたぞ。特に娘の方は声まで上げておった。まぁ、従兵と勘違いした後だ。無理もない」

微笑みながら藤原は面白いものを説明する様に答え、光秋は小さく苦笑いを返す。

「…………」

笑いつつも、光秋の脳裏に再び、曽我と名乗った茶髪とのやり取りが思い出される。

 

 9月21日火曜日午後6時半。本舎裏のグラウンド。

 訓練を終えた光秋は正面の藤原に一礼すると、振り返って疲れた体を本舎の食堂へ向かわせる。

 と、

「あぁ!そうだ加藤」

「はい?」

後ろから藤原に呼び止められ、光秋は応じながら振り返る。

「明日なんだが、朝から人と会う用事があってな。すまんが自主訓練だ。終わり次第合流するがな」

「わかりました」

応じるとと、光秋は軽く頭を下げる。

「すまんな」

「いえ」

藤原の詫びに返すと、光秋は食堂へ向かう。

 

 9月22日水曜日午前8時半。

 いつも通りに出勤して待機室に荷物を置いた光秋は、1人本舎を背にグラウンドに立つと軽く準備体操をし、脚を肩幅に開いて左拳を前に出して突きの構えを取ると、気付けを兼ねて突きの練習を10本行う。

 構えを解くと、上着の内ポケットのカプセルに意識を向ける。

「そういえば、しばらく乗ってないなぁ……」―演習では乗ることになるんだし、いい機会だからコイツの訓練もしておくか―

と、右手を内ポケットに入れてカプセルを取り出し、その先端を前に向ける。レバーを「入」から「出」に切り替えてボタンを押すと、1メートル前方に左膝を着いた白い巨人―ニコイチが現れる。

 光秋は垂れ下っているリフトを掴んで上昇し、操縦席に着いて認証を済ませると、カプセルを右の肘掛に収め、制帽を脱いで膝の上に置き、イメージ操作でニコイチを立ち上がらせ、本舎に背を向けさせる。

 ニコイチの左拳と左足を前に出させ、右拳を胸の前に置かせて組手の構えを取らせると、

「……!……!」

左突きを素早く2回、右突きを1回出させて両腕を構え直す。

「よし!」

体の様に自分の意思を忠実に体現してくれるニコイチと、ニコイチとの馴染みが進んでいる自分に、光秋は軽い満足感を覚える。

「…………さてとね」

一言呟いて呼吸を整えると、光秋はより激しい動きをしようとする。

 と、

―『歩くな!浮け!振動で気が散るんだよ!』―

と言う竹田の怒声を思い出し、

―…………浮くかぁ―

と、右ペダルを軽く踏み、ニコイチの足底を30センチ程浮かせて、脚の動きも加えたより激しい動きの練習を始める。

 左突きを素早く2回出し、右突きを1回出す。体勢を直して左蹴りをし、足が下がり切ると当時に右突きをし、体勢を整えて左、右と間を置かずに突きを放つ。

「……」

右拳を胸元に引くと、組手の姿勢のままひと呼吸入れる。

 と、

「……?」

光秋は背後上空からヘリのローター音がするのを外部スピーカー越しに聞き、後ろへ意識を向ける。それを拾ってニコイチはほぼ人間そのものの動きで本舎の方に振り返り、2つの緑のレンズのカメラを屋上に向ける。

 と、モニター越しに、屋上のヘリポートに災害地で避難民を運ぶ時に使う様な胴長の緑のヘリ―CH‐47チヌークが着陸しようとしているのを見る。

 正面にヘリ後部を捉えた拡大映像が映し出され、地球合衆国の印である円形に描かれた世界図と、その下の「E・S・O」の文字から、光秋はそれがESOのヘリだと理解する。

―昨日三佐が言ってた用事の人かな?―

思う間に拡大映像は消え、ヘリが着陸すると、ヘリ前部を映した別の拡大映像が映し出される。前部のドアが開くと、若干老けた感じがしつつも藤原の様な逞しい体つきをし、茶色のスーツを着た男が、ドアの裏に備え付けてあるタラップを降りてくる。

―……!―

 少し時間が掛かって、光秋はその男がESO日本局長―東信三だと気付く。

「!」

すぐにハッチを開けて席を機外へ上げ、制帽を被ると、屋上を右に向かって進んでいる東に右手で敬礼をする。その動きに合わせて、ニコイチも右手で敬礼をする。

―気付いてくれるか?……!―

思うや、自分の目では点にしか見えない何人かの人影の内、1つが歩を止めてくれるのを見る。

 さすがに返礼してくれたかまではわからないが、止まっていた時間の長さと、

―ニコイチなら目立つ―

という考えから、光秋は相手がわかってくれたと考える。

 人影の一行が屋上中央にある階段とエレベーターが入っている小屋に消えるまで見送ると、光秋は自分とニコイチの敬礼を解き、操縦席を機内へ下ろす。

―三佐の用事って、局長なのか?……―

思いながら光秋はハッチを閉め、再び本舎に背を向けてニコイチの慣熟訓練を再開する。

 ニコイチの訓練をしばらく行うと、光秋はニコイチを仕舞って格闘訓練に入る。

 

 しばらくして、光秋は近くの日陰に腰を下ろして休憩に入る。ズボンの右のポケットからハンカチを取り出し、所々に薄っすらと浮き出た汗を拭きながら、

―だいぶ涼しくなったなぁ…………―

と、季節の変化を感じてみる。

 と、

「やっぱり!加藤君」

「?」

突然呼び掛けられるや、声のした方―本舎のある左に顔を向け、黒い背広と膝まである細身のスカートを着、肩に着く程の短めの黒髪に服の上からでも目に着く豊かな胸をした光秋くらいの背丈の女がゆっくりと歩み寄ってくる。

―……誰だっけ?―

光秋はその女性に見覚えを感じるのだが、どこで会ったのか、何と言う名前なのか、どうしても思い出せない。

 その間に、女性は光秋の左隣に着く。

―…………しょうがない―

観念した光秋は、ハンカチをポケットに戻し、立ち上がって体を女性の方に向け、

「えーっと?……」

と、恥を含んだ声で名前を訊こうとする。

 と、

「あぁ、久しぶりだし、ちょっと会っただけだから覚えてないか。(おき)です。(おき) (あい)

―オキ アイ?…………!―

様子を察してくれた女性の自己紹介に、光秋は、こちらに来て初めての夜に会った、東の横に控える様に立っていた長髪の女を思い出す。

「局長の秘書さん!」

「えぇ」

光秋のハッとした声に、沖は微笑んで応じる。

 と、

「……あれ?でも冬に見た時は、髪がもっと長かったような?……」

と、うろ覚えの記憶と目の前の沖との違いを口にしてみる。

「あぁこれ?今年暑かったから」

沖は左手で髪を摘まむと、笑顔で教えてくれる。

―……女の人が髪を切るのは、男性関係で何かあった時、と聞いたことがあるが…………いや、昔の話だろう。僕の考え過ぎか―

 光秋は不意に浮かんだ疑念を隅に押しやると、

「昨日、藤原三佐が用事があると話していましたが、やはり局長となにか?」

と、屋上に東を見掛けた時の疑問を訊いてみる。

「そう。来月の演習で話しがあって」

「やっぱり」

 と、今度は沖が、

「ところでどう?ESOの仕事には慣れた?」

と訊いてくる。

「えぇ。といっても、殆ど訓練ばっかりですが」

「その割には、この間大活躍だったんでしょう?特例で二曹に昇格したんだし」

「!」

沖のその言葉に、光秋は一瞬ハッとする。

「……ご存じなんですか?」

「知ってるもなにも、局長が辞令にサインする時、私はそれを横で見てたんだから」

「あぁ、そうか……」

「それに」

 言うと沖は、視線を左に向ける。

「アレも、隊の実績が認められたからこそ託されたんだし」

「……」

光秋も沖の視線を追って右を見、その先にゴーレム・タンクが収まっている簡単な造りの小屋を認める。光秋がこちらに来た日、ニコイチが初起動した時に壊した倉庫の跡地に建てられた、正面以外の三面の壁と後ろに向かって斜めに伸びる屋根でできた7メートル少々の小屋である。雨風はしのげ、上空からの撮影も概ね防いではいるのだが、全体的に粗末な印象を受ける。

 ゴーレム・タンクを受領した翌日に慌ただしくできたそれを見て、光秋は束の間、

―『こんな掘立小屋じゃ機密保持も何もありませんよ!』

『わかっとる!早急に手配はする』―

と言っていた小田と藤原の渋い顔を思い出すと、

「えぇ、まぁ…………」

と、半ば生返事をする。

 沖は視線を前に戻すと、さらに続ける。

「総局長だって、加藤君や藤原隊のことよく見てくれてるみたいだし」

―総局長?―

聞き慣れないが覚えのある言葉に、光秋は春の研修で教わったESOの組織構造を大雑把に思い出してみる。

―えーっと…………ESOってのは、各地に支部があって、そこを預かる支部長。その上に、各州に1つずつ本部があって、州全体を管理する局長。それで確か……そうだ!ニューヨークに全国のESOを取りまとめる総本部があって、そこのトップが総局長!…………?……!てことは…………―「ESOのトップが、ですか!?」

理解から来る驚きで、光秋は少し大きい声を上げる。

「えぇ。だって、UKD‐01にはESO上層部の注目が集まっているし、合軍だって」

「あぁ、そうか……」

沖は冷静な声で返し、光秋は呟きながら理解する。

 と、沖は左手首に巻いてある腕時計に目をやる。

「そろそろ局長と三佐の話しも終わる頃だから、私はこれで。頑張ってね!」

振り向きながら右手を振って言うと、沖は来た道を辿って本舎正面側へ向かう。

「はい。ありがとうございます」

光秋はその背に軽く一礼して応じる。

 沖の背中が本舎の影に消えると、

「…………さてとね!」

と呟いて気持ちを切り替え、訓練を再開する。

 しばらくして藤原も合流し、それから午前一杯は光秋と藤原の2人による訓練となる。

 

 午後0時半。

 昼食と歯磨きを済ませた光秋は、藤原隊の待機室で椅子に腰を下ろし、満腹になった体を寛がせている。

 と、

「……?」

ドアが開く音に顔を右に向けると、伊部が入ってくるのを見て一礼する。 

「加藤くん、午前中グラウンドで誰かと話してたみたいだけど、誰?」

「!?……なんで知ってるんです?」

伊部は光秋の正面の席に向かいながら問い、光秋は若干驚きを含んだ声で返す。

「ゴーレム・タンクの下半身の中で冊子……というかマニュアルと、実物の見比べしてたら、窓からこっち向いてたのが見えたから」

「あぁ。沖さんです。東局長の秘書の」

「沖一尉?」

―あぁ、あの人一尉か―「はい。局長が藤原三佐に用があったそうで、それに付いてきたみたいで、色々褒められました」

「ふーん?……褒められた、ねぇ?…………」

―?……感じすぎかな?―

そう思いながらも、光秋は伊部の言葉と視線に棘の感触を覚える。

 そんな息苦しい雰囲気を変えたいのもあって、光秋はふと浮かんだ疑問を問う。

「そういえば、軍の階級が大・中・少なのに、ESOは一・二・三ですよね。なぜです?」

「あれ?研修で聴いてない?」

「……」

返ってきた伊部の声色がいつも通りであることに内心ホッとする。

「ESOっていうのは、ニューヨークに総本部があるけど、平和な時は本部以下の管理は各州政府に一任されてるの」

「それは覚えてます」

「で、日本には昔自衛隊っていうのがあったでしょう?」

「はい……僕の方では、まだあるんですが」

「そうなの?まぁそれはともかく、要するに、(にち)ESOの階級は自衛隊の名残ってこと」

「あぁ、なるほど」

疑問も片付いたことで、光秋はすっきりする。

「……春の研修で聴かなかった?」

「聴いたんでしょうが……短い時間に色々言われたので、取りこぼしたのかも。すごく頭痛がした記憶があります」

伊部の問いに答えながら、光秋はその時の記憶を少し思い返してみる。

「……なるほどね」

伊部は納得の顔をすると、

「じゃあ復習ついでに、1つ問題」

と、口元を歪めて遊びの声を出す。

「ESOができる前の日本の超能力機関の名称は?」

「……!『超能力者管理機構』」

「正解!」

光秋の回答に、伊部は微笑んで応じる。

 それに続く形で、光秋は伊部の問題が切っ掛けで思い出したことを言う。

「ちなみに、合衆国設立以前には、世界各国に同じ様な機関、つまり、超能力の研究と超能力者が活躍できる場を作る機関が最低1つずつあって、それらを解体・統合したのが、今日(こんにち)のESO―『超能力者支援機構』である」

一気に言い切ると、伊部に確認の視線を送る。

「その通り。そっちはよく覚えてるね?」

「さっきの問題が切っ掛けで思い出したのと、もともと歴史の話しが好きで……組織の話となると、どうも聞き慣れなくて……」

「ふーん?……」

 伊部の返事を聞きながら、光秋は数珠が巻いてある左腕の腕時計を見る。

―0時50分。そろそろか?―「そろそろ午後の訓練の時間なんで、僕はこれで」

言うと伊部に一礼して椅子から立ち上がり、ドアへ向かう。

「そう?頑張ってね」

と、伊部の声が後ろから掛けられ、廊下に出た光秋はまた一礼し、ドアを閉めて最寄りのエレベーターへ向かう。

 

 光秋が部屋から出ていくと、伊部は光秋が沖のことを話した時のことを思い返す。

「…………私、なんでちょっとイラついたんだろう?」

 思い返してみても理由は浮かばず、模糊とした気分だけが残る。

 

 9月24日金曜日午前8時40分。

 本舎を背に藤原が来る前の自主訓練をする光秋は、一息つこうと構えを解き、なんとなしに首を回してみる。

 と、

「……?」

不意にゴーレム・タンクの小屋―一応の格納庫―のそばに、小田らしき人影を見掛ける。

―なんだ?……―

体を格納庫の方―左側に向けて目を凝らしてみるが、距離があることと、相手が格納庫の影にいることで、結局よく見えない。

 と、人影がこちらの視線に気付き、歩み寄ってくる。

人影が日の下に出て距離を詰めてくれると、

―…………やっぱり―

光秋はそれが、やはり小田であるのを確認する。

「おはよう」

「おはようございます」

小田は光秋の許に着くと活気の籠った声で言い、光秋も軽く頭を下げて返す。

「今朝も頑張ってるな」

「いつものことです」

小田の言葉に、光秋は当たり前という調子で答える。

「ところで、一尉も今朝からどうしたんです?」

「ん?あぁ。演習もいよいよ近いからな、ちょっとアイツの様子見を」

言いながら、小田はゴーレム・タンクを指す。

「なるほど。どうです?ゴレタンは」

「ごれたん?」

光秋の言葉に、小田は音だけ真似て訊き返す。

「あぁ、ゴーレム・タンクの略です」

「あぁ!『ゴーレム・タンク』、略して『ゴレタン』か!」

光秋が少し慌てて付け加えて言うと、小田は納得の声を出し、光秋の質問に答える。

「夏のNP鎮圧の帰りに、ニコイチに相乗りしたことがあっただろう」

「はい?」

「俺にとって、それがロボットに乗った最初の体験だからか、コクピットが狭苦しく感じるな。もっとも、ニコイチの方が贅沢な造りで、普通の兵器はあんなもんだって、頭では解ってるんだけどな」

「……そんなもんですか……そういえば、動かす訓練もだいぶ苦労してますもんねぇ……」

「あぁ……」

光秋の指摘に、小田は殆ど諦めた声を出す。

「デカさが半端じゃないから、ここでできることにも限りがあるからな。殆どぶっつけ本番で動かすことになりそうだ。格納庫の件と合わせて三佐に相談して、手配するってことになったが……どうなることか……」

小田が呟く様に言うと、光秋は視線を小田の後ろにやってゴレタンを見る。

「最大の特徴である背中の大砲も、実射はできませんからねぇ……」

「それだよ。履帯もそうだが、アレの間に合わせ感の原因はな」

「?」

「マニュアルに書いてあったんだが、背中にはもともとジャンプ力補助のためのロケット推進機が付く予定だったらしい。それを砲撃戦特化のために今のあの装備に換装したとあるが……要するに、ジャンプするために必要な『脚』の開発が遅れて、用がなくなった推進機の代わりに大砲取り付けて、とりあえず砲撃機、支援機として完成させたって、そんなとこだろう」

「……そんなとこ……ですかね?……」

「あぁ……言っておくが、あくまで俺の推測だ。無暗に他人(ひと)に喋るなよ!特に大河原チームには!」

「あぁ!はい!」

小田は慌てて付け加え、光秋はすぐに応じる。

「ただ、間に合わせでもなんでも、ニコイチの支援機であることには変わりないですから、いざという時は頼みますよ」

「それなら心配するな。仕事は真面目にやるよ」

光秋が少し真面目に言った言葉に、小田も同じ様な調子で答える。

 と、

「おぉ、小田もいたか」

「「!」」

小田の後ろからかけられた声に、光秋は顔を右側に動かし、小田も後ろを振り返ると、本舎から2人に許に歩み寄ってくる藤原を見る。

「「おはようございます」」

「ウム、おはよう」

小田と光秋の挨拶に、藤原は快活に応じる。

「じゃあ俺、そろそろ本舎に戻る」

「はい」

光秋の返事に右手を挙げて返すと、小田は本舎へ向かって歩き出す。

 その背中を見送ると、光秋は藤原と訓練に入る。

 

 午後6時半。

 訓練を終えた光秋は、藤原に一礼する。

 と、

「……あぁ、そうだ加藤。明日の朝、演習のことで皆に連絡があるんで、待機室で待っててくれ」

―連絡?……―「わかりました」

思い出した様に言う藤原に応じると、光秋はもう一礼し、振り返って本舎の食堂へ向かう。

 

 9月25日土曜日午前8時20分。

 出勤し、藤原隊の待機室に入った光秋は、誰もいない部屋の明かりを点け、右肩に斜め掛けしている灰色のカバンをドアに1番近い椅子の足元に置くと、軽い準備体操をして突きの練習に入る。

 少しして、小田と伊部が部屋に入ってくる。

「「おはよう」」

「おはようございます」

2人の挨拶に、光秋は手を休めずに応じる。

 また少しして、藤原と、眠い目をした竹田が部屋に入ってくる。

「おはよう」「うーっす」

光秋はそこで構えを解き、テーブルに着いている小田と伊部と共に、

「「「おはようございます」」」

と2人に返す。

 藤原と竹田が荷物を下ろしながら椅子に座り、光秋が肩を回しながら足元にカバンを置いた椅子に腰を下ろすと、

「さて、皆揃ったな」

と、光秋の左前に座る藤原が、周りを見回しながら言う。

「昨日言った通り、10月の演習について話がある。まず、皆の配置を発表する」

「!」

藤原のその言葉に、竹田はようやく目をはっきりさせる。

「ゴーレム・タンクは小田と竹田。小田が上、竹田が下だ」

「はい」「ウッス」

藤原の右隣に座る小田と、左隣に座る竹田がそれぞれ応じる。

「加藤はニコイチ」

「はい」

「我が隊は加藤のニコイチを主力として前に出しつつ、ゴーレム・タンクで後方から援護、これを基本とする。もっとも、状況によって多少の変化は起こるだろうがな。それでだ、伊部」

「はい」

光秋の左隣に座る伊部が答える。

「お前は加藤と共にニコイチに乗り、加藤の補佐を」

「はい」

―上官が補佐?……―

光秋は一瞬変な感じを覚えつつも、すぐにそれを隅に追いやる。

 と、

「……ところで、三佐の配置はどうなるんです?」

「儂も前に出る。近距離での加藤の援護が基本だな」

小田の問いに、藤原はそう答える。

「さて、配置の話は以上だな。次に、演習が行われるのは10月2日だが、その前日、1日の朝から演習の準備に出る。泊りがけになるので、各自で荷物の整理をしておくように」

―泊りがけ……―

その言葉が、光秋には少し気に掛かる。

「その後2日間の休暇の後、通常勤務に戻る。以上。何か質問は?」

 言うと藤原は、周りを見回してみる。が、誰も手を挙げない。

「よし。時間は少ないだろうが、各自先程の配置で動けるよう、訓練を怠らんでくれ」

言うと藤原は立ち上がり、光秋を見る。

「では加藤、グラウンドに移動。訓練を始める」

「はい」

応じながら立ち上がると、光秋は藤原の後を追って部屋から出ていく。

 

 光秋は午前中を藤原との格闘訓練で過ごし、午後からは藤原を仮想敵に伊部とのニコイチの操縦訓練に入る。

 午後2時。

 本舎を背にすると、光秋はニコイチに左膝を着かせ、ハッチを開けて操縦席を機外に出し、休憩に入る。

 寛ごうとシートベルトを外す横で、伊部は光秋の左隣から正面に移動し、ハッチの上に腰を下ろす。

 と、

「……二尉」

「ん?」

光秋は正面の空に視線を向けながら呟く様に言い、伊部は応じながら光秋の顔を見る。

「……強く、正しく生きるって、難しくて大変ですね」

「え?」

唐突な発言に、伊部は少し驚いた顔をする。

「どうしたの?突然」

「いえね、ときどき考えるんですよ。理想の生き方があっても、実践は難しいって。要は愚痴です」

「あぁ、そう?……」

「……」

 光秋は視線を膝に向ける。

「あと、何で僕なんだろうって考えるんです。ニコイチを託されたのが」

「それは……何か適性があったんじゃないの?」

「適性っていったって、僕は機械に関しては疎い方ですし、車も運転しちゃいけないんですよ。視力のことで」

言いながら、光秋は視線を徐々に伊部に向ける。

「勉強はできる方でしょうけど、それにしたって中の下くらいでしょうし、僕にとって『特別』って言葉は、『優れてる』じゃなく、『劣ってる』って意味しかなかった……おまけにこんな劣等感の塊が、何で……すみません。喋り過ぎました」

思わず顔を俯ける。

「別にいいけど……どうしたの?いつも静かな加藤くんが、今日はよく喋るじゃない?」

「喋りたくなる時があるんです。ときどき……」

「ふーん?それはそれでいいんじゃないの?」

言いながら、伊部は口元を少し微笑ませる。

「……強いてこうなった理由の心当たりを挙げるなら、僕が違う世界に行きたいって少なからず望んでたことと、“力”が欲しかったってことですかね?神モドキさんは僕を呼んだ時、僕のことを調べたって言ってましたが……いったい何が気に入ったのか?……」

「……それこそ神モドキだけに、『神のみぞ知る』ってやつじゃないの?」

「そうかもしれませんが……いくら操縦がし易くても、車も運転しちゃいけないような奴に、こんなモノを渡す意図がわからなくて……」

言いながら、光秋は右の肘掛を軽く叩く。

 と、

「おぉい!訓練再開するぞぉ!」

「「はぁい!」」

ニコイチの下から藤原が叫び掛け、光秋はシートベルトを締めながら、伊部は光秋の左側に移動しながらそれぞれ返す。

 光秋が操縦席を機内に下ろしている途中、伊部は光秋に顔を近づけると、

「そのうちわかるよ。それに加藤くんなら、ニコイチを悪用しないことだけは確かだし」

と、微笑んで言ってくれる。

「……ありがとうございます」

言うと光秋はハッチを閉め、気持ちを訓練時のそれに切り替える。

 

 午後6時40分。

 訓練を終えた光秋は、藤原、伊部と共に本舎の食堂で夕食を摂る。

 焼き肉を噛み切るのに手こずっていると、

「お!みんなおそろいで」

トレーを持った上杉が現れ、光秋の正面に座る。

「?……竹田はどうした?」

光秋の左前に座る藤原の問いに、上杉は箸を持ちながら、

「二尉なら、疲れたって言ってとっとと帰りました……つっても、オレも疲れてるんですけどねぇ……」

と、溜め息混じりに答える。

「医療棟、そんなに大変?」

光秋の左隣に座る伊部が問う。

「そっちはぼちぼち……ただ、オレも演習に招集されたんすけど、持って行く医療道具の荷造りが手間で……」

―?上杉さんも?……あぁそうか。演習なら怪我人も出るだろうから、それで―

やっと噛み切った肉をよく噛みながら、光秋は納得する。

 と、

「ところでさぁ、加藤」

「……はい?」

上杉が光秋に顔を向け、光秋は少し急いで肉を飲み込んでから応じる。

「三佐に弟子入りして1カ月くらいになるけど、月謝とかどうしてんだ?」

「……ゲッシャ?……」

上杉の問いに、光秋は束の間言葉を失う。

「正規の訓練じゃなく、個人授業みたいなもんなんだから、タダってわけにはいかないだろう?」

「……!」

続けて言われた言葉に、光秋はハッとする。

「……そういえば、全く考えていませんでした……」

正直に言いながら、光秋は視線を藤原に向ける。

 と、

「……フッ」

「?」

光秋の視線に、藤原は口元を笑みにして答える。

「心配せんでも、儂は金が欲しくてやっとるんじゃない。今までもそうだが、今後とも無料で指南してやる」

「!……」

藤原の言葉に光秋は深く一礼するが、どこか尻の座りの悪さを感じる。

「三佐も太っ腹っすね?」

「懐には余裕があるからな。それに、加藤を鍛えておけば、儂らも現場で少しばかり楽ができるしな。強いて言えば、それが月謝よ」

上杉の言葉に、藤原は笑顔で答える。

―……それならそれでいいか?今まで通り、コツコツ真面目にやっていけば……いいか!ただ……金のことに気が回らなかった。僕はやっぱり、坊やだな……―

その自覚が、少しだけ胸に痛く感じる。

 

 9月30日木曜日午後6時。本舎裏のグラウンド。

 いつもより早くニコイチの操縦訓練を終えると、光秋はニコイチに左膝を着かせ、ハッチを開けて機外へ出、右手に乗せた伊部を慎重に地面に下ろす。

 伊部が手から降りると、自分もリフトを掴んで地面に下り、ニコイチをカプセルに収容して藤原と伊部の許に速足で近寄り、伊部の右隣に着く。

「設備の問題から大したことはできなかったが、いよいよ明後日だ」

「「はい」」

藤原の言葉に、伊部と光秋は疲れた体なりのいい返事をする。

「もっとも、明日は明日で準備がある。儂は小田たちと、ゴレタンの輸送があるので先に出る。2人は8時までに現地に到着しろ」

「春に飛行実験をやった、あそこですよね?」

藤原の指示に、光秋は確認の質問をする。

「そうだ。遅れるなよ」

「はい」

「他に質問は……ないな。よし、解散」

「「!」」

伊部と光秋は敬礼で答えると、藤原を先頭にして本舎の食堂へ向かう。

「とりあえず6時半……40分頃に支部に集合して、ニコイチで向かうってことで」

「りょうかい」

藤原の後を追いながら、光秋は左隣を歩く伊部に確認の声をかけ、伊部も同意する。

 

 午後7時。

 帰宅した光秋は、携帯電話の充電と明日の荷作りを始める。

 灰色のカバンに、下着の上下と靴下を3枚ずつ、予備のワイシャツ、予備のハンカチ1枚、大き目のビニール袋1つ、充電を終えた髭剃り機とクシと小さい鏡を詰めた袋を入れると、冷蔵庫に視線を向ける。

―……目薬は、明日入れればいい。食糧も支給されるから、余計なもんはいらんだろう……―「こんなとこか」

呟く様に断じると、カバンを隅に置き、制服を脱いでひと風呂浴び、青チェックのパジャマに着替える。

 椅子に着いて3種類の目薬を注す合間、光秋は充電を済ませた携帯電話のアラームを5時に設定し、それをベッドの枕元に置く。

 最後の目薬を注してそれを冷蔵庫に戻すと、椅子に腰を下ろし、電灯に目をやって長考に入る。

―……考えてみれば、こっちに来てもう半年以上かぁ……―

光秋の脳裏に、いくつかの光景が思い浮かぶ。

 こちらの世界に来た最初の日の晩と翌朝、NPの襲撃を受け、それをいずれも自分が撃退したこと。ニコイチの飛行実験中に乱入してきたサン教の戦闘機をタッカー中尉と撃退したこと。NPの拠点「蜂の巣」を制圧する作戦の中で伊部が撃たれたことに激怒し、一時自分を失ったこと。綾と外出中に不良に絡まれ、その中のサイコキノに絞殺されそうになったこと。市街地でNPが蜂起し、それを鎮圧に出たこと、綾を確保するために来た陸軍の特殊部隊に囲まれ、危うく撃ち殺されそうになったこと。その後ヘリからの銃撃を受けたが、綾のおかげで助かったこと。先日、京都駅でのテロを阻止したこと。

―……よくもまぁ、生きてたもんだ……哲学科に入り損なった進学志望が、よくやるよ……―

我がことながら感心してしまう。

 そして、

―……綾……―

一瞬浮かんだ顔を隅にやると、光秋は椅子を回して机に向けていた体を右後ろにある冷蔵庫に向け、その上に置いてある写真立てに目をやる。その中には、光秋の携帯電話の待ち受け画面の映像と同じ、家を出る2、3時間前に撮った家族写真が収められている。

―……みんな、どうしてるだろうか?……いや、どの道ここにいたらわからんことだ。僕がいないなら、僕がいないなりの生活を送ってるだけだろう……明日も早いし、今日はもう寝よう!―

 そう決めると、立ち上がって椅子を部屋の隅にやり、窓の鍵が閉まっているのを確認してベッドに梯子を掛ける。玄関の鍵も確認し、用を足し、風呂場の水盤で口を漱いで顔を洗い、梯子を上ってベッドに入る。

 枕元の携帯電話を開いて時刻を確認すると、午後9時10分である。電話を枕の左脇に置き、メガネもその近くに置くと、灯りを消し、布団を被る。




 いかがでしたか。
 新メカに続き、新たな登場人物・曽我さんはどうだったでしょうか?
 そして伊部さんには気になる描写がありましたね。あれはなんなのか?
 次回もお楽しみに。
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