白い犬   作:一条 秋

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 ここ最近、急に閲覧数やお気に入り件数が伸びました。嬉しいのですが、短い間にこうも極端な変化があると少し心配になってしまう、そんななんともいえない気持ちです。


 さて、今回はいよいよ演習本番です。
 初の大規模演習で光秋たちがどう動くのか?
 では、どうぞ!


30 陸・空・ESO合同演習

 午前7時40分。

 朝食等を済ませた光秋は、藤原隊一行に混ざって正規軍側の集合場所である大型テントへ向かい、前側中央辺りの席に着く。すでに多くの席が埋まっており、光秋をはじめ、今日は青服も緑服も皆制帽を被り、多少緊張の表情を浮かべている。

 と、

「……」

「?……」

右隣に座る小田一尉がなにか言った様に聞こえ、光秋は顔を右に向ける。

「なにか?」

「ん?……あぁそうか、右聞こえなかったんだな。『お前、昨日早く寝て正解だったな』って言ったんだよ」

「?……どういうことです?」

「俺も泊りがけの演習なんて久しぶりだから、忘れてたんだがな……」

言いながら小田は、右隣に座る竹田二尉と藤原三佐に目をやり、顔を光秋に近づけて小声で続ける。

「2人の鼾が煩くて、昨夜(ゆうべ)なかなか寝られなかったんだよ」

「鼾、ですか?」

「あぁ。三佐もそうだが、竹田はそれ以上に煩くてな。収まるまで寝付けなかった……」

「……あ、だからその前に寝た僕を、『正解』って」

「そういうことだ」

言うと小田は、光秋から顔を離す。

 そんな小田を横目で見ながら、光秋は、

―詳しい状況は知らないが……災難でしたね…………―

と、心の中で労いの言葉を掛ける。

 

 午前8時。

 正面の大型スクリーンに青一色の映像が投影され、それまで響いていた多数のひそひそ声が止むと、

「……!」

光秋は視界の右端に、演台に立つ青服一式を着た富野大佐を見る。

「起立っ!」

号令と同時にテント内の全員が一斉に立ち上がり、

「敬礼っ!」

という言葉と同時に一斉に敬礼する。

「!」

光秋も突然の大声に少し驚きつつ、右手で敬礼をする。演台の富野も、それに右手で返礼する。

 テント内の全員が敬礼を解き、座り終わると、演台上のマイクを通して富野の声が響き渡る。

(諸君、私が今回の演習で正規軍側の総指揮を務める、合衆国陸軍大佐、富野である。よろしく頼む。さて、本演習の想定であるが……)

富野の言葉に合わせて、スクリーンに単純な絵で表された図解が映し出される。

(本地から北へ約30キロ先に設置された仮説基地を武装集団が占拠、これを奪回することである)

富野の説明に合わせて、映像右側に映る「本地」と書かれた赤い四角から「仮説基地」と書かれた青い四角に白い太い矢印が伸び、その上に「奪回」という文字が表示される。

(そこで)

言うと同時に、映像が広範囲の森林を上から見たものに替わる。

(まず空軍を主体とした航空戦力を前に出し、敵の注意をこれに引き付ける)

説明に合わせて、下の赤い円から上の青い円に「航空戦力」と書かれた太い水色の矢印が伸びる。

(その間に、戦車を主力とした地上部隊を慎重に前進させ)

赤円から青円に向かって、4本の細く黄色い「地上部隊」と書かれた矢印が伸びる。

(機会を見て、敵地に一斉攻撃をかける。先発の航空戦力もこれに合流する)

言うと同時に、青円に大きく「一斉攻撃」と書かれた文字が重なり、少ししてスクリーンの映像が消える。

(以上が、今回の作戦概要である。武装集団側の戦力であるが、具体的な情報はない。こちらよりやや劣るといったことしかわからん。各員充分注意するように。作戦開始は午前9時ジャスト。なにか質問は?)

「「「……」」」

テント内の全員は、沈黙を返す。

(では、各自準備にかかれ。1時間後に作戦を開始する。解散!)

大佐が言い終えると、再び、

「起立っ!」

という大声と同時にテント内の全員が立ち上がり、

「敬礼っ!」

という声と共に一斉に敬礼する。

 敬礼を解くと、皆一斉に後ろの出口へ向かう。

 光秋もそれに続こうと歩き出そうとすると、

「いよいよだね。頑張ろう!」

「はい!」

左隣に立つ伊部二尉に言われ、顔を向けて気合の籠った声で応じる。

 

 人波に混ざってテントの外に出ると、光秋は藤原隊一行に合流して正規軍側の装備品置き場へ向かう。

 全員が防弾ベストとプロテクター、ヘルメット、光秋以外がヘッドフォン型の通信機を着け、それぞれの拳銃に模擬弾を込める。

 その傍ら、

「加藤」

と、弾を込めた拳銃を右腰のホルスターに仕舞った藤原が、右脹脛に拳銃を入れたホルスターを巻き付けている光秋に話しかける。

「はい?」

左膝を着いている光秋は、藤原を見上げて応じる。

「ニコイチは空軍と共に先発だ。身支度が整い次第、大河原主任の許でそっちの準備に入れ」

「ニコイチも?」―……あぁ、『空軍を()()とした』っか―「了解。ちょうど準備も終わったんで、早速」

 言うと光秋は立ち上がり、振り返って大型装備が置かれている場所へ速足で向かう。

「伊部も、準備が終わったら向かえ」

「了解」

歩きながら、後ろから藤原に応じる伊部の声を聞く。

 

 少しして光秋は、灰色のツナギの上に白衣を羽織った大河原主任が、左に置かれている台の上のガトリング砲を見つめているのを見つける。

「大河原主任!」

「……おぉ、二曹」

呼び掛けると、大河原は顔を向けて応じる。

 光秋は大河原の許に着くと、

「お待たせしました。今日はよろしくお願いします」

と、軽く頭を下げ、すぐに右手を防弾ベストの合間に押し込んで上着の内ポケットからカプセルを取り出し、その先端を右側の広場に向けてニコイチを出現させる。

「ん!こちらも、演習も評価も、いい結果が出るのを期待しているぞ!」

大河原はそう言うと、右手で敬礼をする。

「!……!」

大河原の初めての敬礼に少し戸惑いながらも、光秋は右手で返礼し、リフトに駆け寄ってコクピットに上がる。

 席に着いてヘルメットを膝の上に置き、カプセルを右肘掛に納め、認証を済ませると、シートベルトを締めて左膝を着いたニコイチを立ち上がらせ、ガトリング砲の許へ歩み寄る。その間に、右肘掛から通信機を取り出して左耳に付ける。

 ガトリング砲の近くに着くと、

(よぉし二曹、その状態でしばらく待機)

「了解」

通信機越しに大河原の指示を聞き、短く応じる。

(荷台の取り付け開始!急げよぉ!)

 直後に大河原が指示を出すと、ニコイチの両腿に予備弾倉を運ぶための荷台の取り付け作業が開始される。

 その間光秋は、

(観測機器の設置急げよ!01の貴重なデータ採集の機会なんだからな)

(作戦開始まで後30分だ。作業遅いぞ!)

(弾薬と盾を早く移動させろぉ!敵がわからないんだから、弾が多いガトリング砲だぞ!)

といった、外音スピーカーや通信機から聞こえるいくつもの声に耳を傾けてみる。

 5分程して、通信機越しに大河原の声が届く。

(二曹。取り付け完了だ。動いていいぞ)

「了解」

応じると、直後に足元に5つの弾倉と、盾を乗せた台が現れ、屈んで4つの弾倉を腿の荷台に乗せ、ガトリング砲を右手に持って1つを装填し、左手に緑の四角い盾を持って立ち上がる。

 と、

(加藤くん。お待たせ)

「どこです?」

通信機から聞こえた伊部の声に、光秋は辺りを見回しながら返す。

(ニコイチの足元、左側)

―左……!―

 言われた辺りを捜して防具一式を付けた伊部を見つけると、光秋は屈んで盾を台の上に戻し、空いた左手を伊部の許に差し出す。ハッチを開けて席を機外へ出し、伊部が乗った手をハッチの上に置く。伊部がコクピットに移ると、席を機内へ下ろしてハッチを閉め、再び盾を持って立ち上がる。

―これで、いつでもよし、かぁ……―

と、光秋は心中に呟く。

 と、

「もうすぐ本番だね……」

左側に立つ伊部が、少し緊張を含んだ声で言う。

「えぇ……やってやるだけです。とりあえず、訓練通り左側の視界をお願いします。知っての通り、僕には殆ど死角ですから」

「うん……任せて!」

光秋の静かな気合を含んだ言葉に、伊部は少しだけ緊張がほぐれた声を返す。

 

 午前8時59分。

 作戦開始まで1分を切った時、光秋は通信機越しに聞き覚えのない男の声を聞く。

(こちら管制室。ただいまから作戦開始の時間合わせを行う。各自準備にかかれ)

 それを聞いて、光秋は左耳から通信機を離し、

「時間合わせを始めるそうです。僕の時計だと少し早いんで、伊部二尉お願いします」

と、左手に持ったそれを伊部に近づける。

「了解」

応じると、伊部は左手首の腕時計を見る。

 少しして、再び通信が入る。

(時間合わせ開始)

「「!」」

その言葉で、光秋と伊部の体が一瞬固くなる。

(10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。作戦開始!)

「!」

通信が終わるや、光秋はすぐに通信機を左耳に戻し、両手両足を操縦桿とペダルに置いていつでも出られるようにする。身も心も、完全に臨戦態勢である。

 直後に違う男の声が通信機から響く。

(UKD‐01は航空部隊と合流の上、先行せよ。合流後はアレク・タッカー中尉の指揮下に入れ。なお、01は機銃100発の被弾で撃墜とする。ミサイルは50発分である)

―タッカー中尉?―「了解」

応じると、光秋は通信が切れているのを確認して伊部を見る。

「航空部隊と先行、以後はタッカー中尉の指揮下に入れと。あと、ニコイチは機銃100発の被弾で撃墜と」

「了解」

「では」

 と、光秋は右ペダルをゆっくりと踏み込む。

 ニコイチ背部の円形の溝―Nクラフトから白い光が放たれると同時に、両足が地面から離れ、光秋と伊部を乗せたニコイチはゆっくりと上昇していく。

 高度を上げつつ、光秋は左パネルの地図に目をやり、演習場敷地内にある正規軍側の飛行場の位置を確認し、ニコイチをやや右に向けて前進する。

 

 少しして、光秋は前方左側に多数の黒い点を見つける。その意思を拾ってモニター左側に拡大映像が表示され、その中に黒い戦闘機群―F‐22の編隊が映し出される。

―あっちか―

思いつつ右操縦桿を若干左前に倒し、右ペダルを深めに踏んで少し速度を上げる。ニコイチは弧を描く様に左に旋回し、V字を書いて飛ぶ編隊の先頭機の右上に着く。同時に伊部も通信をよく聞こうと光秋の左耳に顔を寄せてくる。

「……」

 光秋は「F・5」か「UKD‐01」どちらを名乗ろうかと少し考えると、目前の戦闘機と左耳の通信機を意識する。

「UKD‐01より……」

(レッド・リーダーだ)

光秋が相手の呼び方に詰まっていると、タッカーの声で通信が入る。

「レッド・リーダー。これよりそちらの指揮下に入ります。今日はよろしくお願いします。タッカー中尉」

(こちらこそだ)

タッカーの返事を聞くと、光秋は編隊の後方に下がろうとする。

 と、

(待てジャップ!)

「!……?」

タッカーがすぐに制止させる。

(お前はそのまま、俺の隣にいろ)

「?……了解」

タッカーの指示に少し疑問を感じながらも、光秋は言われた通りタッカー機の右上に着き直して並行飛行する。

 と、

(レッド・リーダーより各機)

タッカーの声で編隊全機に通信が入る。

(間もなく会敵予想空域に入る。気を引き締めろ。特に白服ども!お前らには貴重な戦闘機会なんだ。無暗に前に出ろとは言わないが、真面目にやれよ!)

(了解!)(了解!)…………。

複数の緊張した声が応じる。

(それから01)

「はい」

(お前は俺と前に出ろ。しっかり付いてこい!)

―……そういうことですか―

そう言われて、光秋は先程のタッカーの指示を納得する。が、同時に若干の不安を覚える。

―しかし、僕の様なまだまだ素人寄りの奴に務まるか?……いや、素人意識はやめよう。実戦だって何度か経験してるし、今日のために訓練も怠らなかった。なにより……―

思いながら視線を左に向け、顔を寄せている伊部をちらっと見る。

―二尉がいるんだ!―「了解!」

自信を取り直したことと不安を追い出すつもりで、覇気のある返事をする。

 直後、

「!」

接近警報を聞いくや右パネルのレーダー表示に目をやり、自機の前方に多数の機影を見る。

―向こうも飛行機か……―

(来たな……俺と01が先行する。他は後から続け)

「了解」

タッカーの指示に応じつつ、光秋は左手の盾を胸の前で一の字に構えて前に出し、速度を上げたタッカー機を追って前に出る。

 

 同じ頃。

 武装集団側の大型テントでは、

「航空部隊より入電!敵航空部隊らしき影を視認。間もなく接触!」

と、緊張を含んだ報告が響く。

 一方、

「……了解した」

冷静な声で応じた短い黒髪に細身の顔つきをした青服の男は、パイプイスに座って正面のテーブルに両肘を着き、口の前で両手を組む姿勢を崩そうとしない。

 それどころか、

「……予想通り」

と、組んだ手で隠している口元に薄っすらと微笑みを浮かべている。

 

 正面から向かって来る飛行機の輪郭がモニター越しにある程度わかる距離まで来ると、光秋はモニターの右端に映し出された情報表示を見る。F‐22よりも全体的に細身な印象を与える機体図は、光秋も少しだけ見覚えがある。

―『F‐15』?……確か、自衛隊で使われてたな―

 そんなことを考えていると、

「……!」

不意に正面から寒気を感じ、操縦桿を握る手に若干力を込める。

―来るな……―「中尉」

(あぁ……散開!)

「!」

左隣を飛ぶタッカーの指示と同時に、光秋は一気に上昇をかける。

 直後、

「!」

下から多数の悪寒を感じ、視界の端に赤い円のマーカーをいくつも捉えると、右手のガトリング砲を下に向け、砲口を縦横に不規則に振りながら引き金を引く。

 直後にマーカーがあった辺りに小さな爆光が咲く。

―模擬ミサイル!―

意識の隅で理解しつつ、上昇から弧を描く様に前進に移る。

 直後、

「!」

光秋は接近警報と左から来る強い寒気を感じ、

「左真横!」

同時に伊部の声を聞いて素早く砲口を左真横に向け、ろくに視線も向けずに即引き金を引く。

 と、

(ブルー11撃墜。帰還せよ)

と、光秋は通信機越しに聞き、直後に前を前部にいくつかの赤インクを付けたF‐15が通り過ぎていくのを見る。

「墜としたか……二尉、ありがとうございます!」

「お礼はいい。今私は加藤くんの左目なんだから。それより、上!」

―嬉しいこと言ってくれちゃって……―

 思いつつ、光秋は伊部の言葉と接近警報、上から来る寒気に従って上を見、正面に近づいて来るマーカーが付いた影を捉えると、後退しつつそれに砲口を向け、右の親指で持ち手の突起を下ろしてレーザーを点ける。

 マーカーの中央にレーザーを合わせた一瞬、

「!」

すぐに引き金を引き、目前のF‐15の機首から背面を赤く染める。

(ブルー10撃墜。帰還せよ)

 通信を聞きながら後退しつつ、光秋は目前を墜とした相手機が行き過ぎていくのを見る。

「次!」

 

 上空での戦闘の光は、戦闘空域から離れた木々の合間からもよく見える。

 航空部隊の少し後に出発した地上部隊の面々も、ときどき顔を上げてそれを見ている。

 部隊の後方に着いてゆっくりと前進するゴーレム・タンク、その上部コクピットに納まる小田も、正面、左右、上部に備え付けられた四面のモニターを通して、その光を不安そうな目で見ている。

―航空部隊が敵の注意を引き付けるって言ったって、こんなデカブツがいたら見つかるんじゃないか?―

思いつつ、小田は正面モニターの下側に視線を落とす。

 戦車の車体を流用したゴレタンは、もともと戦車の移動も視野に入れた演習場内の林道を通れないことはない。現に今も、2列になって進むゴレタンの車体部分の元となったM1エイブラムス戦車群の左列に着き、上部に目をやりさえしなければ戦車隊の行軍としてはありふれた光景を作っている。

 問題はその上部――両肩に1門ずつ大砲を背負った人の上半身を模した部分である。車体も合わせて7メートルはある巨体は、戦車群を隠してくれている木々にもう少しで達してしまう程であり、ESO色とでもいうべき緑の塗装も、秋も中頃の紅葉混じりの葉の色の中では、近づかれれば目立って見つかってしまう恐れがある。

―初めてで慣れてない上に、脚の速い戦闘機に見つかったら……ゴレタンは、もともとこういう使い方じゃないんだろうな……―

 思いつつ、小田はなんとなしに左モニターに目をやる。

「……」

行軍開始からすでに20分は経とうとしているのに、未だ目が慣れない戦車群の合間を歩く歩兵たちが、ゴレタンに好奇の目を寄こしている。

―ま、なんであれ、『ニコイチの援護』という本分だけは全うしたいな……―

思うと小田は鼻から大き目の溜め息を吐き、視線を正面モニターに向ける。

 

「!」

 背後から多数の悪寒を感じた光秋は、振り返りざまにガトリング砲を左から右に横一の字に振りながら発砲し、正面にいくつもの爆光を咲かせる。

 直後、

「!上?」

頭上に漠然とした気配を感じ、すぐに砲口を上に向ける。

 と、

「待って!」

「!」

伊部の制止に、引き金に掛けた指を寸のところで止め、頭上を後ろから前へ行き過ぎる機影をよく見る。

「……F‐22?味方か」

 理解した直後、後に続く様に多数の機影が自分の頭上を行き過ぎていくのを見る。

「後ろにいた人たちが追い付いた……」

「みたいね」

 呟きに伊部が返すのを聞くと、光秋は右ペダルを深く踏んで爆光が集中している前方へとニコイチを駆けさせる。

―混戦してきたな……大丈夫か?―

光秋が思う「大丈夫?」とは、自分が味方を誤射してしまう心配である。少なくとも、自分はニコイチという特異な物に乗っているため、味方に撃たれることはないと概ね確信している。

―……ま、万一の時は、また二尉が止めてくれるか―

そう思うことで、浮かんだ不安を隅に押しやる。

 と、

(レッド9、レッド12撃墜。帰還せよ)

―!味方がやられた?―

光秋が通信内容を解した直後、

「!」「斜め上!」

接近警報と悪寒、伊部の声をほぼ同時に知覚し、上方を向いて接近してくるF‐15を捉える。

 直後に相手機は、右翼付け根にある機銃を放つ。

「!」

避けるには間に合わないと直感し、左手の盾を素早く横向きに前に出してそれを受け流す。そうしつつ、後退して相手から距離を取ろうとする。

 と、

(気を付けろ!そいつは古谷(ふるや)隊長だ!)

―フルヤ?……!―

タッカーの警告に、光秋は飛行実験の時に会った茶色いチリ毛の予知能力者のパイロットを思い出す。

―手強いか?―

思いつつ、目前を下方へと行き過ぎるマーカーが付いた古谷機を目で追う。

 直後、

「!」

後ろからの悪寒と接近警報を感じ、振り返りざまにガトリング砲を不規則に振りながら放ち、間近に迫っていたミサイル数基を小さい火球に変える。

―1人にかまっていられる状況じゃないか―

理解しつつ、光秋は四方に目を走らせながらニコイチを上昇させる。

 と、

「……?」

光秋は視界の右端に、木々の間から立ち上がる細い黒い煙を見る。

「二尉、あれって?」

「なに?……?」

言いながら、光秋は周囲を警戒しつつもモニター右側に表示された煙の拡大映像を見、伊部も視線を追ってその映像を見る。

 と、

「「!」」

2人は拡大映像越しに煙の近くに小規模の爆発が起こるのを見、光秋はすぐに通信機に意識を向ける。

「01よりレッド・リーダー!」

(何だ!)

タッカーの少し焦っている声が応じる。

「地上に爆発を確認。事態の確認に向かいたいのですが」

(爆発?……よし!)

(ブルー3撃墜。帰還せよ)

タッカーの小さな歓声が上がると同時に、撃墜報告の通信が入る。

(戦闘機は地べたの面倒まで見れん。だが気になる情報なのも確かだな……よし、確認行きを許可する)

「了解」

応じると光秋は、2本の煙が立ち上っている辺りにニコイチを向かわせる。

 その間にもさらに2回爆発が起き、煙は4本になる。

 光秋は煙が上っている辺りの上空に着くと、ゆっくりと高度を下げて木々の合間の様子を見る。

 と、

(白い犬だぁ!)

「!?」

外部スピーカー越しに突然の怒声を聞いたかと思うと、木々の間から多数の砲弾が跳び出す。

「加藤くん!」

「!」

伊部の声を意識の端に聞きながら、光秋は慌てて青インクが付いている盾を前に出してそれらを受け流す。盾越しに複数の小さい爆光が照り、光秋の左腕も軽い衝撃を覚える。

「?……敵軍!?」

 

「……?」

 静かに行軍を続ける小田は、右パネルの端に薄い靄が映っているのを見る。

―なんだ?―

思いつつ、右手を操縦席の頭掛けの右端に伸ばし、コの字型の取っ手を引いて、小田側には面積の殆どを占める画面が、モニター側には中央に大き目のレンズが1つ付いたスコープを引き出し、右パネルの靄の映像の辺りに合わせる。それはもともとゴレタン背部の大砲の照準器であるが、望遠機能もあるために右下に付いているツマミを回して靄を拡大して見る。

 と、

―……煙?―

スコープ画面に4本程の黒色の煙を見、被っているヘッドフォン型の通信機でゴレタンの近くを歩いている藤原と、下の車体部分に納まる竹田に通信を送る。

「F・2よりF・リーダー、F・3」

(何だ?)

藤原の声が応じる。

「右……2時の方向辺りに4本の煙を観測」

(煙だと?)

 直後、

「!」(ぬおっ!?)

モニター越しに車列前方左側に爆光が輝くのを見、同時に藤原の驚きの声を聞く。

 と、

「……?」

スコープを頭掛けの脇に戻した小田は、爆炎が燃えている辺りから防具一式を身に付け、それぞれ銃器を持った青服たちが躍り出てくるのを見る。

「……!」

よく見るとその一団は、全員左腕に青い腕章を巻いている。

「……武装集団?」

 

 同じ頃、正規軍側のテントでは、

「地上部隊各隊より入電!『現在武装集団の攻撃を受けている。応援を要請』とのことです!」

通信兵の緊迫した声が響き渡る。

 パイプイスに納まっている富野は、

「……やっぱりこうなるかぁ……」

と、左後ろに控えている横尾中尉にしか聞こえないくらいのうんざりした声で呟くと、

「待機中の特エスを回せ!そのまま合流して作戦続行」

と、指揮官の声で指示を飛ばす。

「あとテレポーターを1人こちらに回せ。私も出る」

言いながら、富野はイスから立ち上がる。

「?……大佐も、で、ありますか?」

「そうだ。早くしろ!」

「!了解!」

通信兵の少し戸惑った返事を聞きつつ、富野は防具置き場へ向かい、その後ろを横尾が追う。

「……大佐、いくら演習とはいえ、総指揮官自らが前線に赴くのは少々問題では?」

富野の後を追いながら、横尾は少し厳しい声で言う。

「君も知っているだろう?私は、もともとこういう大所帯の指揮は苦手なんだ。それに、私は地上部隊と合流はしない。今の騒ぎが収まったら、すぐに戻ってくる」

富野はそう応じると、テントの端に置いてある箱を開けて防弾ベストを取り出し、それを胴体部に着付け始める。

 それを見て横尾は、

「……わかりました。私もお供させていただきます」

言うやいなや、自分も防弾ベストを取り出して着付け始める。

「フミ!」

「今は職務中です。()()()()

「……」

横尾の厳しい返事に、富野は押し黙ってしまう。

「……それに、今日参加しているテレポーターはいずれも7以上ですから、大人2人分くらいの質量なら余裕で運べるはずです」

そう続けながら、横尾は防具を着付けていく。

 

「!……」

 木々の間から殺到する銃弾や砲弾を盾で受けつつ、光秋はモニターに目を走らせて近くに着地できそうな場所を捜す。

 と、

「富野大佐の作戦、読まれてたみたいね」

「ですね……!」

左隣の伊部の呟きに応じつつ、適当な場所を見つけた光秋は後退しつつ高度を下げ、木々の下、正規軍の戦車隊の前に降り立つ。

 と、

(白い犬が来た!)

(続けぇ!勝てるぞぉ!)

複数の歓声が外音スピーカーから響く。

―……期待されてるな―

意識の隅でそう思う。

 直後、

「!」

木々の中から武装集団側のエイブラムスが1台現れ、間を置かず砲弾を放つ。

「!」

すぐに盾を前に出し、それを受け流す。

―ミサイル2発でダメなら、砲弾も2発か?―

爆光に目を細めながらそう考えると、右ペダルを軽く踏んでニコイチを少し浮かせ、盾を構えた左半身を前にして滑る様に前進する。

 青い腕章を巻いた歩兵たちが慌てる様に端に除けるのを目の隅で見つつ、光秋はマーカーが付いた前方の戦車に意識を集中する。

「……!……!」

相手の砲撃を盾で受けつつ一気に距離を詰め、砲身の先まで寸での所まで来た直後、

「!」

ニコイチは跳ねる様に宙に舞い上がり、戦車の上を取る。

 光秋はすぐに持ち手の突起を下げてレーザーを点け、マーカーの中心にレーザーが合った一瞬、

「!」

引き金を引き、下の戦車上部を赤く染める。

 そのまま地面から少し浮いた高さまで下り、振り返ると、正規軍が武装集団を自分が撃破した戦車の前まで後退させているのを見る。

 が、直後、

「!」

後ろから多数の寒気を感じ、すぐに振りかえる。

 と、

「……!」

林道の奥から何台もの戦車が2列に並んで現れる。

―……しばらく地上戦か―

心中に呟くと、一番手前にいる右前方の戦車に狙いを定め、盾を前に出しつつ一気に滑る様に距離を詰める。

 マーカーとレーザーが合った一瞬後、

「!」

ガトリング砲を一射し、戦車の前面を赤くする。

そのまま左の戦車にも一射し、跳ねる様に木々の頂きギリギリまで上がって手前側の戦車を手当たり次第に赤くしていく。

 と、

「前!」

「!」

接近警報と伊部の声を聞いた光秋は、すぐに盾を前に出して被弾していない奥側の戦車群からの砲撃を受け流し、同時に高度を保ちつつ徐々に後退し、距離を取ろうとする。

「もっと高度を上げれば?」

「いや、そうすると木が邪魔で相手が見えなくなる。やり合うならこの方がまだ楽なんです・・・!」

伊部に応じつつ、光秋はろくに狙いも付けずに盾の影から応戦のガトリング砲を撃つ。

 と、

(レッド・リーダーより01。状況報告遅れてるぞ!どうなってる?)

通信信機からタッカーの怒声が響く。

―!いかん。忘れてた!―「こちら01!現在武装集団側の戦車部隊と交戦中。少し押されてます。応援に何機か寄こせませんか?」

(地上でも?無理だな。こっちも手一杯だ!)

「了解!」―じゃあ仕方ない!―

断じると、光秋は砲撃の防御と応戦に集中する。

 が、

「……!」

ガトリング砲の弾が尽きてしまう。

―充填してる時間がない!どうする?―

 と、

(盾で戦車隊の方へ風を起こせ!)

「!?」

通信機から響いた聞き覚えのある声に、光秋は直感的に従って一気に地面寸前まで下り、砲撃が弱くなった一瞬の間にガトリング砲を脇に捨て、

「!」

持ち手を手前にして右手に持ち替えた盾を素早く正面下方に向かって振る。

 団扇の様に動いた盾は強い風を起こし、周囲に落ちていた枯れ葉や折れた枝などを武装集団の戦車隊の方へ舞い上がらせ、近くいる歩兵の何人かはよろけて転んでしまう。

 直後、

「!」

光秋は舞い上がった枝や枯れ葉が瞬時に燃え上がり、戦車隊に覆い被さる様に落ちるのを見る。

「……このやり方、富野大佐!」

「!」

確信的な呟きに、光秋は思わず伊部の方を見る。

―これが、富野大佐の戦い方!……―

心中に感嘆を呟きつつ、昨夜ポリタンクの前で会った富野の顔を思い浮かべる。

 と、

(どうも演習というのは力加減が難しいが、これでこの場の戦車隊は全滅と判定させてもらおう)

「?……!」

外音スピーカー越しに指示を出してきたのと同じ声色――富野の声を聞くと、戦車隊を覆っていた火が一瞬で消える。

 光秋はニコイチを完全に着地させると、通信機に意識を向ける。

「こちらUKD‐01。富野大佐、どちらです?」

(後ろを見ろ)

「?……!」

返ってきた声に従って後ろを見回してみると、左側の足元に防具一式を着付けた富野と、その右後ろに控える様にして立つ横尾を見つけ、ハッチを開けて席を機外へ出す。

「……ありがとうございます!おかげで助かりました!」

外に出た途端に鼻を突いてきた煙の臭いに軽い不快感を覚えながらも、富野の方に顔を向けて大きい声を出しながら頭を下げる。

 と、

「礼はいい。というか、そんな暇があるのか?作戦はまだ終わっていないぞ!」

「!……はい!」

返ってきた富野の軽い怒声に光秋は素早く応じ、少し慌てながら機内へ戻る。

 ハッチを閉め切ると、

(ここの処理は私がやる。君は元の配置に戻れ)

と、通信機越しに富野の指示を受ける。

「了解!」

応じると、光秋は放ったガトリング砲の許に歩み寄って屈み込み、盾を地面に置いてガトリング砲を右手に持ち、空になった弾倉を外して左腿の荷台の前側の弾倉と付け替える。

―……何かに使えるかな?―

ふとそう思い、空弾倉を空いた左の前側の荷台に入れ、左手に盾を持って立ち上がり、右ペダルを踏んで一気に上昇する。

「空の弾倉なんてどうするの?」

「『何かに使えるかな?』と思って、とりあえず持って来ただけです」

 伊部の問いに思った通りのことを話し、通信機に意識を向ける。

「UKD‐01よりレッド・リーダー。戦車部隊の殲滅、完了しました。今からそっちへ向かいます」

(了解。早めに頼む。こっちももう一息だ)

タッカーのやや焦っている声が応じる。

 と、

「……!加藤くん!10時の方向に発煙筒確認。色は黄色」

「えっ!?」

少し緊迫した伊部の声に、光秋はモニター左側に目をやり、拡大表示に映し出された木々の合間から上る黄色い煙と、その近く一帯を薄っすらと覆う黒い煙を見る。

―黄色――訓練時の救難信号!―「01よりレッド・リーダー!発煙筒を確認!色は黄色。至急救援に向かいます!」―一難去ってまたか……―

(何ぃ!?えぇい、しょうがない!早く行って片付けて来い!こっちも余力が出てきたから、レッド11を応援に回す)

「了解!」

応じるやニコイチを斜め左に向け、右ペダルを一杯に踏んで黄色い煙目掛けて突進する。

 と、

(レッド11より、UKD‐01)

―この声……純さん!―

通信機越しの聞き覚えのある声に、昨夜の夕食の席で会った横尾の弟の顔を思い出す。

(これより貴官の支援に就きます)

「了解。よろしくお願いします」

応じつつ左隣に並んで飛ぶF‐22を確認し、そのまま並行飛行を続ける。

 黄煙が上がっている辺りの上空の近くに着くと、光秋は徐々に高度を下げていく。

「……!」

黄煙の手前まで近づくと、木の葉の影にゴレタンの箱を背負っている様な後ろ姿を見つける。

―ゴレタン!三佐たちの隊!……!―

理解した直後、ゴレタンは両肩から伸びる大砲を一射して爆音を響かせ、排気の風圧で周囲の木の葉を舞い上げ、前方に小さな爆炎を2つ輝かせる。

「こちら正規軍所属、UKD‐01!これより支援に入る!」

 外音スピーカー越しに叫びつつ、光秋はゴレタンの少し前辺りに降下して自軍の戦車隊の直上に着き、

「!」

予想通り展開していた武装集団側のエイブラムス戦車群に素早くガトリング砲の掃射を浴びせる。マーカーすら付いていない2列の戦車群が、瞬く間に赤く染まっていく。

 同時に純機も上空から機銃掃射を行い、歩兵がニコイチを攻撃しないように牽制してくれる。

 攻撃開始から1分程で敵の戦車群を全滅させると、光秋はゴレタンの右隣が空いているのを見つけてそこに着地し、藤原の顔を浮かべながら通信機に意識を向ける。

「UKD‐01よりF・リーダー。無事ですか?」

(なんとかな……)

藤原の若干の安堵を含んだ声が応じる。

(こちらF・2)

小田の声が加わる。

(奇襲でこっちも大分やられたがな。お前らが来てくれなかったら、俺たちも危なかった……)

(ホント。ニコイチさまさまっていうかさ)

「いえ……」

加わった竹田の声に、光秋は短く応じる。

 と、

(あーあ、出番なくちゃったわねぇ……)

「?……」

外部スピーカー越し――それもかなり近く――で聞き覚えのある少し残念がる声を聞いた光秋は、自分とニコイチの首を左右に回してみる。

 と、

「!」

ニコイチの右肩の上に防弾ベストを着た曽我を見つけ、心臓が跳ねる様な感覚を覚える。

「曽我さん!?いつからそこに?」

すぐに通信を繋げて呼び掛ける。

(ここに上がってきたのはついさっき。でも現場に来たのはあなたより少し先よ。これから頑張ろうと思って張り切ってたら、()()()あなたにやられちゃって……)

両腕を組んだ曽我は芝居じみた不服そうな声で応じるが、そんなものでも光秋には肩身の狭い思いを抱かせる。

「はぁ……」

(ま、アタシの仕事はまだあるからいいけど……)

言うと曽我は、ニコイチの肩から浮き上がって戦車隊の前部へと飛んでいく。

「……」

光秋はその背を目で追いつつ、しばらく呆然としてしまう。

 と、

「……?加藤くん!」

(レッド11より01。状況終了でしょう?早く航空部隊と合流しないと!)

「……!あぁ、はい!大至急!では、僕らはこれで」

伊部と純の呼び掛けで気を取り直した光秋は、右ペダルを踏んでニコイチを上昇させながら外音スピーカーに吹き込む。

 すぐに適度な高度まで上がると、左前を行く純機を追って前進する。

 と、

「……今の人、昨日の訓練で一緒だった特エス?」

「!……見てたんですか?昨日の……」

伊部の突然の問いに、光秋は見失わないように青いマーカーが付いた純機を見つつ問い返す。

「うん。だって、訓練のために待ってたって言ってたじゃない。一尉に場所訊いて捜しに行ったら、そこでドッグ・ファイトしてるのが見えて……」

「あぁ、そうか……」

「で?昨日の訓練で一緒だった人?」

「えぇ。本部所属の、曽我さんといいます」

「ふーん……」

光秋の紹介に、伊部は興味がない声を返す。

 

 しばらくして、光秋は前方に多数の爆光を捉える。

「UKD‐01より航空部隊!これより合流します」

通信機越しに言うと盾を胸の前に出し、その影からガトリング砲の砲口を正面に向け、右ペダルを一杯に踏んで一直線に駆け出す。

 と、

「……!」

左から来る寒気と接近警報を感じるや、直後に垂直に急上昇し、素早く砲口を下に向けてレーザーを点け、左から迫ってくるマーカーが付いたF‐15に一射する。

 が、

「……!」

相手機は左に大きく動いてそれを避け、機首をニコイチに向けて上昇し、距離を詰めてくる。

(気を付けろ!そいつは古谷隊長だ!)

「!」

通信機越しのタッカーの警告に一瞬恐怖を覚えるも、光秋はすぐにレーザーとマーカーを合わせて一射する。

 が、

「!」

古谷機は左に避けると同時に機銃を放ち、ニコイチの盾をますます青く染める。

「クッ!」―動かないと!―

 思うや光秋は、上昇をかけて古谷機と距離を取り、そのまま弧を描く様に動いて古谷機の後ろに着き、

「!」

頭を下に向けたままマーカーとレーザーを合わせる。

 が、直後、

「左!」

「!」

伊部の叫びと接近警報、悪寒を感じ、光秋は右ペダルを一杯に踏んで頭から落下以上の速さで降下する。

 一瞬後に体の上下を戻して上を見ると、左上空のF‐15に後ろから模擬弾が殺到するのを見る。

(ブルー4撃墜。帰還せよ)

―タッカー中尉か?―

そう思った直後、

(レッド・リーダーよりレッド11。やるじゃないか!)

(は、はい!)

―純さんが!……―

通信を走った応答を聞きつつ、上空を左から右へ行き過ぎるF‐22を見ながら、光秋は純の顔を浮かべる。

 直後、

「!」

光秋は接近警報と真上から来る寒気を感じ、すぐに砲口を上に向け、正面から突っ込んで来るF‐15にマーカーとレーザーを合わせる。

「……」

引き金に指を掛け、力を込める。

 が、直後、

「!?」

射線上の宙に左から右へと一の字に青色の稲妻が走ったかと思うと、直後にその辺りに縦横無尽に同時に多数の稲妻が走る。

―何だ!?―

 目の前の異様な事態に、光秋は咄嗟にF‐15に付けていた照準を解き、右ペダルを一杯に踏んで後退しつつ高度を下げて稲妻から距離を取る。

「あれって……」

「稲妻……ではないでしょう……」

伊部の困惑した声に、光秋は言わずもがなな返事をする。

「稲妻――雷って、雨雲と地面の電子の関係で起こるって聞いたことがあるし、それなら縦向きに走るはずです。あんなふうに横向きに走ったりしない。そもそもこの辺に雷が起こるような雲なんて出てないでしょう?……」

言いながら、光秋は横目で周囲の空を走査し、雲など殆どない快晴であること、あったとしても遠くに消え入りそうな小振りの雲が3つ4つ程度しかないことを確認する。

―雷が起こる要素なんてない!じゃあ?……―「プラズマの自然発生か?……」

思わず聞きかじり程度でしかない知識での推測を呟いてみる。

 と、

「……!」

集中発生していた稲妻が消えたかと思うと、ガシャーン!と耳を貫く程の轟音が外音スピーカー越しに響き、その辺りに窓ガラスでも割った様な蜘蛛の巣状の亀裂が走る。次の瞬間には空色をした破片が四方に飛び、黒い大穴が顔を出す。

「……空が……割れた!?…………」

飛び散った空の破片が宙に溶ける様に消えていくのと、上空に空いた大穴を呆然と見つめつつ、光秋は恐怖を含んだ声で呟く。




 いかがでしたか。
 終盤に起こった怪現象はなんなのか?それに対して光秋たちはどう出るのか?
 次回もお楽しみに!
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