展開に云々唸ってたところ今書いてるやつの前に挟むべき話あるんちゃう?挟んでおいたよという事で書いた物です。
ある平日の夜、少女2人は各々の自室で通話を楽しんでいた。
『──そういえば、小中の頃ってどんな感じだったんだい? 海君の主観が割と当てにならなくてねぇ……』
「いや実際当てにならんで。タケの記憶ってPJ関連に特化しとるから周りの反応とかほぼ無いし。せやなあ……ちょっと恥ずかしいけどウチからしたらどんなやったか話そか。親父の転勤でそっちの方に転校した小2の時に会ってな……」
サキは今でも、昨日のように思い出せる。
○
「──これで僕の5勝目だね。やっぱり君強いねえ! このまま行けば絶対プロになれるよ!」
「ぐ……う……」
どの口が。と思った事を覚えとる。
5本先取をストレートに取ってそんな言い草。今なら本心で言ってたなって判るけど。
「──でもちょっとブラフに引っかかりやすいのが今の弱点かな? 押すだけがPJじゃないからね」
「ううぅ……!」
当時は幼い事もあって感情の抑えが利かんかった。
何せそれまでウチは世界一PJが強いと思っていたから。実際にはトップクラスなのは間違いないけどもっと上が居た、だからと言って頂点を諦める気はさらさら無いわ。これは今でもや。
「タケ、ちょっとストップ口閉じて! 蒲原ちゃん大丈夫!? ほら泣いちゃってるじゃん! やめろってアドバイス!!!」
「えっ?」
あの時の何も悪い事しとらんみたいな顔今思い出しても腹立つな?
まあ視界が滲んで、悔しさで歯を食い縛った。
多分生まれて初めての完敗だったから。それも仕掛けたのはウチからで、完敗した。
決まり手を魔法のように躱されて、返しからジリジリと追い詰められて負ける。それがそれぞれ別の計5パターンでストレート負け。
心でも読んどるんか? と思った当時のウチは普通のガキんちょやな。
実際は違う、遥か上のステージにタケが
序盤にラスボス置くなや。ワゴンで叩き売りされるで。
「ごめんタケはちょっと変なとこあって……蒲原ちゃんが俺じゃボコボコにされるくらい強いのは分かったけどタケ相手じゃ分が悪いからさ、色々対策しよう。俺も手伝うから」
「ふぐっ──ウチより弱いのに知った口利くなァ! あとサキって呼べ!」
「えっ!? あっ……行っちゃった……」
今にして思うとこの時のコースケへの暴言は10割八つ当たり。恥ずかしいこっちゃ。
翌日プレイングを吟味しながらタケにリベンジしてまた負けた。タケのデッキ変わってたからか? と思ったんやけど、その後もほぼ毎日使うデッキ変わってたからそういう問題やないな? って理解した。
もっと後になって出た【ギフト】くらいやなタケが連日使う事多かったデッキ。
翌日以後もやっぱりコースケはタケに着いてきていて、負けた後に慰めてくれた。こいつウチより弱いのになんで慰めるんや? って不思議やったわ。
しかもウチを慰めた後にタケに挑んで負けてるし。なんならウチより早く負けてる。その頃はコースケのプレイングがめっちゃ甘かったのとムラが原因。
そんな様子が数日続いて、ウチが見かねて負けてしばらくウジウジモードのコースケに助言したんや。初日と逆の状況やな。
「サキちゃんに教えてもらったらなんか粘れるようになった! 日によるけど!」
「アンタもうちょい考えながらやりや。ウチからしたら毎日ボロ負けしてて平気でリベンジするの訳分からんわ……いや、それはウチもやな?」
「風見は伸び代が凄くてねえ。毎日少しずつだけど強くなってる気がするんだよね」
「タケとやると強くなってる実感ある! それはそれとしてアドバイスはもうちょっと減らして欲しい!」
「えーっ強くなれるのに……」
「タケのアドバイスは分かりにくい!」
「いや普通に分かるやろ……分かるよな?」
「そのはずだけど……」
そんなウチらをタケはニコニコしながら見てたのが日常。タケがよくやるリーサル沿いの殺し間に気付いたのは半年くらい経ってから。ただ当時は気付けても対処出来へんで、絡め取られて返しで食われるの繰り返しやった。
対処が思い付かん分人読みとか型読みを鍛えてたんが今のウチのプレイスタイルの骨子になっとる。鍛えとくもんやな。昔のイケイケスタイルだけやったら多分ここまで早くトッププロには上がれとらん思うし。
そんでタケの殺し間に気付いた頃にはいやでも気付く。学校でタケとよくマッチやる同年代って全然居らへんなって事に。
あの頃でコースケ、ウチ、リョウ、金ちゃん、偶に時間が合って華やんくらい? そうそう、華やんあんなやけど結構お嬢様で中学までは習い事漬けやってんで。家族の前だと言葉遣い綺麗らしいわ。
他は……ウチが知ってる限りは長くて5回目くらいでリタイアしてたはず。
後々知ったんやけどタケの小1の同クラスにコースケとリョウと金ちゃんが居ったんやって。その時のクラスメイトは挙げた3人除いて全員ゆる〜く遊ぶカジュアル層になったんはリョウと初めてやり合った時の一件が原因って話はビックリしたわ。でも本気のタケ相手なら納得もした。あれは適性感知が低くてもなんかヤバいわって気付くレベルやからな。
あとタケがクーちゃんに対して怒ったんもビックリ。
ウチ未だに見た事無いからなアイツがクーちゃんに対して怒った所。クーちゃんが怒ってるのは何回か見た事あるけど。
ほんで3年に上がったくらいにラビッツが出て……祝福パックが出ておお? となってた頃の週明けにタケが心なしションボリした顔で登校してきてな。
話聞いたら最寄りのショップ大会出禁食らったって落ち込んでた。お店もフリプは許してくれたの温情やな……。
タケの存在が世間に知られ始めたのは多分この頃が最初なんやないかな? 異常にPJ強いガキが居るってんで大人がちょろちょろショップ大会に出てきて抽選弾かれて残念がってた覚えあるわ。
ただ今にして思うとウチとリョウが居ったから勘違いされてたんよな……ウチらも異常に強い側ではあったしタケほど軒並みやないけどショップ大会出禁は食らってるし。
そんで小4くらいになるとウチら強い組で合間見て遊んで……ってなるサイクルが出来上がってた。
この頃にタケが近所一帯出禁コンプしてもうたから都会の方に遠征するようになって、土日の日中は遊び辛くなったんよ。まあ夜コースケん家で遊んでたからあんまし変わらんのやけど。
月2くらいで泊まりに行ってたな。おばちゃんには感謝や。
ほんで小5に上がる頃にラビッツにヴォーパルが実装されて、その直後くらいにやっとタケに勝ったんや。あの時は嬉しかったんは覚えてるんやけど……どうもマッチ中頭回し過ぎて記憶朧げなんよ。めっちゃしんどくて翌日熱出したし……せやからその時のマッチはコースケかタケの方がよく覚えてるはずや。ウチの手札の情報込みやとコースケのがええかな? でもアイツ覚えてるか若干怪しいからタケのが良いかもしれん。
コースケが初めて勝ったんは小5の3学期半ば。こっちはウチが見てたしコースケの手札の動きは書き出せるから気になったら教えられるで? 覚えてるに決まってるやんリーサル前後のプレイングめちゃくちゃ綺麗やってん。
いやあの時のプレイングはカッコよかったなコースケ……高1の1年間だけでめっちゃ腑抜けてたのはムカついたけど。
やっぱ近くで誰かがケツ叩いてやらんとあかんな……そういう意味やとタケがしょっちゅうコースケ巻き込んどるのは丁度ええのかもしれん。
この頃になるとリョウと金ちゃんと華やんの道明組が忙しなって距離できたな。あの3人も凄いんやで? 当時入ってたクラブの黄金期って言われてたらしいし。クラブ全国優勝は出来へんかったけど元のチームの質やと大金星になるんや。例年エリア落ちのクラブが全国ベスト8まで行った訳やからな。
でもまあ……こないだ金ちゃんから聞いた話当時はリョウが不満やったみたいでな。中学入ってからは後輩が育つ基盤作るのに苦心してたらしいわ。
そういうとこもタケ真似てるんやなあって思ったし、それなら他所で強い言われてた割には伸びが悪いのも納得行くやろ? タケが強過ぎるとこもあるから比較対象も悪いな。
ウチからしたら教える前に自分伸ばせやってなるんやけど、まあ当人が納得した上でやってたらしいし今は言うことも無いな。こないだ会った時に釘も刺したし。
ほんで中学上がる時にまた親父が転勤で東京の方に行ってな。ウチもオカンと一緒に着いてって転校したんや。
その引越し間際にコースケと約束してなあ……。アイツアホやけど義理堅いからアイツなりにちゃんと覚えててな……なんて言われたかは内緒。いくら桜子ちゃんでも言えへんなあ。
中学上がってからは氷川と会って鍛えてやってな。氷川は面白い性質しててな、メンタル弱いけど負けん気強くて直情型やから折れん程度にしばいてやったらゆるゆる伸びるんよ。
タケはその辺ガン無視で伸ばしに行くからグーっと伸びてしばらく休んでになるのが欠点やな。ウチのは時期的な天井に当たらんのならコンスタントに伸ばしてやれるけど天井当たった時はタケのやり方のがええやろうし……まあ鍛える時期次第って感じか?
なんや途中で付き合い悪なった時期もあったけど、ワタル君の巻き込まれてた事件関係やったらしいわ。言ってくれたら手伝ったんやけどアイツその辺抱えるからなあ……。
ほんでまあ中学の部でタケの学校と当たって……編成読み切られて負けたな……今でも悔しいわ〜! 氷川はストレスで試合当日腹痛でトイレに籠りきりやったからどうしようもなかった気はするんやけど、悔しいもんは悔しい。
あとタケから聞いてるやろうけど中学時代に遠征してたタケとちょこちょこやり合って負けたりとかもしたで。フリプで負けるのに公式戦やと勝ってくるのめっちゃムカつくわ。まああの時の経験あっての今やから心底ムカつくけど後悔はしてへん。ムカつくけど。
そんでまあプロになる事決めて……ついでやから日本PJ史に残る事したろって思って最年少Aプロ目指してちょっと勉強して……3学期で氷川に告られたけど断って……最年少Aプロついでに最年少トッププロにもなった今やな。
○
『──最後の最後にしれっと物凄い爆弾がなかったかい!?』
「色恋のいの字も知らんガキに構っとられるかい。ウチは安くないんやで。大体氷川のは恋愛じゃなくて憧れの類や。そんなモンに応えてどないするねんプロになったしそれで片付くやろ」
『サキちゃんそっち方面は氷川君にめちゃくちゃ辛辣だね……』
「アイツ男女関係はとんでもなくお子ちゃまやからな。タケとはまた違う方向のPJ馬鹿や。憑いてる精霊もちょっと変になってたし絶対高校で厄介な女生んでるで」
『なんか物凄い実感が籠ってるね……』
「アイツ小学校時代からファンクラブあるんやもん。しかもそれ作ったのが氷川に憑いてる精霊な上に氷川当人はその存在に全く気付いとらんのや」
『……御神体か何かかな? しかし契約相手のファンクラブ設立はかなりこう……過激だね! パパのシャマシュくらい!』
「まあ……氷川は外面取り繕う社会性はあるけど本質的にはPJしか見えてへんねや。ある意味タケよりタチ悪いでアレ」
『海君はアレで結構周り見てるからねえ……』
「タケは目標の問題もあって周り見る事慣れてるんやろな。PJってフィルターで判別してたから桜子ちゃんと会うまで問題多かったけど……」
『今は……鋭意矯正中だよ! 杓ちゃん達のクラスメイト判定を友達判定に直す事に成功したからね!』
「いやほんっっっと桜子ちゃん……タケのブレーキになってくれてめっちゃ助かるわ……」
『サキちゃんってさ、身内への情はかなり深い方だよね。織田信長みたいな』
「それオカンにも言われた事あるわ。アンタ世が世なら多分女帝か何かやったやろなって……」
『カリスマ性の発露なんだろうねえ……』
「……ウチばっか話してたらちょっと桜子ちゃんの話も聞きたなってきたんやけど、聞きたいわあ〜」
『そうだねえ……ぼくのPJが昔から壊滅的なのは知ってるだろうから、その辺も交えて話そうか──』
「いや、タケと会ってからのアレコレの方がええな!」
○
──そして翌日。
「あれ、桜子さん今日はほんのり髪の毛がごわごわしてますね……これはこれで良い感触」
「昨日サキちゃんと通話してたら夜更かししちゃってねえ……あんまり眠れなかったんだ……後で梳いてくれると嬉しいな」
「喜んで」
少女達の夜更かしは、かなり長引いたらしい。
次話か次々話くらいは氷川君回です。