ティアムーン帝国の第1皇女の専属騎士を務める、公爵家の1人息子こと【シェイ・バルトルーデ】。 これは皇女にして主であるミーア姫に振り回される彼の気苦労を描いた物語である。

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ティアムーン帝国物語のSSを試しに執筆してみました。
タグにある通りお試し作品なので続きを書くかは未定です。


序章

 

 

 

赤く、燃えるような夕日が空を染め上げ視界を焼いている。

視線を下ろし、周囲を見渡せば視界を埋め尽くす程の騎士と憎悪に狂い支配された眼差しを向ける民衆。

迫り来る軍勢を前にして俺は己の最期を悟りつつも、せめてもの思いを込めて返り血で染まった直剣を構える。

 

 

「…まだ俺は、死ぬ訳には行かない。 今日ここで我が身が朽ちて果てるとしても、我が主を────貴様等からミーア姫を救う!」

 

 

そう叫びなが自分を奮い立たせ、俺は迫り来る軍勢へと単身突撃して行く。

 

降り頻る矢の雨を潜り抜け、振るわれる刃を捌きながら騎士と民衆の波を割くようにして駆け抜け、俺は命に懸けて守ると誓った少女の元へとひた走る。

 

途中、捌き切れなかった刃が額を、頬を、腕を、足を、脇腹を斬り裂き傷口から血が流れ宙を舞うも、それら全てを気に止めず襲い来る軍勢を斬り捨てながら目的の場所へと走る。

 

もはや退く事も、生き残る事も叶わないのは百も承知だが、それでも俺は最期の瞬間まで命を賭してでも守るべき少女の居る場所へと目指し続ける。

 

 

「がはっ!?」

 

 

だが、たった1人で圧倒的な数の暴力を覆せる筈も無く、俺は目的地に着く直前で足を深く刺された事により前のめりになりながら地面へと倒れた。

 

 

「…ぐぅっ……まだ、だ……俺はまだ……あの人を救えていない……だから……こんな、所で…死ぬ訳には……っ!?」

 

 

立つことすら出来ない俺は最後の力を振り絞るように地面を這いつくばりながら必死に前へ進み続けるが、背中に焼けるような鈍い痛みが走り動けなくなる。

 

 

(ああ…ここまでか……姫様、申し訳ございません。 貴女との約束……もう果たせなくなってしまいました……)

 

 

薄れゆく視界の中、俺は助け出す事が出来なかった少女の顔を脳裏に過ぎらせながら、最期は憎悪の眼差しを向ける騎士と民衆により無数の刃を突き立てられながら目を閉じた。

 

 

 

──────────

 

 

 

「……んぅ……ここは?」

 

 

目を覚ますと見慣れた天井が視界に映った。

 

 

「もしかして俺、寝てたのか……」

 

 

上体を起こした俺は、自分が寝室のベッドの上に居たのに気が付くと思わず呟いていた。

 

自分が居る部屋…と言うより場所は【ティアムーン帝国】にある王城の一室で、俺--【シェイ・バルトルーデ】はバルトルーデ公爵家の1人息子にして、ティアムーン帝国の王族に代々仕える家従である。

かくいう俺も、ティアムーン帝国の姫君であらせられる--【ミーア・ルーナ・ティアムーン】の専属騎士として仕えているのだが、専属騎士となった5年ほど経つが正直に言うと主であるミーア姫には少々どころか、かなり手を焼いているのが現状である。

 

何故ならミーア姫は見た目は可憐だが、それら全てを台無しにする程の我儘な性格で仕えている身としては付き添ってて苦労が絶えない。

それでも俺は根気強くミーア姫に付き従いながら今日に至るまで頑張ってきた。

 

 

(まあ、苦労が絶えない事には変わりないが…)

 

 

そんな事を思いつつ俺は目が覚めた以上、ミーア姫の元へと向かう準備に取り掛かろうとした。 ──その時だった。

 

 

 

「ひぃやあああああああああああああ!」

 

「ッ!? この声は!」

 

 

突如として聞こえてきた悲鳴に、俺は近くに立て掛けていた剣を手に取ると直ぐさま部屋を飛び出し悲鳴の発信源である部屋へと急行した。

 

 

バタンッ「姫様!」

 

 

悲鳴の発信源である部屋の前に辿り着いた俺は扉を開けて中に突入すると、部屋の主である少女の安否を確かめる。

 

蒼い瞳と肩の辺りで切り揃えられた白金色の髪を持つ、齢にして11〜2くらいの少女--ミーア姫が自身の首を抑えながらあわあわとしている姿があった。

 

 

「姫様、ご無事ですか?」

 

「しぇ、しぇ、シェイ!? く、くくく、くび、くびくびくびくびぃいいいい!」

 

「姫様、落ち着いて下さい。 何を仰られているのかが分かりません」

 

「わ、わた、わたわた、私の首ぃいいいい!」

 

「首? 特に何とも無いようですが……甘い物を食べ過ぎて変な夢でも見られたのですか?」

 

「へ?」

 

 

俺の言葉にミーア姫は間の抜けた表情を浮かべると、ぼんやりとした様子でベッドから降りて、大きな姿見の前に立つ。

 

 

「……お、おほほ、で、ですわよねぇ。 い、いやですわ、あんなこと、起こるはずがございませんのに」

 

「? 何を仰られているのかは存じませんが、特に問題ないのでしたら念の為に外で待機しておきますね」

 

「お騒がせしましたわね、シェイ」

 

「いえ、ミーア姫の身を第一に考えるのは当然の事ですから。 それでは失礼致します」

 

 

そう言って俺はミーア姫に礼をして部屋の外へと出る。

 

 

(あんな悲鳴を上げるなんて、それに御自身の首元を執拗に触れていた気がするが………たぶん気のせいだな)

 

 

余りにも危機迫った悲鳴に急いで駆けつけたが、問題無かった事実に拍子抜けしつつも安堵する。

 

 

(まあ、姫様が変なのは何時もの事か)

 

 

そう思いつつ部屋の外で待機しようした。 ──次の瞬間、

 

 

「ひぃああああああああああああああああああああ!」

 

「っ、お次は何だ!?」

 

 

再び聞こえてきたミーア姫の悲鳴に俺は頭が痛くなる思いを抱きつつも部屋の中へと再度、突入するのだった。

 

 

 

──────────

 

 

 

これは後に【帝国の叡智】と崇められ、歴史に名を刻む事となる皇女────の、専属騎士を務める1人の少年が次々と巻き起こる面倒事を皇女が四苦八苦しながら解決するのを、全身全霊を掛けて支えたり、時には襲い来る敵を斬り捨てる物語である。

 




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