「へへっ、タダでもらえるなら、そりゃあ、女の姿で行くっきゃねーよな!」
真夏の昼下がり。らんまは女の姿で、街の小さな公園のベンチに腰かけていた。ピンクのチェックワンピースに麦わら帽子、そして手には特大のソフトクリーム。
頬にちょこんとついた一滴のアイスを、ペロリと舌で舐め取りながら、どこか誇らしげな笑みを浮かべる。
「へへ、オレのかわいさ、なめんなよ♪」
数分前、商店街のソフトクリーム屋台。
「お嬢ちゃん、今日は暑いですねぇ〜、よかったら、これ……サービスです」
そう言って店員の兄ちゃんが差し出してくれたのが、いま手にしているこれだった。
「えっ、ほんとぉ? ……ありがとぉ♡」
あたし、と咄嗟に言い直し、ぶりっこ笑顔をかますらんま。
いつもなら鼻で笑うような演技だったが、最近じゃもう、すっかり板についてしまっている。
(いや、ちがうちがう。オレは男に戻りたいんだ。呪溺泉で完全に男になる日まで、これはあくまで“作戦”だ!)
そう言い訳しながらも、スカートの裾をふわりと押さえてベンチに座る姿は、誰がどう見ても自然体。
(でもまぁ……こんな風に涼しくて甘いもん食って、ちやほやされて……)
口の中に広がる濃厚なミルクの味。
(……ちょっと、悪くねぇかもな)
ふと、前を通りかかった男子高校生二人が、らんまをチラ見してヒソヒソと話している。
「おい見ろよ、あの子、めっちゃ可愛くね?」「やば、あのワンピ似合いすぎ……アイスになりてぇ……」
(……アイスになりてぇ、って何だよ)
吹き出しそうになるのをこらえつつ、らんまはさらに口角を上げて見せた。
(べつに、モテたいとかじゃねーんだよ? お得に生きてるだけだっつーの)
ソフトクリームをかじる。
でも、心のどこかで、こうして女の姿で過ごす日常が「居心地よくなってきてる」ことに、気づいてはいた。
たとえば。
スカートの裾が風に揺れる感覚。つば広の帽子が影を作ってくれるありがたさ。小さな子供に「お姉ちゃんかわいい〜」って言われて、思わず笑い返しちゃう自分。
(……オレ、ちょっと……楽しんでる?)
「ばっ、バカかオレはっ!」
そう言って立ち上がりかけるが、アイスがぐにゃりと傾き、慌てて座り直す。
「お、おっとっと……」
指先にアイスが垂れてくる。ぺろりと舐め取って、思わず笑う。
(まぁいいや。考えるのは、男に戻ってからにしよう。今は、このソフトクリームと、この日差しと、この格好を、ちょっとだけ――楽しんどく)
そう決めたら、心も身体も軽くなった。
らんまはもう一度、アイスをかじりながら空を見上げた。
太陽がまぶしい。でも、麦わら帽子の下は、涼しくて。
「ふん。ま、これくらいの“女の楽しみ”なら、たまには悪くねぇよな……」
その顔は、どこか照れていて、だけど確かに、ほんの少しだけ誇らしげだった。
女の姿で得するらんま、ちょっと照れながらも楽しんでるらんま――そんな姿がすごく好きで、このお話を書きました。
「男に戻りたい」って言いつつ、ちゃっかり女の人生も満喫してるような、そんなギャップがたまらなく可愛いと思うんです。
だからこそ、これからも少しずつでいいから、自分の“女の姿”も受け入れていってほしいですね!
読んでいただき、ありがとうございました!