暗黒期に『アエデス・ウェスタ』を観せるのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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これでようやくアエデス・ウェスタを観せたいが完結です。



英雄になりたい

 

 オラリオは混沌に包まれた戦場と化していた。かつての平穏な街並みは見る影もなく、冒険者たちは闇派閥やモンスターと至る所で激突を繰り広げている。

 

 剣戟の響きとモンスターの爪や牙が交錯する喧騒の中、猛者と覇者が中央広場(セントラルパーク)で熾烈な戦いを繰り広げていた。

 

「どうしたクソガキ。そのご立派な装備を身に纏ったぐらいで俺を倒せると驕ったか?多少テメェの外見や形を取り繕ったところで、出来上がるのはハリボテの英雄ぐらいだろうに……」

 

 眼前でボロボロになったオッタルを見下ろし、失望の声を漏らすザルド。

 

 そしてそれは、ダンジョンで戦うもう1人の覇者も同じだった。

 静寂のアルフィアはアストレア・ファミリアの精鋭たちを前に、失望を露わにしていた。

 

 そんな2人の語ることは、災厄を目にしていない者からすれば、馬鹿げているを通り越して狂気じみた話に聞こえるだろう。だが、少しは理解できてしまう部分もある。黒竜の脅威、その恐ろしさを知らずとも、七日前にはその片鱗をすでに目にしていたのだ。下界をすべて焼き尽くす原初の炎。その力なしでは討伐不可能とまで言われた黒竜。その討伐という偉業を果たせなかった敗北者が、今、目の前に立っている。

 

 これほどまでに強い存在が勝てず、蹂躙されたという事実に、絶望が胸中を支配する。

 だが、それでもと、アリーゼは武器を握る手に力を込めた。

 

「確かに、私達は貴方の言う通り、その絶望の深さを知らない。私達が貴方達を失望させるぐらい弱いのだってことも自覚している。でも、私達は諦めない!!!だって、そうじゃなきゃ、未来の英雄さんにかっこつかないもの」

 

 その諦めない心は仲間にも伝播していく。

 そしてそれは地上で戦うオッタルも同様だった。

 彼はザルドとアルフィアの失望に怒るでも、黒竜という絶望に恐怖するでもなかった。

 

「…………俺は自らの無様さに腹が立つ」

 

「なに?」

 

「貴様の失望も、黒竜の脅威も関係ない。俺よりも細く、俺よりも小さき者が傷を負い、それでもなお立ち上がり英雄たる偉業を成した。ならば、俺はどうだ?今もこうして敗北の汚泥に塗れながら、己の惰弱と脆弱を晒し続ける。俺は、貴様らの失望なぞよりも、己の無力を呪いたくなる!!」

 

「それで?」

 

「決まっている!!俺もあの未来にいるであろう英雄のように!!かつての英雄を屠る!!!すなわち、貴様に勝つ!!!!」

 

「────やってみせろぉ、クソガキがぁぁぁ!!!」

 

 地上とダンジョンで覇者を前に、冒険者は立ち上がり咆哮を上げた。

 しかし、絶望を前に吠えるのは冒険者だけではない。数多のモンスターや闇派閥と対峙する眷属たちもまた、絶望に抗うため、文字通り命懸けの咆哮を響かせた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 それは地上の戦場にいる冒険者たち全員の耳に響き渡った。

 そしてその咆哮の意味を悟る。死兵となり、特攻を敢行したのだということを。

 

「ノワールだけやない。オラリオ中の先達が、みんな死に場所を見つけて中央広場に集まっていく……」

 

 ノワールの咆哮に他のファミリアの老兵もまたこぞって自爆まがいの特攻を覚悟していった。

 

「死に損ないの老人ども!無駄な足掻きは止めろ!!」

 

 そんな老兵達の死の行進を、建物の屋上から姿を現したオリヴァスが唾棄しながら見下ろす。

 

「なんじゃ、白髪鬼(ヴェンデッタ)。そんな離れた場所からギャアギャアと小物(ゴブリン)みたいにやかましい!同じ白髪でも、あの少年とはえらい違いじゃな!」

 

「なっ!?なにをぉぉぉ~~~!!!死に掛け風情の老人が偉そうにぃ!!貴様らもあのガキに感化された口か!?くだらん、実にくだらん!!!老いぼれなんぞが英雄にでも憧れたか?」

 

 激高して吠えるオリヴァスの言葉に、ノワールは意気揚々と返答する。

 

「ああ、そうじゃ!死に掛けのジジイが最後の最後に夢を見た!!!童のような英雄に憧れる夢を!!!」

 

 悲愴の覚悟を背負っていながらも、ノワールの瞳には輝きがあった。

 生きること()を諦めても、巡らせること(未来)を諦めてはいない者の顔だった。

 

「死に損ないの老いぼれが恥も外聞も捨てて叫んでやる!!」

 

 ノワールはヴェンデッタへの嘲笑と共に(そら)に向かってその思いの丈をぶつける。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 まるで、英雄譚を読み終えた子供のように湧き上がった英雄願望。しかし、それを叶えるには自らの肉体は年老い過ぎていた。

 天の炎という外付けの人外ならざる神の力を持たぬノワールではいくら恩恵を持とうとも衰えを止めることは出来ない。

 それでも、あの日の夜、ノワールはその衰えによる諦念すら吹き飛ばすような衝撃を目撃した。

 

「だが、俺ではもう無理だ!だから、この願いは未来に繋げることにした!!」

 

「ぶはははっ!だな、ノワール。俺たちの後ろにはもう頼れる奴らがいる!」

 

「ああ、こんな老いぼれが命を懸けてもいいぐらいにね!」

 

 ノワールに続き、ダインとバーラも声高々に後続の為に『蹄跡』を刻まんと命を捧げんとする。

 

「ふ、ふざけるなっ……。貴様は、貴様らは本当に未来にあの英雄が現れるとでも思っているのか?」

 

 何処の神が流したか分からない意味不明な映像。オリヴァスは終始あの映像の内容を未来に起こりえるものだとは信じようとはしていなかった。

 ザルドとアルフィアという化け物のような2人が、英雄が生まれる街オラリオを破壊する。そんな先の未来に、あのような存在が現れるなど、オリヴァスには到底受け入れられなかったのだ。だからこそ、死にぞこないの老兵たちに現実を突きつけるため、声を張り上げる。

 

「ああ、そうだ。現れるわけがない!!見ろ、この嘆きと絶望に覆われた今のオラリオを!!!この先の未来で、ここから英雄が生まれるとでも──」

 

「『嘆きと絶望の時代は終わりを告げる!!これより始まるは英雄神話!!!』じゃったかのう?すまんな、本を手にして読むより、剣を手にして振るう方が多くてな!少々内容が間違ってるかもしれん」

 

「っ、そ、れは……!」

 

 それは誰しもが一度は読んだであろう童話『アルゴノゥト』に綴られる人類叛逆の狼煙を上げた瞬間の一節だった

 この街の冒険者ならば、それを読んでコイツに出来るのならば、俺にだって!と神から恩恵を貰いダンジョンに挑んだ者も少なくはないだろう。

 

「懐かしいか、ワシもこの言葉を思い出すことはここ最近無かったからな!」

 

「なぜそんなことを、今この状況で……?」

 

 意趣返しのつもりか!とオリヴァスが問いかける。

 だが、ノワールは皮肉な笑みを浮かべて応じた。

 

「なに、ただの真似事じゃい。あの英雄のようにな!!」

 

 一瞬、オリヴァスの脳裏に白髪の少年の姿が浮かんだが、すぐに振り払った。目の前の老兵が口にしているのは、ただの戯言に過ぎない。

 そう思いながら、オリヴァスはノワールを睨みつけた。

 

「くっ!こ、殺せえぇ!!相手は死に掛けの老いぼれ共だ!!モンスターでも死兵でも何でもいい!!!あの五月蠅い口を閉ざさせろぉぉぉ!!!」

 

 オリヴァスの号令に、調教師がモンスターをノワール達へとけしかける。

 ダンジョンに劣るとはいえ、無数ともいえる数の深層のモンスターの大群を押しのけるような力はノワール達は持ち合わせてはいなかった。

 だが、押しのける力はなくとも、道連れにするだけの手札はあった。

 

「────う、おぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 モンスターの爪と牙。闇派閥が放つ魔剣と矢が体を突き刺す。

 血が溢れ出し、痛みで意識が朦朧とする。それでもなお立ち続けることが出来ているのは、それでもなお立ち続け足搔き続けた英雄を知っているから。

 

「七十と少し、か……。まったく──、最後の最後まで、この街は俺に英雄の夢を見せ続けさせてくれる!!」

 

 敵から奪い取った火炎石を手にした。

 もう分かっているだろう。自分の物語はここで終わりだということに。

 そのことに何の不満も後悔もない。最後の最後で英雄に憧憬を抱けた、それだけで十分だった。未練があるとすれば、未来の英雄が後輩であるフィン達と共に冒険する場面を見れないことだろう。

 

「ま、死んで天界に昇った後にゆっくりとお前達の英雄譚でも上から見てやるわい」

 

 先に逝ってしまったダインとバーラと同じように、笑顔で手にしていた火炎石を炸裂させる。

 瞬間、凄まじい業火がノワールを中心に吹き荒れる。その炎は数多のモンスターを魔石ごと燃やし尽くし、まだ生き残っている冒険者の活路を切り開いた。

 

 それは主神や後輩、未来を託した戦車の(未来)を切り開いた。

 その代償として街には慟哭が響き渡り、それはやがて悲鳴となって、戦車を駆動させる燃料(怒り)へと変わった。

 その燃料によって戦車は光を放ち、全ての敵を踏み潰し、誰一人足を踏み入れさせない結界を築き上げた。

 

「勝ちやがれええええええええ、オッタル────ッッ!!!」

 

 戦車の上げる号砲は2人の強者の耳にも届いた。

 その声を──想いを受け取ったオッタルは目の前のザルドから距離を取った。

 

「どうした、クソガキ?今更臆した訳でもないだろう」

 

「──俺は常に独りだった。女神の為だけに戦う。それが俺の戦い方であり、遥か高みに至らんが為の唯一の手段であると結論付けていた」

 

「だったらどうした?いつまで女神(ママ)の為に戦う自分自慢か?」

 

「いいや違う。そうではない──」

 

 オッタルの相貌に今までとは違う色が浮かぶ。

 まるで、今の今まで見失っていた物を見つけたかのように。

 

「どうした、小娘共。これで終いなのか?」

 

 ダンジョンの18階層で病に苦しみながらも吐血しつつ、圧倒的な力の差でアリーゼたちを打ち倒すアルフィア。

 そのアルフィアの言葉に、アリーゼたちは息を切らしながら膝をつくしかなかった。

 いや、つくしかなかった筈だった。それでも、限界を超えて力を振り絞り、アリーゼは立ち上がる。

 

「────いいえ、まだ終わりじゃないわ!」

 

「ほう、まだ立ち上がるのか。その正義がどこまで続くか、見せてもらおうか」

 

「…………残念だけれど、今の私を立ち上がらせているのは正義じゃないわ」

 

「なに……?」

 

「……私は正義の神アストレア様の眷属。そのことに何の不満も後悔もないわ──」

 

「「一体何が言いたい?」」

 

 ザルドとアルフィアの言葉が、地上とダンジョンという離れた場所で重なる。

 そして、それはオッタルとアリーゼにも通じていた。あの光景──英雄の活躍に憧れたその想いが、2人の言葉を重ね合わさっていく。

 

「「俺は忠誠の為に/私は正義の為に」」

 

「「お前に/貴方に」」

 

「「勝つために戦っていた!!」」

 

「「だが/でも」」

 

「「今この時ばかりはその矜持を捨てる!!」」

 

 響き渡る宣誓の声。それは冒険者の、戦士達の誓い(ゲームスロー)だった。

 その誓いを耳にした瞬間、目の前の覇者の瞳が開かれる。

 

「「俺は/私は」」

 

「「あの英雄に憧れた」」

 

「「ゆえに/だから」」

 

「「俺は/私は」」

 

「「英雄になりたい!!」」

 

 それは、自らの心の内の吐露。言葉にすればただ一言の言葉だが、オッタルとアリーゼは明確にその胸の内を晒した。

 これまでの誓いや矜持さえも塗り替えるほど熱く胸に宿った英雄願望(おもい)が、目の前の強者に勝つため、そして憧れてしまった英雄になるために、その身を突き動かす。それはまるで火に油を注ぐ(ガソリンを撒く)ようなものだった。

 

 そしてそれは、その思いを聞いたザルドとアルフィアもまた同じだった。

 

「俺の前で!英雄になりたいなどほざいたな、クソガキぃぃぃ!!!」

 

「私を前にして、よくもまあその様なことを口にして見せたものだ」

 

「「だったら」」

 

「「お前の/お前達の」」

 

「「その英雄願望(おもい)が本物かどうか確かめさせてもらおうか!!」」

 

「「こい!()が英雄の作法を教えてやる!!!」」

 

 そう言い終わるや否や、2人の強者が駆ける。

 毒と病、互いに強力な制約ともいえる枷を持っているにも関わらず、動きのキレが格段に上がった。

 英雄を目指すと公言したのだ、ならば壁として立ち塞がるのが先達の役目──そう燃えているのだろう。

 

「っ!このバカリーゼ!!敵を強くしてどうするんだよ!!」

 

「ごめんね、ライラ!でも、大事な事は包み隠さず言うべき。私はそれをあの小さな英雄さんに教わったもの」

 

 先ほど血を吐いた時と変わらないか、むしろそれ以上の動きを見せるアルフィアを前に、ライラは愚痴をこぼす。反省の色を見せないアリーゼだが、英雄に憧れたがゆえの行動だったと言われてしまうと、ライラも黙らざるを得ない。

 今こうして闇派閥の最大戦力との戦いで少々レベル差がありすぎるものの、それでもこうして1対多数をこなせる要因となった英雄の活躍を理由にされてしまえば、文句も言いにくい。

 

 オッタルの方もザルドの動きのキレが戻ったことに無意識に微笑みすら浮かべている。

 だがそれもここまでだ。すでに自分の限界が近いのは当然のこと、ザルドも動きのキレを取り戻したと同時に、毒の進行を早めてしまっている。

 

 だから、次の一撃が正真正銘の最後となる。

 

 互いに紡ぐ魔法の詠唱を聞きながら、魂すらも燃やして力を増幅させていく。

 女神の為に、倒れていった者達の為に、目の前の敵に勝つ為に、何よりも英雄になりたいと願ってしまっている為にも、ここで負けるわけにいかない。

 

「【ヒルディス・ヴィーニ】!!」

 

「【レーア・アムブロシア】!!」

 

 互いの最強がぶつかり合った。

 

 オラリオ全土を揺るがすような衝撃が走る。

 それで多くの者が悟った。決着が着いたのだと。

 

 築かれていた氷の結界たる氷壁が崩れ落ち、そこから誰かが歩み出てくる。

 そこから出てくる者がザルドだと疑うこともしなかった闇派閥だが、黒煙が晴れた先に姿を現したのは【猛者】オッタルの姿だった。

 今この瞬間、オッタルは正真正銘の最強の冒険者にして、堕ちた英雄を下した英雄としてその名を連ねることになった。

 

 

 

 そして場面は移り、地上からダンジョンへと舞台は移る。

 ダンジョンの18階層、そこでも決着が着こうとしていた。

 

 英雄だった。己の短き命すら削りながら先の道を作るために、その身を英雄として輝かせた。

 それはまるで、あの日の夜に見た英雄のようですらあった。

 

「同じ白髪だし、魔法も同じ無詠唱魔法。もしかして家族だったりして?」

 

「だとすればどうする?」

 

 アリーゼの疑問に間を置かず、アルフィアは肯定に近しい答えを返す。

 

「噓っ!?本当にあの子と家族だったの!!」

 

「おい、頼むから気の抜けるようなことは言わねえでくれ。死因が仲間のおふざけで油断した結果なんてシャレになんねえぞ!!」

 

 驚きを口にするアリーゼに、ライラがブチ切れながらツッコミを入れる。

 確かに、そんな死因がまかり通ってしまえば笑い話にもならないだろう。だが、そのおかげで先程の英雄との家族関係があったというショックから立ち直れたのも事実だった。

 そして、アルフィアの衝撃告白に脳も追いつき、1つの疑問がリューの中に湧く。

 

「しかし、だったら何故このような真似を!?未来に英雄が現れると、それも貴方の家族がなると知っていて、何故?」

 

「何故?何故と聞いてきたか小娘」

 

 表情こそ変わらないが、声色に変化が起こった。

 先程までよりも底冷えするような声で、リューの疑問に答える。

 

「貴様に分かるか。この世で最も守りたい存在が未来で英雄なんぞになることを確約されてしまった私の気持ちが……」

 

「それは……」

 

「誰も彼もが英雄信仰に酔いしれる。私自身もだ……。だからこそ、妹の子が英雄になると分かった瞬間、私は酷く落胆した。まだ幼いあの子が立ち上がらなければならず、傷つかなければ救えない世界に、何の価値があるのかと嘆いてしまった」

 

「アルフィア……」

 

 アルフィアの言葉に、その場にいた誰もが言葉を失う。だが、だからといってこのままオラリオを滅亡させる訳にはいかない。

 だからアリーゼはその間違いを正させる。

 

「大切な子を守るために、貴方はあえて悪を演じた。それはよ~く理解したわ!でもね、だからって自己犠牲なんて絶対にダメ!なんで昔の英雄ってのはわざわざ悪党を演じてダークヒーローになりたがるのかしらね?」

 

 まるで分らないとばかりにアリーゼが首を振る。

 確かに、英雄とは往々にして自己犠牲的な行動ばかりしてしまうものだ。それは誰かを守りたいという気持ちから生まれるものであり、自分が矢面に立ち様々な困難や悲劇を乗り越えてこその偉業なのだから。

 でも、それで全員が全員納得するわけはない。

 

「それはエピメテウスのことを指しているのか?」

 

「それ以外にあるかしら?最初は世界を滅ぼして黒竜を討つ!なんて聞いた時は神様たちの言うところのヤンデレかな?なんて思ったけれど、実際は貴方たちみたいに誰かの為の行動だった。でも、だからってはいそうですかと納得する訳にはいかないわ!」

 

 アリーゼの言葉に、アルフィアの雰囲気が若干ながら和らいだ。

 

「ならどうするつもりだ?」

 

「決まっているわ!前言撤回なく、初志貫徹!!私もあの英雄君みたいに英雄である貴方を!英雄である貴方を破壊者じゃなくて、英雄として倒す!それが私の出した結論よ!!!」

 

「ええ、そうですアリーゼ!」

 

「頭の固い英雄様をブッ叩いて、オラリオを救ってやろうぜ!」

 

「ついでに、あの生意気で余裕ぶった顔もぶん殴れるんやったら、万々歳やね!」

 

 アリーゼの言葉にリュー、ライラ、輝夜も気合が入りなおす。

 ここにきて更なる覚悟と決意、そして英雄たる己を超えんとする意思を見せる小娘らにアルフィアは無意識に笑みを浮かべた。

 まあ、可愛い甥を引き合いに出したのは少々イラつきもしたが、及第点だ。

 

「正邪の決戦。まさにあの夜に見た光景そのもじゃないか!いいぞ、小娘共!貴様らが英雄に憧れ、その憧憬を叶えんとするならば私に見せてみろ!そして願わくば、私の愛しいあの子が英雄に至る前に救世を成し遂げてみせろ!!」

 

 告げられた雄叫びに皆が武器を強く握りなおした。

 戦いは加速し、アルフィアは最後の超長文詠唱を唱える。経験と才能による並行詠唱を止めることは不可能だったが、ライラの切り札が発動する。

 そして開かれる勝利への道。それを突っ切るのはアリーゼとリューの2人。

 結果はオッタルと同じく、本来の歴史通りの結末に終わった。

 

 傷だらけで血塗れとなったアルフィアは、満足そうな表情を浮かべていた。正義の強さを知りながらも、その正義の脆さについてアリーゼたちに説いた。

 その上で、最後の頼み事を彼女らに託す。

 

「お前達の正義と同じく……英雄を求めるなら、『最後の英雄』を、あの子がそうなる前に……頼む……」

 

 今までのアルフィアの人生で決して見せたことのない儚げな笑みを浮かべ、アルフィアはアリーゼ達にそう後を託してダンジョンの縦穴へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大抗争から7年後のオラリオ

 

「うわああぁぁぁぁ!!!!」

 

 オラリオの街中に、誰かの悲鳴が響き渡った。事件かと思い、周囲の人々はその方向に視線を向ける。そこには、1人の少年が駆け抜け、その背後を血走った目の神々が大勢で追いかけるという異様な光景が広がっていた。

 

「今のは……」

 

 白髪の兎のような少年が横を駆けていくのをリュー・リオンは見かけた。

 少年が通り過ぎる際に、リューの脳裏に過去の光景が浮かびあがった。

 

「ようやく来たのですね。私達の憧れた英雄が……」

 

「リオン!そっちで何か悲鳴が聞こえたけど、何か事件?」

 

「ええ、アリーゼ。とびっきりの事件がありましたよ」

 

 そして、本来の歴史とは違う。また新たな物語が巡っていく。

 

 

 

 




最近スランプ気味で執筆遅かったけど、盆休み期間に書き終えることが出来て良かった。
まだ連載中の『いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる』を執筆していくので、まだ読んでない人は読んで下さい。
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