メイフィールド   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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第10話「足を止めるな」

 膜の中に入った後、そこの先にすぐ段差があったせいで体のバランスを崩しそうになって。それだけで足を何度も地面の上で踏み込むことになる。一緒に小さく声を出してたら、僕よりも先に来てた兵頭彩芽の真横まで来ることになった。

 

 やっと止まれたところで、たったこの数歩だけで僕の靴の中に砂がいっぱい入っちゃってるのに気づいて、それのせいで足が重いのに気づく。それを抜こうとしたけど、すぐに向こうの方から「行くぞ」とだけ言われて。僕はただ「待って」とだけいいながら、すぐに足から砂を抜いてた。

 

 だけど、相手はその間ももう前に進んでで。いつの間にかさっきまで使ってた銃を消して、何度も砂の中にめり込ませながら足を進めてた。そっちの方を見るせいで上の方を眺めると、辺り一面が白と黒が混じった灰色っぽい砂の山々と、夜空とも晴れ空ともいえないみたいな、紫色の空だけ。太陽がどこにあるのかもわからないけど、この場所はどこも明るくなってた。

 

 そのせいかもしれないけど、この場所はどこにも影がなくて。僕が足を持ち上げたその裏側すらもそうだった。

 

 そして、そこを確認してた所で気づいたけど、こっちのも兵頭彩芽のもそうだけど、足が持ち上げたことでひっくり返った砂はさっきまで灰色だったのに、逆側は赤と黒が交じり合ったみたいになってる。

 

 でも、その色が見えるのは同じ色のがいくつかまとまり合ってる地面に落っこちた時だけて、その最中だったり上側の砂が下のに潜り込んでくみたいに滑って行った後は全く見えない。そして、やっぱりどこにも太陽がないからだと思うけど、それらは全然キラキラしてなくて。赤色になってたのがどこかに消えて行ったら、もう灰色だけになってた。

 

 兵頭彩芽の足取りがもう下り坂の方に接してるせいもあってその姿が見えにくくなってるせいで、僕が一瞬で終わるけど少し大きめの声で「待って」って言う。そしたら、もう砂山の影になっておでこの辺りしか見えなくなってる状態で振り返ってた。

 

 相手は特に何も言わない状態のままそうしてたから、僕も駆け足でまたその後を追うことに。山の頂点を超えたところで視界がだいぶ開けたけど、今まで見えてた物以外に新しく増えたものなんてない。辺り一面が同じ色の空と砂に支配されてるだけ。その状態で、左右をきょろきょろしながら兵頭彩芽の後を付いて行った。

 

「あの」

 

 何度も歩き続けたつもりなのに、後ろを振り返ってもまだ全然さっきの山が見えてる状態だったころ。だけど、ほとんどもうさっきまでの数歩しか赤い砂が見えなくなってる所で僕の方から声を出す。

 

 お互いにゆっくりとした息を吸ったり吐いたりしてる所で、僕の方からその沈黙に近いのを打ち破ったはず。だけど、向こうは前を見て歩くたびに頭をほんのちょっとだけ前後させてる状態を変えたりなんかしない。

 

 それのせいで、もう1回さっきよりも大きめな声で向こうに話しかけると、それに続けてやっと向こうの方から足取りは変えてないけど「なんだよ」ってだけ言う。

 それが途中を強調する感じでしゃべってたせいもあって。僕は言葉に詰まって「えっと」って言葉を逃がしながら視線を下の方で揺らすことになった。

 

「さっきの女子だけど……」

 

 最初の方の言葉を持ち上げながら、だけどそれが終わったところで一旦止めて、そこから声を小さくしてく。その間は一瞬だけ僕の足が止まりそうになってたけど、でも、向こうがそうしないので、すぐにわずかな小走りで後に続く。

 

 だけど、兵頭彩芽の方が足を止めてたせいで、結果として僕の方が前に出ることになる。そしたら、向こうは両方の唇に力を入れながら顔を横に向けてる。でも、その表情も喉のパーツも影で隠れてることはなくて。

 数回鼻の下の所を掻きながらまた足を進め始めたら、ただその姿を見つめるだけにしてた僕の横をすぐに通り過ぎて行ってた。

 

「諸葉だ、ドッペルゲンガーの時いただろ」

 

 ただ言い捨てるみたいに。さっきの「なんだよ」って言った時の方が力があったみたいな話し方をしてるその声に対して、こっちもほんのちょっとだけ声を出しただけにしてて。

 ただ少しだけ時間を開けることになったけど、でもすぐに声を出すのと一緒に、出た足をいつもよりも力を入れる感じで踏み込んだ。

 

「そうじゃなくて! 仲間なんじゃ」

 

 最初の一言は大きめに。だけど、それに続いて出た声は早口目に出してる僕の声。それが言い終わった後はまた兵頭彩芽も少しだけ足を止めてるから、僕が前の方に出ることになって。ほんのちょっとの落ち着いた声を出しながら振り返った。

 

 さっきの動きのせいで引っこ抜いた足には赤色の砂がたくさんくっついて来てて、そっちに視界を向けてたせいで相手の表情を見るのを忘れてて。すぐに見上げたらもう僕の横を通りながら「足を止めるな」ってだけ言ってた。

 

「あいつはもう臆病者の腰抜けだ」

 

 今度は遅れないで、相手の足取りについていく僕が後ろから追いかけながら見てるけど、その間も向こうはただ進行方向を見つめてるだけ。その結果、砂が赤い色に染まる姿を見ることが出来るのは僕だけになってる。

 

 それからはずっともう僕も何も言えないままになっちゃう。そのせいで、辺りで聞こえる音が2人の砂を足で掘り起こしてはそれが滑り落ちるのだけが聞こえるままになってた。

 

 しばらく歩いたころ、急に制服1枚の体が寒くなったような気がして、ポケットの中にあるスマホを取り出すと、電波が完全に届いてない表示を尻目に時間を確認するけど、そこにはまだ僕が宿舎を飛び降りた時から物の2時間も経ってなくて。そのせいでほんの少しだけ声が出る。

 

 それからラインを開こうとするけど、それと一緒に歩きスマホしてる僕の進行を止める感じで兵頭彩芽の手が前に出てて。それのせいで体がそこに押し込まれるみたいになったところで止まる。それから小さく「ごめん」と言いながらただスリープにするだけでまた同じ場所にしまいながらそっちが視線を向けてる方を僕も見てた。

 

 兵頭彩芽が腰を落としながら顔を前に出しているのに対して、僕はスマホを持った状態でポケットに手を入れたままにしてる。

 そのまま体をまっすぐにしてる状態でも、僕らが立ってる砂山の頂点に近い位置からだとほんとに指でつまめるくらいの大きさにしか見えない人と大きなトカゲ。それは何をするわけでもなく、乗られてる方が両手足を折り曲げた状態のまま鎮座してるだけにしてるのに対して、その上に乗っかってる人もただ手綱を持ったまま上半身と顔をこっちに向けてる状態。

 

 周囲に風が吹くこともなければ光が当たる場所が変わるわけでもないから、ずっと同じ光景をただ見下ろすことになる。向こうもこっちに対して何をしてくるわけでもなく首を上に向けた状態でいるだけ。イスラム圏にいる人がよく着てそうな顔以外を全部覆ってる服を着てるせいで、首を持ち上げてるの以外でその体はほとんど見えない状態。

 

 しばらくお互いに見つめ合ってるだけの時間が過ぎた後、向こうの方から先に動き出して。特に手綱を振るったりすることもなく勝手にトカゲの方から走り出してきてて。それのせいで、僕も何度も大きめの声を何の意味もないのに出しながら腕を振って走り出す。

 

 だけど、それでも最初は聞こえなかった大きくて低い足音がどんどんもっと大きく、音同士の隙間もなくなって。物の数秒もする前に向こうが僕らの進行方向を遮る形で横付けしてきた。

 

「アンタたち、どっから、来た」




読了ありがとうございます。
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