そっちもよろしくお願いします。
「代わりにお前が殺せ」
その言葉を聞いた瞬間、僕は何も息が出来ないまま、ただ視線を上下左右に動かすことしかできないままいて。口も中途半端に開けたままになってた。
でもその数秒間辺りで何かが変化することなんかない。ただその場で立ってるだけだし、そっちで僕のことを見下ろしてる穴の人も腰の上に両手を乗せたまま体を前のめりにして顔をこっちのに近づけるみたいにしてるだけ。
ようやくこっちの方から言葉になってないただ一瞬だけ出すことにしてる声が出るだけ。その後もただ口がちょっとの範囲で上下に動いてるだけだった。それから相手の方を見つめるけど、でも、目線があっても向こうは自分の膨らませた頬で目尻を持ち上げるだけだった。数秒間だけそれが続いた後、向こうから体を翻すと、すぐにステップを踏むみたいに飛び跳ねながらそっちにいるンウニュさんの方へと行くと、楽しそうな声を出しながら同じリズムのまま体を押し倒す。
された側もその間ただ脇を開けながら両手を斜め下へと落っことすみたいな姿勢をしてることしか出来てなくて。それのせいでそのまま穴の人のいいようにされてて。僕も遅れてそれがもう終わってるタイミングだけど、相手が体を傾けるくらいの勢いよく振り下ろした足がみぞおちを蹴ってる所でそっちを止めるために肩を掴む。
だけど、軽く肩を振るう感じの動きだけで軽くあしらわれて、また尻もちを突きそうになるのをこっちの魔法で押しとめる。
でも、その間も地面にうずくまったンウニュさんは、何度も喉を大きく鳴らすような音を立てながら呼吸も苦しそうになっちゃってて。穴の人もそれを上からまた見つめるだけにしてて。
だけどそれも少しの間だけ。僕が何とか立ち上がってそっちの方にもう1回だけため息を吐くと、相手もこっちへと振り返って来てた。だけど、それに気づいた時にはもう向こうが僕の顔を掴んで床にたたきつけるところまで来ちゃってた。
「じゃあお前から血をもらうことにする」
めいっぱい口の両端を伸ばすみたいにしてる相手の様子を見させられながら、小さめで僕にしか聞こえないくらいの声を出してるのを見たのも一瞬。
次の瞬間にはもう爪を立てて僕の制服から出てる腕に入り込んでて。それだけで痛みでそこはもちろんそれ以外の腕と足を思いっきりばたつかせながら歯も限界まで食いしばる。
だけど、その時にはもう敵がこっちの体に馬乗りになってるせいで体をよじったり足をバタバタさせても何も意味なんかない。それよりも、されてない方の手で何度も地面を叩くことしかできなくて。
何度も左右に勝手に動く頭を動かして何とか兵頭彩芽の方を見るけど、でも相手は突っ立ってるだけでこっちに対して何もしてくれなさそうだし、ンウニュさんの様子は敵がいるせいで何もわからない。
「わかった! わかった! わかったから!」
涙と唾液を辺りにまき散らしながら、開いてる方の手で何度も相手の手首を何度も力も入れられないまま叩くことで出た声で何度も何度も同じ音を出し続ける。だけど、それが出続ける間も全然大きさが変わらない喉からめいっぱい出すみたいすることに。
でも、それでも敵の攻撃は全然止まる気配もなくて。そのせいでこっちは馬乗りになられてるせいで、意味なくても体をえびぞりにさせるみたいにしながら何度も何度もそれから気づけば目に限界まで力を入れながらもも姉の名前を呼び続けてた。
続けて相手の指が入り込んでて僕の体の中の血の音がしてる所に手を当てようとさせられてたけど、でも、こっちは敵の手を掴むことになるだけで。何の意味にもならないし、それがどうにでもならなかった。
「ほんとにわかったんだな!」
「ほんとです! ほんとですから!」
敵がこっちの言葉を覆い潰すくらいの大きな声で応えたところで、それに間髪入れず、こっちも覆いかぶせるくらいの声で返事をする。それから勢いよく指が抜かれたところですぐに僕は体を横向きに倒しながら背中を丸めて。さらに血が溢れてる所に手を当ててそこを抑え込んだ。
しばらくは何度も息を吸い込む音を喉から出すことしかできなかったし、その間も数秒間に一度くらい、他の音がしない部屋の中で細かくすすり泣く音を立てながら同じタイミングで体を細かく揺らすことしかできない。
ただ自分のおでこを前腕を掴んでる所に当てるしか出来ない僕は目を瞑ってる。それでも、手の平に付いてくる赤くて熱い血の勢いは全然止まることがなくて。溢れたのが床にも触れてそこ一体がその色に染まってくのを感じてた。
「貸せ」
その言葉だけを一瞬言う兵頭彩芽が僕の傷ついた方の手を持ち上げるせいで、体もそれに続いて起こすことになって。それと一緒に出た声のおかげで、ようやく向こうがこっちのすぐそこにいつの間にかやってきたことに気づく。
でも、その間も腕の痛みが全然止まらない僕は何度も大きなうめき声を出しながら泣く声だったり鼻をすするのを止められない。
ただ、それに対して相手は何も言わずに魔法を使って僕の腕を止血していく。でも、それでも傷が治ることはないから、荷物を実体化させてそれの中から包帯を取り出すとそこに巻いてた。
「お前にとって桃香は桃香しかいねぇ。そうだろ」
包帯を巻いてる作業をしてる方を見たままにしてる向こうが発したその声に対して、こっちが何かを出来る訳でもなくて。ただ下の方を見たまま唇を少しだけ前に出しながらただ目が充血して熱くなってるのだけを感じる。
それからしばらくは僕も相手も何も話さないでいるせいもあって、ただ何度も穴の人が大げさな声を出しながら暴力を振るってる音だったりが聞こえてくる。
でも、それでも僕はただ兵頭彩芽がやってる手当を受ける以外には指同士の間だったり唇の両方だったりに強い力を入れるだけにしてた。
「うし、こんなもんだろ」
その声を出すのを聞いた途端、僕はずっと下に向けてた顔をはっとした息の音と一緒に持ち上げるけど、もうすでに向こうは僕の方を見てなくて。2人がいる方に向けて歩き出してた。それに続いて、こっちも両方の腕を落っことしながらいるみたいな姿勢で背中を猫背にしてるまま立ち上がることに。
でも、穴の人と兵頭彩芽の間から見えたその地面に横たわってちょっとだけ両方の腕をほんの少しだけ折り曲げてる姿だけを見たら、もう見てられなくて顔をそむけることに。だけど、向こうは今もこっちのことなんか気にせず歩いてるし、その直前に敵もそっちの方に視線を向けてるのが分かった。
「こいつに、そいつ殺させればいいんだな」
なんとか兵頭彩芽の方を見ようとするけど、その顎を引っ込めるようにしてる姿は確かに一度見えるけど、でも、それよりも先に顔が膨らみきった上に血と傷でもう誰かもわからないほどになってる様子。腕も足もおかしな方向に曲がってる姿、服のいくつものか所から血がにじんで溢れてるのを見るだけで口を開けたまま細かく上下に動かし続けることに。
そっちからは何度も高くてか細い息の音が何度も繰り返し聞こえているし、服が破かれているせいで胸元が何度も呼吸と一緒に上下に動き続けているのも見えてて。
それだけでしばらくしたら目を強く閉じながら顔を伏せちゃう。でも、それでも向こうの体からおしっこが出ちゃってる音ですらもこっちにも確かに聞こえた。
「じゃあ私がやらせる。その代わり私たちがストライカーを殺すのを手伝え」
その声を聞いた瞬間、瞼と同じくらいのペースで顔を上げると、もう敵が返事をしてて。それと共にこっちに向けて兵頭彩芽が歩いて来てて。それに対して僕はほんの少しだけ手を持ち上げながら、ほんのわずかな声で拒否しようとするのが溢れてた。
一緒に首を何度も左右に振ってるのに相手が進んでくる足取りは一切変わらなくて。すごい長い時間が経ってる気すらもする時間が経った後で僕の手首を掴む。その間もこっちは相手の方を見てるのか見てないのかわからないままに、限界まで目を開きながらそっちのことを見つめてた。
「何もしなくていい。私に任せろ」
両方とも腕を降ろした状態のまま互いに見つめ合う。でも、すぐに相手の方から僕のことを引っ張ると、そのままこっちも無理にその後を追うことになる。しばらくそっちの方から逃れようとするけど、でも、敵の横を通るタイミングでその目が会うせいで何も出来なくなっちゃってた。息もできないまま、結果として簡単にンウニュさんの倒れてる所の前まで来る。
体中が赤く腫れている上に血も溢れてるその姿を見てる間、僕は何もできないし、ただ言葉も失うだけ。兵頭彩芽もしばらくの間、その場に立ってるだけだった。だけど、向こうの方から一度「やるぞ」と言いながら今度はこっちの頭を掴んで倒れこませてきて、そのままンウニュさんの頭の左右に両方の手を突きながら覆いかぶさることになる。
「頼む、私、もういい、娘、娘だけでも、頼む、帰り待ってる、このままじゃ娘殺される、頼む」
そのわずかな、僕にしか聞こえることもないような声を聞いてる間も兵頭彩芽はただ「聞くな」ってだけ言ってて。それから肩に乗っけた手に力を入れられて。それに対して僕の方も何も抵抗できずにそのまま顔を下に向けて目をギリギリ開けてるくらいにして。肩を斜めに傾ける形で相手の体に馬乗りになりながらただ両手を落っことしてるだけに。
それから僕の手を向こうが持ち上げて来るけど、でもこっちはただ何も出来ずにずっと顔を首で左右に振ってるだけにしてる。その角度はずっとおでこを前に出す感じになりながらいたのもあって、勝手に目尻から涙があふれ続けてるはずだったけど、でも、それですらもこっちの顎を無理やり兵頭彩芽に引っ張り出されるみたいになって変えられる。
「いい加減目を覚ませ! 私らにはもう後がないんだ!」
向こうが大きな声で言ってる間、その勢いのせいで目を閉じることになるけどすぐにまた上瞼を落っことしたまま、下瞼を広げて相手のことを見ることになる。だけど、その間も僕の下にいるンウニュさんの声が消えることはない。
一方で、兵頭彩芽はずっと私に顔を限界まで近づけながらまっすぐに僕の様子を見てるだけ。手も同じくしたままお互いにお互いだけを見てるだけの時間が過ぎた。
一度放り投げるみたいにこっちの顔から手を離す。続けて、さっき実体化させてたままにしてた荷物を呼び出す。僕の耳元の通信端末をゆっくりと外すと同じペースでヘッドフォンを見に付けさせてくる。
「お前はただそうしてるだけでいい」
それだけ言ったら自分の手元のスマホを操作してる間僕の方を見てなくて。こっちはただ小さく口を開けるみたいにしながらそっちを見上げて。ほんのちょっとの声で相手の名前を呼ぶことになる。
だけど、次の瞬間、音楽ってよりは号令を何度も繰り返し同じ声を出し続けてるのが音がかすれる形で聞こえてきて。そこまで大きくなったはずなんだけど、突然それが早口目に何度も同じペースで何度か言葉を言った後にまた同じ音を繰り返すのが聞こえてから、僕も顔を下に下げることになって。
でも、それよりも勢いよく僕の手が兵頭彩芽の手も添えられてる状態で降ろすことになって。ヘッドフォンから聞こえてくる声も何度も何度も僕を鼓舞し続けるのだけをこっちに繰り返してくるけど、そんなのよりも僕も叫び声の方が大きくてどんどんそれがかき消される。
ただ叫ぶ。叫ぶ以外のことは何もしてない。
だけど、息が続かなくなったところで、ただ体の下に肘で折り曲げた腕を入れ込む感じで限界まで縮めて、床の冷たさだけを感じながらただ自分の体の細かい震えと喉が勝手にすすり泣く音だけを聞いていた。
読了ありがとうございます。