録音の再生が終わった途端、一斉にそこにいる人たちの視線がストライカーさんの方に集められて。その視線へと本人も顔と一緒に視線をゆっくりと左右に向けながら答えると、その間に自然と手から兵頭彩芽の体が落っこちてた。
そっちの方に僕も細かい足取りで寄りながら手を伸ばしてると、それと一緒に周囲の人々もストライカーさんの名前を次から次へと呼びながらそっちへと寄って来て。自然と僕らの居場所も狭まっていく。
ただ、その間も頭が痛いのか兵頭彩芽はおでこの辺りを強く抑えながら歯を食いしばってて。その間は視線を落っことしながらいるけど、それが終わるとすぐにまた立ってる敵の姿を見つめるみたいにしてた。
その一方で、僕はストライカーさんの方を見てるのか兵頭彩芽の方を見てるのか自分でもわからなくて。ただただ時間だけが過ぎることになってた。
だけど、目を強く絞りながら顔を下に向けて。そうして真っ暗な中を見てるだけの状態が続いた。そのまま何とか痛い足を立ち上がらせようとしたけど、でもそれだけで何度もせき込みながら目の中の熱さと重みを感じることになってうずくまる。
その場で何もできないまま、ただ辺りの人が行ったり来たりしてる足音だけを聞きつつ、その足の動きが立てる風の冷たさを感じながらそこにいることしかできなかった。
「ストライカー、こいつらは、敵なはずじゃ……」
そのゆっくりとした、言葉の1文字1文字を開けながら話すその声に対して、ストライカーさんの方は僕を見ながらも声を出せずにいた。
ただ、それは僕も同じ。うずくまった姿勢のまま相手の方を見てることしかできなくて。こっちも相手も大きな目を開けてることしかできなかった。
だけど、それも数秒間だけ。向こうはすぐに髪を払うような動きを頭でさせながら顔を少しだけ上に向けて。その状態で首を元の位置に戻す。それからそっちにいる人たちの方へと向き直った。
だけど、それで目を開いたのに続けて口を開けて声を出した直後、いきなり向こうの体が後ずさることになって。
それから、そのスーツの胸元に焼けたような小さな跡が出来上がってる上に、そこから焦げた煙が浮かびあがってて。それだけでそこを抑え込みながらストライカーさんは体勢を崩してた。
それに続けて、僕らのさらに後ろの方にいる人が大きな叫び声をあげだしたのが立て続けに起こった矢先、またストライカーさんの方から大きな音がして。だけど、今度のそれは本人が張ったシールドで攻撃を防ぐものだった。
「殺人だ! 殺し屋がいる! 殺されるぞ!」
しばらく辺りは唖然として誰も動けずにいたのに、兵頭彩芽が叫び声をあげた瞬間、辺りから続く悲鳴がいくつも聞こえ始めて、辺りにいる人たちが右往左往。誰もどっちに行っていいのかわからなくて人の動きがめちゃくちゃになってた。
悲鳴が聞こえる場所も血しぶきや煙や炎が立つ場所は何か所も増えて。それのせいでどんどん人々は真ん中に押し込まれるみたいになって。僕の体も他の人に押し込まれるようになると、それで視界が奪われたせいで体が潰れそうになりながら探す兵頭彩芽の姿はもうどこにもない。
肝心のストライカーさんも次から次へとさっきと同じビームがどこからか放たれ続けるせいで全く身動きが取れない。
それだけじゃない。そのシールドのすぐそばにいる人たちが少し離れてるこっちでも聞こえるくらいの大きさで、色んなこと言いながらそこを蹴ったり物を投げたりそれで殴ったりをしてて。それを見ただけで僕は眉をひそめながら下の唇を上のに軽く押し込むだけ。
でも、それを見ていられたのも短い間、どんどん人の波に押されるみたいになって。ストライカーさんがいる場所からはどんどん離れて行って、そっちに戻りたいのにとても先の人たちの方が大人で体格がいいから全然戻れない。ただ押し流されるだけ。
何とかしようとストライカーさんがいる方を見ながら両腕で掻きわけようとしてるのに、でもそれよりも後ろにいる人がたくさん倒れたみたいで、押し流される勢いでその足に躓いて倒れることになって。
人の上に尻もちを突くことになりながらその痛みに堪えようとした途端に今度は僕の手前にいた人がこっちに倒れてきて。その方が唇に当たってその部分が切れるし血があふれ出した。
その熱さと痛みに目をたくさんしわを作る感じで閉じるけど、でもそれよりも後ろの人が僕の方に倒れて来るのをみて、咄嗟に回避しようとするけど、体に魔力を貯めてたせいでそれすらできなくて。
ただ上に乗っかられたその重さで体の中の空気が一気に吐き出されそうなくらい重い声を出して。それで何度もせき込むけど、でもそう思ったらまた余計に重いのが来て。また同じ感じの声を出すことになって。
何度も何度も視界が途切れるせいで暗くなってる中で、何とか汗や湿気で苦しい中で逃げ出そうと這うけど、でも上にいる人が重いし暑苦しいしで全然息が出来ないせいでろくに動けないだけの状態が続いてた。
外の涼しい空気がようやく戻ったのに気づいたのは、それが僕の体に入り始めてからしばらく。僕の上にいた人の重みがまだ抜けなくて。それのせいでずっと動けない状態だった。その体がこっち上を滑ってくみたいに動いてる間、こっちは何もしないままただそこにいるだけに。
「もも姉ぇ……」
小さくそう呟いてからも、僕はただその場で下で多分気を失ってる人の上で、ずっとただ両方の手を肘で軽く折り曲げたままそこにいることしかできなくて。誰かが僕の足を引っ張ってどっかに持って行こうとしたところで、何度もせき込みながら呼吸を取り戻してた。
それからも、その人たちが何か言ってるのも聞き取れないまま、荷台の所に立てかける感じで座らされて。自分の口のほんの少し動きだけで呼吸をしてるのかしてないのかの感覚だけを味わい続けてた。
そのまま何も見てるのか、ただ引きずったみたいにだんだんかすれていく赤黒い模様の跡だったり、今もどこかから人のかすかだけどずっと同じうめき声が聞こえたり。僕のいる荷台に次から次へと荷物が乗せられるどさっとした音だけを聞いてた。
でも、まだ意識も怪しいけどでゆっくりと足を折り曲げてもう片方のもそれに続かせて。荷台の車輪で頼りにするために掴めそうな場所を探す。喉を引き締めながら何とか立ち上がろうとすると、続けて薄目を開けたまま左右に体を揺らしながら歩こうとした。
たくさんの人が辺りの人を運んでたりまとめられたりしてるのに、まだ地面の上に置きっぱなしになって倒れてる人達の様子があって、それだけで数歩後ろに下がりながら言葉になってない声を出し続けることになって。両方の手を持ち上げた状態でほんの少しだけ折り曲げてたら、そっちにあった荷台と体がぶつかる。
それからもそっちをただ僕は首を折り曲げてそこに転がってる人間の死体を見下ろすだけになって。それだけの時間を過ごしてる間、周囲で作業してる人たちも声だったり助けを求めてる人の声を耳で聞くだけになってた。
魔力をたどって歩いて行こうとしてる間、たくさんの人達の群れとぶつかりそうになって。それだけで体の向きを変えて狭い隙間に無理やり入りそうになったりするし、息が苦しくなったりする。だけど、切り抜けた後はもうそっちの方は振り向かないでゆっくりと足を進めるだけにしてた。
周囲では今もどこかで急に周囲を切り裂くみたいな高い声が聞こえたり、それに伴った建物が倒壊する音だったり、それで砂煙が起きたりしてるはずの音が聞こえたり。だけど、その間もそっちの方を見る訳でもなくて、ただ僕はまっすぐ正面に向けて歩くことだけを続ける。
だんだん魔力を濃く感じるようになったところの十字路で足を止めて。そこで顔の向きだけを使って左右を見る。でも、そっちの方で子供を抱えるみたいにしながら体をかがませて走る人や顔を下に向けたまま歩く僕よりも背の低い子がいたり。
年寄りの人が周囲に怒りながらいる様子だったり、空に向かって笑いながらいる人やスキップしながら歌って歩いてる人もいる姿。それ以外にも建物の窓やその中にある物を壊して回ってる人まで。
しばらくそっちの人たちの様子を見た後、目を大きく開けた僕が今まで使ってたストライカーさんの建物に続く道をまたまっすぐに進んでた。
その間、僕はただ目の端っこの方だけをほんのちょっとだけ落っことしてるだけ。それ以外の顔のパーツには何も力を入れないで。足を動かすペースも変えないで、少し進んでまた魔力を探ってを繰り返してた。
「ストライカーさん」
そっちの方に小走りをしながら近寄るのに対して向こうはとっさの声で「隠れろ」って言いながら向こうはこっちの口元を覆いながら背中と前の体をくっつける感じにして、建物の裏に隠れることになる。だけど、それも数秒後の所だけ。向こうの方からこっちの体を押し出すと、そのまま地面に崩れて片膝立ちになってた。
ただ、それに対してこっちも両方の手をそっちに寄せながら「大丈夫?」とふとして出た声だけ話をかける。
それに対して向こうも顔は下に向けたまま同じ姿勢で片方の手のひらだけを見せてくる。そのまま何度も肩でする息をこっちにも聞かせて。僕はずっと同じ姿勢のまま相手のことを見下ろしてた。
少ししてストライカーさんの呼吸がようやく収まったころ、まだ完全に姿勢を直せずにいたけど、体を少しだけ傾けて大通りの様子を確認。そっちでは今までストライカーさんが住んでたし僕も入れてた建物がただ真上に向かって立ってるけど、僕らがいた部屋の窓は首を上まで伸ばしてもとても見えそうにないくらいの高さ。
城壁ですらもすっごく大きいし石が積み重なってるみたいに見えるけど、それらを登れるくらいの高さまでよじ登れるとっかかりがあるようには見えないし、何なら門の所には見張りが槍を持ってる状態でまっすぐに立ってる。
もう一度ストライカーさんの方に首だけで振り返る。そっちは今も肩で息をしてる上にその状態で下を見てるし、肩膝立ちになってるはずなのにそれでも貫かれて血が溢れてる場所がいくつも見えてる。
ただ、その場所ですらも、というより建物同士のわずかな隙間にいる僕らやこの小道とも呼べない細い建物同士の隙間ですらも、一切暗くなることはなくて。全部明るいまま。影なんて1つもない。
しばらくそっちの方を見てるだけにしてたつもりだけど、視線を大通りに戻す。そっちだと、人が右往左往したせいかもしれないけど、外の砂漠の砂がかすかだけど残ってるみたいで、白い石畳の上にひっくり返って赤くなった砂まばらに見えててそこに色を確かに作ってた。
そっちからもう1回ストライカーさんの方に視線を戻したら、そっちでは相手の頭に銃口を当ててる兵頭彩芽がいた。
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