四角くはめ込まれるみたいになってる分厚いアクリル板の向こうにいる前にいる、前会った時兵頭彩芽の人質にされてた女子は、僕の話が止まったのに気づいたみたいで。ただ何度も何の意味もない言葉を繰り返しながら、息を吸って顔を横に向けて両方の手を組んでた。
その一方で透明張りになってるドアや壁の向こうにも防護服を着てる大人の人がたくさんいて僕の様子をそっちから見てる。その人たちの表情を見たいけど、皆着てる服が頭まで完全に覆ってるせいで顔のパーツはおろか頭の形すらもこっちからは見てなくて。ただそこに並んでる様子だけがある。強いていうなら頭の形が変わってないのと銃を手にしてるのがわかる程度。
今もアクリル板の向こうにいる女子が両方の腕を組んだまま顔を下に向けてるだけにしてるのを一瞬だけ見ると、またそっちの方に並んでる人たちの様子を左右に視線を流すみたいに向けることで見つめ続けてた。
僕がいる部屋が正面の壁以外には全部廊下と面してる上にそれらの全部がガラス張りになってるせいで、こっちは自分の体と座ってるパイプ椅子以外は全部影になってない状態が見えてる。
だけど、その一方で、目の前の部屋は見えてる範囲だと天井に取り付けられてるかさつきのランプに照らされている物しか灯りがない。それの上にこっち側にへこみが出来上がる感じで分厚い壁があるせいで、相当薄暗くなってしまっていた。
こっちが相手の様子を見る間にも、向こうはもう一度鼻から息を吐いて下を向いてる時があり、それはこっちには取り付けられてるスピーカーから聞こえて来てた。
こっちからだとある程度距離があるせいでいまいちちゃんと見えないけど、でも、向こうは今も目を開けてるのか閉じてるのかわからないくらい瞼を降ろしたままいる。
一方でこっちはただ膝の上に両手の乗っけたまま肘を左右に広げるくらいにしてる。そんな中で、ただただ静かな時間だけが過ぎる中、周囲の人の様子を見終えた後は、また背中を背もたれに預けるみたいな姿勢のまま相手のことを見つめ続けた。
「もう、彩芽が生きてる可能性はないんだな」
言葉を1つずつ選んでくように話してくその声がしたのは、こっちの話が終わった後数秒経った先だった。ただ、自分の顎の所に手を当てて親指を細かく動かしてながらその言葉を発してる相手の様子を見てる時間だけが過ぎる。
「薫子って人が、確かに殺してた」
向こうの言葉が終わった後思った後一拍だけ置いた後に出た僕の言葉を聞くや否や、強くため息を吐きながら体重を背もたれに預けながら深いため息を吐きつつ顔を下に向けてた。それから、手を自分の鼻の先端の辺りを摘まむ辺りに持ってきてる。それから何度も向こうの人は自分の手を目に当てるのを繰り返してた。
ただ、その間もこっちはパイプ椅子に座ったままただ向こうの声をマイクが拾ったやつが流れて来るのを聞くだけになってた。それから数分くらいかどうかはわからないけど、ただただ時間だけが過ぎていくのを感じてた。
一度瞬きすると、僕と女子の間にあるアクリル板にもこっちの背中側の様子が反射してて。それに気づいた途端、少し離れた場所にいる上に座ってるその人よりも、立っている皐月宮の学園証がプリントされてる防護服を着た人たちの方が大きく見える。
「彩芽は、あれでも私にとっては友というべきか……」
自分の膝の上に片方の肘をついた状態でさらに上に向いた手のひらの上におでこを乗せてる。そのまましばらく動かない相手の様子は、僕からすればアクリルが少し上の方にあるせいで表情を見えないままいるだけになってた。
ただ、それでも相手は一切お構いなしに、言葉を出しては一気にぶちまけて。それが終わったら数秒間開けてからまたその続きを話すみたいに。だけど、それでもこっちが見える範囲が変わることもないし、ずっと同じ表情のまま相手を見る以外に何かが変化することもない。せいぜいたまに目の瞬きがあるくらい。
実際僕の視界の中に見えてるこっちの部屋の真っ白な壁だったりその色に染まらない唯一の範囲になる僕の斜め前に伸びてる影が動くこともない。それはまるで僕の体よりも大きく伸びてる感じで、アクリルがない分厚い壁の上にただ座ってるこっちの姿を映し出してた。
「すまない、関係ない話だったな」
一度口を結びなおすみたいにしながら何度も目元を拭った後に立ち上がって相手はこっちの方を見ないままに立ち上がって。それの勢いが余ったのか、向こうが座ってたパイプ椅子が倒れる音がマイク越しにこっちにまで聞こえてた。
そのまま同じペースで進んで行く姿が見てたのはほんの一瞬。その足音はもちろんのこと、壁の向こう側に消えた後はこっちからも見えなくなってた。それからは、僕の視界に見えてるの物の中で動いてるのは壁の向こうで見つめ合うみたいにしてる防護服を着てる人たちの姿だけ。ただ、それで体が壁にぶつかって揺れてもその音がこっちにまで聞こえてくることはなかった。
コロコロをやったり機械から噴出される風を浴びたり、今まで着てた制服を捨てたりして。それから防護服を身に着けてる人たちと会うことになった。
一番近くにいる人の方を首の向きだけを変える感じで見つめながら、僕が「これで終わり?」と聞くと、向こうはただうなずくだけだった。
それから顔を正面の方に向けると、何度も軽く謝る声を上げながら人の隙間を縫う感じでさっきもアクリルの向こうにいた女子がこっちに現れて。それと一緒に勢い余ったみたいに体を前のめりにしながらバランスを崩しつつこっちの前に現れつつ数歩片足だけで前に進んでる。
ただ、それに対して僕は首だけを使って顔をほんの少しだけ下に向けるみたいにしながら相手の方を見つめるだけにしてる。その間特に表情も変えないまま、相手が体を普段通りの角度にもどすのに合わせてこっちも相手のことを見る。
ただ、その間お互いに話さないままの時間が過ぎた。こっちも相手もただ数秒間だけ静かなまま、防護服も付けないで見つめ合ってるだけ。お互いに同年代にしては低めな身長なのもあって立ってるだけで目線がそろってた。
「お前が桃香と暮らせるように計らう。我が責任をもってな」
1回向こうの方から視線を逸らしつつ息を鋭く吸った後また顔を上げて。それと一緒に、今度はさっきまでとは違って言葉をまっすぐに言う感じで話してる。その間向こうは眉をほんの少しだけひそめさせる感じでいて。それに対して僕はたださっきまでと変わらないまま見てる。
一方で、相手の少し後ろの方で今も防護服を着たままいる人たちは女子の所からは少し離れたところで僕らのことを見てるのもあって。その2つの間にはある程度の距離が出来てる。だけど、それに対して僕が何もすることがないし、こっちの後ろにはかなり近い場所で立ってるのにも気配で気づくけど、そっちには魔力を全く感じないのでそのままになる。
「それが彩芽へのせめてもの手向けになる」
一度話し始めた後また顔を横に向けながら口を紡ぐ。でも、話してる途中だったみたいでまた口を開けたけれど、そこで何を言うでもなくただ、またすぐに口を紡ぐ。それから、数秒間またお互いに話さない時間が過ぎてから、向こうが残った言葉を早口目に進めた。
それからはもう「もう行く」とだけ言ってから、女子が素早い早歩きくらいで肩を持ち上げつつ顔を下に向けて歩き出してた。今度はそっちにいた人たちが素早く足を動かす感じで一歩後ろに下がっていくことで、そこにいる人たちも彼女が通る道を作る。
僕はただ両方の手を下げたままそっちの方を見てたけど、ただ立ってるだけにしてる体が少しだけ前に押し出されて。
その次の瞬間に、向こうがこっちの体を後ろから抱きしめてるのに気づいた途端、目を大きく開けながらいて。両方の腕を斜めにする感じで僕を抱きしめてるその手にこっちも重ね合わせようとして相手の手同士が重なってる場所に自分のも近づけた。
「メイちゃん……」
声だけで伝わるそれを聞いてる時、僕の体へと入れる力が強まってるのを感じてる時、こっちの方の所の傍にある顔の口から溢れる呼吸の生暖かい感覚を味わっている。しばらく僕は、ただずっと同じ感じの表情でいるだけになってた。
一方で、僕ら2人以外は女子の帰る後に続いて次々とさっきまで僕がいた部屋の周囲の廊下を歩いていく感じでどんどんこの場所から離れてく。結果として、この場所にはたった2人だけが残された。
四角く切り抜かれたみたいな通路と部屋から浮き出るみたいになってる黒い柱。僕が立ってる場所から正面側に伸びるみたいになってる2人の影は重なり合ってるけどその頭部は部屋の中に消えるよう。
ただ、相手が体を細かく震わせるみたいな動きをしながら鼻をすすってる音をこっちまで聞かせてる間、僕はだんだん唇の両方を潰すみたいにしながら頭を前のめりにして。ただそこを開いてはいるが閉じる直前くらいの範囲だけを開けてる状態で何を見ているのか自分でもわからない形で瞼を開いてる。
さっきまで相手のに近づけるために自分の手を止めたままただほんのわずかに指を折り曲げた状態でただそこにいるだけにさせておく。辺りではもうほとんどの職員の人がそこからいなくなってて。どこかで聞こえてた足音が少しずつだが確かに小さくなって行くのを感じる。
どこかの廊下で歩いてる音がほんの少しの反響だけが残っている。今まで人がいたこの場所は思ったよりも広くて空気が籠ってる感覚がしないし、周囲の感覚だけで僕がさっきまでいた部屋と同じ部屋がこの場所ではいくつも並んでる。
一方で、部屋の電気がもうすでに消されてることもあって、そっちの方の暗がりがこっちにまで届いていそうになってた。
「ごめん、ごめんね……」
「大丈夫だから」
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