皐月宮の寮の戻ると、部屋の中の最初の方は青い月の灯りと薄暗い夜の闇の中に支配されてる様子が見えてる一方で、僕が今いる玄関はそうなっていない。
物だらけになってる部屋の方は本部がそびえたってる所に今も電気が付いてるせいで、その灯りを浴びることになってるせいでその一部が今も明るくなったまま。
一旦荷物を玄関におきっぱにしたまま家の中に進んで行こうとするけど、それで足を出来るだけ足を大股にして、そっちの方を見ながら慎重に進めてるはずだけれど、でも足を降ろすたびにそれが硬い物を踏んでこっちに痛みを訴えてきたり。そうじゃなくても柔らかい布を踏んでそれを足で押し込むことになった。
だけど、それに対して、こっちが何かをすることもなくて、そのままベッドの上に体を投げる。倒れ込んでうつ伏せになりながら、顔だけを部屋だったり窓がある方に向けたままに。その顔と平行にする感じで手をベッドの上に投げ出してる。
肘の所で少しだけ折り曲げてるけどそれ以外の場所ではただ力もなく伸ばしてるだけだった。
僕の前に広がってるのはどこかでヘリコプターが飛んでるみたいで、遠くのそれがサイレンを鳴らしてる音だったりサーチライトを照らしてこっちにまで光を届かせてるのが入ってきたりする。
だけど、それが僕の部屋の様子を明るくするのはほんの一瞬のことだけで。その時見える物なんか何もないというか、視界がただぼやけてるのを感じるだけ。
でも、外から聞こえてくる音以外でこの部屋の中で聞こえる音がしたのは、僕がいきなりベッドの上で体を立ち上がらせた時で。それと一緒に床の安全そうな場所を一瞬だけ見た後に降りて。それから近くにあった漫画を一気に掴んで本棚まで一気に寄る。その間に拾えた奴だけ拾って、背がでこぼこのままそれを1回で本棚の中にすべて入れ終えた。
また、それが終わってから体を翻しながら足でその辺にあった物を滑らせながらまた近くにあった漫画を拾う。それは概ね同じやつがだいたいひとまとめになってたから、おそらく2巻ほど足りないけど、でもそのままそれを突っ込もうとした。さっきのの横に入れたら指を入れる隙間もなくて、降り曲がりそうになる。
続けてまた別のやつがまとまって山になってたやつが見つかったからそれを体を前のめりにしながら突っ込もうとしたけど、もう開いてる段には入らないから、前ののさらに前側に置くことにして。自然と次から次へとそこに突っ込んでたら早々に前側も指が入らないほどに詰まる。
気づいたら、一番最初に入れた漫画の足りなかった巻が前の側に入ってたけど、でもそれよりも今は床に出来上がってた山をゴミ袋の中に入れることを優先した。
それを押し込んでく感じで中へと入れて。ある程度入ったところでそれを立ててからまたその辺にある物を次から次へと放り込むことにする。終わったと思った頃にはそれを縛れないくらい入ってたので口をテープで止めることになってた。
ゴミ捨てから戻ってくると、部屋の中は勉強机や本棚やベッドなんかの家具があるのとそれに入りきらなかったものが上に乗っかったままになってる部屋の様子を一瞥。その間も僕はただ上の瞼を少しだけ落として皿のような形にしているだけだった。
途中で閉めたシャッターのわずかな隙間からこっちに太陽の光が入り込んでるのが見えるけど、それ以外にこの部屋を照らす物なんかなくて。その中で埃が舞ってるせいで何度もそこでせき込む羽目になってた。
だけど、それが収まって数秒の間だけは顔を下に向けたまま膝を曲げたところに両手を乗っけたままいるだけにしてる。でも、すぐに壁を何度もぶつかりそうになるのを手で受け止めながら寮の同じ階にあるトイレの中に走って入ると、個室のドアを閉めるよりも先に自分の顔を便器の中へと突っ込みながらその便座を両手でつかむ。
何度も喉から大きな声を出しながらせき込んで。それで喉が低い音を長く鳴らすのがトイレ中に響き渡って。それがようやく収まったころ、僕以外にもここに人がいたみたいでその人が外に出て行く足音が聞こえる。
だけど、それが消えるよりも先に僕が唇からこぼれるみたいな感じのゲロを吐くことになってた。それが次から次へと出てくるせいで、この場からしばらく離れることが出来なかった。
「メイちゃん」
輸送用のトラックの荷台に乗って左右を見渡してる僕に対して、もも姉が体を少し前のめりにしながら隣の椅子の座面を力入れないで叩く。それから口の両端にえくぼを作りながらこっちの方を見上げる感じで見つめてた。
一方で、こっちはただその声に惹かれるまま、数秒間してから歩き出す。そして、両方の手のひらを両側の隙間に置くような動きをしながら椅子の上に座り込む。それのせいもあって、尻を乗せる直後にもも姉が指の部分だけだけどこっちのと向こうの重ね合わせてくる。
それで互いの体温だったり手に残る湿気だったりを味わうことに。だけど、それでも数秒間そっちを見て1回瞬きしてからまたもう1回正面に視線を戻すことに。上の瞼を軽く落っことしたまま両方の唇の端っこを下げてる。
車が発進しだしたところで、もも姉が僕の手を一瞬だけぎゅっと握って来て。それだけで向こうが軽く「ごめん」って言ってきた所で、こっちも咄嗟の感じで「ううん」とだけ言う。それから、向こうがまた自分の方に手を戻すのを視界の端っこの方で見てたら、こっちも自分の手を太ももの上に乗せて、ただそれだけを見つめてた。
ただ唇だけを強く紡ぎながらいるその動きを止められたのは、トラックが動きを止めた時だった。最初は何も気にしてなかったけど、もも姉も「どうしたんだろう」って言いだして。
それがあまりに長いから他の大人の人が外に出て行ってるのを見るなり背中を折り曲げたまますぐに立ち上がって出口の方を見つめる。続けて大人の人たちの後を追ってすぐに外に出た。
空気が外に出て篭らなくなったのもあるかもだけど、自分の方から一気に口から外に空気を出すみたいに大きなため息を出す。それと一緒に周囲を見渡して、いつの間にか皐月宮とは全然違う建物が遠くにいくつか見える以外はただ田んぼが並んでるだけの光景が広がってて。
それ以外にあるとしたら僕らの乗ってたトラックだったりがそっちにあるのだったり、そして僕自身の黒い影が見えてるのだけ。
数秒間だけそっちの方を見てたけど、トラックのエンジンがまだ動いてるのだったり、正面の辺りで大人の人たちが話してるのよりも、こっちが足を前に進める音の方が全然大きくて。その音を聞きながら前に進む。その間、ただ上の瞼を皿みたいな形にしながら首を前に出す感じで歩いてた。
そしたら人同士の間から少し離れたところに1匹の牡鹿がいるのが見える。それは角も雄々しく上の方で広がっているけれど、ただこっちを見ている時もあればそうでない時もあって。見てない時は空をただ見つめてる時もあればその辺に生えている植物を食べている時もある。
目の前にいる人たちは僕なんか相手にせずにずっとお互いの様子だけを見ながら話してる。ただ、こっちは鹿の様子を眺めているのも数秒間のみ、すぐに自分の手元にヨーヨーを召喚するとそれを手にすることもしないでただ出した紐を自分の指に絡めるだけにした。
別の次元から戻った僕は電気がついてない部屋のなかで、背にしたゲートの光だけを頼りにして立ってた。それの結果、僕の体はもちろん、降ろした片方の腕の先に持ってるストライカーさんの生首もまっすぐに伸びる影を作ってる。それはこの部屋が閉じられてる間は向こう側のドアの上にも浮かび上がってたし、開けられてからはその先にも伸びてた。
防護服を着た人たちが銃を構えたまま次々に入ってくると、赤色の砂ぼこりにまみれた僕の制服だけじゃなくて、光をなくした金髪もその顔の部分に反射してるのが見えた。
「終わった」
そう言ってからまた腕を組んだまま僕は椅子の上に座って体を傾けながら眠ってた。その間、ただ車が走ることで体が揺れる感覚だけを味わい続けてた。
今回で最終回です。
ここまでありがとうございました。