胸とお腹の間くらいの位置で手を重ねたまま背中を少しだけ曲げてる。力を入れずに折り曲げた左手の上に右手を重ねるみたいにして、それの人差し指を小さく上下に動かし続けてる。呼吸が小さく出たり入ったりしてるのを上と下の唇両方で感じてた。
僕のすぐ横にあるドアが開いた途端、ハッとしながらそっちの方を見て、重ねてた手同士を放して胸の横くらいにまた力を一切入れずに握ってる状態でそっちの方を見る。一緒に背筋もまっすぐに。
そのまま言葉になってない声をなんとか言葉にしようとしてるんだけど、何度も同じ音を繰り返すだけで。そのまま顔をそっちに向けられてるのか向けられてないのか自分でもいまいちわかってない状態が続く。
だけど、その一方で、そっちにいる灰色っぽいスーツの人はすたすたした勢いのままにどっかに行っちゃってるというか。僕の前を一切ペースを変えないまままっすぐに進んで行ってた。
僕はその人が角を曲がって行った後も、しばらくの間そっちの方を見たままにしてる状態を変えないでいる。その間、ずっと同じ体勢でいたけど、でも、それに対して辺りで何か音がすることもない。
それだけじゃなくて、僕のすぐ横にある手すりとその向こう側になってる吹き抜けの方も含めて全く動きがない状態が続く。
ただ下から眺めてた時と同じように、正方形の吹き抜けの外側を覆うように何回かもわかんないような階の通路が出来上がっているし、その角の所で通路が伸びてて、僕側からその先が見えてる方は灯りが付いてないみたいで、薄暗くなってる。
普段と比べて全然近い位置にいる太陽の光がいるはずなんだけど、今日は曇りなせいで辺りがいつもよりも薄暗くなってるように感じる。しばらくさっきまでいた壁に寄り掛かった体勢よりも、数歩だけ前に進んだような位置にいたところにも光が届いてない。
そのせいもあって、僕は元々いた所でもある体を押し付けるような位置に戻る。それから一旦ため息を吐きながら下唇を上ので覆う感じにしながら上瞼を下のに近づけた。
さっき見た時も辺り全体がドアも壁も含めてほとんどがねずみ色一緒に塗られてたし、今僕の視界はほぼそれで覆われてる。自分の影もなく辺りはほとんど一緒の色になってた。
ずっと前に足を斜めに出してる状態だけが続いていた所で、いきなり横のドアが開いて。今度はそこにいる人が早歩きくらいのペースでまっすぐ前に出てきた所で、左右にきょろきょろしてたと思った次の瞬間、僕と目が会った。
ただ、それだけですぐに向こうはふんとした勢いで僕の方を一瞥した後、また来た方に振り返る感じで正面の方に視線を戻してた。
「入れ」
相手が大人の人なのもあって、こっちはその様子を見上げながらいることしか出来ないけど、しばらくもう来た道を戻ったせいで、誰もいない場所を見ることに。
でも、開いたままになってた自動ドアが閉まり始めるのに気づいた途端、わずかな声と一緒に、自分の腕の服を寄せる感じで力を入れながら体を前のめりにしつつ前に進んだ。
その結果、さっきの道よりもより色が濃くなってる灰色の道に入ると、その狭めの通路を進んでく。
それに対して左右の窓では音がこっちの方には入ってこないけど、頭にVRゴーグルみたいな機械を取り付けられてる女の子が、頑丈そうな椅子に両手足を固定されたまま小刻みに震えている様子が見える。
でもそれに口をほんのちょっとだけ開けながら息を吸い込んで。そっちに上半身だけを向けながら、僕の足取りが遅くなってた。
ただ、僕の前を進んでる女の人が「早くしろ」とだけ言うののせいで、すぐに僕も返事して早歩きで前に進む。
ただ音が足音しかない中で、一度だけ空気を飲み込むみたいに喉を動かしてるけど、それ以外には机を近くにいる人に叩かれながら、体をビクンと動かしてる人がいる姿が視界に入っても僕はその後を追って進むだけにしてた。
僕が座らされた部屋はただの直方体でしかないと思っちゃうくらいの場所で、壁には座らせられてる机の様子も含めてこっちの様子を反射してる鏡しかない。それがすごく長いせいで、僕の姿が全体の中では相当小さく見える。
ただ、その中にいる僕はちょっとだけ上半身を前のめりにしてる間も、椅子の上に両方の手を乗せたまま上瞼を落っことしてた。
でも、それでもさっきまでの壁と同じ色をしてる様子だったり、真上から降りて来てる傘が付いた灯りが、僕と机の色を照らして変えてる姿。それらが目の前の大きな鏡に映ってる様子は、一切視界から抜けることなんかない。
ただ、すごく硬そうなドアの向こうからまた人が歩く足音が聞こえた途端、はっとした息を吸い込む音と一緒に顔を正面に持ち上げて、それから前髪の位置だったり顔の化粧だったりに違和感がないかを確認。
でも、それも一瞬のことで。すぐに横の鞄から化粧道具を取ろうとしたけど、もうその時にはドアが音を立ててた。そのせいで、横の椅子に手を近づけるような姿勢で背中を斜めにしてる状態のまま座ってるだけ。その体勢でそっちの方を見てるだけの姿勢で固まることに。
一方で、そっちでは重そうなだけあって、ドアと枠の隙間がゆっくりと広がって行ってて。それのせいでそっちの方を首だけで見てる状態でいる。そっちには首を横にしながらまだ半分くらいしかこっちからは見えてないもも姉の姿があった。
「もも姉……」
椅子を足の後ろ側で押す感じで立ち上がりながら息を吸ってる僕の両方の手の形は指を落っことすような形はそのままで。
ただ、ほんの少しだけ小さな口を開けたまままっすぐ相手の方を見つめてた。それに対して、もも姉は自分の胸の所に片方の握り締めたまま、こっちと同じ感じでスカートを持ってて。そのままお互いに見つめ合ってるだけの時間が続く。
ただ、それだけの時間が数秒だけした後、肩を前のめりにしながら後ろ側で小さく手を振りながらそっちの方に駆け足で行って。その音が部屋全体に響く。目を開きながら息を吸ってる僕の体に合わせて今まで座ってた椅子と机の角度を傾けながら、そっちに向かった。
「もも姉あのね、えっと、あれ、何しゃべろうと思ってたんだけ……そうだ。会えてすごく嬉しい。あの、すごく、あのね、そうだそうだ。今度一緒に遊びに行きたいお店があるんだ。いろはと一緒に、この前ラインで言ったやつなんだけど、そいつと一緒に行ったお店でティラミスがすっごくおいしいから、もも姉にも食べて欲しいんだ。でも、もも姉のご飯の方がおいしいよ。なんかその話してたら一緒にもも姉と一緒に住みたくなって来ちゃった……」
「あっあの……」
「でも、もも姉が忙しいのはわかってるよ。だけどね。僕も、いつも訓練訓練ばっかりだし、先生はいっつも愚痴ばっかで成績いいやつらばっかえこひいきするんだ。ほんとここって誰でも実力主義で1人1人の個人を意識してないっていうかさ。僕だって別に弱いってわけじゃないっていうか、成績で言えば勉強の方は微妙だけど最下位って程じゃないし、実技の方はそこそこいいんだよ。もも姉にも見てもらいたいな。僕だって昔よりももっとすごいこと出来るから、そうだ、今やって」
「メイちゃん!」
いきなりもも姉がすごく大きな声を出して、それのせいで僕は両方の手を軽く開いたまま口も開けて、僕はただその場でただもも姉の様子を見上げるだけに。
でも、数秒間向こうの上と下の唇を押しつぶすみたいにしてるまま、目線を僕の方から反らしてる様子を見てたら、こっちの両手がゆっくり落ちる。
それから、指の先端同士が重なり合う動きと一緒にもも姉の名前を小さく呼ぶ。だけど、向こうは自分の制服のスカートをお尻の方で握るだけで何も言ってくれなくて。お互いにただ何も言えない時間が続いた。
「桃香、早くせい。約束だぞ」
「はい……」
喉を引っ込めながら下の唇を上のに押し付ける感じになってた僕に対して、最初に沈黙を破ったのは、ドアの横の所で腕を組みながら壁に寄り掛かってた生徒で。
もも姉はそのすぐに終わるくらいの早口目な声に対して、さっきとは全然違う小さな消え入るような声で答えてた。
ただ、その間も僕は開いたままにしてた目へ入れてた力。それの入れ方を外側に開いてるのから内側に寄せる感じになってた。でも、それでもそこを閉じるようなことはしなくて。下唇の外側にえくぼを作る感じにしてた。
「あのね、メイちゃん、私……」
言葉にならない声しか出せない僕が見上げても。もも姉は床に向けて目線を落っことしてるだけで、こっちを見ることはない。言葉をなんとか取り出してるみたいにそれの最初を強く出してる。それは、話してるその言葉を聞いてる間も一緒。
僕はただ口を開けてるのか閉じてるのかわからないまま、しばらく同じ体勢でずっと見てるだけだったのに、少し経ってから気づいた。
だけど、またしばらくしてたら両方の手の平をもも姉の方に見せてるみたいにしたまま立ってて。僕も相手とは違う方向に視線を向けたまま唇を閉じる。
それだけじゃなくて、もも姉も最初は指を折り曲げるだけにしておいたのを、数秒間続けたままいて。それから上の瞼を落っことしながら、握った左手の爪の辺りにもう片方の手のひらを押し付ける。そのまま前者の手を後者の手で包む感じになってた。
「私、今の研修が終わったら、遠くの施設に行かなきゃいけなくて……」
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