メイフィールド   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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第7話「もも姉を救えるのはお前しかいない」

「もも姉……」

 

 ただ、その一言だけを口にする。それから両方の足を前に延ばして斜めにしてるみたいな体勢で、首を折り曲げてる。さらに両方の腕を折り曲げた状態で背中とドアの間に入れて、僕自身の体重で押しつぶす。

 

 自分でも力を入れてるのか入れてないのかわからない状態のまま唇を閉じてて。でもそれが何をするわけでもない。そこに限った話じゃないけど、僕自身の体も、部屋の方に伸びて行ってる廊下も、全部カーテンが開けっ放しの窓から入ってきてる唯一の灯り、青色の光に染まりあがってる。

 

 でも、しばらく僕がその場にいるだけにしてるせいで、足元に出来上がってる影にだけはそれが届かなくて、真っ暗になっちゃってる。だけど、全然僕は同じ場所しか見てられなくて。それのせいで喉が相当に引っ込む。

 それだけじゃない。数分間動かずにいたのに、ふとした時にいきなり鼻から息を強く吸って、両方の腕を体に巻き付ける感じにしながら一旦瞬き。でも、その間も同じ方向を見てるだけにしてた。

 

 しばらく後で、靴下を履いてるからかもしれないけど、自分でも足音が聞こえないまままっすぐ歩く。いつもよりも足取りが相当に小さくなってて。それをずっと同じタイミングや歩幅で進めてた。だけど、少し進んでた所で一旦足を止めたら少しの間そのまま。それからまた動かすというのを何度か繰り返す。結果、ずっと足元だけが視界に入るくらいのペースでそれを進めてた。

 

 足と床に転がってる者たちがぶつかり合ったら、そっちの方から床の上を滑るみたいな動きをする。それだけが動く音がしてた。最終的にはいつも僕が使ってるベッドの上にゆっくりとなるたけ音を立てなくなる感じで、両方の腕を突いた所を中心にしてそこへと体を乗せる。

 

 突いてた手だったり体をシーツの上で擦ってる間だけ、部屋の中でそれが聞こえてて。だけど、僕が体を横向きに寝転がらせて、両方の腕と足を折り曲げてる状態でいさせてる間、それが聞こえなくなる。自分の指を少しだけ折り曲げてるまま、手の平も両手のが見えてる状態でいた。

 

 ただ目元を細くしてるだけにしてる僕に対して、カーテンが開けっ放しにしてるから入る月灯り以外に照らしてる物が何もないせいで、自分の胸の近いところにいる手もだいぶ見えにくい。それなのに、僕は顔の角度も含めて目線を降ろしてた。

 

 

 

 

 窓を開けたらそれがサッシの上を転がる軽い音だけがする。それの間だけ、土とか埃の汚れが溜まってるそこの様子を見てたけど、すぐに1回だけ瞬きしてから空の方を見上げる。そっちの半分くらいは中央の辺りにそびえ立ってる皐月宮(さつきのみや)の様子が見える。相当に高いせいで、僕が首を持ち上げてもその頂上は見えない。

 

 口に力を入れてない状態でただ唇同士をくっつけてる状態が数秒間続いた後、顔を下に向けながらそこ同士を押しつぶすくらいにする。その間も僕が窓のサッシの前に立ってるせいで、外から入ってくる冷たい夜風に晒されてた。

 

 外は今もこの皐月宮の生徒が使ってる宿舎の一部分になるベランダと、その手すり、少し出っ張って下の方まで伸びてる屋根、左右の部屋のスペースと隔ててる壁がある。それらは月灯りが入りにくくなってるせいで余計に暗くなってた。

 

 だけど、外から見る限り、他の生徒の部屋と全部同じ形をしてるその光景が変化することは僕がいる間ずっとなくて。強いていうなら、エアコンの室外機の影になってる場所に転がってた落ち葉が風で小さく揺れてる様子だけが見えてた。

 

 特に冷たくなってるサッシと窓の先端同士の所に両手を当てて外に立つ。それから1回だけ喉を締め付けながら部屋の方を見る。この前取って以来ベッドの上に置きっぱなしになってた僕ともも姉の写真。それが最初に視線を引っ張ってくる。見てるだけで、勝手に顎がほんの少しだけ自分の体に近づく感じで動く。

 

 上の瞼を降ろした状態でも、部屋の上に転がってるゴミや漫画だったり飾ってあるポスターや写真立ては見える。でも、窓のうち片方はカーテンを閉めてて、もう片方の前には僕がいるせいでほとんどが影になってて、その色だったりはほとんど見えない状態になってた。

 

 数秒間だけそっちを見てた後、すぐに細かい足取りでベランダの上に立ったら、両足に魔力を溜めながら折り曲げて一気に解き放つ。一緒に腕をゆっくりとだけどぐるぐる回す感じで空中を泳ぐ。でも、僕の部屋から皐月宮までの距離の半分も行く前に体が描いてた軌道が下に下がっていく。

 

 何度か声を出しながらいたけど、すぐに腰のベルトに止めておいたヨーヨーを手に取って、落っこちながら指にはめようとする。でも、それも上手く行かなくて両方の手でやろうとしながら背中を丸めて。なのに、その間も落っこち続けてることに気づいて、わずかな声を出しながらいたけど、逆立った髪の毛はそのまま、頭を前に出して。背中を地面に向けた状態で落ち続ける。

 

 スカートも制服も激しく揺れるのを感じながら、何度も横で建物から出っ張ったベランダのせいで風の勢いが変わるのを感じ取って。それのせいで中々ヨーヨーの紐に指を通せななかった。だけど、地面に植わってる低木が風で音を立て始めた辺りでそれが上手く行ったら、そこに一気に魔力を流し込むことで、体をバウンドさせる。おかげで何とか舗装されてない場所の上に着地できた。

 

 体の痛みに何とか耐えながら足を持ち上げる。だけど、その瞬間に後ろから低木の葉っぱ同士が擦れ合わさってる音がして。それと一緒に一気に後ろを振り返りながら息を吸い込む。

 

 だけど、そっちにあったのは、僕が到着したことで絡まってたのが勢いよく戻っただけだった。一度ため息を付いてから元に戻りつつ上瞼をほんの少しだけ降ろしながら、体を前のめりにして歩き出す。それと一緒に頭の上に乗っかってた葉っぱとか埃を落としてた。

 

「おう、来たな」

 

 その瞬間に後ろから聞こえた兵頭彩芽の声。そこまで大きくもないけど、でも、しっかりと抑揚をつける感じで話してるし、辺りに誰もいないというか寝静まったままなせいで、こっちにまで聞こえてくる。

 

 一方で、僕は大きめな声をあげながら自分の両方の手を肩の辺りにくっつけてそっちを振り向く。数秒間こっちが動けずにいるのに対して、向こうは「デカい声出すな」とだけ言ってて。それのせいもあって僕は片方の落っことした腕をもう片方の手で掴みながら視線を落っことして、小さな声を出しながら「ごめん」とだけ言ってる。

 

 皐月宮の様子を見渡す感じにしてるそっちに対して僕は、顔も同じ方向に向けたまま、たまに目線を兵頭彩芽の方に向けるのを繰り返してる。ただ、その間も何度も首を使って周囲の様子を見ているだけ。

 

「あの、本当に、もも姉を……」

 

 何度も同じ音を口から出した後に、顔を上げて最初の声を出しながら足を一歩前に進める。続けて、両方の腕を下方向で広げる動きをしながらも顔はさっきまでと同じ向きになってて。一度瞬きをしながら視線だけで相手を見つめた。

 

 一方で、兵頭彩芽はたまたまこっちに背中を向けてるタイミングだったのもあって、首だけを使ってこっちの方を見つめてくる。それも1回だけじゃなくて数秒間続ける感じにしてて。一度首を元に戻すと、こっちからはただ背中側だけが見えてる状態になってた。

 

 僕に近い方に街灯があるのもあって、その背中は灯りに照らされてる一方で、ちょうど兵頭彩芽が立ってる場所がギリギリ影になっててそっから先に相手の影が見えることはない。

 

 その一方で、向こうは口から鋭く息を吸った後に顔を斜め下へと向けた状態のままいる。そう思ったけど、すぐに一度髪の毛を撫でるような動きをしてから、体を揺らすような動きで僕の方に近づいてきてた。

 

「もも姉を救えるのはお前しかいない」

 

 目線を一度斜め下に反らしてから僕の両方の肩に手を置いて。それから膝を少しだけ曲げて僕と視線を合わせてくる。こっちと視線が合っている間にふと向こうが今も何度もうなずきながら視線を空の方で動かしてるのが見える。

 

 一方で、こっちの方は相手に触れられた瞬間、首を一気に締め付けながら目を大きく開けながら自分の手を胸元に当てて、両方の拳を上下に重ねる感じになってた。そこからしばらくしたら兵頭彩芽の所から視線を逸らして。それのせいで口を一度整え直す。

 

 気づけば片方の手を開いてもう片方の手の握りこぶしを包んでた。

 

「ヒーローに、なりたいんだろ?」

 

 その言葉は単語を1つずつ出してくみたいな話し方をしてた上に、もう1回僕と視線を合わせることに。その状態がしばらく続いた後に、僕の肩を片方の手だけで1回ばんって音がする感じで叩くと一緒に、兵頭彩芽は「うし」とだけ言って足をまっすぐにして立つ。

 

 それから僕の方を見ないで、一度地面においてた大きな銃を拾うと、それを肩に担いで歩き出してた。それからこっちを見ないまま「行くぞ」とだけ言う。

 兵頭彩芽が全く進むペースを変えないせいで、しばらく立ったままにしてた僕は、すぐに小走りでその後を追うことになった。

 

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