ガンダムNT-1を操り、宇宙を駆けるクリスチーナ・マッケンジー。
次々にジオンのモビルスーツを撃墜していくが、そんな彼女の前に1機のザクⅡ改が現れ…。

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第1話

艦内にけたたましくサイレンが鳴り響く。

『総員、第1戦闘配備!』

赤毛の女性士官、クリスチーナ・マッケンジー中尉ことクリスはそれを聞くと格納庫へと駆けて行った。

格納庫に待っていたのはガンダムNT-1『アレックス』だ。

灰色の重厚な鎧にトリコロールのガンダムヘッドが鮮やかに映えている。

クリスはアレックスのコックピットに滑り込こんだ。

少し前までは自分が前線に出ることなんて滅多なことがなければあり得ないと思っていたのに、今ではすっかり体が慣れてしまった。

実戦にも、本物の敵機に引き金を引くのにも。

「頼むわよ、アレックス」

コンソールパネルを操作するとアレックスの両眼が光る。

「大丈夫、いつも通りやればきっと上手くいくから…」

クリスはヘルメット越しにぱちんと自分の頬を叩き、気持ちを引き締める。

「クリスチーナ・マッケンジー、アレックス出ます!」

アレックスは勢いよくカタパルトデッキから射出され、ビームと爆発の光が瞬く宇宙に飛び出した。

 

戦況はこちらが劣勢だった。

既に友軍のMSが展開していたが、ジオンの機体相手に次々と撃破されていく。出撃していったクリスの前方にサラミス級が爆炎と共に轟沈していくのが見えた。

(厳しいわね……)

だが、逃げるわけにはいかない。どんな状況であろうと自分にできる事をするだけだ。

クリスはスロットルレバーを押し込みスラスターを吹かした。機体が加速し、戦場を駆ける。

チョバムアーマーのためにある程度落ちているとはいえ、それでも量産タイプを相手取るには十分過ぎるほどの機動性だ。

「これ以上はやらせない!」

クリスはビームライフルを連射しながら敵機に接近した。

発射された粒子の束が不用意に前に出てきた1機のリック・ドムⅡを貫く。

だがその間にも別の敵機がビームライフルを撃ってきて、クリスは咄嗟に機体を捻って回避を試みる。

いくらアーマーがあるといえどもビームの直撃を喰らうわけにはいかない。

「くっ!」完全に避けきることはできず、右腕部の増加装甲が破損したようだ。

それでもまだ戦える。

「この程度で!」

その部分のチョバムアーマーをパージすると下から腕に仕込まれたガトリングガンが露になった。

機体の右腕が力強く駆動する。

そしてそこからばら撒かれた弾丸はライフルでこちらを再び狙おうとしていたゲルググの装甲を容赦無く食い破った。

それに目を向けることもなく、アレックスは空間を滑るように機動して次の標的へと向かう。

その時だった。

突如飛んできた弾頭がアレックスのガトリングに直撃し、爆発と共に吹き飛ばした。

「!?」

クリスが驚き、その方向を見るとそこにいたのは1機のザクⅡ改だった。

それは撃ちきったマシンガンを捨てるとヒートホークを構えてこちらに突っ込んでくる。

接近戦を仕掛けるつもりだ。幸いまだ問題なく動いた右腕でビームライフルを構えてザクを狙うが、相手はそれを読んでいたように左右にビームを躱して間合いを詰めてくる。

「くぅっ…!だったら!」

ライフルを腰にマウントし、代わりに背中のビームサーベルを抜き放った。

そのままザクに向かって加速すると、向こうもヒートホークを振りかざす。

だがアレックスの機動力のおかげでそれが振り下ろされる前に相手の懐に入り込むことができた。

「もらった!これで終わりよ!」

ビームの刃はザクの装甲を容易く溶断し、胴体を貫いた。

しかし無事に敵機を撃破したと思ったのも束の間、彼女のコックピットに声が聞こえてきた。

それはひどく掠れていたがクリスにとって聞き馴染みのある、大切な人の声だった。

『…ク…リス……?そっか、君が…ガンダムのパイロットだったんだな……』

「その声…バーニィ⁉︎なんでここにバーニィが…⁉︎まさか…」

モニターにいっぱいに表示されている胸部を貫かれて火花を飛び散らせるザクⅡ改を、クリスは呆然と見ていることしかできなかった。

顔からさあっと血の気が引いていく。

全身の血が凍りつくような感覚がして息ができない。

どく、どく、どく、どく。心臓が早鐘を打っている。

「バーニィ、嘘よね……?なんで…どうして…」

『…気に…しないでくれ……。これは…戦争だからさ……』

「何を言ってるの⁉︎お願い、早く脱出して!」

しかしザクからパイロットが出てくる様子はなく、代わりに最後の力を振り絞るかのようにクリスの乗るアレックスに手を伸ばしてきた。

『クリスが……無事で……よ…かっ……』

雑音混じりの声が途切れ途切れになっていき、消えていく。

それと同時にザクの手が機体の頬に触れる。

次の瞬間には彼の機体はクリスの目の前で爆散していた。

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

クリスはハッと目を覚ます。

ここは彼女の自宅のベッドの上。

どうやら彼女は夢を…それもとびきりの悪夢を見ていたようだ。

もう軍を辞めてだいぶ経つというのに、こんな夢を見ることになるとは。

「なんて嫌な夢を見ちゃったのかしら……」

汗ばむ身体と肌着がべっとりとくっついた感触に不快感を覚える。

クリスは深呼吸すると窓からの薄明かりが照らす寝室で自分の隣を見やった。

「よかった、ちゃんとここに居るわよね……」

彼女の隣にはバーニィ…元が童顔なおかげで出会った頃とあまり変わっていない…がすやすやと寝息を立てていた。

クリスはホッと胸を撫で下ろす。

バーニィは先程のクリスとは逆に良い夢でも見ているのだろうか、とても幸せそうな表情を浮かべていた。

「ふふ、かわいい…♪」

それを見て緊張が解れると思わず笑みがこぼれてしまう。

クリスは彼の頭を優しく撫でた。

金髪のふんわり優しい手触りが心地良い。

…彼を起こさないように気をつけたつもりだったのだが、起こしてしまったようだ。

バーニィはぱちっと目を開けると、むくりと起き上がった。

「んー……おはよう、クリス……」

「あ…ごめんなさい、バーニィ!起こしちゃったみたいで…」

慌てて謝るクリスに向けて、バーニィは眠そうに欠伸をしながら首を横に振る。

「いいって、気にしないでくれ。…それよりも何かあったのか?もしかして良くない夢でも見たとか……」

急に真剣な顔つきになったバーニィの言葉にクリスはビクッとする。

こういう時のバーニィは妙に勘がいい。

「えぇ、まぁね……。戦場の夢を見たのよ。アレックスに乗った私がバーニィのザクを撃墜して死なせてしまう夢だったわ…。とてもリアルで生々しかったの。まるで本当に起こったことのように感じられてね……」

「俺のザクを……ね。そりゃまた随分と思い切った夢だ。いくらクリスとガンダムが相手だとしても、当時の俺はそう簡単に負けなかったはずだぞ?なんたって俺はエースパイロットだったんだからな。」

バーニィはえっへんと胸を張る。

「嘘ばっかり。あの時のバーニィは配属されたての新米パイロットだったじゃない。」

そう言ってクスリと笑うクリス。

「あれ、バレた?自然な感じでいけば押し通せると思ったんだけど…参ったな…。」

照れくさそうに頬をかく彼を見ていると、クリスは自分の不安な気持ちなんてどこかに溶けてしまうような気がした。

「まったく…、覚えているに決まってるでしょ?」

クリスはバーニィの頬をツンとつつく。

「はは、やっぱりクリスには敵わないな…」

そう言うと彼はころんと寝転がって自分の隣をぽんぽんと叩いた。

「さて、まだこんな時間だしまた寝直すだろ?俺はクリスが寝つけるまで見てるからさ。」

「あらそう?じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。」

クリスは悪戯っぽく笑うと彼の隣に身を寄せた。

「よーし、良い子だ……」

優しい声色と共に撫でてくれるバーニィ。

なんだか子供の頃に戻ったみたいでちょっぴり気恥ずかしいけど安心できる。

暖かい毛布の中で彼の体温を感じながら目を閉じると、すぐに心地良い眠気がやってきた。

「おやすみなさい…バーニィ……」

「おやすみ、クリス。」

彼に見守られながら、クリスは穏やかな眠りへと落ちていくのだった。


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