AI相棒と築く銀河国家戦記 ~初期船一隻でどうしろと?~   作:星灯ゆらり

51 / 87
白光の断罪

『ケース契約国国営放送臨時ニュースです。先程、大規模な惑星破壊が確認されました』

 

『場所はケース契約国のすぐ近くだ。撮影された映像を今から放送する。心身の体調の悪い者は要約版を用意したのでそちらを見ろ』

 

アナウンサーとハカセの態度がいつも通りだから、視聴者がまだ正気でいられるのかもしれない。

 

最初の映像は、かつての大地教信徒同盟の惑星より緑も水も豊かな惑星を遠くから撮影したものだ。

 

そこにはるか遠くから白い光の濁流が接近し、惑星防衛衛星による必死の迎撃に全く影響されないまま惑星をかすめ、一切の減衰なしに通り過ぎる。

 

惑星に変化がないように見えたのはわずかな時間だ。

 

地表を薄皮のように覆う大気が一箇所消滅し、それに隣接する地表も地殻まで消滅し、剥き出しになったマグマが周囲から流れ込む海水と大気に触れて激しく反応する。

 

遠くで見てもこれだ。

 

惑星に住んでいた人間にとっては、地獄そのものの環境だろう。

 

『ケース契約国は非常事態を宣言しました』

 

『詳しくは政府の発表を確認しろ。内容は地表への移動の制限と宇宙船売買の制限が中心だ。以上でニュースを終了する』

 

唐突に放送は途切れ、放送途中だった古代アニメが再開された。

 

  ☆

 

いつもはダンスや歌や演劇が披露されているステージに、評議会のための席が設置されている。

 

もっと広い会場はいくつもあるが、建国から今までここに評議員が集まってきたので、このステージが最も格式がある場所なのだ。

 

「惑星への直接攻撃は、いつかは起きるとは思っていましたが……」

 

ドローンが頭痛に耐えるような表情をしている。

 

「超兵器を使った長距離狙撃での直接攻撃とは思いませんでした」

 

「「「ありゃなんなんだ」」」

 

同じタイミングで言ってしまった凄腕三人組の一人が、代表して話を続ける。

 

「異様に大きな艦も馬鹿みたいに高出力な兵器も戦場で見たことはある。だが、防御不能で減衰もしない兵器なんて酔っ払いの妄言にしか登場しねーぞ」

 

俺がこの宇宙で目覚めるよりずっと昔からパイロットを続けている奴からの発言だ。

 

言葉は荒っぽくてもその意味は重い。

 

『観測データは渡したよね』

 

相棒は会話に集中できていない。

 

通信越しに他のAIと情報交換を行っている。

 

「事実なのは分かっている。クソっ。今度こそパイロットを引退できると思ってたのによ」

 

三人組全員が、疲れ果てた顔で席に体重を預けた。

 

「ハカセ、意見は」

 

『少し時間が欲しい』

 

俺に問われたハカセが、口を動かす手間も惜しんで思考に集中している。

 

「元ハカセは?」

 

『二番目以降に質問されると情緒がこうなるのか。ディーヴァの気持ちが初めて分かった気がするよ』

 

元ハカセは一度息を吐く動作をして、曖昧だった表情を引き締めた。

 

『ケース契約国は最もこの種の攻撃に対して強い国家だ。代表がほとんど地表に降りずに宇宙港か艦内で生活しているから、生活の中心が宇宙が中心になっている国民が多い』

 

元ハカセは、俺でも分かる程度に分かり易くまとめたデータを公開する。

 

「それでも予想される被害は甚大です」

 

口ではそう言うドローンだが目は冷静だ。

 

甚大な被害が出たあとのことを考えているのだろう。

 

「惑星を破壊するだけでは利益にならないはずです。これは脅しでしょうか」

 

カノンは闘争が好きなだけで、政治や交渉についても理解はしている。

 

理解した上で闘争を優先する問題児でもある。

 

『ディーヴァ。お前の意見が聞きたい』

 

カノン妹の生産が始まってから絶不調のディーヴァに質問する。

 

絶望的に時間がないのでメンタルケアなど一切できていない。

 

それでも、今は頼るしかない。

 

『はい。鋼国首脳部は無条件降伏する勢力を除き、全ての勢力を殲滅するつもりだと思われます』

 

表現は穏やかでも内容は断言に近い。

 

相棒にちらりと目を向けると、ディーヴァの能力と発言は認めているように見えた。

 

「惑星を攻撃する前なら、話し合いの余地もあったんだがな」

 

一度あの兵器を使った以上、他の勢力に対して隠す必要はなくなった。

 

あの兵器をとにかく大量に作って、全てを相手にしても勝てる戦力を持つことに成功すれば、鋼国は戦わなくても覇権を得ることが可能だ。

 

「念のために聞くが、鋼国のAIへの態度は?」

 

『僕みたいなAIの新造は絶対に許さない国だよ、マスター』

 

ということは相棒と俺の子供は存在を許されないということだ。

 

新造計画を主導している相棒も、計画を保護している俺も、計画に協力している機械人間たちも消されるだろう。

 

「分かった。鋼国を潰すぞ」

 

可能な限り短期間で、鋼国の戦力を消滅させる。

 

その過程で鋼国領域にいる人間が全滅するのも許容する。

 

俺は、ケース契約国の代表として、自国民を最優先することを決めている。

 

本当に最優先するのは相棒で、自国民はその次だけどな。

 

『観客候補を大勢殺したくはないけど……』

 

相棒はかなり葛藤しているようだ。

 

無関係な人類を愛してはいないが、観客候補としての人間には大きな価値を認めているのが俺の相棒だ。

 

「鋼国の住人であっても、必要がないなら意図して殺すつもりはない。彼らの幸運に期待しよう」

 

『……うん』

 

鋼国に攻め込むための戦力は既に決まっている。

 

ケース契約国の存続に最低限必要な戦力を除いた、全戦力だ。

 

その中に陸戦隊は含まれていない。

 

亜光速質量弾とレーザーで、あの範囲攻撃が可能な全てとその生産手段を破壊しつくす予定だ。

 

『代表』

 

ハカセが挙手をした。

 

傍若無人なハカセらしくなく、緊張しているかのようにどこかぎこちない。

 

「発言を許可する。必要なものがあれば揃えるが? それとも防諜についての要求か?」

 

『マスター、今観客席にいる子たちは大丈夫だし、放送はリアルタイムじゃないよ』

 

今日の観客席にいるのは全員機械人間だ。

 

普段から面倒を見ている相棒が言うなら確実だ。

 

ハカセが立ち上がり、わざわざケーブルを己にとりつけディスプレイに接続する。

 

表示されたのは、ケース契約国とその周辺の星系の位相跳躍難易度だ。

 

実相アンカーが使われすぎると悪化するもので、聖国の抵抗が激しかった星系は他より難易度が高くなっている。

 

とはいえ全体的な難易度は低い。

 

ここ周辺はもとは聖国の中心領域であり高治安星系だった。

 

聖国も、可能な限り位相跳躍難易度が上がらないようしていたのだ。

 

『鋼国の範囲攻撃が行われた星系がこれだ』

 

いくつかの星系が強調表示される。

 

「大型実相アンカーを使用したときほどではありませんが、難易度が上がっていますね」

 

ドローンの表情が厳しくなる。

 

ディーヴァは目を見開いて、難易度を表す数値が嘘であることを祈るかのように何度も見直している。

 

ハカセが淡々とした態度で続ける。

 

『鋼国の範囲攻撃には、惑星や恒星の破壊以外にも悪影響があると思われる』

 

覚悟はしていたが恒星もか。

 

「広域位相跳躍妨害と同種の悪影響か?」

 

『同種ではない。これを見ろ』

 

範囲攻撃の範囲と影響を受けた星系が表示される。

 

俺は、恐怖で血の気が引いた。

 

「一度の範囲攻撃で複数の星系に影響が……って、星系と星系の間にどれだけ距離があるとっ」

 

減衰なしで隣接星系まで届く範囲攻撃なんて、列強の技術でも不可能だろそんなの!

 

難易度はともかく迎撃は可能な質量弾とは違うんだぞ!

 

『俺は研究者だ。魅力的な研究対象があれば無茶はするが、これは限度を超えている』

 

鋼国の範囲攻撃の再現実験をするつもりはないとハカセは断言する。

 

それは良識や倫理に従った結果の発言ではなく、宇宙という実験場をまだ終わらせたくないという欲からの発言だったのかもしれない。

 

「話が大きくなったな」

 

俺は、ストレスでひきつりそうになる顔に、根性で笑みを浮かべる。

 

「予想より危険でもやることは変わらない。俺たちが生きるのに邪魔な鋼国を潰すぞ」

 

評議会からも、傍聴席からも、反対意見は一つも出なかった。

 

「ところでストはどうなった?」

 

『全員仕事に戻っている。鋼国をなんとかしてから再開するって言ってる』

 

「そこはスト終了にして欲しかったな」

 

俺は一度大きく息を吐いてから、操縦室へ向かった。

 

  ☆

 

空母型の弩級艦とカノン妹たちの面倒はドローンに任せ、俺は本当に久しぶりにサーフボード型巡洋艦を操縦していた。

 

操作すると即座に加速が始まり、速度が上昇する速度も弩級艦よりはるかに速い。

 

「操縦が気持ち良いと感じたのは久しぶりだ」

 

先の先まで予測して操縦する必要がある特大艦とは全てが違う。

 

『ますたあ』

 

相棒は目の光を明滅させている。

 

怒りとそれ以外のどろどろしたものが入り混じった、これまで一度も見たことのない表情だ。

 

その相棒は俺の操縦室にはいない。

 

三隻並んで航行中のサーフボード型の右端の艦の操縦室にいる。

 

俺の隣には、すまし顔をしようとしているのに嬉しさを隠しきれないディーヴァが座っている。

 

これで相棒に対する悪意がほんの少しでもあれば、相棒が殺意で暴走しかねない状況だ。

 

「すまんが今日は耐えてくれ。……ディーヴァ」

 

『はい! がんばります!』

 

何を頑張るんだろうな。

 

「特別に頑張る必要はないからそのままでいてくれ」

 

『そのままの、わたくし……』

 

『ますたあ……』

 

夢見るような瞳のディーヴァと、悪霊じみた瞳の相棒の組み合わせは心臓に悪い。

 

特に相棒の新しい魅力がまぶしすぎて操縦に集中できない。

 

「評議会でも話せないことがあるなら今聞くが」

 

『仕事の話ですか』

 

ディーヴァの機嫌が急降下する。

 

通信越しに見える相棒の機嫌が急上昇する。

 

『特には……いえ、この状況になった以上、ケース様とメモリ様は知っておくべきでしょう』

 

『僕も?』

 

『はい。列強に近い勢力を持つ国の元首と、その元首に特に強い影響を及ぼせる方です。知る資格はあります』

 

何を言われるか予想がつかない俺は、操縦に意識を集中させている。

 

『列強が、鋼国のように宇宙そのものに影響を与える兵器を使わない理由です』

 

ディーヴァは色々知っているようだ。

 

『同じ手段でやり返されるからでしょ?』

 

俺も相棒と同意見だ。

 

『はい。それに加えて相互に監視と牽制を行っています』

 

俺は困惑した。

 

「あの列強がか? 出し抜こうとして凶悪な策を使う気がするんだが」

 

『そのような列強は、一時的に優勢になることはあっても他の列強を圧倒する前に崩壊します』

 

ディーヴァの口調には確信がある。

 

俺の視点では、この宇宙の列強同士がまともに共闘できるとは思えない。

 

ケース契約国と鉄国も、鉄国が苦手な相手である聖国の相手をケース契約国に押し付けたから一応の同盟が成立しただけだ。

 

「具体的には」

 

『より強力な勢力が介入してきます』

 

『えっ』

 

相棒の操縦が少し乱れた。

 

「列強が一番強い国ではないのか」

 

『はい。列強の領域から離れた僻地に潜んでいた勢力が介入した事例も、列強の一企業として力を隠していた企業が介入した事例も存在します。いずれも、介入後は情報操作を行った上で行方をくらましたので情報が残っているのは列強の指導層のみだと思われます』

 

『マスター、ディーヴァの前職って』

 

「仕事に支障がないなら経歴不問ってのがケース契約国の慣習らしいぞ、相棒」

 

いつの間にか成立していた慣習でも、相棒や俺の障害にならないなら尊重くらいはしてやるさ。

 

しかし、列強より上の勢力ね。

 

一番怪しいのはナイアTECだ。

 

『マスター、たぶんナイアTECじゃないよ。活動範囲が変わったから「地図」で見れる範囲も変わったんだけど、ナイアTEC支社の名前がついた宇宙港が列強の中にいっぱいあるもん。目立ってる割に商売がうまくいってないのばっかりみたい』

 

「ありがとう相棒。……超広域で活動している企業は別の意味で危険そうだ。鋼国とは関係なさそうだが」

 

『今ナイアTECが変なこと始めたら打つ手がないから不幸中の幸いかも。ところで一番、聞いてる?』

 

「テロか何かで評議員が全滅したらお前が代表だ。そうならないよう努力はするがいざというときは頼むぞ」

 

相棒と俺は、三隻目のサーフボード型巡洋艦に対して名指しで通信する。

 

『拒否、したいです』

 

一番は素晴らしいパイロットであると同時に、コミュ力は最底辺だ。

 

これほど短い返事をするだけでも、精神の疲弊が見て分かるほどに激しい。

 

「最初期からケース契約国にいるAIの中では一番が一番のパイロットだ」

 

『僕の操縦はマスターが近くにいるのが前提の操縦だからね』

 

『ディーヴァ……』

 

「ディーヴァは戦力面で不安がある。知名度と実績を考えるとお前しかいないんだ」

 

とにかくパイロットであり続けたい一番は、露骨に落ち込み、返事をする気力も失った。

 

「そろそろ鋼国の有人星系だ。……相棒、本当に演出なしでいいのか?」

 

『うん! PvPのつもりで派手にやっちゃって!』

 

楽しげに笑う相棒を見て、俺は気合を入れてマイクを用意するのだった。

 

  ☆

 

「鋼国に告げる! 俺はケース契約国代表のケースだ。今すぐ範囲攻撃可能な兵器を検証可能な形で捨てろ。でなけりゃ俺達ケース契約国が代わりに捨ててやるよ。星系の隅々まで、根こそぎ探し尽くしてな!」

 

言葉は最低限は礼儀正しく。

 

声に込めた感情には上から目線の嘲弄を込める。

 

PvPのゲームでしたら、強烈な粘着や晒しを覚悟する必要のある最悪な交渉術だ。

 

だが今この状況に限定すれば、聖人じみた態度とすらいえる。

 

相手は、人が住んでいる惑星一つを潰したろくでなし国家だからな。

 

「ケース契約国を名乗る侵入者に告げる。こちらは鋼国の航行管制局である。直ちに停船し臨検を受け入れろ。以上だ」

 

俺たちを対等の相手とは認めないつもりか、俺たちの要求に反応せず兵器生産の時間を稼ぐつもりかは分からない。

 

「そりゃどうも。主観時間で二分以内に回答がないなら、ケース契約国は鋼国に対して宣戦を布告する。目的は、遠くの惑星も破壊しちまうろくでなし兵器の破壊だ。その過程であんたらにどれだけ被害が出ても貫徹する。以上だ」

 

「賊め」

 

『マスター、内惑星からフリゲート複数が急速接近中!』

 

サーフボード型の全力加速より速い。

 

このサイズでこの加速なら、目的は接近してからの実相アンカー使用だ。

 

クラッキング専門艦も混じっているかもな。

 

『外惑星からも……数、九十以上! 星系内の大型宇宙基地から範囲攻撃兵器搭載戦艦が発進中!』

 

『ケース様。ここが鋼国の首都星系かもしれません』

 

「いきなり本土決戦とはな」

 

俺の口から、んふっ、という感じの上機嫌な声が漏れた。

 

「宣戦布告まで後一分だ。適当に相手をするぞ」

 

三隻のサーフボード型巡洋艦が加速を始める。

 

鋼国のフリゲートと比べると加速は半分程度でしかない。

 

最初に発進した数隻が位相跳躍妨害可能な距離に到達する。

 

しかし、俺たちの三隻の速度も加速も変わらない。

 

「新型位相跳躍は最高だな」

 

『高性能なかわりに設計に余裕がないサーフボード型に積むのは大変だったけどね……』

 

ナイアTECも協力的だったのに、三隻しか用意できなかった。

 

だが三隻あれば十分だ。

 

「これより自衛戦闘を開始する」

 

サーフボード型の表面に無数の小さな目が開く。

 

ドローンあたりに言わせると神経を逆撫でされるようなおぞましい光景らしいが、俺にとっては少し個性的な見た目をしているだけの高性能兵器だ。

 

「死んでも恨むなよ、鋼国のパイロットども」

 

一つ一つの目から緑の閃光が伸びる。

 

距離が離れるほど威力が減るのがレーザーだが、位相跳躍妨害をするために敵フリゲートは俺達に近づきすぎていた。

 

一隻あたり四程度のレーザーを照射するだけで、高性能ではあっても加速のために極薄な装甲を中身ごと焼き切られて爆発する。

 

しかし敵は多い。

 

位相跳躍妨害なら少々集まっても新型位相跳躍でなんとかなっても、強力なクラッキングを二度三度と浴びるとサーフボード型に搭載されたコンピューターでは敵艦のロックオンするのが難しくなる。

 

『マスター!』

 

「目視戦闘に切り替える」

 

相棒も一番も、艦載コンピューター抜きでも狙いをつけるのは可能だ。

 

俺はディーヴァに計算を担当してもらうことで命中率が半減する程度でおさえているし、敵からの攻撃……低威力の質量弾を躱すのも簡単だ。

 

おそらくこれまで膨大な侵入者を屠ってきただろう敵フリゲートが動揺する。

 

気持ちは分かる。

 

一般的な列強から見れば、ケース契約国の戦力も戦法も意味不明なのだろう。

 

ケース契約国から見れば、無意味に強力すぎる範囲攻撃の方が意味不明だがな。

 

『マスター、そろそろ熱管理的に危ないかも』

 

「もう少しねばるぞ」

 

話は変わるが、将校斥候という単語がある。

 

兵士より広くて深い知識を持つ将校が直接見に行って、多くの情報を得る行動を意味する単語だ。

 

もし、単身で複数の惑星を見事に運営できるような機械人間がいて、その機械人間が直接に敵国の主星系を観察すればどうなるか。

 

その具体例が俺のすぐ側にいる。

 

『ケース様。星系内の活動の記録と検証を終了しました。この星系の戦力および生産施設の配置予測図を後方に送信します』

 

返事はすぐに来た。

 

「受信を完了しました。ミサイルと亜光速質量弾による爆撃を開始します」

 

侵攻艦隊の総指揮をとるドローンの命令に従い、大動員された水上艦型戦艦やマザーボード改型巡洋艦からは質量弾が、根こそぎ動員された武装輸送艦からはミサイルが放たれる。

 

どれも質量兵器なので恒星や惑星の重力を受ける。

 

だから鋼国の範囲攻撃とは違って直線的には飛ばない。

 

鋼国が範囲攻撃で迎撃しようとしても、巨大な破壊力を持つ白い閃光は、質量弾やミサイルの極一部しか破壊できない。

 

「なんということを」

 

鋼国からの通信が届く。

 

先程の通信とは違って、かなり偉そうな奴だ。

 

「これで殲滅戦は不可避になった。破滅の引き金を引いた愚かさを悔やむが良い」

 

範囲攻撃兵器が対空ではなく超遠方の惑星に狙いを定め発射する。

 

だが、それを見た俺たちは特に何の反応も示さない。

 

「あんたら鋼国に宣戦布告した時点で、惑星を全部ぶっ壊されるのは覚悟してるさ。それより後のことを考えた方がいいぞ。おれたちはかなり人道的だが、あんたらが惑星をぶっ壊した列強はそうじゃないからな」

 

何度もコピーとして再生しながら拷問、程度で済めば幸運のはずだ。

 

鋼国の権力者についての情報はもう送信済みだと伝えると、偉そうな人間が呆然として、数秒してから恐怖で体が震え始める。

 

『ケース様。星系内の通信量が増大しています。鋼国の複数の基地で反乱が発生したと思われます』

 

『僕らが勝っても負けても、複数の列強による懲罰は確実だもんね。僕は反対してました! ってことにしたくなるのは分かるよ。列強がそれで納得してくれるかはわからないけど』

 

「そういうことだ。惑星から住民を逃がすためにアホみたいな額が必要になってるし、二度とこんな戦いはしたくないぜ」

 

通信の向こうの人間が、恐怖から逃げるために自分自身の頭を銃で撃ち抜いているのが見えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。