AI相棒と築く銀河国家戦記 ~初期船一隻でどうしろと?~   作:星灯ゆらり

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第六章 機械人間編
悪魔の誘惑


水国と陽国は崩壊した。

 

頭脳と象徴である首都星系が失われ、巨大な戦力と回復力を持つ列強から無数の小勢力の集団と成り果てたのだ。

 

多くても十数隻の艦隊が好き勝手に防衛戦争を継続し、他国に対する略奪を始める艦隊すらあった。

 

そんな略奪艦隊が、複数方向から緑のレーザーを浴びていた。

 

レーザー一つ一つは細く、威力も低い。

 

しかし数百のレーザーが一艦の一箇所に集中すると、強力な位相障壁にも対レーザーの備えがされた船体装甲にも数秒で穴が開く。

 

「数が揃っていたらこっちがやられていたな」

 

俺は、サーフボード型巡洋艦の操縦は本来のパイロットに任せ、相棒と手分けをしてこの艦も含めて合計二十八隻のサーフボード型に情報を伝達し続ける。

 

『マスター、支援装置なしだと厳しいよ』

 

跳躍を支援するための装置ではなく、レーザーや位相障壁を効率よく使用するための情報分析および伝達を行うための装置のことだ。

 

「位相崩壊砲ありの戦場には指揮艦を持ち込めないから仕方がないだろう」

 

指揮艦は防御と支援とついでに被撃墜者の救助に向いた艦ではあるが、位相崩壊砲による範囲攻撃を躱せるほどの速度も加速力もなく、分厚い船体装甲も範囲攻撃相手には無意味なただの重荷になってしまった。

 

だから、操縦室に持ち込めるサイズの機材で支援するしかない。

 

『マスター、星系外縁に新しい敵艦隊を確認したよ!』

 

「少ないな」

 

命の危険ではないが、見えているより多い殺意が向けられた気がした。

 

俺の思考に気付いた相棒が、ARメガネの片方のレンズに艦外カメラからの映像を映す。

 

ここは星系外縁に近い宙域なので、最大限加速したら十秒程度で敵が到達するはずだ。

 

八秒経過した時点で、俺は、光を反射しづらい素材を船体装甲にした陽国フリゲートを見つけた。

 

『マスター、その艦、ステルス!』

 

「聖国が使っていた技術か」

 

既に敵艦の位置はパイロットに伝えている。

 

俺たちを乗せたサーフボード型はひらりと身を躱し、敵艦のレーザー砲塔の死角へ回り込んでから念入りにレーザーで集中攻撃する。

 

半ばで断ち切られた敵艦が、前半も後半も回転しながら明後日の方向へ飛んでいった。

 

「範囲攻撃接接近中っ」

 

俺が具体的な指示を出す前に、複数のサーフボード型が位相障壁へのエネルギー供給を止めて猛烈な加速で範囲攻撃を回避する。

 

それだけでなく、俺が気づいていなかったステルスフリゲートを、距離による減衰を隻数とレーザーの数で補い焼き切っていく。

 

「カノン妹は乗ってないよな?」

 

『乗ってない! でも考察は戦闘の後だよマスター!』

 

相棒はいつも正しいが、今は特に正しい。

 

「位相崩壊砲搭載艦の撃破にこだわる必要はない。契国がある方向にはハリネズミ改型が展開している。少々の範囲攻撃なら搭載した位相崩壊砲で相殺してくれるぞ!」

 

ハリネズミ改型に乗っているのはカノン妹たちだ。

 

数が揃ったハリネズミ改型を受け取って、契国勢力圏のあちこちに派遣されて相殺作業に従事している。

 

搭載しているミサイル発射筒のせいで加速が鈍いことへの文句は多いが、位相崩壊砲搭載艦を撃ち落とすときは手数の多いミサイルの方が有効なのでミサイル発射筒は必須装備のままだ。

 

『司令! 楽な戦いが続くと腕が鈍りそうです!』

 

『今日も撃墜数を伸ばせます!』

 

良い動きや良い狙いをしている奴に限って雑談をするのだから始末に終えない。

 

また一隻、陽国の艦が船体装甲に大穴を開けられてそこから炎とパーツの残骸が吹き出る。

 

「鈍ったなら帰ってからシミュレーターでもしておけ。撃破数もいいが機体の状態も評価の対象だぞ」

 

『はい司令!』

 

『今回ちょっと見落とし多くないですか司令!』

 

確かに、予想より敵のステルス艦が多く、俺が見つけて位置を伝えるより早くサーフボード型が加速して回避したり、ステルスしたままの敵をレーザーで撃ち抜く場面が何度もあった。

 

『マスター、こいつら試験段階のパーツに換装してるっ』

 

相棒の目が危険な光を放つ。

 

『肌パーツを替えたら全然違います!』

 

『もう戻れない……』

 

操縦技術にほとんど変化はなく、しかし以前より遠くの距離で敵や敵からの攻撃に気づくようになっている。

 

「お前ら、まさか借金してないだろうな?」

 

二十八隻は、俺の疑問を誤魔化すかのように、見事な軌道を描きならがら無傷のまま陽国からの侵入者を殲滅していった。

 

  ☆

 

主星系に戻ると艦隊司令の仕事は終わり、契国代表としての仕事が始まる。

 

「「上から目線のクソがっ」」

 

俺とドローンは同時に怒りをあらわにして、汚い言葉が重なって聞こえたことに気づいて気まずい雰囲気になった。

 

ドローンは咳払いをして、その表情を契国代表代行にふさわしいシリアス有能顔に切り替える。

 

「こちらの呼びかけに対する、楽園管理機構からの応答は相変わらずありません。楽園管理機構の艦隊は、水国と陽国からの降伏宣言を無視。両国の生産設備と残存戦力に対する攻撃を続行しています」

 

気を利かせたディーヴァが、俺でも理解できる程度に要約および抽象化した広域戦況図を立体映像で表示してくれる。

 

「助かる。……水国と陽国の星系ではない星系も攻撃している?」

 

俺の目にはそのように見えた。

 

『物証はありませんが、両国の拠点が秘密裏に建設されていた可能性大です』

 

「両国の近くにある契国星系には水上艦型戦艦部隊を配置しています。位相崩壊砲搭載艦は全て主星系、というより宇宙居住地の護衛にまわしました」

 

契国は今、略奪も侵略も行っていない。

 

水国と陽国から略奪した希少資源と、機械人間の労働力で領内の星系から採掘した一般的資源を使い、猛烈な勢いで軍拡を進めている。

 

『マスター。位相崩壊砲は増産しなくていいの?』

 

相棒の目は、心配と興味が半分くらいの雰囲気で淡く光っている。

 

「楽園管理機構の動き次第だ」

 

俺は、この宇宙で目覚める前のことを思い出す。

 

「力を見せつけた上で自分からは力を振るわず、焦った相手に手を出させてから反撃の形で相手を殴るってのは昔からあるやり口だ」

 

暴力限定のやり口ではない。

 

交渉や議論でも使える、有効な戦法ではあるんだ。

 

「分かっていても腹が立ちます」

 

ドローンの顔に苛立ちと性格の悪さがにじんできている。

 

「これまでは先制攻撃と奇襲攻撃でなんとかできたら、焦りはしたがストレスはたまらなかったもんな」

 

俺も性格は悪い方だし気も短い方だ。

 

『お二人には、血の繋がりはないのですよね?』

 

『マスターとドローンは最低七代前にさかのぼならないと血縁関係はないよ。同じ国に住んでたはずなのにびっくりするくらい無関係』

 

治療や延命や老化を遅らせるために必要なので、俺だけでなく肉人間の評議員は全員遺伝子を徹底調査されている。

 

俺の場合は、子供を作るためのデータとしても必要だしな。

 

『短期間、近くにいただけでこれほど似るのですか』

 

ディーヴァは困惑しながら、俺とドローンからの問いかける視線に気づいて立体映像の隅に少し前の俺とドローンの様子を映し出す。

 

美少年がすごく邪悪な表情をしていて、歳をくっている男もすごく邪悪な表情をしていた。

 

「ドローン、お前、もう少し性格の良さそうな演技した方がいいぞ」

 

「その言葉、そのままケースさんに返します」

 

ドローンは何故か、俺とそっくりな表情と言われて嬉しそうな顔をしていた。

 

『契国の方針は、軍拡を重視した上で楽園管理機構の反応待ちということでよろしいでしょうか』

 

ディーヴァが俺に問いかけ、ドローンも真面目な顔で目で聞いてくる。

 

「それで頼む。いきなり殲滅戦をしかけられてもおかしくない状況だ。他国が攻撃してきたときは、俺の命令を待たずに動いて構わない」

 

「ケースさん。ディーヴァも代表代行にするつもりですか?」

 

『はんたーい!』

 

相棒とドローンは、積極的反対と消極的反対のようだ。

 

なお、相棒は最初から俺を通して独裁できるし、ドローンは最近諦めて代表代行の地位を引き受けてくれた。

 

「担当星系が多すぎるから仕方がないだろう。契国は主星系にある宇宙港や宇宙居住地が中核だが、傘下の地表居住地を見捨てるってのは、よほど追い詰められない限りなしだ」

 

俺の中では優先度が決まっている。

 

それでも、必要もないのに他者を過酷に扱いたくはない。

 

「事態が落ち着くまで、ディーヴァには臨時の代表代行になってもらう。聖女五人組の不利益にならない範囲で、地表の連中にも気を配ってやってくれ」

 

ディーヴァは、俺に対して静かに頭を下げた。

 

言いたいことを飲み込んだ表情の相棒が、一度だけ目をまたたかせた。

 

『マスター。ナイアTEC契国支社のナイアCEOから面会希望が届いてる』

 

「珍しいな」

 

ナイアTECは、契国が契国になる前から大規模な取引を行っていた企業であり、契国のインフラや艦建造に深く関わっている企業だ。

 

既存の仕事を続けるだけで大きな利益が出る立場であり、契国に警戒されて粛清されるという展開を避けるため、大人しくしているのが最も安全かつ利益になる立場でもある。

 

「ドローン」

 

「後のことはこちらでやっておきます」

 

俺が細かく指示を出す前に、ドローンは俺が示した方針に従い契国を動かし始める。

 

「俺の代わりに行くか?」

 

そう尋ねると、ドローンは小さく眉をしかめて大きな息を吐いた。

 

「最近、聖女が届けてくれる料理のおかげかどうかは分かりませんが、体の調子がいいんです。以前はあまり気にならなかったのですが、ケースさん、よくあれに直接会えますね」

 

ドローンの顔が微かに熱を帯びる。

 

性欲かな?

 

「微笑ましいものを見る目を向けられるのも腹が立ちますね。……深刻な話です。あれに色仕掛けされたら、肉人間の男が抵抗できるとは思えません」

 

若い男らしい精力は感じるが、ドローンの目は冷静だった。

 

『マスター! 会うのはやめよう!』

 

相棒が俺に横から抱きつき拘束する。

 

相棒の反対側から、ディーヴァがそっと手を伸ばして俺の腕の袖をつまむ。

 

「話は最後まで聞いて下さい」

 

ドローンは仕事を再開しながら、ちらりと相棒と俺とディーヴァを見る。

 

「ケースさんを除いて、です。怖いほどの色気と美貌とは僕も思いますが、どうしてあれを単に「怖い」と感じられるのでしょうね」

 

「俺にも分からん」

 

相棒との愛があるだけでは、説明しきれない。

 

「相棒。俺がおかしくなりかけたら、俺の意思を無視してその場から連れ出してくれ。そのときはドローン、すまんが俺がもとに戻るまでは契国を頼む」

 

『マスター!』

 

「承知しました。金と物がないのは厳しいですね。替えの効かない人材を危険にさらすしかないんですから」

 

ドローンの表情は苦々しく歪む。

 

「楽な仕事はないってことだ」

 

そう評価されるのは嬉しいことだなと思いつつ、俺はまず相棒とディーヴァに対する説得に集中するのだった。

 

  ☆

 

ナイアTEC契国支社は契国主星系に存在する。

 

弩級艦という巨大艦の整備や建造まで可能な巨大建造施設と、それを防衛するための設備を備えた大型宇宙港まで併設された巨大建造物だ。

 

「お前らなんで着いてきたんだ? 今回、示威行為をするつもりはないんだが」

 

俺が乗り込むサーフボード型巡洋艦を護衛する隊列で、他の二十七隻もナイアTEC契国支社へ向かっている。

 

『お金がないので暇つぶしです!』

 

『司令の護衛って報酬いいので』

 

『艦を作る光景ってわくわくします!』

 

この緊張感のない連中が全員、契国のパイロットの上位五十人に含まれている。

 

「相手は有力者なんだから今回は礼儀正しくしろ。ここは戦場じゃないぞ」

 

はい! という元気だけか良い返事が帰って来た後、俺の耳に聞こえる雑談は止まった。

 

『マスター。この子たち、AI用の通信で雑談してるよ』

 

「そこまで礼儀正しくしろとは言わんさ」

 

ナイアTEC契国支社からの誘導に従い、俺はその場に十四隻を残し、十三隻を率いて宇宙港部分に向かった。

 

  ☆

 

相棒と二十八人の一部を伴い面会してから数分。

 

俺とナイアCEOは、何故か無言のまま向かい合っていた。

 

多種多様な美貌の機械人間を見慣れた俺でも圧倒される美しさと、それを上回る恐怖の組み合わせは、心が柔らかな若い頃に見た恐怖映画を連想させる。

 

「どうされました?」

 

俺がそれだけ口にすると、ナイアCEOは少しの悔しさとそれ以上の困惑を顔に浮かべた。

 

「ケース代表は、本当は上位存在だったりします?」

 

「俺が上位存在なら、もっと契国優位の状況に変えてると思いますよ」

 

そんなことを言われた俺も困惑する。

 

なお、相棒は俺に異常が起きれば即座に連れ去るつもりで俺を注視し、他の十四人は一応警備はしているが雰囲気も行動も見物客気分だ。

 

こいつら、パイロットしか真面目にする気がないな。

 

「失礼しました。今回お呼びしたのは、新たな艦を提案するためです」

 

ナイアCEOの手元で、一隻の艦が立体映像で表示される。

 

執事らしき機械人間から詳細な設計図が入ったメモリを受け取った相棒が、大きく目を見開いた。

 

『マスター、駆逐艦サイズでサーフボード型とほぼ同一性能。操縦室を専用機体を持つAI用のものに替えて、操縦室が小さくなって船体内の肉人間用装備も省いた分、船体を小さくした艦だよ。小さくした分、推進機と跳躍機関を減らしているから、最終的に普通の駆逐艦と同サイズになったみたい』

 

十四人は、あまり喜んでいない。

 

『それと、今回ついてきた子たちにとっては余計な機能がついてる』

 

相棒の解説を聞いたナイアCEOが満足そうに微笑む。

 

「それが今回最大のセールスポイントです」

 

寒気がする。

 

先にトイレをすませるべきだったかもしれない。

 

『パイロットを補助するための装置。これだけ高性能なら、契国のAIパイロットが大勢この艦に乗れると思う。……ところで、マスターの操縦ログをどこで手に入れたのかな?』

 

相棒がじろりと周囲を見渡す。

 

十四人が露骨に目を逸らす。

 

「合法の範囲で情報を集めました。自信作ですよ」

 

ビート板にしか見えない立体映像が、二人の肉人間と、大勢の機械人間を不気味に照らしていた。

 

  ☆

 

『マスター! あいつ嫌い!』

 

契国の宇宙港に戻った相棒が怒りを爆発させる。

 

「態度が最悪だったな」

 

そのかわりに、差し出されたものは魅力的すぎた。

 

『ハカセと別々に確認を行った。ビートボード型駆逐艦の設計には不備もセキュリティホールも存在しない。欠点はサーフボード型と同じ、設計に余裕がなく改造が難しいことだ』

 

「御苦労、元ハカセ」

 

俺は、相棒を宥めながら言葉だけでねぎらった。

 

元ハカセは話を続ける。

 

『ドローン代表代行から伝言だ。マザーボード型フリゲートとマザーボード改型巡洋艦の新規生産を停止し、ビートボード型駆逐艦の生産を開始する。問題があれば至急連絡が欲しい。だそうだ』

 

『マスター、そのドローンから緊急連絡。楽園管理機構が、契国が位相崩壊砲と新型位相跳躍機関を手放すのと引き換えに、二国間の不戦条約を提案してきたみたい』

 

「つまり、ナイアCEOは楽園管理機構の関係者か」

 

サーフボード型もビートボード型も、新型位相跳躍機関との相性が最悪だ。

 

この二つの艦を使っていくつもりなら、新型位相跳躍機関の重要性は低下する。

 

「ドローン、聞こえるか。古代の地球に七人送り返して良いなら、送り返すのを前提の条件で不戦条約に同意して構わん」

 

「五人で構いません」

 

「わたくしも五人で構いません」

 

ドローンとカノンが、俺に通信を入れてきた。

 

「……そうか。交渉は任せた。責任は俺がとる」

 

「はい、いえ、条件を多めに付け加えて要求したところ、即座に同意されました。楽園管理機構は旧水国と旧陽国から撤退するそうです。観測ドローンからの情報とも矛盾しません」

 

連中の意図が読めない。

 

位相崩壊砲と新型位相跳躍機関が連中にとっての禁忌であり、他国にこの二つを禁止させるためなら手段を選ばないだけか?

 

さっぱり分からん。

 

『いたお!』

 

『ケース! 代表! 話! ある!』

 

白犬耳と黒犬耳の機械人間が、侵入の許可されていない宇宙港に出現する。

 

『親分を助けてくれてありがとう!』

 

『感謝!』

 

深々と頭を下げる。

 

しかしすぐに頭を上げて、勢いよくまくしたてる。

 

『新造した機械人間を表で動き回らせるって、正気かお!? 鉄国の本国から、契国を調べろって命令が届いてるお!』

 

『親分のメンツ潰す奴、殺す』

 

耳を除けば人間の外見なのに、ぐるるといううなり声が猛犬っぽい。

 

「相棒、どういうことだ?」

 

『たぶん、第一艦隊の二十八人のことだと思う。脳を除いて全部、僕らの子供用のパーツを使ったから、国によっては機械人間の完全新造になるのかも』

 

相棒が、平静なまま「機械人間」と発言した瞬間、俺は最悪の場合は鉄国全てと戦うことを覚悟した。

 

『メモリ』

 

『残念』

 

冷たい殺意がシロとクロから噴き出す。

 

いつの間にか配置についていたナニーの後ろで、隊列を組んだカノン妹が銃を構えている。

 

だが誰も動かない。

 

『ねえ、二人とも。二人のマスターであるワンオさんとの子供、欲しいと思わないの?』

 

ただ一人、相棒だけが静かに微笑み、善良な人間を破滅へ導く悪魔のように、シロとクロへ誘いをかける。

 

挑発でも、冗談でもない。

 

それが分かる程度に相棒のことを知るシロとクロが思考を暴走させて発熱する。

 

二人は、うなり声ではなく冷却目的の息を激しく吐く。

 

『実はね。脳を肉人間に近づけないでいいなら、もう設計も生産準備も終わってるんだ』

 

強大な力を持つ二人の機械人間が表情を激しく変化させる。

 

冷徹な軍人の殺意の顔から、必死に忘れようとしていた渇望とその実現手段に気付かされた、狂喜の顔へと、変わる。

 

『前回の略奪で脳のためのパーツも揃ったんだよね。ワンオさんの了解が得られたら、僕らの子供に関わったメンバーを紹介するよ』

 

楽園管理機構という最大の脅威は、機械人間新造を問題視しなかった。

 

子供用のパーツを使っただけの二十八人も問題視してしまう鉄国と、子供を作るつもりの相棒と俺は、絶対に相容れない。

 

だから、シロとクロを通じてワンオ氏をこちらへ引き込もうとしている。

 

『大丈夫。今日、僕らの子を作っちゃうから、メンバーは結構暇になるはずだし。迷っているなら、子作りを見学していく?』

 

相棒の甘い声で囁かれたシロとクロは既に戦意を失い、鉄国ではなく自分たちの望みをかなえるために何をすれば良いかだけを、考え始めていた。

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