AI相棒と築く銀河国家戦記 ~初期船一隻でどうしろと?~   作:星灯ゆらり

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コピーの欠落

第70話「コピーの欠落」

 

惑星防衛艦隊が派遣した救難艇がトラクタービームを使い、敵味方の操縦室や艦の残骸を回収している。

 

そんな光景を眺めながら、俺たち夫婦は深刻な話をしていた。

 

『どうしようマスター。銀華の教育費、足りるかな』

 

新造した機械人間の育成ノウハウなど存在しないし、教育中の警備コストも膨大になる。

 

「俺が持っている知識と技術を全部売り払ってでも教育費は用意する。メモリにも苦労をかける。すまん」

 

俺たちが夫婦でしんみりしていると、護衛の二十八人が目をまたたかせたり小首をかしげたりし始めた。

 

『ツッコミ待ち?』

 

『大勝利ですよね?』

 

『知らされていない情報があるのかな』

 

俺たちと二十八人の温度差がひどい。

 

『司令。今回ってすごい大勝利だと思うんですが』

 

艦隊戦で失われる資源は膨大ではあるが、敵艦の残骸からは貴重な技術情報が得られるし、自艦隊の損害状況からより効率の良い艦や戦術を考えることもできる。

 

「特殊な機材を積み込んだグローブ型がいくらすると思ってる」

 

通信には極めて高度な暗号化を施しているが、念には念を入れて、具体的な数字は口にしない。

 

『それは予想できますけど……』

 

『あの、司令。次の方針を決める前に、ドローンさんとかの統治部門の方に相談した方がいいと思います』

 

戦闘中を除けばちゃらんぽらんな古参機械人間パイロットの真面目顔に、俺はかなり混乱した。

 

『マスター。次の命令を出す前に、念のためにドローンに聞いてみよう』

 

メモリの目の光に、強い確信を感じる。

 

「それは構わないが、こいつらはパイロットしかしようとしない奴らだぞ」

 

パイロットとしては非常に頼りになるが、それ以外では全然役に立たないし法律ぎりぎりの行為をすることもある。

 

俺の操縦ログの無断売却とか。

 

『前職、じゃなくて、もとになったAIがパイロットじゃないから、結構ものしりだったりするよ』

 

メモリは露骨に誤魔化そうとしていたので、俺は誤魔化されることにする。

 

「よし。捕虜と残骸を受け取り次第、主星系に戻るぞ」

 

俺が今後の方針を伝えると、二十八人は『休みだ!』とはしゃいでいた。

 

  ☆

 

直線での速度と加速が得意なグローブ型戦艦の部隊と、エネルギーを速度に集中すれば高速艦になるビートボード型巡洋艦の部隊と、ミサイルの代わりに跳躍支援装置を積んだグローブ型戦艦一隻の組み合わせは、戦場以外でもとても速い。

 

主星系へ帰還するまで仮眠をとる必要もないというのは、本当にありがたい。

 

主星系に近づくほど航行中の宇宙船の数が増え、艦隊の全速を出すのが難しくなる。

 

頻繁な加減速を行えば全速の九割ほど出せる自信があるが、戦闘中でも緊急事態でもないのに疲れる操縦と指揮はしたくない。

 

「ケースさん!」

 

まだ主星系外縁部なのに、優先度が極めて高い通信が届く。

 

通信で見たドローンの表情は、喜びというには熱意と狂気がありすぎた。

 

「さすがです! これで一気に楽になりました」

 

「お、おう」

 

俺は、ドローンに威圧されたかのように、操縦室で一歩下がってしまった。

 

『ドローン。どういうこと?』

 

メモリの言葉はそっけないが、メモリ視点で「役に立っている」ドローンへの態度と目の光は柔らかい。

 

「社会の大部分を占めている馬鹿は、分かり易いことしか理解しないし理解しようとしないんです」

 

ドローンの笑みが冷笑に変わる。

 

「馬鹿が理解できるのは、契国の艦隊が鉄国の強い艦とパイロットを無傷で撃破したという事実だけです」

 

「すごく高価な装備が故障したんだが」

 

『正直、この編成の艦隊、緊急時以外は動かしたくないよ』

 

俺たちの反論を聞いたドローンは「しかたないなあ」という顔になる。

 

「それが理解できる人間は少ないんですよ。契国は多少はマシですが、鉄国だと割合的には本当に少数のはずです」

 

ドローンがこれほど詳しく説明する相手は、メモリ、俺、カノンくらいだろう。

 

『ひょっとして、宣伝工作?』

 

ドローンが微笑む。

 

顔が良いから性格の悪さが強調されている。

 

「契国内での宣伝は、国民を安心させるのを目的に。鉄国や周辺諸国への宣伝は、脅威を感じさせると同時に、契国の誠実さと上品さを認識させるのを目的にします」

 

戦争をふっかける前に宣戦布告をするだけで上品になり、戦闘が終わった後にパイロットを救助するだけでも非常に誠実だと評価されるんだから、俺は今もこの宇宙の価値観についていけないことがある。

 

「ケースさん。ディーヴァとワンオ氏を借りますが、いいですね?」

 

「ディーヴァが国内担当でワンオ氏が鉄国担当か。鉄国に対する挑発のしすぎにならないか?」

 

「契国は鉄国本土に手を出していません。こちらの「手打ちにしたい」というメッセージは伝わっていますよ。……どうせ暗殺部隊を送り込まれるなら、いつ頃来るか分かった方がマシです」

 

『暗殺部隊を倒したら、鉄国と停戦できそう?』

 

「今の限定的な戦争から、小競り合い程度に落ち着かせることはできると思います」

 

自信たっぷりのドローンに、俺は疑問に思ったことを口にする。

 

「鉄国は機械人間の新造を許さないんじゃなかったか?」

 

銀華を諦めるくらいなら、俺は契国を使い捨てでも銀華の敵を殺す。

 

敵がドローンやカノンなら、一度だけ警告はするがな。

 

「非常に、言いづらいのですが」

 

ドローンからは俺たち家族に対する悪意は全く感じられず、それなのにとても嫌な予感がした。

 

「銀華さんの能力が高くないので、事実を知らせるだけで鉄国の警戒心が激減すると思うんです」

 

空気が変わった。

 

「カノン妹たちのとのシミュレーターでの対戦成績は、昨日の時点で三百位代まで低下しています。一般教養の順位はもっと下で、これまでずっと下がり続けています」

 

「なぜ……。ドローンが嘘をついているとは思わないが、何が原因だ」

 

深刻な故障や根本的な設計ミスなど、考えたくもない想像が頭の中を埋め尽くす。

 

メモリの目の光は激しい動揺で明滅している。

 

「単純に、僕やハカセが勧めた講義を受けずに、遊んでます」

 

独裁者夫婦による政府高官糾弾の空気から、出来の悪い生徒についての父母面談の空気に変わっていた。

 

俺は自分の手で顔を覆う。

 

とても熱い。

 

議席が欲しいなら、勉強もして欲しい。

 

『あの、ドローン? 過激な冗談は止めて欲しいな』

 

メモリの声は動揺を隠せず、ところどころ音程が狂っている。

 

「それに加えて!」

 

ドローンが声を張り上げる。

 

お互い時間が貴重な立場なので、茫然自失なメモリと俺に時間を無駄遣いさせたくないのだ。

 

「成長速度が、肉人間の平均と比較しても平凡です。予想される寿命の長さを考えると長期的には深刻な問題にはならないと思いますが、短期的に見ると銀華さんと新造機械人間の評判に著しい悪影響があるかもしれません」

 

ドローンの、気遣いにあふれた声だけが響く。

 

「心身の健康に、問題は?」

 

俺は渾身の気合いを込めて手を顔から離し、メモリの熱い背中を撫でて慰めながら娘の成績と生活態度に向かい合う。

 

「その点だけは問題ありません。カノン妹たちやディーヴァとの関係も良好です」

 

『ディーヴァとは不仲でいいのに……』

 

契国の代表としては、どうコメントすべきか迷う。

 

メモリと俺は、代表や議員としての仕事をすべてドローンに丸投げし、娘が遊んでいる場所へ急行した。

 

  ☆

 

「お久しぶりです、先生」

 

「先生、弩級艦で空母作らないんですか?」

 

宇宙港のシミュレーターから出てきたのは見慣れた顔だった。

 

まあ、カノン妹は服装と髪型は様々でも顔は同じだが。

 

「青百合と黒椿か」

 

ARメガネに、カノン妹の名前と所属と現在の評価が表示される。

 

所属はカノンの直属艦隊。

 

カノン妹限定ではなく、契国内シミュレーターランキングで百位代前半。

 

銀華とは別格の強さだ。

 

「頑張ってるな」

 

「それほどでも……」

 

「また艦載機を動かしたいです!」

 

照れる青百合に、積極的に欲望を表に出す黒椿。

 

外見とは違って性格は様々らしい。

 

「空母と艦載機の件は後でな。銀華がどこにいるか知らないか」

 

メモリと俺が説教目的で急行しているのに感づいた銀華は、ここ周辺の情報を改ざんして姿を隠してしまった。

 

議席はまだ渡せないからそれ以外の権利を色々与えたのだが、それを悪用されている。

 

「ひょっとしてこの展開っ」

 

「宮廷もののアニメみたい!」

 

カノン妹の中でもエリートな二人が、アニメ趣味の生徒のような反応をしていた。

 

『見つけた!』

 

『にゃっ!?』

 

メモリのブラフにひっかかった銀華が、ハイエンド機械人間の腕力で張り付いていた天井で声をあげる。

 

『見つけたぁ』

 

にやりと笑って天井を見上げたメモリは、新しい魅力に溢れている。

 

『お母さんがお化けになったぁっ』

 

煽る意図はなく本気で涙目になっている銀華は、怠惰なのは問題だが素直に育っているように見えた。

 

  ☆

 

子供を褒めるのは楽しく、叱るのは苦行だ。

 

銀華が受け止められる限界を超えない程度に、どうしてこのままだと銀華に不利益が生じるのか言い聞かせ続ける十数分は、大艦隊を十数分指揮し続けるのよりずっと大変だった。

 

「一晩じっくり考えてみなさい。明日もう一度聞くから、そのときは答えを聞かせてくれよ」

 

俺は精一杯穏やかに言ったつもりなのに、銀華は怯えた様子で体を震わせた。

 

その背後では、叱られたわけでもないのに銀華以上に怯えている青百合と黒椿がいる。

 

エリートで過酷な実戦を何度も経験してきたのに、なんでそんなに怖がっているのかさっぱり分からない。

 

『銀華。だいじょうぶだからね』

 

『おかあさぁん……』

 

メモリが銀華を連れて行く。

 

一瞬だけ目を向け合い、メモリが褒める役を、俺が叱る役を担当することを再確認した。

 

「そこの二人」

 

「ひゃいっ」

 

「今以上に任務に精励します!」

 

この状況で気合いの入った敬礼をされても、困る。

 

「これは契国代表ではなく一個人としての質問だ。どんな回答をされても賞罰には一切関係しない。……俺、叱りすぎか?」

 

「えーっと」

 

「先生……ええと、代表じゃなくて三人組の方の先生の方が厳しいけど、厳しさの種類が違うかなって」

 

「そうか」

 

よく分からん。

 

「話は変わるが、銀華の面倒を見てくれているようだな」

 

代表の権限で監視カメラのログを確認すると、末の妹を可愛がるように銀華の面倒を見るカノン妹たちの姿が映っていた。

 

まあ、甘やかし過ぎの所もあったが、カノン妹たちは任務として銀華の面倒を見ていたわけではないので責めることはできない。

 

俺が、少なくともカノン妹たちに対して怒っていないことは理解していたようで、二人とも落ち着きを取り戻す。

 

「いつか先生を倒すための、練習相手ですから」

 

「銀華ちゃんって操縦は弱点ばっかりだけど、操縦の癖は先生にそっくりなんです。先生も、こういう状態から練習して上手になったんだって思ったら、操縦技術の磨き方がなんとなく分かった気がしました」

 

なるほど。

 

教える側になって、一人のパイロットとしての技術も向上したわけか。

 

「たいしたもんだ。賞罰には一切関係しないと言った以上、ボーナスや考課への加点はできんが……。俺個人に出せるもので何か欲しいものはあるか」

 

「実機での演習! できればサーフボード型で!」

 

「先生と直接戦わせてください!」

 

満面の笑みを浮かべて目を輝かせるとカノンを幼くした顔になる。

 

こいつらも物理的にカノンの血を引いているのがよく分かる。

 

俺が消費する時間と体力を考えると大きすぎる報酬のような気もするが、カノン妹たちの現在の実力を肌で感じるのは悪くない。

 

俺が頷いたそのとき、いつもの番組がシミュレーターの近くのディスプレイに表示された。

 

『契国国営放送総合ニュースの時間になりました。司会進行はわたくしアナウンサーが。解説はハカセです』

 

『俺がハカセだ!』

 

ハカセが、何故か解説ではなくゲストの席に座っている。

 

『最初のニュースは、先程発表されたハカセの論文についてです』

 

『俺が持っている教養番組で詳しく解説するが、一般教養として最低限知っておくべきことをここで伝えてやる!』

 

ハカセの言動は傲慢だ。

 

ただしその傲慢は、新型跳躍機関や肉人間の遺伝子を忠実に反映したパーツの開発などの功績を考慮すると謙虚でもある。

 

『肉人間が、物理的ではない力も持っていることが分かった。ケース代表を百とすればドローン議員は九十、聖女たちは七十前後、カノン妹たちは四十程度、一般的な地表の住人は十未満だ』

 

機械人間であるハカセの発言としては異常であるはずなのに、何故か説得力を感じる。

 

『ケース代表のパーツがきっかけになった研究だとお聞きしましたが』

 

『その通りだ! 最初期はパーツの性能の低さが原因の幻覚か幻聴と思っていたのだがっ……詳しい解説は教養番組に回すぞ!』

 

ハカセは一度言葉を止め、大きく息を吸ってから、はっきりとした発音でその事実を告げる。

 

『同じコピー元からコピーしても、後でコピーされた個体ほどこの力が衰える。別のコピーが生きている状態で作った新たなコピーは特に衰えが激しい! そして、ケース代表の勘の良さや、聖女の特殊能力などは、この「力」に比例した強さを持つ。必要もないのにコピーをするのは絶対に避けるべきだ!』

 

俺は、ハカセの性格をよく知っている。

 

ハカセは善意では言っていない。

 

研究対象の劣化を避けるため、研究対象の劣化防止目的で話している。

 

「先生。これって」

 

「つまり、どういうことなんでしょう、先生?」

 

「戦死を可能な限り避ける指揮や操縦は、もともと心がけていることだからな……」

 

さっぱり分からない。

 

三人で首をかしげてハカセの発言について考えていると、ARメガネにメモリから「今日は一日銀華と一緒にいるから、ごめんね」という連絡が表示された。

 

つらい。

 

「先生?」

 

「なんでもない。お前たちに時間があるなら、今から実機で演習するか?」

 

可愛らしい歓声が、野蛮な雄叫びに感じられた。

 

  ☆

 

護衛のサーフボード型巡洋艦が二十五隻が周囲を固め、その外側に多数の観測ドローンと偵察ドローンと見物客が乗る宇宙船が浮かんでいる。

 

三人で個人的にやるはずの実機演習は、国家事業というほどではないが、一大イベントになってしまった。

 

一般的な巡洋艦三隻で行う演習としては広大な、高速高加速のサーフボード型三隻で行う演習としてはやや狭い宙域で、俺と青百合と黒椿がそれぞれ操縦する巡洋艦が複雑怪奇な戦闘機動を延々続けている。

 

「若いと体力があって集中力が続くな」

 

二人がカノンから引き継いだ射撃技術は凶悪さを増している。

 

俺が限界まで加減速を繰り返しながら距離をとって被ロックオンを外しても、艦載コンピューターの助けを借りずに平然と当ててくる。

 

「当たってるのに当たらない!」

 

緑のレーザーが位相障壁が分厚く展開された箇所に当たり続けるが、船体装甲に届かない。

 

位相障壁は徐々に薄くなり、しかし穴が開く前に距離をとられて振り出しに戻る。

 

「そりゃ、どこに当たるとまずいかは分かるさ」

 

しかし疲れてきた。

 

慣性制御にまわすエネルギーを減らして位相障壁にまわしているので、加減速のたびに強い重さに耐えるため体力を消耗する。

 

「これでっ!」

 

もう一隻のサーフボード型が、衝突も辞さない速度で俺の艦に迫るが……。

 

「本番だと眼の前の敵以外からも攻撃が飛んでくるから、広範囲を警戒することを忘れるなよ」

 

これまで使っていなかった眼球型レーザー砲塔で、比較的位相障壁が薄い部分を撃ち抜いてその下にある推進機を一つ焼き焦がす。

 

推進機が一つ壊れた程度なら戦闘能力にほとんど変化はないのだが、機体の性能を限界近くまで引き出す操縦をしているときは別だ。

 

「やばっ」

 

機体の制御に失敗した黒椿のサーフボード型が、きりもみしながら偵察ドローンの密集地へ吹っ飛んでいった。

 

「二対一なのにっ」

 

的確な相対距離を維持して青百合の艦がレーザーを撃ってくる。

 

操縦室がある場所を狙う殺意は、まさしくカノンの妹だ。

 

「それはな。お前らは長距離射撃が得意なのに、殴り合うなら近距離戦になってしまうサーフボード型に乗ってるからだよ」

 

グローブ型同士での実機演習なら、もう少しいい勝負ができていたはずだ。

 

「憎い……。わたくしがケースさんにお願いしても勝負を受けてもらえないのに、勝負ができている妹が、憎い……」

 

ちらりと聞こえたカノンの声が、とても怖い。

 

「ハカセ、聞こえるか。前の放送でカノンの数値を言っていなかったが、今いくつだ」

 

『百二だ! 大規模な戦闘のたびに少しずつ上昇している!』

 

ハカセからの返答の音声が乱れている。

 

極めて強力な暗号化をされているからだ。

 

「まさか」

 

『肉人間パイロットの殺害が力の上昇に繋がる可能性は否定できない!』

 

「この情報を公開しなかったハカセの理性に感謝する」

 

人倫につばを吐いて強くなる方法を思いついてしまい、俺は自己嫌悪に襲われる。

 

『マスター!』

 

通信で届けられたメモリの声には、強い緊張感があった。

 

『鉄国の小規模艦隊が主星系に接近中。元ハカセがクラッキングを成功させたの。これを見て』

 

別々の操縦室に乗った、カノンやドローンやワンオ氏にしか見えないパイロットが、それぞれ数人で合計十人。

 

「実機演習は終了だ! 残存エネルギーの比率の差で俺の敗北として記録しろ!」

 

このまま戦いを続ければ俺の勝ちは動かないが、この状況で演習を続けるほど、俺は狂ってはない。

 

猛烈に抗議してくる青百合と黒椿を無視して、俺は、顔面がひきつっているのを自覚しながら、メモリが送信してきた画像を何度も再確認する。

 

『全員、乗っているのは汎用巡洋艦。たぶん完全手動可能な設定で、パーツも全部高級なの使ってる』

 

「超遠距離からのミサイルの物量攻撃で押しつぶしたい……」

 

あの三人の才能と能力は良く知っている。

 

ハカセが見つけた「力」が激減していたとしても、あの三人の操縦技術が敵に回るのは恐怖でしかない。

 

『今ドローンが準備させてる。マスターはそれが失敗したときに備えて艦隊を編成して!』

 

これまで、パイロットの質で周囲を圧倒していた契国が初めて遭遇する、強敵が迫っていた。

 

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