AI相棒と築く銀河国家戦記 ~初期船一隻でどうしろと?~   作:星灯ゆらり

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命は、だいじ、だよ!

『ミサイルが外れました!』

 

報告は、予想通りの内容ではあった。

 

いくらかかったか知っている俺は、精神的衝撃で薄れかけた意識を必死に繋ぎ止める。

 

『マスター。本来、ミサイルってそんなに当たらないものなんだけど、僕たち当たるのが当然と思っちゃってるよね』

 

「カノンや三人組は当てまくってるからな」

 

俺はサーフボード型に乗ったまま、宇宙港だけでなく主星系のあちこちから届く報告に目を通している。

 

『銀華はワンオさんに預かって貰ったよ』

 

操縦室から艦に通じるドアが開き、銀の長髪を後ろでまとめたメモリが入ってくる。

 

先程までのは通信越しでの音声だ。

 

『本当は、家族で一緒にいた方がいいんだよ?』

 

「すまん。戦力が足りないんだ」

 

契国の主星系は、大勢のカノン妹が教育と訓練を受ける場所であり、グローブ型やビートボード型が量産される大工廠であり、自分専用の体を求めるAIが最初の体を得て機械人間になる星系だ。

 

駐留する戦力も増加する戦力も呆れるほどに多く、しかしその守りは完璧とはほど遠い。

 

『位相崩壊砲対策で、宇宙居住地や工場や宇宙港の距離が結構あるもんね……』

 

全ての拠点を守るために、多くの戦力が必要な星系なのだ。

 

「暗殺部隊なら、帰還のことなど考えずに攻撃してくるはずだ」

 

帰還を諦め、ひたすら加速した上で一撃離脱に徹するなら、とんでもない脅威になる。

 

暗殺部隊十隻、対、主星系にある拠点の一つの防衛戦力という戦いになってしまう。

 

しかもそのパイロットが、ワンオ氏やカノンやドローンのコピーが合計十人。

 

その上、その十人が乗っているのは、ワンオ氏が鉄国本国にいたときに乗っていた巡洋艦だ。

 

『マスター。鉄国の汎用巡洋艦って、高性能だけど値段が高すぎる艦だって元ハカセから聞いたんだけど』

 

メモリの目には困惑の光が灯っている。

 

契国の研究職の発言と、鉄国の高治安星系で見たワンオ氏の汎用巡洋艦の戦いぶりが一致しないのだ。

 

「使いこなすのにアホみたいに高度な操縦技術が必要なだけだ。射程も癖も違うレーザーやレーザーキャノンやミサイルを同時に扱いながら回避や位相障壁の操作もするなんて……無理とは言わんが並行して指揮までするのは俺には不可能だ」

 

『ワンオさん、それに加えて、シロとクロの指揮までしてたよね』

 

「そうなんだよな……」

 

ワンオ氏が敵に回ったら暗殺したくなる気持ちは、非常によく分かる。

 

敵に回らないよう、もっと好待遇をしておけとは強く思うが。

 

ドローンとの通信が繋がる。

 

「すみませんケースさん。失敗しました」

 

通信越しのドローンは悔しそうだ。

 

「自分のコピー相手の戦いというのも楽しいですね」

 

同じく通信越しのカノンは上機嫌だ。

 

ミサイルを用意したのはドローンだが、狙いをつけたのはカノンなのにこの態度。

 

何が琴線に触れたのやら、だ。

 

「わたしくしの狙いを読んで躱したのだと思います。最後の方はいくつか至近弾がありましたし、おそらくわたくしのコピーは消耗が激しいはずです」

 

そう言うカノンは、特に消耗したようには見えない。

 

「わたくしも、鉄国のパイロットスクールを卒業した直後はあのような性格で能力だったのでしょう」

 

まるで、敵艦に乗るパイロットを直接見たかのように語る。

 

一度ハッキングには成功したが、元ハカセを含む非戦闘員の安全な場所への避難を優先したので、今は敵艦の位置程度しか分からないはずなのにな。

 

「それが姉さんの能力ですか?」

 

「学術的なことはハカセたちの研究に任せましょう。今、重要なのは、主星系の防衛です」

 

闘争と勝利のために生きているようなカノンではあるが、仕事での判断ミスはとても少ない。

 

「普段からこのくらい冷静でいてくれたら……」

 

ドローンは沈痛な表情でつぶやいてから、真剣な表情になる。

 

「主星系以外でも鉄国の動きがありました。以前一番さんが乗っていた、位相崩壊砲を搭載した高速艦と同型の可能性がある艦が、鉄国星系に隣接する契国星系に接近中です」

 

『はったりだね』

 

「ブラフでしょう」

 

メモリもカノンも即断する。

 

あの艦は、シロとクロに鹵獲され後に鉄国本国へ送られた。

 

鉄国の技術力なら同等の性能の艦を用意することは簡単なはず。

 

しかし、今の情勢であんな性能の艦を戦場へ送り込むのは、絶滅戦争を始める宣言のようなものだ。

 

さすがにそこまでは狂っていない、と思いたい。

 

「僕もそう思います。しかし無視すると、最悪の場合、契国内で裏切りが発生します」

 

主星系は問題なくても、危険に晒されたと思った地方の星系や、鉄国が「本物」を送り込んできたときに主星系から見捨てられると思った地方の星系が、反乱や敵国への内通をしかねないと、ドローンは言い切った。

 

「一番さんには機械人間パイロットの艦を任せて遠方の星系防衛に向かわせました。三人組には姉さんの妹の艦を任せてそれより近い星系に向かわせています」

 

機械人間かどうかで分けたのは、耐えられる加速の上限が違うからだ。

 

ドローンの事後報告に対し、俺とカノンは即座に承認を意味する信号を返す。

 

『マスター。十隻が加速した。これで、あの十隻が自力で停止するのは不可能になったと思う』

 

「打ち落としても残骸が質量攻撃になる速度です。残骸全てを打ち落とすのは、わたくしでも成功率は四割程度です」

 

だいたい撃ちとすだけでいいなら七割程度になりそうだが、重要なものばかりの主星系で「三割でどこかに甚大な被害」というのは無視できないリスクだ。

 

今回の鉄国の作戦は、倫理的にはクソそのものだが、契国に対する嫌がらせとしては極めて有効だ。

 

ワンオ氏、カノン、ドローンが死んだ後、契国でコピーを作ってもハカセが言う「力」が酷く劣った個体になるようだしな。

 

『マスター』

 

メモリが、今まで俺が見たことがない表情と目の光をしている。

 

『銀華が話したいんだって』

 

俺は、声をひそめてメモリに問いかけた。

 

「ひょっとして銀華に中継してたのか? 銀華にはまだ刺激が強いし、違法じゃないが情報管理の面で問題がないか?」

 

『でも、リアルタイムで、マスターが現役パイロットとして働いてる姿を見せてあげられる機会は、滅多にないもん』

 

それを言われると反論しづらい。

 

敵国に傍受される危険を考えると、主星系にいる銀華にリアルタイムで見せるのは危険が大きい。

 

また、俺がパイロットとして現役でいられる残り時間は、どんなに甘く予測しても十年未満だから、今回のような機会は本当に貴重だ。

 

「いいじゃないですか」

 

ドローンは軽い口調で、しかし冗談の気配は皆無だ。

 

「銀華さんは選抜されて評議会議員になるのではなく、ケースさんから受け継いで議員になるんです。選ばれるための勉強ではなく、議員としての能力を伸ばすための経験を積む方が時間を無駄遣いせずに済みます。どんな仕事か直接知るのは最高の教育ですよ」

 

操縦技術を除けば俺より圧倒的に優れた才能を持ち、おそらく権力者の家系に生まれたと思われるドローンの言葉に、俺は説得力を感じた。

 

「……ドローン。まだ時間はあるか」

 

「どの作戦になっても問題ないよう準備を進めておきます。姉さんも手伝ってください」

 

ドローンとカノンの通信が、繋がっているだけの状態になった。

 

『銀華。話していいよ』

 

『う、うん……』

 

それまで何も映っていなかったディスプレイに、銀華の上半身が映る。

 

美しく整えられた銀の姫カットや、動きやすさを優先したデザインなのに質の良さが分かる普段着。

 

もう少しメモリに似せても良かったかなと思う程度には俺に似た顔立ちに、緊張はしていても荒んでも折れてもいない真っ直ぐな目。

 

メモリとの出会いだけでもこの宇宙での苦労を無視できる幸運だが、今の銀華の姿を目にすることができたことは、後の人生が苦痛に満ちた地獄と化しても満足できるほどの奇跡だ。

 

『お父さん。ワンオおじさんと、ドローンお兄ちゃんと、カノンおばさま……じゃなくてカノンお姉ちゃんのコピーさんたち、助けられないかな?』

 

無関係な人間を思いやれるのは実に素晴らしい。

 

そのために必要なコストや後の影響をあれこれ考えるようになるのは、もっと成長してからでいい。

 

銀華は緊張したまま俺の返事を待っている。

 

全力で褒めてやりたい気持ちが心と体にあふれ、俺の口元がむずむずする。

 

だがここは全力で我慢だ。

 

『マスター、変な顔になってる!』

 

メモリが小声で注意してくれるが、残念ながらこれが精一杯だ。

 

「助けることは可能だ」

 

俺の回答に、銀華が笑顔を浮かべる。

 

「だがな銀華。命をかけて戦う相手を助けようとするのは、お父さんとお母さんも、ドローンもカノンもいつより危険な戦いをすることになる」

 

『あ……』

 

銀華の笑顔が曇る。

 

俺の胃がきりきりと痛む。

 

「危険な戦いをすることは別に構わない。お父さんたちは全ての戦いに勝ったから今ここにいる」

 

メモリの目が「僕の「地図」を使って勝てない戦いは回避してきたよね」と言っている気がするが、ここは見栄をはらせてもらう。

 

「だから銀華。そいつらを助けることにどんな価値があるか、銀華自身の言葉で俺に伝えてくれ」

 

叱る時を除いても俺は「こわい」らしいから、精一杯穏やかな態度と声で銀華に語りかける。

 

それでも銀華は息を飲んで、じわりと涙まで浮かべたが、俺から目を逸らさずに、言った。

 

『命は、だいじ、だよ!』

 

銀華は、つっかえつっかえ言って、言い終えてからその場にへたり込みそうになって、画面に割り込んだワンオ氏に支えられていた。

 

「ワンオさん、話があります」

 

なんで俺はそこにいない。

 

『マスター、今は我慢!』

 

「儂に殺気を向けるのはいいが今は抑えろ。子供に向けてはならん顔になっておるぞ」

 

『にゃー』

 

気力が尽きた銀華が、ワンオの野郎に体重を預けて甘えている。

 

嫉妬と憎悪という感情を、久しぶりに腹の底から実感した気がした。

 

「方針は決まりましたね」

 

俺の目からワンオの野郎を隠すように、ドローンの立体映像が表示される。

 

「逃げようとしたらトラクタービームで捕まえてから、爆発物や毒やデータ的な毒が仕込まれていることを前提に陸戦隊で捕獲してもらう作戦でいいですか?」

 

「んぐっ……。分かった。銀華、必ずお父さんが捕獲してお前の前に連れて来てやるからな!」

 

俺は、銀華以外から、呆れた視線を向けられていた。

 

  ☆

 

汎用巡洋艦との距離が、馬鹿げた速度で縮まっていく。

 

こちらの戦力は、損傷した艦を予備の艦と交換したサーフボード型巡洋艦二十八隻と、それぞれドローンとカノンが乗るグローブ型戦艦が二隻だ。

 

敵は凄腕パイロットのコピーが乗っているとはいえ十隻。

 

卑怯とすらいえる戦力差だが、そんなことを気にする奴はこの場にはいない。

 

『司令! 陸戦隊の人が真面目です』

 

「それが普通だ。陸戦隊の連中に迷惑をかけるなよ」

 

『はい!』

 

『努力します!』

 

二十八人は相変わらずだ。

 

俺が操縦中のサーフボード型にもサブパイロットして一人乗っているが、こいつもこいつでメモリと雑談している。

 

『列強の個人的に狙われないなら、私も一人作るかもです』

 

『あなた最期までパイロットするんじゃないの!?』

 

『メモリ様、私だって操縦以外のこともたまには考えますよ』

 

メモリに友人がいるのは良いことだ。

 

それが男ならどきどきして俺の寿命が減りそうだがな!

 

「ケースさん。交戦可能距離まで主観時間で後少しです」

 

いつもはメモリがナビ役をこなすが、今日はドローンがしてくれるようだ。

 

「よし」

 

気持ちを切り替える。

 

銀華によって心が浮き立つ父親から、膨大な敵を撃破し多数の敵パイロットを殺してきた契国の独裁者に変わる。

 

「そこの艦隊! 俺は契国の国家元首をやってるケースだ! どうせ脅しやら催眠やら他爆装置なんかで降伏できなくなってるだろうから降伏しろとは言わん。だからよ。こっちの爆弾処理班に捕まったときは協力してやってくれ。以上だ!」

 

敵艦隊が進路と速度を変えないまま、艦首をこちらに向ける。

 

「……感謝する」

 

ただ一人、こちらに通信をしてきたワンオ氏のコピーは、ワンオ氏と違ってすり切れきった目をしていた。

 

「敵ミサイル発射……高速! 姉さんと同じく高級パーツ使い捨て戦術です!」

 

あれって、真似しようとしても高価なパーツを壊すだけで終わる奴がほとんどで、俺やドローンは一応可能だが普通に戦った方が強いという結論が出たんだよな。

 

二十七隻のサーフボード型が前へ出ながら、多数搭載された眼球型レーザー砲塔を別々のミサイルへ向ける。

 

緑のレーザーによる豪雨が、ミサイル全てに当たり続けて装甲を溶かして中身を剥き出しにさせ、やがてその中身も熱に耐えきれずに融け崩れる。

 

そんなレーザーとミサイルの攻防の中をぎりぎりですりぬけ、四隻の汎用巡洋艦が突っ込んで来る。

 

「だめっ」

 

「ドローン!」

 

敵後方から聞き慣れた声がいくつか、暗号化が解除された状態で俺の耳へ届いた。

 

「うるさい!」

 

「姉さんもどきがっ」

 

敵の通信で使われている暗号が特定され、突撃してくる四隻からの声も聞こえるようになる。

 

突撃してくるのがドローンコピーで、後ろからミサイルをぶっ放したのがカノンコピーか。

 

こちらのサーフボード型二十七隻は敵ミサイルの処理に手一杯で、これが終わるまでは動けない。

 

「情けない。それでも僕のコピーですか」

 

ドローンは、わざと暗号化を解除して敵に聞こえる形で通信する。

 

「お前さえいなければ!」

 

「貴様だってコピーだろう!」

 

「オリジナルは鉄国のパイロットスクールの教育課程で死んだ! 僕たちは全員死人なんだよ!」

 

突撃してくる四隻のミサイル発射筒は空だ。

 

高性能なコンピューターでも困難な速度で狙いをつけ終えてレーザーとレーザーキャノンでドローンのグローブ型を狙う。

 

そのエネルギーは膨大であり、正面装甲が厚いグローブ型でも耐えきれない。

 

そのまま受けてしまえば、だが。

 

「仮にそうであっても、ケースさんから契国代表代行に任命されたのは僕で、君たちじゃないんですよ」

 

ドローンは「ふん」と鼻で笑った。

 

ドローンのグローブ型は、元からある対空砲の倍近い対空砲が背面に増設されている。

 

カノンほどではないがドローンも射撃は巧い。

 

膨大な熱容量を誇る対空弾をレーザーの進路へ打ちだし、その威力を激減させていく

 

「お前ーっ!」

 

ドローンのコピーに余裕がなさ過ぎて、少しだけ心が痛む。

 

メモリやサブパイロットも、あきらかに殺る気だが沈痛な態度になっている。

 

もっとも、そんな感傷とは無縁な奴もいる。

 

「情けない。それでもドローン弟ですか」

 

カノンのグローブ型の指が別々の生き物のように動く。

 

その指にそれぞれ複数搭載されているのはトラクタービーム用の砲塔で、本体に内蔵されているのはトラクタービームの強化装置だ。

 

恐るべき短時間で狙いをつけられてトラクタービームに捕らわれた汎用巡洋艦が、破滅的な速度から自力でも停止可能な速度に急減速させられる。

 

「相変わらずのネーミングセンスだな」

 

俺は、四隻とは別方向から突撃してきた二隻を迎撃中だ。

 

汎用巡洋艦はサーフボード型やビートボード型ほど尖った設計はしていないので。回避と防御に集中すれば一対二でも時間稼ぎは容易なはずだ。

 

なのに、各種兵器の有効射程を知り抜いた攻撃が、二隻による完全な同時攻撃で俺のサーフボード型に迫っている。

 

『マスター、レーザー砲塔は任せて!』

 

『メモリ様、そっちは私がやります。司令が指揮する余裕がなさそうなのでメモリ様が指揮を!』

 

三人がかりでやっているのに、後少しの時間で位相障壁を削り切られそうだ。

 

「情けないのは貴方たちもです」

 

「きゃっ」

 

カノンのトラクタービームに捕らわれた艦から、声は同じなのに人格が異なるとしか思わない気弱な声が響く。

 

「好き勝手にしようがしまいが差がないこの宇宙で、いつまで顔を伏せて体をかがめているのですか。わたくしのように、命をかけて好きに生きればよいのです」

 

無謀で傲慢な言葉で態度だ。

 

しかしカノンは実際にそう戦い、勝ち残った。

 

俺も気合いを入れないと、カノンに取り込まれてしまいそうなカリスマがある。

 

『司令! ミサイル処理完了、今から援護します!』

 

死角から迫る緑レーザーの群れを、汎用巡洋艦十隻が躱す。

 

躱した場所には、陸戦隊にしか見えない人形が漂っているがこれはブラフだ。

 

二人のワンオ氏コピーは気付くが、カノンやドローンと比べて戦闘経験が浅い他のコピー達はブラフであることに気付けず、動揺する。

 

『気分が悪いお』

 

『教育費、稼ぐ、大事!』

 

そこまでやれば後は本命の仕事だ。

 

操縦室の中に位相跳躍した犬耳機械人間が、コピーパイロットを死体袋じみた専用容器に放り込み、内側から操縦室を外までぶち抜いて容器を放り出す。

 

回収するのは、十分に離れた場所に待機中の陸戦隊だ。

 

爆弾処理にも各種の毒などにも精通した彼らは、実に手際よくコピーパイロットもその中に仕込まれていたものも無力化する。

 

「コピーだろうが何だろうが、自分で考えられる奴には人権を認める! 今断っても、娘と一緒にねちっこく亡命を勧めてやるから覚悟しろよお前ら!」

 

テンションが上がった俺の高笑いが響く中、一人、また一人とコピーパイロットが抵抗を諦めていく。

 

「せめてケースさんのコピーがいれば、もう少しやる気が出たのですが」

 

カノンがそんなことを言う。

 

「あれでやる気が出てなかったのか」

 

俺のテンションが一瞬で普通に戻った。

 

「姉さんのたわごとは聞き流すとして……。なんでケースさんのコピーがいなかったんです?」

 

「わたくしも同じ疑問を持っています。それはそれとして、宇宙港に戻ってから話があります、ドローン」

 

「相変わらず仲が良いな」

 

俺は少し考えて、話す内容をまとめる。

 

「パイロット再生保険の更新期限が切れてもそのままにしているからかもしれん。規約を読んだんだが、内容がすごく怪しくてな」

 

古代の、比較的平和で温和な国でも悪質な契約はどこにでもあった。

 

倫理観のない宇宙では、ある程度信用できる規約なんて、契国でしか見たことがない。

 

「ところ、その、なんだ」

 

オリジナルとかコピーとか、重すぎる話題にどう触れるべきか迷う。

 

「僕個人は問題ありませんよ、ケースさん。正直、僕がオリジナルのコピーであった方が気が楽なくらいです」

 

ドローンは乾いた笑みを浮かべて「ハカセの発表した論文が全部間違いだといいんですけどね」とつぶやいていた。

 

「わたくしは」

 

「カノン、すまんが精神的余裕のあるときに聞かせてくれ。お前の言葉は刺激が強すぎる」

 

カノンは珍しく、不満そうな顔になる。

 

『マスター、宇宙港に侵入者が現れたけどナニーが鎮圧したって連絡が届いたよ』

 

「ありがとう。これで一段落か」

 

俺は、主のいなくなった汎用巡洋艦には手を出さないよう指示を出す。

 

爆弾をしかけられていたときが怖い。

 

『マスター、続報。子作り希望の機械人間が増えすぎて、頭にきたハカセたちがストライキを予定しているみたい。あとは鉄国から、たぶん停戦条約の申し込みっぽいのが届いている』

 

「そうか……」

 

パイロット仕事が終わっても、俺の仕事は終わらないらしい。

 

労使交渉と外交交渉か。

 

後者はドローンに任せるとして、前者は俺しか適任者がいない。

 

俺たちは、銀華へのお土産である捕虜十人を船倉へ放り込んでから、俺たちが平和を取り戻した主星系へ戻っていくのだった。

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