AI相棒と築く銀河国家戦記 ~初期船一隻でどうしろと?~   作:星灯ゆらり

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聖域の蹂躙者

ここは、契国が用意できる最高の通信設備と、通信で送り込まれるウィルスや攻撃を排除するための防壁が無数に用意された宇宙居住地だ。

 

「はじめます」

 

ドローンが、契国と楽園管理機構の間で取り決めた「外交用信号」を送信する。

 

楽園管理機構側に外交をする気があるなら、拒否なり対話なりの反応があるはずだ。

 

「反応がないな」

 

「これまでは一分以内に反応があったんですけど」

 

ドローンが考え込む表情になる。

 

引き締まった良い表情だ。

 

いつもこれなら銀華との見合いも考えるんだが……。

 

「ケースさん、今、僕らと国の命運がかかった場面ですからね」

 

ドローンに呆れた目で一瞥された俺は、両手をあげて降参のポーズをとった。

 

その瞬間、ドローンとは全く別の方向から、殺意よりも濃い悪意を感じた気がした。

 

無意識に艦の進路を変えて最大限まで加速する操作をするが、ここは艦の操縦室ではないので無意味な動きをしただけになってしまう。

 

『マスター! 宇宙港の至近に超長距離位相跳躍の反応! 逃げて!』

 

『こちらシロ! 実相アンカーで妨害されて代表のところまで跳べないお!』

 

複数の声が届くがいずれも別の宇宙居住地からの通信だ。

 

「ケースさん」

 

「全力は尽くす。ドローンが生き残ったときは頼むぞ」

 

ドローンは宇宙居住地の最奥にある避難場所へ走り、俺は宇宙居住地の周囲で守りを固めるサーフボード型二十八隻との合流をはかる。

 

だが遅かった。

 

『司令、時間は稼ぎます』

 

『戦艦四、駆逐艦八、フリゲート十六、色は黒っす』

 

言われなくても、俺のARメガネには出現した黒い二十八隻に防戦一方のサーフボード型二十八隻が映っている。

 

逃げようと思えば簡単に逃げることのできるはずのサーフボート型が、俺がいる区画に対する青いレーザー攻撃に対する盾に徹していて身動きできない。

 

「お前らっ」

 

『司令、逃げろってのはなしですよ!』

 

『これが最後の戦いでもいいですが、できればここから逆転したいですね!』

 

この状況でもやる気十分な連中の言動が、今はとても頼もしい。

 

『マスター。マスターがいる区画の装甲、最大時の六割まで低下したよ。今五割。四割』

 

俺の耳に聞こえるメモリの声は平坦なのに、全身のパーツが軋んでいるような痛みが感じられて辛い。

 

「メモリ。……全力を尽くす」

 

俺は目指す場所を変更する。

 

新たに目指すのは、ドローンが逃げ込んでいるはずの宇宙居住地最奥だ。

 

位相崩壊砲を使われたら逃げ場がない場所だが、使われない場合は味方艦隊が急行してくるまで持ちこたえる可能性がある場所だ。

 

十秒もかからず息が乱れて脇腹が痛くなる。

 

それでも、俺は必死に走る。

 

『あれ?』

 

『司令、敵艦隊が』

 

俺の乱れた呼吸が激しすぎて、皆の声が聞こえない。

 

今は、一歩でも、安全な場所に。

 

生き延びるつもりはあるし、仮に駄目でも、生きる事を諦めたザマをメモリや銀華に見せるのは御免だ。

 

『マスター、走るのやめて! 心臓止まっちゃう!』

 

「この、程度でっ、とまらん、さっ」

 

俺の体も顔も汗とそれ以外で濡れている。

 

『そうじゃなくて! 敵艦隊が逃げてくの!』

 

「……えっ」

 

集中が途切れた俺はバランスを崩す。

 

器用に受け身をとって顔を床にぶつけるのや腰を痛めるのは回避したが、受け身をとったときの衝撃で腕が痛くなっていた。

 

  ☆

 

「無事で何よりです、ケースさん」

 

「おう」

 

再会を果たした俺とドローンは、喜びが三割、困惑が七割の態度と表情だ。

 

『『ケース様。位相アンカーが作動していたのはナイアTEC契国支社の宇宙居住地でした。既に陸戦隊が制圧してナイアCEOを捕縛しています』』

 

警察と陸戦隊の統括をしているナニーが、ドローンの背後に控えたまま報告してくる。

 

「主星系内の赤ミミズの駆除と並行して楽園管理機構への侵攻艦隊を準備中です。敵艦が逃げた方向が楽園管理機構でしたし、楽園管理機構からの事情説明や弁解が今になってもないですから問題ないですよね?」

 

「契国代表としてカノンの行動を追認する。……カノンが行くか?」

 

「わたくし以外では主星系の駆除作業は難しいと思います。新型の跳躍機関の再配備を急がせてください」

 

「分かった」

 

射撃の勘が冴え渡るカノンは、艦が使える場所では契国の守護神という表現も大げさではない。

 

『マスター』

 

俺が最低限の命令を出し終えてから、メモリが話しかけてくる。

 

目の光は、込められた感情が複雑すぎて俺にも把握しきれない。

 

「心配をかけた。銀華のためにも、安全を確保しに行こう」

 

『うん。報復、しなきゃだよね』

 

メモリが浮かべた表情は、笑みの形をした、剥き出しの殺意そのものだ。

 

『ケース代表。敵艦隊が何をしていたか判明した』

 

元ハカセが通信を送って来る。

 

『レーザーで宇宙居住地の装甲を薄くしてから、スキャン用の専用装置でケース代表個人を徹底的にスキャンしている。代表の細胞の実物がなくてもコピーが可能になる水準のスキャンだ』

 

「マジかよ。遺伝子の実物なしでできるのか」

 

俺がショックを受けていると、カノンが何故か輝くような笑みを浮かべた。

 

「ケースさんのコピーと戦えるのですね! ついに! うふふ」

 

カノンの奴は、契国の守護神より、戦いを追い求める戦神の方が実情にあっている。

 

『ハカセが嫉妬で悶えている。代表に対する詳細なスキャンを何度も申請して拒絶されているようだな』

 

元ハカセはそんなことを言う。

 

『マスターのコピーは駄目。作って良いのは僕だけだよ』

 

メモリが俺のコピーを作るかどうかは分からないが、俺は、メモリが作るなら構わない。

 

ただ……。

 

「メモリ以外に作られた俺のコピーなんて、生きるのが罰ゲームみたいなもんだ。メモリも銀華もいない人生を送ることになるんだからな」

 

「ケースさんならそう考えると思っていました」

 

ドローンは納得したような、安心したような表情で肩をすくめる。

 

「楽園管理機構への侵攻は俺が指揮するってことでいいか?」

 

俺は歯を剥き出して笑う。

 

殴られたら殴り返すのは当然だ。

 

メモリも好戦的に目を光らせている。

 

「国家元首がやることですかと言いたいですが、楽園管理機構との条約が吹き飛びましたから、防衛用の位相崩壊砲を積んだ艦にケースさんを乗せておく方が安全なんですよね」

 

『実験室用の機材を流用したものを一セット用意できる。指揮用の機材を載せたグローブ型への搭載は無理だ。容量が足りない』

 

「艦の戦闘力や指揮能力は無視して構いません。ケースさんの生存第一でお願いします」

 

ドローンとハカセの相談は短時間で終わる。

 

「第二陣として一番の艦隊を送り込みます。ケースさんはくれぐれも慎重に。いいですね」

 

「任しとけ」

 

『僕もいるしね!』

 

メモリと俺が自信をもって返事をしたのに、ドローンは「この人たち本当に大丈夫?」という目をしていた。

 

  ☆

 

メモリと俺が乗っているグローブ型戦艦を中心に、各種装備を載せたグローブ型戦艦三隻、護衛のサーフボード型が十二隻、信号機型砲撃戦艦が二十隻、ビートボード型駆逐艦が同じく二十隻に、ワンオ氏の元部下が乗る集団戦闘用フリゲート四十隻が、楽園管理機構の主星系と思われる星系へ侵入した。

 

「ご立派な艦隊がいるのに、迎撃も挨拶もなしか」

 

まるで俺たちが見えていないかのように、星系を守る艦隊は加速も減速もせず居住惑星の周囲を回っている。

 

不具合だとしても、罠だとしても、とんでもなく異常だ。

 

俺たちが今攻撃すれば、この星系の艦隊戦力に致命傷を与えることができる。

 

逃走中の黒い二十八隻は確かに強力な戦力だが、他が全て消えれば契国が数で圧殺できるはずだ。

 

「楽園管理機構、何を考えている?」

 

人間相手の激しい戦いでパイロットが死ぬことも覚悟していたのに、ここまで戦闘が発生していない。

 

もともと戦死率が高いフリゲート部隊など、困惑が艦の動きにまで表れている。

 

『ケース代表。地表のスキャンを提案する』

 

俺とは別のグローブ型戦艦に乗る、元ハカセからの通信だ。

 

「任せた。……ろくでもないものが出てくると思うか?」

 

『何が正体でもマスターの敵だよ。変に同情しないでね』

 

メモリの声は柔らかだが、目の光は厳しい。

 

「ああ。家族が最優先だ」

 

他人に気をとられて家族を失うなんて展開になったら、俺は死の瞬間まで俺自身を許せなくなる。

 

『これは……銀華や子供世代を連れてこないで正解だ』

 

元ハカセの声には、元ハカセが滅多に表に出さない嫌悪感が強く反映されている。

 

『元聖国で使っていた人間もどきより酷い人形ばかりだ。悪趣味にもほどがある』

 

『元ハカセ。戦闘に関係のある情報を中心にお願い』

 

メモリの声が冷たく響く。

 

敵の正体も戦力も分からない状態で俺と一緒に戦場に出ているので、警戒心が強くなっているのだろう。

 

『技術水準は鉄国と同等以上。契国の首都星系以下だ。対空砲も都市防衛用の位相障壁発生装置もあるが、こちらを敵と認識していないようだ。後は……』

 

元ハカセの声が、不自然に止まった。

 

メモリの目の光が明滅する。

 

俺のARメガネに、地表に転がっている、宇宙線に長い間さらされていたかのような色の、リングが映し出された。

 

『私が設計したリングと同一設計だ』

 

本格的にホラーになってきたかもしれん。

 

『代表。トラクタービームを使わせてくれ』

 

「少し待て。メモリ、星系内だけじゃなく、星系周辺にも敵の動きがあるかどうか調べてくれ」

 

『「地図」でリアルタイムで確認できる範囲では動きがない、というより平時の動きのまま。隣接星系までは分からないけど、敵艦隊の反応はなし』

 

「助かる。元ハカセ、やってくれ」

 

元ハカセは了解の信号だけを俺に送り、即座に地表に対してトラクタービームを使用する。

 

地表のリングの中央にビームが照射され、数秒して人間に見えるものをトラクタービームが引っ張り出した。

 

『ここどこ!?』

 

三頭身の、契国に専用の体を求めてやって来たAIに人気の、機械の体だ。

 

『マスター! この子、元大地教信徒同盟の星系でハイパーレーン敷設工事に参加中の子だよ!』

 

『まさか、私は楽園管理機構に情報を埋め込まれていたのか!?』

 

元ハカセが動揺している。

 

「仮にそうでもお前の能力のうちだ。気にするな。それより、俺たちがまだ把握していないリングが他にある可能性は?」

 

『人のことだと思って簡単に言うものだ』

 

元ハカセは『ふん』と鼻を鳴らすが、動揺は消えていた。

 

『代表なりの励ましと判断して感謝はしておく。可能性については『ゼロではない』だが、ハイパーレーン用のリングはスキャンの際に目立つ。楽園管理機構の星系にリングがあるなら見つけるのは簡単だ。新造より管理権限の変更の方が早いぞ』

 

ハイパーレーン以外の研究も進めたい元ハカセは、敵国にあるリングの利用に積極的だ。

 

楽園管理機構による罠の可能性は確実に存在するが、既存のリングの流用できるのは、予算の面で魅力的すぎる。

 

「第二陣の一番には、この星系以外の星系の調査と制圧を任せるか」

 

『マスター、占領するの?』

 

「占領、になるのか?」

 

俺は助けを求めてメモリを見たのに、メモリは、ボールをパスするかのように元ハカセを見た。

 

『私は研究職であって予言者でも予知能力者でもない。……代表、議員、動きがあったぞ。新型跳躍機関の反応だ。二十八隻、場所は隣接星系だ』

 

冷たい笑い声が、メモリと俺から同時に発生する。

 

『良い技術を独占したいだけだったみたいだね、マスター』

 

「ここまで舐められたら追い詰めて殴り返さないとな、メモリ」

 

俺は、主星系にいる面々に対し、新型跳躍機関の量産と研究の再開を、最大限の規模で行うよう指示。

 

後続の艦隊を率いる一番には、反撃がないなら楽園管理機構の全てを制圧するよう命令した。

 

  ☆

 

楽園管理機構の艦隊が反撃「は」してこないことが判明した時点で、侵攻艦隊の任務は敵艦に対するクラッキングとその後の接収作業に変わった。

 

つまり、俺の指揮能力も操縦技術も無用になり、主星系に連れ戻された。

 

契国主星系で、学校船の進水式が始まった。

 

進水と言っても工廠から初めて宇宙に出るだけだが、弩級艦サイズの円錐形船体に各種施設が効率良く美しく配置されている様子は、とても迫力がある。

 

「跳躍機関は全部新型か」

 

『マスター、いざというとき契国最後の領土になる船だよ?』

 

俺たちが乗っているグローブ戦艦も新型跳躍機関に載せ替えている。

 

載せ替える際に位相崩壊砲を複数下ろす必要があったのは、新型跳躍機関の大きさが原因だ。

 

『司令! あの船って教育費無料って本当ですか!?』

 

俺の艦を護衛するサーフボード型は十九隻だ。

 

あの戦いでもパイロット二十八人は全員無事だったが、中破や大破してまだ修理中の艦もあるためだ。

 

「無料だ。お前らの子供は機械人間なんだから、有料でも無料でも強制入学だぞ?」

 

人間が多種多様なのは当たり前ではあるが、危険過ぎる能力や危険過ぎる思想を持たれると困る。

 

機械人間の中でも、特に新造された機械人間の立場は、この宇宙ではまだ弱いのだ。

 

「そろそろ始めるぞ。……今この瞬間から、これまで新型跳躍機関と称していたパーツを跳躍機関と呼称する」

 

以前の跳躍機関は、旧型跳躍機関として呼称され、扱われることになる。

 

「全艦、跳躍機関の状態を報告しろ」

 

サーフボード型巡洋艦十九隻、ハリネズミ型巡洋艦三十三隻から、問題なしの信号が返ってくる。

 

サーフボード型は操縦室だけでなく艦内も機械人間専用にすることで空間を稼ぎ、跳躍機関を載せ替えることに成功している。

 

ハリネズミ型は各種装備が剥き出しに近いので跳躍機関の載せ替えが容易で、レーザーキャノンから小型の位相崩壊砲へ載せ替えてもいる。

 

これからはこの装備の艦がサーフボード型とハリネズミ型で、以前の装備の場合は旧サーフボード型と旧ハリネズミ型として扱われる。

 

『マスター。この艦隊なら火国とか鉄国を墜とせるかな?』

 

「奇襲攻撃で主星系をぶっ壊すまではできるかもな」

 

『マスターでもそれ以上は無理?』

 

メモリの目も表情も期待しているそれだ。

 

「無理……」

 

俺の返事は、絞り出すような鳴き声に近かった。

 

『司令ー!』

 

「先生ー!」

 

パイロットたちが騒々しく俺を急かす。

 

楽園管理機構の艦と星系の接収は侵攻中で、契国主星系を襲った黒い艦隊の行方は今だ不明。

 

そんな状況でも赤ミミズの出現は続いているので、できるだけ早く駆除を完了させる必要がある。

 

「行くぞお前ら! 赤い害虫を綺麗さっぱり掃除して、聖女たちを盛大に送り出すぞ!」

 

サーフボード型に乗る機械人間や、ハリネズミ型に乗るカノン妹に促され、俺は総勢五十三隻でここではない宇宙へ突入した。

 

  ☆

 

灰色の宇宙に広がる霧は隠れるのに絶好の場所だ。

 

ただし、襲撃者が異能じみた射撃技能持ちなら、隠れ場所になどなりはしない。

 

「A班からC班は自由に撃て」

 

ざわ、と驚きの気配を感じたのはほんの少しの間だ。

 

「やったー!」

 

「全弾発射ー!」

 

霧の中から追い出すためではなく、霧の中の獲物を仕留めるために多数のミサイルが撃ち込まれる。

 

爆発のたびに霧が微かに揺れて、やがて大小の赤ミミズが生き延びるために爆発がない方向へ飛び出してくる。

 

俺の艦隊の目の前にだ。

 

『マスター。惑星サイズの奴は出てこないね』

 

「橋頭堡を築いてから戦えるといいんだがな」

 

フリゲートや駆逐艦のサイズの赤ミミズは、レーザーへエネルギーを集中したサーフボード型にとって簡単すぎる獲物だ。

 

一隻あたり二、三匹の赤ミミズが中心まで真っ黒に焼き尽くされるか焼き切られて両断されて命を失う。

 

攻撃力は設計通りでも、命中率が予想より明らかに高い。

 

「D班とE班は攻撃準備。自分か味方を守るときのみ撃ってよし」

 

念には念を入れて警戒していたんだが、霧の中から飛び出してくる赤ミミズの数は急減し、俺たちの主星系に最も「近い」場所からミミズの気配が消える。

 

だが、ミミズの気配が薄れるのと反比例して、聞き取れる【音】が近付いてきた。

 

【聖なる領域に汚らわしい足で踏み込む無法者め!】

 

まさか、ハカセたちが開発した「耳栓」の出番があるとは思わなかった。

 

俺ほど「耳」が良くないカノン妹にとっては大声ではなさそうで、銀華と同じパーツを使っていないメモリは全く聞こえていないようだ。

 

『えーっと、パイロットからの報告を総合したものを、マスターとパイロットのディスプレイに反映するね』

 

艦のディスプレイに表示されたのは、弩級艦サイズの弩級艦だ。

 

いや、俺も混乱してるな。

 

敵は、おそらく位相跳躍魚雷がメイン武器の弩級艦だ。

 

聖国惑星を接収した際に設計図そのものの構成に見える。

 

「先生! これ! あれです! 教科書に載ってたの!」

 

『うっそこれ聖国の弩級艦!? なんでこんな場所に』

 

パイロット連中は肉も機械も騒がしく、しかし油断も恐れもしていない。

 

「D班とE班は攻撃開始。A班、狙撃は可能か」

 

「こちらA班班長。やれます!」

 

「B班とC班は、A班が使った位相崩壊砲の影響を打ち消す担当だ。小規模な範囲攻撃をいくつか打ち消した程度では位相跳躍の難易度はほとんど変わらん。訓練の成果をそのまま出せ」

 

「「はい!」」

 

それぞれの班長が代表して、元気な返事をした。

 

D班とE班によるミサイル弾幕が、敵弩級艦の対空砲により撃破されるが注意を逸らすことには成功する。

 

【返事もなしか。蛮族め】

 

話している暇があれば逃げるが攻撃をすればいいのに、と俺が思っている間にA班がぶちかました。

 

散開したA班の中の一隻が、絶好の角度とタイミングで推定聖国弩級艦に対し位相崩壊砲を使用する。

 

位相崩壊砲でないと防御不可能な範囲攻撃が、薄い霧を切り裂き、分厚い位相障壁を貫き、船体装甲など存在しないかのよう突き進む。

 

『あの設計図をもとに作られた艦なら、これでメイン動力の中枢が消し飛ぶはずだよ、マスター』

 

「楽しみだな!」

 

俺は、ほぼ人力での計算結果をB班とC班に送信する。

 

何隻かが加速しながら向きを変え、敵弩級艦を貫き反対側から出てきた範囲攻撃に対し、より細く限定的な範囲攻撃を命中させ、相殺させた。

 

敵は決して無力ではない。

 

エネルギーが残っているうちに超光速で飛ぶ位相跳躍魚雷を二十近く発射する。

 

サイズは、普通の戦いでは十分に大きな、フリゲートサイズだ。

 

【落ちろ!】

 

「相変わらず声が大きすぎて聞き取りにくい」

 

俺が命令を出す必要はない。

 

敵の攻撃を完全に予想していたサーフボード型が、位相跳躍魚雷と並んで飛びながら一つ一つ丁寧にレーザーで切り刻んで無力化する。

 

【馬鹿な!?】

 

全艦無傷の契国艦隊が、艦の鹵獲と捕虜の獲得のために敵艦に近付いていっていた。

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